①⑦⓪仲間とジャエ
また話が進んでないとかは気のせいです笑
『黄輪』の奴隷で使用人のジャエ・チケアを俺の隣に座らせる。
「相変わらず今日も光ってるな」
「フツさんはまた言ってるアルね、ワタシはそんなんじゃ落ちないアルよ」
「だから口説いてねぇよ」
説き文句でも何でもなく俺には本当に光って見えていてたが、ジャエはもうこのやり取りが挨拶みたいなものだと思ってるみたいだ。
「そのコはフツの知り合い?」
ジャエはカーラともう会ってるがステトとは初対面だった。
「ステト、彼女の名はジャエ・チケアと言って子爵さんを手伝ってる『黄輪』の1人だ。ジャエ、俺の相棒で名はステトだ」
「は、初めましてアルです」
「アルってまた言った」
「それは後にしろ、それよりジャエはドワーフ族の血が混じってる。ジャエ、ステトは人族の血が混じってるんだ。2人の境遇も似た感じだから仲良くしてやってくれ」
ジャエは両親が人族で曾祖父がドワーフ族だから人族寄りで、ステトの両親は猫人族で祖父が人族と猫人族寄りになる。お互い血の濃さは違うが2人共生粋の亜人族ではなく、似た境遇と言ったのはジャエは二回売られた奴隷で、ステトは契約奴隷になって剣闘士をしていたが傷を負って売られていたからだ。
「どうぞ、よろしくアルです」
取り敢えずステトの事をジャエに話すと人見知りと解る彼女が自分から頭を下げて挨拶をした。
「オレこそヨロシク、ジャエのトシは?」
「十六アルです」
「オレは十八!オネェちゃんだ!」
ジャエが十六歳と俺も初めて聞いた。
「オレのコトそう呼んでイイからネ」
「え?」
ステトは彼女を妹分にしたいらしい。
「こいつの言う事は適当に流して良いぞ」
「あ、はいですアル」
「呼ぶくらいイイじゃん!!」
「もっとお互い知ってからな」
「ム~~」
まぁ案外悪くない組み合わせだと思うけど本人が迷惑なら諦めろ。
「あのフツさん?『黄輪』のジャエさんがハヤ様をお手伝いって、何をですか!?」
「悪いカーラ、それを言う前に先に彼女と話させてくれ」
「ワタシにお話アルか?」
「ああ、実は昨日の夜ジャエが休んでから子爵さんと話すうちに‥‥」
ジャエだけに聞こえるよう彼女が何者か、両親の事その上役の事、今の境遇になった経緯を子爵さんから聞いたと説明する。
「ハヤ様が?フツさんに??ど、どうしてアルか?」
「落ち着け。子爵さんが無暗に秘密を漏らす人じゃない事くらい知ってるだろ」
「でも‥‥‥」
「一体何のお話かは後で聞きます、でもジャエさんは大丈夫なんですか?」
ジャエの様子がおかしくなったのを見てカーラが声を掛けて来た。
「ジャエをちょっと驚かしただけだ」
「イジめたらおネェちゃんのオレが怒るからネ」
「そんなんじゃねぇよ」
ステトがもう保護者気取りで話に割り込む。
「話が進まないからもう少し待ってくれ。なぁジャエ、俺にも秘密が有るんだ」
「フツさんの秘密??アルか」
「え?フツさんまさか!?」
「ソレ言ってイイのフツ?」
「良いんだ」
「アブナイコトにならナイ?」
「ならねぇよ」
「でもフツさん」
「何で良いかの疑問も後で解るからさ」
ジャエだけに彼女の秘密を共有させようとは思ってない。子爵さんは俺達を良き理解者になって欲しいと言っていて、それには俺が異世界の経験者だ話す必要がある。
「秘密ってのはジャエ、俺はこの世界で生まれ育ったけど異世界に行った事がある」
「行った?え?」
「運良く戻って来れたけど言いたいのはそこじゃない。ジャエの気持ちがちょっとばかり解るって言いたいんだ」
「ワタシの気持ち‥‥」
「信じられない経験で疑心暗鬼になって、孤独を感じて色々あったんじゃないのか?」
「‥‥そうアルね。ワタシの話なんて両親も誰も信じてくれなったアルよ」
「その全部を俺は解るとは言わないけど、俺は異世界の存在を身を持って知ってる」
「フツさんは戸惑ったアルか?違う世界をその、比べて」
「俺の場合はその異世界が戦争中だったから特にだな、初めはそれ以外何にもなかったぞ」
「それ聞いてちょっと安心したアルね」
「子爵さんが俺に教えたのはそれだからなんだ、ジャエの理解者にってさ」
「ハヤ様とキリ様がそうアル」
「子爵さんは若いジャエには若い理解者も必要だと思ったんだよ」
「俺達?」
「そう。俺の今言った秘密は此処に居るカーラとステト、もう1人の仲間には打ち明けてる。そんな事を知っても信用して秘密を守ってくれてるんだ。俺の仲間は俺の良い理解者でジャエにもそうなってくれると思うけどな」
「ワタシも仲間で‥‥良いアルか?」
「その為にもこの2人にジャエの秘密を話したいんだ、良いだろ?」
「‥‥‥‥はい、あの、よろしくアル」
「よし、俺の話す内容に間違いがあったら言ってくれ」
「解ったアル」
ジャエの承諾を得たので辛抱強く成り行きを見てくれてたカーラと、訳の解らない顔で待っててくれたステトに向き直る。
「お待たせ」
「リカイシャってナニ?」
「自分の事をよく解ってる相手だ、って聞きたいのがそこかよ」
「‥‥では聞かせて下さい、ジャエさんの秘密とは?」
「ジャエはな、『転生者』なんだよ」
カーラは当然だがステトも大まかにその手の存在の事は知っている。2人共目を剥いて驚いたが口を挟まず子爵さんから聞いたジャエのこれまでの経緯を説明し終えるまで黙って聞いてくれた。
「大体これで合ってるか?」
「はいアル」
「アルが出た。アルはナニ?」
「アルって訛りははジャエが前世の異世界で話していた言葉なんだ」
「アルを使うコトバなんて変わってるネ」
「前世の世界では普通だったアルですけど」
「それよりお前はジャエが転生者って、その先の話は聞いてたのか?」
「ウ〜ン、ちょっとオレにはムズカシイ」
「まぁ‥‥俺も聞いた時には整理に時間が掛かったしな」
今も前世でも奴隷で転移者の上役(正確には父親の上役だが)も前世で上役だった話を聞かされステトが直ぐ飲み込めるとは思わない。しかも前世ではその上役にジャエは殺され、この世界でも母親を殺され父親の死にも関係してたなんて誰でも頭がこんがらがる。
「でもジャエがイヤな思いをイッパいしてたのは解った」
「それさえ解ってりゃ上出来だよ」
「ジャエさんが転生者、そしてお母様に手を掛けお父様の事故にも責任があったのが転移者、2人は同じ異世界から転生者や転移者としてこの世界に。そしてあろう事かその人物は前世のジャエさんにも手を掛けた‥‥何て酷い、何て巡り合わせなのでしょう」
カーラはステトと違い全てを飲み込めたようで驚きと共にジャエの境遇に同情する。それから子爵さんがジャエを心配して俺を見張っていた事や昨日の夜に俺が異世界を経験した事を話したと付け加えた。
「それで俺ならジャエの気持ちが解るって言われてさ」
「フツさんがジャエさんの理解者にとはそう言う事だったんですね」
「カーラ達にもジャエの秘密を教えて良いって許しは得てる。だから俺の秘密を知ってる皆にも彼女の理解者、仲間、友達、呼び方は何でも良いけどなってやって欲しい」
「ジャエはオレのイモウトなんだからアタリ前だヨ」
「妹アルか?」
「妹分な、本当の姉妹みたいに言うな」
「女性は女性にしか話せない事もありますから、何か私達で解る事なら遠慮無くお尋ねになって下さいね」
「は、はいアル。その時は、よろしくお願いアルです」
俺の信用出来る仲間であるカーラ達もそうなれると言ったのは俺なんだけど、彼女達の反応を見てやっぱり正しかったと思う。
「そもそもどうしてハヤ様とそんなお話の流れになったのですか?」
「もう俺は前にその事を匂わせてたからな、この際『芋』の出所をはっきり知りたかったんだ」
「それではジャエさんが」
カーラがジャエを見たので彼女が頷き、逃げる時に転移者の上役から奪った事を話した。
「結局子爵さんの手伝いって芋と酒の事で良いのか?」
「はいアル。作付けの場所と時期はワタシが決めてるでアルよ」
「酒は?」
「お酒は造り方をハヤ様に説明したアル。ハヤ様が『黄輪』に担当させると決めてからはワタシはその管理をしてるアルね」
「ジャエはあのクサイ酒のエラいんだ!」
色々抜かしてるステト、意味は解るけど臭い酒って言うな。
「やっぱり猫人族のステトさんには臭いアルか」
「味もしナイからニガテ、ゴメン」
「風味アルよステトさん、味より風味を楽しむお酒アル」
何か急におっさんみたいな、ナサがおっさんと思ってないけど同じ事言ってる。
「癖があるのは確かだけど俺は嫌いじゃ無いぞ」
「私も慣れれば美味しいと感じましたよ」
「でもまだ改良する必要がありそうアルです」
「それにしても現在のツルギ領の主要産業はジャエさんが全ての始まりだったのですね。しかもそれをハヤ様から任されているなんて」
「ホラ!ジャエはエラい!」
「そんなんじゃないアルよ」
「ジャエさん、その上役がまだジャエさんを探してると思いますか?」
「まさかアル」
「解りませんよ、その転生した上役の人物はきっと淋しい思いに駆られてるんじゃないでしょうか」
「‥‥でもハヤ様が守ってくれると仰ったアルです、大丈夫ですアルよ」
ツルギ領は既に『芋』の栽培方法や酒造方法も解ってる。もうジャエは必要無いかも知れないが品質管理や不測の事態に対応出来るのは彼女だけだろう。この先何か新たな手法を思い付くとしたらそれは彼女で、子爵さんが俺を見張らせたのは異世界の事とその上役から重要人物であるジャエを奪われたくないからだ。
「ツルギ領にとってジャエさんは重要人物です、一応気を付けないと」
カーラの言う通りだが、そんな事は別にしても子爵さんはジャエを大切に思っている事を俺は知っている。
次回更新は、11/21予定です。
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