㉖検問所
三章は少し長くなる予定です。
やっと動きが出て来て、多少進展しますので見捨てずお読みくださいませ。(笑)
俺達は今、ナンコー領に入る為の検問所で順番を待っている。
あれからホタ君とスタダ領の馬車で途中まで送ってもらい
そこから徒歩でこの検問所まで来たのだ。
ホタ君は最後まで名残惜しそうにカーラに別れを力説?してたっけ。
カーラは「またお会いする機会もありますよ」と縋る彼を宥めて
やっと別れてやっと領境まで辿り着いたのだった。
恋する小僧は面倒くさい。
横を歩いてるステトは報酬でもらった献上品の希少蜂蜜を大事そうに持っている。
「なぁステト、そんな感じだと門番に怪しまれるぞ。」
「コレは誰にも渡さないからな!!」
「せめて普通に持つか仕舞うかしろよ。」
俺は呆れ気味に言う。
ステトは古着屋で買った小さな背嚢を背負ってる。
タツ院国の騎士から奪った短剣もそこに入れていた。
コワジ氏の籠手は着けたままだ。
「ヤだよ! 割れたらどーすんだ!!」
「手荷物は物流税の対象外ですけど、瓶を大事に抱えてる女性を見たら本当に怪しまれるかも知れませんね。」
カーラがからかってステトを脅す。
「そうだぞ、取り上げられたらどうするんだよ?親父さんが言ってたろ横流しは駄目だって。門番に取られたら同じ様なもんだ。」
俺も脅しに乗った。
2人で笑ってステトをいじる。
「~~~~~~~~~~~~~~~~っ」
ステトは瓶の蓋を開け、一気に蜂蜜を飲み始めた。
嘘だろ!?
「こらこら!せめて味わえ!!!勿体無いだろが!!あぁ~折角の希少蜂蜜が!!!!」
俺の勿体無い精神が叫ぶ、この場合は意味が違うが。
みるみる減っていき飲み干した。
何て奴だ!俺も一口くらい味見したかったのに‥‥。
「うま=========い!!!!!!!」
カーラは爆笑
「ホントに何か、ベタベタしてないよ! 味はしっかり濃いのに!!こんなの生まれて初めて食った!!」
いや「飲んだ」だろ!
あっという間に献上品は消費される事になる。
ゆっくり順番が進む検問所を眺めていると、少し離れた場所では別の集団が並んでいた。
荷物を背負っている牛や馬、荷車を引く人々、荷馬車や馬車の一行など。
「あっちは何だ?」
カーラに聞く。
「あそこは物資を持ち込む人達ですね。査定と物流税の徴収の為の検問所です。」
「なるほどね、こっちの列は査定とか無いのか!?」
「ええ、人が個人で持ち込む分には物流税は掛かりません。もちろん常識の範囲内ですけど。
こっちの列は入領目的の人々なので一律の通行税のみ払えば入れます。」
「いつもこんなに多いの?」とステトがカーラに聞いた。
「ある程度は多いと思いますがここまでではありません。
今は各外側領の収穫時期ですから、取引や出荷手配の為混んでるんでしょう。」
「俺達は大丈夫かな!?」
身分証明を持ってないからな。モグリになって初めての検問だ。
どうなるか全く想像出来ない。
「大丈夫ですよ。従者として私が身元保証人になりますから。
いざとなればお2人にはスタダ領嫡子の「クリエネージュ」があります。燐領のナンコー領では通用するでしょう。」
やるじゃんホタ君、有難うな。
「でも」とカーラは続ける。
「問題は起こさないでくださいね。身元保証するという事は責任も私が負うという意味でもありますから。何かあれば色々面倒ですし、足止めされるかも知れませんからね。」
「ゼッタイ食い逃げしない」
とステトは宣言をする。した事あんのかよ。
「ナンコー領は出来るだけ時間を掛けないつもりです。
急ぐ必要は無いですが、ツルギ領に着くまでは油断の無い様にお願いします。」
「そうだな、解った。」
カーラに何があるのか知らないが、余りナンコー領に良い思いが無いのかもな。
そして俺達の番になり、カーラが後ろの2人は従者だと言い自分の身分証明を出す。
確認が済み入領税3人分を払ってくれた。1人銅貨10枚だ。
入領税を納めた証明印を3人の手の甲に押される。出る時に消される仕組みだ。
不正をすると今後ナンコー領に入れなくなる。
銅貨10枚でそんな事するには割に合わないから滅多にない。
しかしこれだけの人や物が日々ナンコー領に出入りするとなると結構な税収になるよな。
検問をしている男達の服装がそれぞれ違う事に気付いた。
「あの検問所の兵達はナンコー領の兵じゃないのか?」
「はい、仲介所から派遣された人達です。」
「普通はこんな仕事は領兵がするよな!?」
「そうですね、責任者は領兵ですが入領の様な作業は外注に出してるんですよ。領兵を多数抱えるというのはお金が掛かるので、経費削減ですね。」
「それは何と言うか、いいのかそれで?検問って重要だと思うんだが。」
「物流の検問は全員領兵です。使い分けとでもいいましょうか。重要な職務は正規の兵、簡単な職務は仲介所に依頼してます。」
「何か、、、凄い割り切ってるって言うか、現金だなこの領は」
「ええ、ナンコー領の領主は『成金貴族』って言われていますから。」
微妙な表情で教えてくれた。
すると俺達を検問した男が声を掛けてきた。
「え~っと、ちょっと待ってくれないか君達。」
不味いな、何か本当に怪しまれたか!?
カーラが平然と対応する。
「何か問題でも?」
「いや、そうじゃないんだが、『カーラ・マハ』だな君は。」
「ええ、そうですが。」
「済まないが少し此処で待っててくれ、すぐ戻るから。」
と言って仲介所から雇われてると思われる門番は何処かに行った。
ステトは不安な様子で俺の後ろに下がってる。
「どうなってる?」
「いえ、お2人の事ではありませんから。」
彼女は深く息を吸ってどこか諦めた口調で答えた。そのまま待ってるとさっきの男が別の男を連れて来る。服装も他の門番達と違い正規の領兵の様だっだ。
「カーラ様! 御帰りになられたのですか!!」
カーラ様??
「久しぶりですねクニ。」
「お元気そうで何よりです。カーラ様の身分証明マは注意項目に載せられております故、私に連絡が上がってまいりました。カーラ様が入領されたら報告するよう命令を受けております。」
やはりカーラは貴族の血縁者だろう。俺達は黙って成り行きを見ていた。
「その事なんですがクニ、お願いが有ります。その報告を少し待ってくれませんか?」
「いやしかし・・・・」
鞄から箱を取り出してクニと呼んだ男にで渡した。
「オーパークのお土産です、これを検問所の皆で食べて下さい。」
「?? これは!有名な『アカツキ』ですか!!!」
「ええ。無理を承知でお願いします。」
クニと言う領兵は一呼吸置き頷いた。
「何かご事情がおありなのですね?解りました。しかしさすがに黙ってる訳にはいきませぬ、時間を置いて報告申し上げるという事で宜しいですか!?」
「それで構いません。出来れば一日下さい、長居するつもりは無いので用事を済ませばすぐに出立しますから。」
そして検問所を後にしてナンコー領に入った。カーラがオーパークで買ったのはこれだったのか。
賄賂?にしては陳腐だけど外側領では有名な物なんだろう。
でもそこまで食いつく程のもんなのかね。
ステトを見るとめっちゃ食いつてた。
「あれ!『アカツキ』ってナニ???」
「『アカツキ』はオーパークでしか売ってない有名な名産の高級菓子です。他の領に輸出もされてないので現地で買うしかないんですよ。
普段一般の領民や領兵などは他領に行く機会が有りませんからね、こういう物は意外と羨望の的なんですよ。それに金銭を渡したら「うっかり」では済みません。彼が汚職で処罰されかねませんし。
あのくらいが丁度良いんですよ。」
笑って説明してくれた。
まぁ確かに賄賂って言うか、土産としか言いようが無いからな。
何か笑える。
「え~ズルい!! オレも食ってみたい~!!」
お前は献上蜂蜜独り占めした癖に。でも俺も食ってみたい。
「ステトさんのお口は合いませんよ、かなり辛いお菓子ですから。」
「・・・・・・・・やっぱイイや。」
猫人族は辛いのと熱いのは苦手だしな。
俺は辛くても平気ですよカーラさん。
無事検問所を抜け、当然ナンコー領を知らない俺達は雇い主に付いて歩いく。
何処に向かってるのか解らないまま進むとそこは宿場町らしき界隈だった。
気が付くともう夕暮れに近付いている。
「今日はもうここまでにしましょう。」
彼女がそう言い、適当な宿を探す事になった。
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