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⑰坊ちゃんに一言

先にホタ君は食堂で待ってるみたいで、スビム副隊長と並んで歩いて向かう。


「なぁスビムさん」

「カムでいい」

「解った。じぁカムさん、領兵の副隊長って偉いだろ?何でホタ君のお守りなんだ?」

「我が領の領兵は、副隊長が跡取り様を御守りする役目を負っているのだ」

「領主さんの方は?」

「御領主様には隊長がお付きになられている」

「なるほどね」

「此処だ」

そんな話をして着いたのは円卓で給仕が立ってる高級宿らしい食堂で、カム副隊長、カーラに俺とステトが続いて入る。


「カーラさん!よくお(いで)下さりました、どうぞこちらへ!!」

ホタ君が席を立って向かい入れてくれ、彼女を自分の席の隣に座らせた。

おいおい、残された俺達はどうすりゃいいんだよ、それにカーラさんって。


「俺とステトは何処に座ればいい?」

「御2方は此方へどうぞ」

「どうも」

「アリガトー」

カム副隊長と一緒に助けた2人の兵隊のお兄さん方も立ち上がり席を勧めてくれ、一応会釈して腰を降ろす。


「改めて自己紹介をしよう、僕はスタダ領が領主ミョウ・スタダの子、ホタ・スタダだ。お前達の名はカーラさんから教えて頂いているぞ、フツにステト、本当に世話になった。礼を言う」

カーラが言った通りこれから向かう領の坊ちゃんらしい。


「カーラさんにも重ねて感謝を。色々と励まして頂き有難う御座いました」

何かカーラの扱いが違うな、それに手を取る必要あるか?

2人で待ってる間何があったのか、懐いちゃってまぁ。

それから飲み物が運ばれてホタ君の音頭で乾杯をする。


「では無事を祝って、乾杯!」

いやお前のせいなんだけどな。

俺とステトは麦酒でそれ以外の面子はワインだ。酒を味わい暫くすると料理が運ばれて来る。


「僕が決めておいたんだ、フツとステトも遠慮は要らないぞ、思う存分食べてくれ」

それぞれの前に並べられたのは、どうやら懐石料理のようだった。


「エンヨ?」

「遠慮な、細かい事は気にするなって事だよ」

「気にしないイケド?」

元々遠慮なんて知らないステトには関係ないか。


「取り敢えず食おうぜ」

「ウン、腹減ってたからいっぱい食うヨ!」

そう意気込んだステトは、懐石料理じゃ足りないらしくあっという間に平らげてしまった。

気持は解るぞ、俺ももっとこうがっつり料理が欲しい。豪華だし美味(うま)いんだが物足りなさは否めないよな、何より食べ辛い。


「ウウ~ン‥‥コレだけ?」

かと言って口に出すな!そこは遠慮しろ、これ高いんだぞ多分!!


「フツとステトは、どんな成行きでカーラさんの護衛をする事になったんだ?」

食事もそこそこ、場も和んで来た時にホタ君がワインを片手に聞いて来た。

ガキがワインって。飲酒に年齢制限はないから罪にはならないけど。


「え~っと、何だろ?たまたま?偶然かな?」

「フツが言ったから」

嘘は言ってない。


「フツさんとステトさんとは宿の食堂で出会い、そこで絡まれてる私を助けて下さったんです」

「そうなのか?」

ホタ君が食い付いた。


「酔った勢いで男を殴っただけだよ」

「アイツ等が剣を抜いたから」

これも嘘じゃない。


「あの時のフツさんは男らしかったです」

「何か格好良く聞こえるぞそれ」

「本当の事じゃないですか」

「いやまぁ」

「オレとフツは相棒」

お前の相棒返事の意味が解らん。


「はい、ステトさんとの息もバッチリでした。それでお2人に無理をお願いしたんですホタ様」

「それでどうして彼等を護衛に?」

「直感、と言いましょうか、頼りになる方々と思いましたので」

「頼りになるか?俺達」

「はい。今回の事でそれを証明してますよ」

まあいいか、結果的に見ればそう言えなくもないし。


「僕もカーラさんみたいな女性を護れる男になりたい!!」

ホタ君が目を輝かせ何か宣言してるけど、酔ってんのかお前。

お前のその意気込みは買うが、ここは大人として言っとく事があるぞ。


「ホタ君。俺とステトは堅苦しい口調は苦手なんだ、なんせ貴族様と付き合った事も無いんでね。無礼と解ってるが君を「ホタ君」て呼んでいいか?」

「ああ、いいよ」

俺がカムさんを見ると彼も頷いた。


「ホタ君、今回の魔獣狩(レジャー)りで君が我儘を言って無茶をしたんだろ?君が怪我をしただけならまだしも、その結果カム副隊長達も怪我をしたし彼等を危険にさらしたんだ。今回は運が良かっただけで全員死んでた可能性だってあった。そんな君に護られたいと思うか?勇敢と無謀は違うもんだよ」

「‥‥‥」

ホタ君は俺にいきなり説教されて黙っている、平民にこんな事言われて怒ったのか、それとも呆気に取られてるのか解らないが、止めるつもりはない。


「それとな、今回の事カム副隊長達に謝ったか?礼を言ったか?彼らは命を懸けて君を護り、自分達を犠牲にして君を逃した。男らしいっていうのはそういう事だし、自分の非を素直に認める事もそうだと俺は思うぜ」

ホタ君は黙ったままで、カムさん達は少し居心地が悪そうだが俺には関係ない。

空気を読まないステトの咀嚼の音が響く。ったく男らしいわお前は。女だけど。

てかまだ食ってんのかよ?


「‥‥‥」

少し気まずい空気が流れ、俺は成り行きを飲みながら見守り、カーラも黙って見ていた。


「お前達」

ホタ君がおもむろに立ち上がる。


「今日は済まなかった。僕のせいで危険な目に合わせしまって。そしてお前達が居なければ僕はどうなってたか、本当に有難う。こんな僕だけど、どうかこれからも宜しく頼む」

そう言って自分の部下達に頭を下げた。


「滅相も御座いません!!」

「恐れ多いホタ様お顔をお上げ下さい!」

「ホタ様、ホタ様の御気持ち大変光栄に嬉しく思います。我らは貴方様を御護りするのが責務です。我らが不甲斐ないばかりにホタ様を危険な目に会わせてしまいました。罰せられるのは我らの方です。

ですので貴方様がお許しくだされば、今後はしっかりと精進され、然るべき御年齢に達した時に喜んで魔獣狩(レジャー)りに再び御供致します」

最後にカム副隊長が直立で答えた。


「‥‥‥」

ホタ君がカーラと俺を見るので、彼女が頷き、俺は笑って麦酒を飲む。

素直で良い坊ちゃんじゃないか、配下の者に頭を下げるなんてさ。


「ホタ様に!」

「「ホタ様に!!」」

「有難う」

そして改めてスタダ領の面々は乾杯した。

そして夜も更け翌朝に備えて休む事になったので挨拶を交わす。


「ではカーラさんお休みなさい」

「ホタ様も」

俺達には無しかホタ君、別に良いけど。


「ちょっといいかフツ」

カム副隊長がこっちに来た。


「どうした?カムさん」

「いや‥‥その、悪かった。お前にあんな事を言わせて。本来は我らが御意見を申し上げるべき事だ。重ねて礼を言う」

「気にすんな。あんた等だと言いにくいだろうし、俺は思った事言っただけだよ」

「うむ」

「そう言えばホタ君の歳はいくつなんだ?」

「12歳になられる」

成人は15歳だ、そりゃ申請なんか通らない。


「俺のその歳に比べりゃ立派だよ。じゃ明日な」

別れ間際気になってた事を聞いてみる。


「なぁ森で何か触ったか?」

「ホタ様がリンカの実をもぎ取っていなさってた。それがどうした?」

それだ、俺と同じだ。


「気にしないでくれ、大した事じゃないから」

こりゃ人の事言えないな。


「スピム副隊長と何を話してたんですか?」

「精神年齢の話さ」

「?」

「それより部屋は?」

「ご案内しますね」

リンカの実を取る12歳のホタ君と俺、どっちが餓鬼なんだか。


「此方のお部屋です」

部屋の前に着くとカーラが鍵を開け先に入って行った。


「あれ?俺達の部屋は?」

「ですからこのお部屋です」

「は?」

カーラは俺の反応を気にせず部屋の奥に入って行く。


「うおー!広い~!それにいっぱいドアがある、見てよフツ!」

「この部屋は?俺達3人一緒の部屋なのか?」

「ここは貴族仕様でのお部屋なんです」

「貴族仕様?」

「主人の御世話が出来るようにお付きの侍女や従者、御傍付の方達用の部屋が併設されてるんです。見て下さい、大きな居間、寝室も複数ありますから私達には十分だと思いますよ」

「イイじゃん!一緒に寝れるなんて楽しそうだヨ」

いや一緒に寝ないけど。


「ステトはまだしも、男の俺は不味いんじゃないか?」

「そんな心配はしてませんよ。良いじゃないですか一緒に過ごす方が。これから野営をする機会が無い訳でもありませんし、どうせならそれに慣れておきましょう。朝も揃って動けますからね、とは言っても寝室は別なので気にしないで休んで下さい」


まぁそうなんだが。仕方ない部屋に籠ろう。

俺は健全な男なんだけどな、色んな意味での健全な!!


自分達の寝室を決め(セーラはご主人様用の寝室)一息入れて風呂行く。

流石高級宿、風呂もあった。この世界の風呂は蒸し風呂だ。

色々あったが考えてみれば風呂にも入れ、豪華な料理にありつけて

モグリとしては有り得ない一日だったなぁ。そんな事を想いながら

久し振りに入ったせいか男子あるまじき長湯をしてしまった。


風呂でさっぱりして部屋に入ると、居間で彼女達が部屋に置いてあった寝着姿で各々柔らかそうな椅子に座りゆったりしていた。

俺それ無かったんんだけど?


ステトは乾いてない髪を拭き、カーラは頭にタオルを巻いていつの間に頼んだのか酒を飲んでいて、寝着は薄い素材でぴったりと体の線が解る造りで目のやり場に困る。

俺は渡された麦酒を片手に彼女達の向かいに座った。


「さてお2人共、明日はスタダ領に入ります。そこで御領主のミョウ・スタダ様とお会いする事になると思います。流石にに少し言葉には気を使って下さいね」

「オレ、テイネイ語なんて自信ナイよ~フツは大丈夫なの?」

テイネイ語ってなんだよ。


「貴族様に対する言葉なんて知らねぇけど、敬語くらいはしゃべれるぞ」

それなりにだけど。


「ステトさん、皆さんの真似でいいですよ。主な受け答えは私がしますので。それにホタ様の御気性見るに父上であるミョウ様も、そんなに気にしないと思います」

「何で親父さんと会う必要があるんだ?ホタ君の事があったにしろもう終わった事だし、そのままナンコー領に行けば良いと思うぞ」

「今回の報酬を頂きに参ります」

「そう言えばやけに懐かれてたな、何があったんだ?待ってる間に」

「お泣きになったんですよ」

「え?」

「?」

「お2人が森に入ってすぐホタ様がおっしゃいました、怖かった、死ぬかと思ったと。そして泣きながら『僕のせいで皆死んじゃう』と」

12歳だったら普通の反応だ、それが弱いとは思わない。

ただ素直にそれを口にした事が意外だった。


「私は彼を抱きしめて、大丈夫です、きっと無事にお戻りになられますと励ましました。戻って来たら主としてしっかり行動しなさい、失敗は失敗した後の行動がその人の価値を決めるんですと。私の護衛の方達は頼りになりますのでご安心ください、と申し上げました」


「カーラお姉ちゃんだネ」

ステトが真っ当な感想を言う。。

優しいお姉さんか、一見冷たそうに見えるが中身はそうじゃない。俺達にも公平に接してくれて、子供は人を見るもんだ、そんなカーラ相手だから言えたのかもな。


「その後、ホタ様は持ち直されてフツさんやステトさんの事をお聞きになったんです。私は彼らは雇われ者ですので、戻って来たら何か褒美を与えて下されば喜ぶでしょうとお伝えしました」

「それで?」

「近衛の皆様がお戻りになられた時、ホタ様が仰ったのです、何がいいのかな?と。そこで私がご提案し、そんなもので良いのならとご了承くださいました」

子供が弱ってる所を励まし、安心した所で報酬の要求。話だけ聞いたら悪辣と思われる行動なんだけど、商売上手って事なのかな?

どっちにしろやっぱ怖いわカーラお姉ちゃん。


「んでナニ?オレ達へのご褒美って!?ナニナニナニナニ?? 」

ここにも子供がいた!

お前が思ってるのとは絶対違うと思うぞ。


「何をくれるって?」

でも確かに気にはなる。


「お2人にはホタ様からの『クリエネージュ』を(たまわ)れる事になりました」

「何それ?」

美味(ウマ)いの?」

だから違うって。


読んで頂き有難う御座います。


良ければポチっと&ブクマお願いします~。

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