㉔報告と顛末
俺は走ってステトが待つ場所に戻った。
戻ったはいいが何かおかしい。何か問題か!?と、その場にたどり着くと
ステトが賊の奴ら1人を捕まえて、、、いや全員ぶっ倒していた。
「おーい、何だこれ?」
荷車の荷台に座っているステトに声を掛ける。
「あ、フツ!!」
ステトが俺に気付いて手を振ってる。いや何その可愛い子の振り!?転がってる賊背景に恐いわ!
「『あ、フツ』じゃない、どうなってんだ!?」
「え?もう夜明け前だからとっ捕まえただけだけど??」
心から当たり前の様にに言いなさる。
それにこれ捕まえてはない!
「1人で良かったんだが?!」
「だって一緒だよ?1人も全員も。」
「お前だけだよ、そんな事言うの。」
と言ってもこの子はあくまで不思議そうな顔してなさる。
「ま、ご苦労さん。」
ステトは笑って頷く。
「フツの方はどうだった!?」
「あぁ上手く行ったよ、悪税官君に少し泣いて貰った。依頼完了だ。そいつら縛ってずらかろうぜ。」
それから1人1人逃げれない様に服を脱がし、その服で手足を縛る。
寒かったら悪いと思ったので荷台に積み重ねておいてやった。何か見た目は下着姿の男達が売られる為に荷車に乗せられてる図になったが、遠からずなので良しとする。
もちろん偽献上品は置いて行けとステトに言い聞かせた。
それ証拠だから。
それから屋敷に戻り、待っていたタカ隊長やカムさんに結果を報告した。
ツヒ・カクミと賊の後始末の為、彼らは部下を連れて屋敷を出て行く。
もうすぐ朝だ。「寝てないんだろうに何か悪いね」って言ったら
「お前達は仕事をした、これからは我らの仕事だ気にするな。」って
カムさんは安堵した顔で俺達を労ってくれた。
俺達に罪を被せる必要が無くなっての安堵かも知れないが、気に掛けてくれていた事は間違いない。
流石にホタ君や領主である親父さんは休んでいるので、俺達も仮眠させてもらう事にする。
あてがってもらった部屋でステトと別れ、部屋に入ると扉を叩く音がした。
誰だ?もしやステトが「同じ部屋が良い」とか言い出さないよな?
いや、あいつは扉なんて叩かない。いきなり開けて来る奴だ。
じゃ誰だ?こんな時間に。とか思いながら扉を開けるとカーラだった。
彼女も昨晩は領主屋敷に泊まってたみたいだ。寝てないんだろう。服も昼のまま。
「達成ですか!?」」
「あぁ問題ないと思う。」
「良かった、、、、本当に良かったです。」
心から安心したみたいだった。
「悪い心配掛けて。まぁあれだよな、やっぱり危ない所だったんだろうな。」
「ええ、そうです。中央の役人を襲うなんて依頼は口を塞がれてもおかしくありません。
事の次第によってはスタダ領の兵達がその倹税官を襲ってたでしょう、お2人の仕業と言う事にして。」彼女は悲痛な、そしてどこか怒っている声音で言う。
「解ってたよ、俺達は使い捨てには持ってこいのモグリだしな。」
「すいませんでした。私があそこでお断りすれば良かったのです、そうしたらお2人をこんな仕事に巻き込む事は無かったのですから。」
彼女は自分も俺達を利用したと思ってるんだ。自分が断れば良かったとも思ってる。
あの時点では仕事内容は解って無かった。ただ「仕事を頼みたい」だけだった。そして「モグリの俺達に」になって「倹税官を襲え」になった。それは彼女のせいでは無い。
多分どっかのお嬢さんだ、政治や貴族にも精通してるはず。しかし今は商人、だから親父さんの頼み事を貸しに出来ると考えたんだろう。そういう意味では俺達を利用した、でもまさかこんな内容だとは思わなかったんだ。それで腹を立てている。自分と親父さんに。
「カーラもあんな話聞いた後「やっぱりお断りします」なんて言えなかったろ?
気にすんなよ。俺達があんたの役に立ったんなら良かった。世話になってるからな。」
軽い口調で答える。
「私はそんな大した事はしていませんよ。」
「良い雇い主には違いない。それにもし俺達が危なくなってたらカーラが何とかしてくれてたよ。」
彼女は曖昧に笑った。多分その力を持っている後ろ盾がある。
「もし本当にカーラにどうする事も出来なかったら、、、」
「どうするんですか?」
「さぁどうすっかな。」
俺はカーラの目を見てうそぶいた。少し間が空く。
「何にしても依頼達成だ。それに親父さんは約束を守ると思うし。」
「もし、、、守らなかったら!?」
「決まってるだろ?今度は親父さんを襲うさ。」
「・・・・・・・。」
カーラには悪いが俺は本気で言ってる。やられたらやり返す、組では鉄則だった。貴族も同じだと思う。まあ親父さんは約束を守ると思ってる。それも面子が関わるからな。
「フツさん、、、、私の事で言ってない事が有ります。」
意を決した表情になった。
「それはまた機会が有る時に聞くよ。カーラはカーラ、依頼主で俺達は旅の護衛。悪いけど少し横になる。」
「・・・・はいそうですねお休みなさい。とにかく良かったです。」
「ああ、お休み。」
俺は扉を閉めてベッドに寝転んで大の字になる。
あ~疲れたっと。
少し寝て朝になり、重い体を起こしてまず朝食を頂いた。
ステトは寝ぼけてるのか、スープに蜂蜜を入れてるし。
どんな味だよそれ!
ホタ君も何か寝不足っぽい。あれか?カーラが泊まって興奮してたのか!?
だから何期待してたんだよ!
それから青春ホタ君を置き去りにし、親父さんの執務室で昨晩の事を直接報告した。
タカ隊長やカムさんに話した内容と重複するけど。
親父さんは事前に報告を受けていたらしく確認の為の質問される。
俺が答え終えると満面の笑みで
「ご苦労だった、よくやってくれたなお前達。」と
ご機嫌な様子だった。まぁいけしゃあしゃあと苦笑
どっちに転んでも良かったんだっただろに。
結果的に手を汚さずに済んだからな、田舎領でも貴族はやはり貴族だ。
改めてその後の顛末をタカ隊長とカムさんが説明してくれた。
ツヒ・カクミは賊に襲われ手足の骨折で重傷。「院社」に運ぶのに相当時間掛かったとか。更に肉が邪魔して骨の結合が上手く行かなかったらしい。やっぱ痩せた方がいいぞ。倹税官としての職務遂行が難しくなった為、じきに別の人物と交代する筈との事だ。娼婦館の女主人の証言もあって、犯人は1人の賊である事が解った。場所が場所なだけにツヒ・カクミの評価も良くない報告が王都に届くだろうと。
修理代足りたかな・・・あのマダムは嘘を付いていない。
俺は1人っだったし賊を名乗ったしな。
私兵の護衛ソックは何があったのか口を閉ざしているみたいだ。まあ格好悪いし言えないよな。
少し申し訳ないのが、王都から倹税官の護衛に派遣されてた騎士2人だ。
彼らは護衛対象が襲われている事を知らずに倹税官屋敷に居た。
本人のツヒ・カクミの命令で屋敷で待機していたとはいえ、失態である事には違いない。
左遷させられるだろうと。
・・・・何かごめんな。
そして俺が不意を食らわした賊の男1人とステトがぶっ倒した残りの奴達も全員捕まった。あいつ等は尋問でソックに雇われたと証言したみたいだ。義理はないし普通に吐くよな。この事は公にはしないと親父さんが言う。ツヒ・カクミの親父である子爵に貸しが出来たって訳だ。
あの男、案内させたウル・コウムの名が出てない。
無事逃げれたか。あいつはどっちかっていうと被害者みたいなもんだ。
盗品って事も知らなかったと思う。野心は別に悪い事じゃないからな。
ふと同じく結果を聞いていたカーラに目をやると俺に頭を下げた。
納得の結果になったみたいだな。
「さてお前達は依頼を果たしてくれた。私も約束通り褒美を渡さねば。」
後ろに居たタカ隊長に合図を出す。
隊長は後ろにある戸棚から袋を出し親父さんに手渡した。
「まずはカーラ、雇い主である君には無理を言ったな。」
「いいえミョウ様、お気持ちは感謝致しますが私へ報酬は必要ありません。
仕事をしたのはそこのお2人ですでの彼等にお報い下されば結構です。」
カーラの口調が少し厳しいものになってる。
貸しを無効にして自分と親父さんを責めてるんだ。
彼女の物言いを察したのか親父さんも引かなかった。
「そうはいかん約束は約束だ。君を巻き込んでしまったのは本意では無かったが、この機会を逃す訳も行かなかった。そこの2人は仕事をこれ以上ない結果で達成してくれた。彼等は勿論だが君にも対価を受け取ってもらわねば困る。私の、スタダ領の誠意を示さねばならんのだ。理由は解ってると思うが?」
「・・・・はい。」
カーラの後ろ盾はよほど気を遣う相手らしい。
「何が良いかね!? 正直君が欲しがる様な対価を出せるかも解らない。言ってくれ。」
「・・・・一つだけございます。」
「何だね?」
「スタダ領の商認証を頂きたく。」
頭を下げ、カーラはそう要望した。
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