①⑥②長い夜《希望の情報》
ふぁ~っと!ふぁ~っと!!お願いします笑
*魔具→クジキの間違いです。前回投稿分は修正しました。
「裏?」
紙の裏面には絵なのか図なのかよく解らないものが描かれており、なぐり書きの文字や数字の他に俺には判読出来ない記号の様なものが書き込まれている。
「書いてる字は読めるけど他は落書きに見えるぜ」
「どれ見せてみろ」
ゲン・セイに紙を渡すとまた眼鏡を掛けた。
「これは何かの設計図か?む、ポーションの生成に関するものも含まれているな。文章の方は‥‥所々消えている」
「ゲンさんには解るのか?」
「部分的にはだが」
「取り敢えず文章の方を読んでみてくれ」
「よし。『身体に刺激を与えるにあたりどの様な危険が起こるかは今の時点では未知数だ。その為心臓の動きに影響があった場合に備えてコセ・ポーションを随時投与する必要がある』‥‥それと『『心臓の機能が低下した患者へのコセ・ポーションの使用過度は副作用の危険性が有るが』、これはここまでしか無い。次が最後だが『このポーションを利用しながら』、で終わりだ」
「‥‥なぁセン、これで何が解ったんだよ?」
被害者達は副作用の恐れがあるコセ・ポーションを長年飲んでもそれらしいものは出ていない。俺はそれを辿ればどんな症状か解るかも知れないと院社を訪れ、センに副作用が出ないにしても徐々に服用量が増えるものだと聞いている。この紙に書かれているコセ・ポーションのくだりは気にはなるが消えている部分が有るので仮説の裏付けとは言い難く、こいつが確証として見せた理由が解らなかった。
「俺もフツと同意見だぞ。もう一つの学会誌は解るが、お前がこれを仮説の裏付けとしたのは何故だ?」
ゲン・セイも同じ事を思ったのかその紙をセンに渡しながら聞く。
「フツさん達が院社に来られた時‥‥」
「俺とカーラ?」
「あのお嬢さんはコセ・ポーションの事を聞きたいと言っていたな」
俺を見るので頷いたが話が見えない。
「そうだけど、それと【伝達症】とどう関係するんだ?」
「恥ずかしながらフツさん達にお聞きするまでコセ・ポーションの副作用に関する事をそれ程重要視していなかったんです。勿論関連している記述が有ったので他の資料と分けていましたが‥‥お話をした事でこの資料を見直す切っ掛けになりました」
「この内容をか?」
「見直すって言ってもこれだけじぁな」
「見直したのは記述では有りません、それ以外の方です」
センは俺が落書きに見えると言った部分を指差す。
「薬はゲンさんの言う通りで設計図は魔具のものです」
「センは魔具の事も解るのか?」
「フツさんが想像する様な知識は有りませんが薬を生成する為に必要な魔術は一応使えますよ。ですから図面に書かれている記号が魔術に使われる刻印と解ったんです」
まぁ記録を消されている四十年前の真階医も薬を生成出来たんだ、明解医の家に生まれ天才と評されるセンが出来ない筈がない。魔術も使う薬の生成が出来るなら設計図も魔具のものだというくらいは解るか。
「それで?」
センの知識を知っているゲン・セイは先を促した。
「薬 生成の記述で読み解ける部分を分析してみました。それで解った事はこれは体を癒す類の薬、いえもう何と呼んで良いのかも解りませんが‥‥」
「では何なのだそれは?」
「驚くべき事にこの液体は『信波画具』の様な力を発生させようとしたものみたいなんです」
センが言うこの内容を昨日聞いていたら意味が解らなかっただろな。でもさっき『光波画具』や『信波画具』の事を教えて貰ったお陰でこれを意味する事を理解出来た。
「それって」
「うむ。つまりは上手くすれば信号を発する事が出来ると言うのだな?」
「恐らくは」
「センは液体を何の為のもんだと思う?」
「紙の表に書かれていた内容を考えると脳や内臓の反応を引き出す為だと思います。ですが消えてしまっている箇所も有ったので‥‥正確にはまだ解らないですね」
「魔具の方は?」
「おいおい、センの魔術は薬に関するやつだけだろ」
「こいつが気になったものを放って置く筈は無い」
「はい。魔具の方はツルギ領に有る錬術店に図を見せて解る範囲で聞いて来ています」
錬術店は生活魔具の販売や修理に魔核の補充、持ち主の変更手続きなど行う店で専門家である練術師 (魔具を扱う魔術師) が居る。確かに俺でも気になって仕方ないと思うけど、既に持ち込んで情報を得ているなんて行動が早い。
「この図も消えている箇所が有るので全体像は解らなかったみたいなんですがお聞きした内容を鑑みたところ、これも液体と同じで『信波画具』の様な力を発生させようとするのもと思います」
「この魔具の用途は、お前はどう思うのだ?」
「恐らく体の外部から信号を送る為の魔具でしょうね。体の外から刺激を与えその反応で患部を特定しようとした」
「信号と刺激って同じ意味で良いのか?」
「はい。これを書いた人はまだ信号が解明されていない時代の方みたいですから刺激と呼んでいたんだと思います」
「‥‥それを四十年近い前に時代の者が考えただと?」
「まだ構想途中だったのかも知れませんが途轍もない人物なのは確かですね」
医者の2人は感動?畏怖?しているみたいだ。
「そんなに凄い事なのか?」
「凄過ぎます。用途がどうであれ魔具は『信波画具』の原型、いえもしかしたら五十年前に唱えられた理論はこれが元かも知れないんですよ」
「魔具の設計に薬の生成法をも書き記しているのだぞ、何者かは解らんがそれだけでも傑物なのは間違いない」
「この方は天才です」
天才が天才って言うんだからそうなんだろう、その紙を持ち上げたセンは俺達に向かって締め括る。
「初めに申し上げた通り脳のからの信号を止める実験、信号を発生させるかも知れない薬に魔具。これらは【伝達症】に繋がるもので、この症状にさせる事が可能だという証明ですよ。ですから確証と得たと言ったんです」
年代的にも重なり信号(記述は刺激)に関する資料なのは間違いない。実際に作成したのか解らないが、後年この人物が考え出えた理論で『信波画具』が本当に出来たのかも知れない。当時の真階医はこれらの論文や資料達に触れる機会は今以上に有った筈で、それを参考に被害者達に飲ませた薬を開発生成していたと考えるのが妥当だ。
「‥‥よくここまで調べ上げたものだ」
「本当だよ、俺が言うのもなんだけど有難な」
ゲン・セイもそう結論付け、俺はセン・ジュの執念に感謝した。
「いえ。信号に関する事を優先してしまったせいで時間が掛かってしまいました」
「十年分なんだから当たり前だと思うけど?」
「駄目です、もっと色んな方向から物事考えないといけません。まだまだですよ僕は」
「いやいやいや」
天才は自分に厳しい。
「お前の欠点は熱中し過ぎる所だが、それが無ければこの結論に辿り着けなっかた。誇れ!」
「何でそんな上から目線なんだよ」
「実際俺は権階医で上司だ」
「でもセンは明解医の家柄なんだから本来は口も聞けない相手だろ」
「だからこの機会に今の立場を楽しんでいる」
「正直なのは褒めるけど最低だなあんた」
「あははは、ツルギ領に居る限りはゲンさんに頭が上がりませんね」
被害者達に対する事柄で一歩前進した満足感からか軽口も叩ける雰囲気になっていた。
「それより【伝達症】の治療法ってどうするんだ?」
治せなければ意味が無いがセンの事だから治療の方法も並行して考えてくれてる筈だ。俺の質問にまた顔を引き締めて頷く。
「この紙に書かれている内容が治療法の手掛かりになると思います」
「再現するのだな?」
「はい」
「意味あるのかそれ、記述は抜けてるんだろ?」
「抜けている箇所は僕が新たに手を加えて補足ようと考えましたが、問題が有るのも確かですね」
「どんな?」
「素材に『キキョウ花』が必要なんですが、これが問題なんですよ」
「?」
聞いた事が無い花の名前でゲン・セイがまた横から教えてくれる。
「『キキョウ花』は開花時期が短い希少な花だ。花びらを触ると痺れると言われている」
「ゲンさんは触った事があんのか?」
「まさか。実物も見た事が無い。それと言うのもかなり値が張る花で医者如きでは手が届かん」
「かなりってどのくらいなんだよ?」
「う~ん確か金貨三十枚以上はするでしょうね」
「ぶ!!」
花に金貨三十枚?以上??
「金額もそうなんですが出回ってない事も悩みの種なんですよね、ゲンさんおの言う通り希少な花なので」
「ま、まぁそれは置いといてその『キキョウ花』が有れば再現出来るんだよな?」
「そう思います。あとは僕が生成過程で信号を制御させ特定の箇所に送れるようにしょうかと」
「それで脳からの信号を元に戻せるのか?」
「いいえまだ問題が残ってます」
「問題‥‥‥」
一歩前進からの先が遠いぞこりゃ。
次回更新は、書き溜めが少し出来たので明日11/8予定です。
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