②歴史の話
多様な種族、人族はもちろんの事、亜人族に魔族。
亜人族と言っても色んな種族が居るし、普通に人族と生活している。
魔族と魔物の区別も解らないし謎が多いが魔族自体の数は少ないらしい。
種族間の混血も居るが国々や地域よっては選民思想や差別によってその扱いも違う。
種族によっては生きにくい土地もあるだろう。
そしてこの世界には「転移者」「転生者」「転憑者」が存在する、していたって事だ。今現在も市井に存在しているかも知れないが、見て解る様なものでもないと思う。
様々な歴史的文献も多数残ってるみたいだし絵本や物語、戯曲なんかにもなっている。勿論、中には荒唐無稽な話もあるけど。
「ワヅ王国」は魔術発祥の地と言われている国で、歴史書によると約500年前初代国王ウアラ・ソナウ(当時はただのウアラで馬飼だった)が1人の女性を助けた事が発端である。彼女は「転移者」で魔女だった。魔女は「魔法」を使う。彼女が居た世界ではとても普通な事だったそうだ。ウアラは彼女の世話を焼き、この世界で生きる為の手助けをした。そして2人は恋に落ち、やがて子が生まれ幸せに暮らした。彼女は我が子に魔法を教えたが全く使える様にはならなかった。そしてある事に気付く。この世界自体には「魔力」を感じられるが人(その他の種族も)に「魔力」が無い事。彼女の世界では大なり小なり誰もが「魔力」を持っていた。魔女の子とはいえ、この世界の人種との混血である娘はほんの少しの魔力しか無く魔法が使えないのだ。彼女はどうすればこの力を伝え残せるのか研究した。その結果、直接ではなく様々な刻印に紋様などを施した触媒に、自然界の魔力を一時的ではあるが取り込んで活用できる事発見した。(当時は魔獣の数が非常に少なく、伝説の生き物とされていたので魔核の存在は知られていなかった。)それらを用いれば間接的に「魔法」と同じ効果が出せると。そうしてそのあらゆる知識を2人に教え、実際に創った道具(魔具)など残す。そんな平穏な日々を過ごしていたがある時悲劇が起きた、我が子の1人娘が事故で瀕死の重傷を負ったのだ。ソナウは自身の魔力を極限まで使い治癒魔法を娘に施し続け、娘の命は助かったがソナウの魔力は尽きてしまう。魔女の魔力は生命に直結する、そして彼女はこの世界で逝った。ウアラはその遺産を手に世界を変えようと立ち上がった。
魔女であり妻の名を家名とし後に国を造ったのだ。1人娘のカウチ・ソナウは『魔法』は行使する者の魔力で、【魔術】は行使する者以外からの魔力でと定義し、母の教えを更に研究を重ね【魔術】の礎を築いた。そうして【魔術】が誕生し、ワヅ王国は比類なき力を得て大陸の覇者になる。
「タツ院国」の建国の祖はアラ・ターサという女性で「転憑者」だった。彼女はこの世界の普通の農家の娘だがある時に病に伏し、幾日か生死をさまよい目を覚ました彼女はまるで別人のようだったという。そして彼女は決してこの世界の人々が知りえない医学的知識や技術を披露し、農家の娘ではありえない奇跡を周囲の民衆に施した。彼女は言った、「病を境に自分には二つの人格が存在する」と。
本来この世界で育ったアラ・ターサ、もう一方は別の世界で生きていた人物、名は「ラテス」だと言った。ラテスは男性で別世界での彼の職業は医者だったらしい。彼(アラ・ターサなので「彼女」になるが)は、その異世界での医者の技術・知識で人々を助け絶大な支持を得、人々が集まり独自の共同体を形成していく。彼女の死後に、特に近しい弟子たちによって人々を病や怪我から救う事を理念とした「タツ院」が誕生し、肥大した共同体が国となった。
「グアン帝国」の現王帝はまだ年若く、名はショーン・ガン。彼は「転生者」という話だ。
彼は異世界での生前の知識を使い、娯楽や芸術に革命を起こし、この世界で実現可能な事柄を精力的に行い技術を向上させ、その結果グアン帝国は豊かになり高い国民支持を勝ち取っている。自称なので真相は解らないが短い期間で帝国を文化大国した手腕は只者ではない。
ソナウにアラ・ターサと異世界の知識と力で世を変えた。ショーン・ガンは現在も変えている。
それだけではない、それは初めにチスク国で発見された「古宮」だ。
「古宮」とは誰がいつの時代に建てたのか謎の建造物で、その中も謎に包まれている。
チスク国はこの建造物を厳重に管理して「オヤ」と名付けられたその古宮を国を挙げての調査に乗り出した。少なくない被害を出したが、そこで驚くべき発見がされる。どんな素材で出来てるのか全く解らない鎚で、どんな硬い物でも粉砕した。その他様々な神具とも言えるものが発掘され国の秘宝とし、自国の発展に活用した。それが鉱石業など盛んになった理由の一つとされる。
そして「古宮」は王国でも見つかり、「ダセリ」と名付けられ同じく不思議な品々が見つかり国宝となった。魔領ウネ・辺境自治領国ミネにも「古宮」が存在すると言われてるがその実は誰も知らない。しかしそれらの発見発掘された物はこの世界では再現不能の類であり、これらも異世界人達の遺産だと考えられ、その恩恵でこの世界が変わったというのが共通認識だった。