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①⑥③長い夜《治療の問題点》

夜が長い笑

先が長かろうが遠かろうが【伝達症(ニューロ)】の被害者達を助けるには治療しなくてならない。問題が有っても一つ一つ解決して行くしかないし医療の事じゃ役に立てない俺でも手を貸せる事はある筈だ。


「問題って何の問題なんだ?」

()ず描かれている図面にある魔具(クジキ)の事ですね」

()ずって他にまだあんのか‥‥え?でもあれも色々抜けて、あれも使うつもりなのかよ?」

「ふむ。外部から信号を送る魔具(クジキ)など『信波画具(エルイ)』くらいしか存在せんからな、試す価値はあるか」

「『信波画具(エルイ)』じゃ駄目なのか?」

「『信波画具(エルイ)』が出す信号では脳に強過ぎるんです、強過ぎる信号をそう何度も脳に送る訳にはいきません」

「じぁ弱く出来ないのか?それこそ錬術師に頼んでさ」

「全ての医療用の魔具(クジキ)はタツ院国の大切な財産だ。専門分野の知識同様その構造は公開されとらん。その様な代物を何処で手に入れる?貸出など言語道断、どうにかなったとしても『信波画具(エルイ)』の様な巨大な魔具(クジキ)を錬術店に運ぶ込むなど不可能だ」

「ですから僕は魔具(あれ)を使ってみようかと考えたんです。完全じゃないにしろ図面も有りますからそれを利用する方が現実的ですよ」

「有るものを利用すると言うのも医療の基本だからな、センは正しい」

2人が矢継ぎ早に言って来るがそうまでして昔の完全じゃない図面の魔具(クジキ)使う必要が有るのかが疑問だった。


「液体?(ポーション)の方は!?そっちも脳に使えば良いんじゃねぇか?」

「脳のどの部分が意識と運動を司っているのかが解ればそうです、ですがそれが解らない」

「センのジュ家は『循環血内』で心臓や血管の専門家だ。脳の事も他の医者より詳しいだろうが『神経消分内』の知識となると限界がある」

「‥‥そうか、専門外だったよなセンは」

魔具(クジキ)を使おうと考えたのはそれでなんですよ、脳の各運動を(つかさど)るその場所を特定する為にね」

イ家が大事に持っている『神経消分内全書』ってのが見れれば手っ取り早いんだろうが無理なもんを言っても仕方が無い。


魔具(クジキ)も再現するのは解ったけど、特定出来るもんなのか?」

「これを考えた方の目的はもっと広い範囲みたいですけど理論上は同じです」

「この紙に書かれていた文章もそうあったではないかフツ、『弱っている臓器を開胸腹せずに特定するには体に何かしらの刺激を与え、その反応の強弱で判断すれば良いと。機能が低下していれば反応は弱くなる筈だ』これを言っているのだセンは」

「はい。微量の信号を頭から送り脳から体への反応を確かめ、少しずつ箇所を変えてまた反応を確かめる。そうやってどの箇所が体のどこを動かすのかを把握します。根気のいる作業になりますが‥‥」

いやお前以上に根気がある奴は居ないからそれは任せるとして、でも広い範囲に使う目的で考えられたんだったら無理なんじゃないのか?


「そんな細かい事出来る魔具(マグ)じゃないんだろ?」

「当然そのままじゃ無理です、点を狙える精度が必要ですから手を加えないと。他にも頭に被せる様な形状にしたり‥‥ですがあの練術師の方にそこまでの技術と知識ががあるかどうかが不安なんですよね」」

「ツルギ領の錬術師が何を得意としているかで此方の要望に答えられるかなどの不安は確かに残るか」

センやゲン・セイが言う事は当たってる。魔術庁に在籍してる者から『術学園(スクエラ)』の基礎教育課程だけしか学んでない者まで魔術師(錬術師)の練度や知識も千差万別だ。


「それはまぁ何とかなると思うぜ」

でも別に錬術店や錬術師はツルギ領にしかない訳じゃないし居ない訳じゃない。


「フツさんは優秀な錬術師の方をご存知なんですか?」

「直接俺じゃないけど多分見付かると思う」

「どうやって‥‥?」

「フツはお嬢さんに頼むつもりなのだ」

「カカカ、カーラさんに?」

何でそこでどもるんだよ。


「あのお嬢さんなら子爵様にお願いも出来よう」

「あいや‥‥とにかく錬術師の事はどうにかなると思うぞ」

ゲン・セイはカーラに言えば彼女が子爵さんに頼んで錬術師をどうにかしてもらえると考えてるみたいだが少し違う。俺はカーラ自身の伝手でナンコー領でもどこでも腕の良い錬術師を紹介して貰えるよう頼んでみるつもりだった。


「ではこれで魔具(クジキ)の方の問題は解決したで良いのだなセン?」

「まだです」

「まだ?他に何が問題なのだ!?」

「次から次と‥‥言えよ」

センが上司(ゲン・セイ)の出鼻を挫き俺は挫けずその問題を聞く。


「図面を見て貰った錬術師の方によると描かれている魔具(クジキ)は相当な魔力量が必要らしいのです」

「何世代もの前の魔具(クジキ)になるとそうかも知れん」

「そうなんです。五十年から四十年前の魔具(クジキ)の知識と技術は今ほどではなかったでしょうからね、魔力浪費を激しくせざる得なかったんだと思います」

「じぁ今の魔術知識で作り直せば大丈夫なんじゃねぇか?」

「そう簡単な事でもないんですよ。理論もそうですが魔力浪費を抑えた事で影響が出るとも限らないですし」

「では描かれている内容に忠実に再現したとしてどのくらいの魔核が必要になると思うのだ?」

魔核は魔力を宿す石の様なもので、見た目も色んな形や色をしており一匹の魔獣から一つの魔核が獲れ、魔核に宿っている魔力量も種類によって違いが有った。


「それも一度作成してからでないと何とも。ただ使用途中で魔核が切れるなんて事態になれば脳に損傷を与えかねないと思います」

「ふうむ、相当量の魔力を宿す魔核か。『キキョウ花』程ではないにしろ‥‥」

「そんな魔核を宿している魔獣ともなると討伐にも危険が伴いますから、これもかなり高価になるかと」

「まぁ頭が痛い話だけど‥‥」

不確かな図面や(ポーション)の生成記述、『キキョウ花』や魔核と金が掛かる素材、再現してもそれに手を加え治療に使える様にする、か。色々大変そうだけどここで諦める訳には行かないんだよな。


「全部の問題が解決したとして治療は出来るんだろ?」

「僕はそう考えてますが‥‥‥」

「おいおい、さっきまでの話は何だったんだよ」

「いえこの方法で治療は可能だ思います、まだ(まと)まっていないだけで」

「こういう時は整理するのだセン、お前の考える治療の流れを話してみろ。粗があれば解る」

「え~っとですね、初めにお見せした学会誌にあった実験を元に‥‥‥」

セン・ジュは時分がやろうとしている治療の手順を話し出す。


脳からの全ての信号を止め、その間の生命維持にはこれまで通りコセ・ポーションを使う。復活させ改良を加えた図面の魔具(クジキ)でどの機能が反応するのか確かめその回路を特定する。特定できれば生成した(ポーション)で直接信号を送りそれ定着するまで投与を続ける。これで一応機能が元通りになった事になるが四十年間寝たきりの身体は自力で動かる筈もなく、その為並行して栄養薬(ベン・ポーション)筋向上薬(マソ・ポーション)も投与する。


「聞く限り粗はなさそうだな、懸念はあるのか?」

「長時間に及ぶ治療は脳と内臓に影響が出る恐れが有るので治療は急がなくてはならないですね」

「俺とセンだけでは手が足りない事も考えられるぞ」

「治療に要する魔核やキキョウ花の量次第で子癪様の御負担も相当なものになるかと」

「治療が上手く行っても御嬢様達の御身体が健常者の様になるのは何年も掛かる」

「はい、流れた年月に戸惑われ精神にも影響を与えます」

「本当の意味での完治は先が長いか」

「残酷な現実が待っているでしょう」

2人が難しい顔をして話してる脇で俺は逆に元気になっていた。大体何を飲まされたか解らないまま症状を探り当て、その治療法に頭を悩ませるなんて、四十年も目が覚めない被害者達とその周りの者達からすれば目から鱗どころの話じゃない。乗り越える事は確かにあるけど治療が出来る道筋が見えただけでも奇跡と言って良いんだ。


「暗くなんなよ2人共、ここまで辿り着いただけでも凄い事なんだからよ」

「確かにもう後は条件を揃える事に集中すべきか」

「最後の問題が残ってます」

「まだ‥‥見過ごせん性分なのは解るが問題が多くは無いか?」

「すみません、でも本当にこれが最後で治療に関する事ではありませんから」

「何なんだ治療以外の問題って?」

()魔具(クジキ)って言ってたし治療の問題じゃなくて少しほっとする。


「被害に遭われたのは子爵様のお嬢様達だけではないと言う事です」

前言撤回!!

次回更新は、調子に乗ってまた連日の明日11/9予定にします。

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