①④⑧回復後のこれから
これからまた地味な展開になりますが、ドンマイ。
そして少しずつアクセス数が増えてるみたい‥‥‥気のせい??笑
「さっきのステトさんを利用する者が必ず現れるって話の後にこんな事言うのは気が引けるんですが‥‥‥」
カーラが遠慮がちに何か言おうとしているが俺は大体それの想像が付いていた。
「あれだろ、子爵さんの娘さん達とかに、だろ?」
「はい。ステトさんに協力して頂いたらもしかしてと思いまして」
「でもアレってビョーキかナニかじゃナイの?だったらムリだと思うヨ」
「え?それはどうしてですか?」
「こいつの治癒能力は病に効かないみたいなんだよ」
「ウン、オレサムくて調子悪いトキそのままだった」
「つまりステトさんの能力は外傷‥‥だけ??」
「はっきりは言い切れないけど、まさかわざと病に罹らせて試す訳にも行かないだろ」
それこそ俺達が彼女を実験するって事になる。
「‥‥‥すみませんステトさん、秘密しましょうと言ったばかりなのにそれ使わせてもらおうなんて」
「オレは別にイイんだ、ソレで皆んなが助かるならネ」
「俺もそれが怪我とかなら協力してもらうのも有りだとは思うぜ、でもあの若い真階医が言っていた【伝達症】って症状ならステトの能力でも治らないんじゃないかな」
信号を送る機能が送り先を変えたって事だから治すと言うより元に戻すだ。どうにもならなかったら最後の手段としてステトの治癒能力を被害者達に使ってみても遅くはない。
「そうですよね、私ったら虫の良い事言って。本当にごめんなさいステトさん」
「カーラだからイイ、気にしナイで」
「何だよカーラだからって」
「オレとカーラはフツのツガイになるんだから家族も一緒じゃん」
「ここでそれぶっ込むなよ」
「ふふふふふ」
何で笑う?まさかとは思うがカーラはそれで良いのか!?
でも俺達3人の距離は今まで以上に近付いた気がする。
「また以前の剣闘士にさせられるとか、見世物にされるとか‥‥」
「ウエ~、キズが治るのもイイコトばかりじゃナイね」
「ええ、ですから」
それからステトはカーラに治癒能力の悪用例を説明され、やはり知られないに越した事は無いと再認識したようだ。
ガラガラ
「良かった、お気付きになられましたか」
『造血薬』を手に入れる為に奔走しくれていたデンボは、カーラと一緒に集落に戻って来ていて夜中にも関わらず食事を持って来てくれた。
「デンボさんのお陰で助かったよ」
「とんでもありません。ステトさんがずっと側に付いて下さりカーラさんが院社に行って下さったからです」
「皆のお陰なのは解ってるけどそれはデンボさんもさ、有難な」
「はい。どういたしまして」
改めて礼を言うとデンボは頷き素直に受けてくれた。
「それでお体の具合はどうですか?」
「かなり良くなったと思う」
「食欲は?」
「腹は減っ‥‥ってこれデンボさんが作ってくれたのか?」
「弱った身体に丸焼きは良くないと思いましたので、私が少々手を加えさせて頂きました」
「加えたどころの話じゃないだろこれ」
鬼人族が用意してくれる食事の殆どが肉を丸焼きにした野性的なものだったが、デンボが持って来てくれたのは細かく切り分け柔らかくなるまで煮込んだ肉入りのスープで、奥さんの手伝いに慣れてるからか男の料理にしては手が込んでいる。
「お口に合えばよろしいのですが、どうぞお召し上がり下さい。カーラさんとステトさんもどうぞ」
「有難うございますデンボさん、頂きます」
「アリガトー!」
「有り難く頂戴するよ」
カーラとステトも俺の看病で食事を取っていなかったらしく、夜中にも関わらずあっという間に全て平らげた。食後の茶を飲んで一段落するとデンボが居るのでもう大丈夫だからと言い、女性陣は客屋内の別の部屋で休んでもらう事にした。そうしてデンボと2人になったところで子爵さんの事を聞く。
「子爵さんが族長の所に行ってどのくらい経つ?」
「フツさんが出掛けて直ぐに行かれましたから‥‥半日以上です」
「その森屋敷って遠いのか?」
「南北の狩場の間としか、詳しくは存じ上げていません」
「戻って来てないんだな?」
「はい」
「シデさんとあの馬鹿兵長が一緒だから大丈夫と思うけど‥‥」
「キョウー様は山には入れません、ですからシデさんと領兵3名が御一緒と言う事になります」
「入れない?何で?」
「それは‥‥」
デンボはキョウー・ホウが四十五年程前に族長の所に乗り込み、喧嘩になって大事な笛を折った罰として森に入らない約束をさせられてる事をなど教えてくれた。
「子爵さんの親父さんの葬式に来なかったからって、やっぱり馬鹿だ」
「否定しませんが今でも約束をお守りになっていらっしゃるのは感心します」
「どうせ子爵さんがさせたんだろ?その約束をさ」
「恐らくそうでしょうね」
子爵さん愛が重いぞあいつ。
「その折った笛って族長にとって一体何なんだったんだ?」
「‥‥‥キョウー様が仰っていたのは鬼人族の先々代の族長が‥‥魔王から譲り受けた笛だと」
「魔王?魔王って『魔領ウネ』に居るとされるあの魔王!?」
「はい」
「まぁ山の向こうの何処かに魔領が有るって言うし、入れなくなっても文句言えねぇか」
「は?そんな簡単に信じるんですか?」
「何で?デンボさんは信じないのか?」
「正直半信半疑です‥‥私でもそうなんですからフツさんは人族でしかも王都出身、当然絵面事ととしかお考えにならないのではと思っていました」
「はははは、意外だって?」
「失礼ながら、はい」
「本当に魔王が居るかなんて実際会うまで解らないけど、居てもおかしくないと思うぞ」
「それはどういった理由で?」
「例えばこの国、『ワヅ王国』の王が居るだろ?国の王だから国王なんだよな。『魔領ウネ』が本当に有るのか、そこが国なのかは置いといて、集団の長が王と名乗って『魔領の王』になって魔王と呼ばれるのは自然な事だと思うぜ?ましてこの鬼人族達も、馬鹿兵長みたいな半族もかつては魔族って扱いだって聞いてるし、魔族が居たならその長はまさしく魔王じゃねぇか。人族は信じないんじゃなくて、自分達より遥かに寿命が長い種族に実感が湧かないんだと思う。だからそんな大昔の事は「物語」とか「伝説」とかに言い換えて誤魔化してるんじゃないかな」
俺はと言うと【戻りし者】で異世界を経験したからどんな事でも有り得ると思うようになっている。それに『辺境自治領ミネ』とその領主タミ・イワ方伯も魔領に負けず劣らず謎が多いが存在している事は確かだ。
「馬鹿兵長は森には入れないから除外して、シデさんと3人の領兵とで半日以上か」
「ヒラ様が子爵様に何かしたと?」
「そうは言わねぇけど、心配はしてもし過ぎる事は無いだろ」
「‥‥‥はい」
「よし、朝になったら俺が族長の、その森屋敷ってのに行って子爵さんの様子見て来る」
「大丈夫なのですか?御無理なさってはカーラさんとステトさんが御心配なさりますよ」
「子爵さんはステトの為に行ってくれたんだし、それにもうその必要は無いって教えなきゃさ」
「それでは私が参ります」
「族長をぶっ飛ばすって言っちゃってるからな、俺が行くさ」
「ぶっ飛ばす、ですか‥‥ははは、本気だったんですね」
「当たり前だろ?それよりまたデンボさんに頼みたい事がある」
2人は嫌がるかも知れないが仕方ない。
「ふあぁ~」
軽く寝て朝早く起きた俺はまだ眠っていた女性陣2人を置いて1人客屋を出る。
「ステトのあれはとんでもないけど薬も流石の効果だぜ」
『嵩狼』に噛まれた傷が塞がってなけりゃ失血でどうなっていたか解らない。いやきっと死んでいただろう、それに薬が無ければここまで回復はしなかった。
「あれが昨日の出来事だなんてな‥‥‥おっと、急がないと2人が起きるか」
俺は自分が森屋敷に向かう間、デンボにカーラとステトを説得して先に子爵さんの屋敷に連れ帰ってくれと頼んでおいた。そうでもしないと病み上がりの俺を心配して付いて来ると言い兼ねない。集落に居てる限り族長が現れて今度はカーラを狙うか別の何かをやらかすか、ステトもまた同じ目に遭う可能性も無くはない。避けれる危険は避けておくべきだし、俺を狙うんだったらそれは願っても無い事でぶっ飛ばす良い機会だ。
「居ねぇな、何処だよ‥‥お」
井戸で体を拭いている所を見付け声を掛ける。
「おはようさん」
「もう動けるのか」
「お蔭さんでな、鬼人族達にも礼を言うよ」
「オイは何もしてない」
「そうだとしてもさ、集落で休ませて貰って世話になったんだ」
「‥‥何の用だ?」
「それより服着ろよ、見てて自身失くす」
探していたのはヒウツで、筋骨隆々の上半身に少しだけ嫉妬した。
次回更新は、10/11か12予定です。
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