①④⑥近付いた想い
やっと想いを告げたって、色恋は添え物とは言えここまで時間が掛かり過ぎる!!
まぁでもこれで一歩前進出来ました笑
「お前が獲物か」
「冗談じゃないよ、アタシがあんな罠に掛かる訳ないじゃないのさ」
食料の調達に出ていた領兵の1人エジが連れて来たのは鬼人族の族長ヒラ・ヨスタの姪シデで、猪を一匹担いでいた。
「ワタシの仕掛けた罠に猪が掛かっているのをシデ殿が見付けてくれたのです」
「あのままにしてたら魔獣が先に食っちまうからね」
「それは手間を掛けさせたな」
「何てことないよ、ついでさね」
「ワタシは猪を捌いて来ますが宜しいですか?」
「あぁ頼む」
猿人のエジが猪を受け取り、引き摺ってその場を去るとシデに問い掛ける。
「しかし何しに来たのだ?よもやマギ達の世話ではあるまい」
「領主、アンタの勝ちだよ」
「勝ち?」
「ステトを自由にしたよ」
「‥‥‥何故心変わりをした?」
「ステトとあの人族、フツがね」
「フツ?」
「集落の娘を助けてくれたのさね」
「どう言う事だ?フツは山には入っておらん筈だが」
「その娘が『嵩狼』達を怒らせたのさ」
「達だと?『嵩狼』が群れるなど聞いた事が無いが‥‥いや待て、まさか山を下りて来たと言うのか!?」
「そのまさかさね」
麓まで追って来た『嵩狼』達を、ステトとフツが食い止めたお陰でその娘ばかりかヒウツまでもが助かり、その時の戦いでフツが傷を負ったなど、シデが話してくれた。
「それでフツは、フツは生きているのか!?」
「アタシが知ってる限りじゃ死んじゃいない、でもまだ意識は無かったね」
「命さえ助かっているなら何とかなるだろうが‥‥」
集落に残したデンボが薬を手配する筈だ。
「集落の娘が狩場の決まりを破ったのが原因みたいでね、やっぱり決め事にはアタシ達が知らない魔獣の何かがあるのさね」
「魔獣の生態は謎が多いから解るが、狩場の掟の理由はお前達鬼人族でも知らないのか?」
「この山々も謎が多いけどね、掟の事は族長達しか知らないんだよ。それより領主、ヒラ様は何処に居るんだい?」
「向こうの部屋だが、お前が何を言おうが譲らんぞ」
「‥‥一体ヒラ様に何をしたんだい?」
「自分で見るがいい」
そう言ってヒラを寝かせてある部屋にシデを案内する。
「これはどういう事さ」
「見ての通りだ」
今度は私が森屋敷に着き、ヒラがマギに己の血を注ぎ込んでいるの見てそれを止めさせた事、意識を失っているところを拘束したなどを話す。
「今をおいてヒラを大人しくさせる機会は無いと思ったのだ」
「‥‥‥ヒラ様はこうでもしないと話を聞かないかもね」
「お前達はフツ達の行動で心変わりしたのではないのか?」
「勿論それはあるさね。でも誤解しないでおくれ、心変わりじゃない」
「では何だ」
「元々間違ってる事なのは解ってた‥‥‥でもヒラ様の気持ちを考えるとね、馬鹿だったよ」
「では言葉を変えよう、何故ヒラのその思いを差し置くようになった?」
「‥‥‥‥‥生きて欲しいからさ」
「己の身を削っているのは見て解ったが、それでヒラが死ぬと?」
「入れ替える程の血を、それを何回もなんていくら何でもでも持たないよ」
「血を入れ替える?マギの血を自分の血にか?」
「そうさね」
「それを何回もとは、ヒラは何時からこの様な行いをしている?」
「院社が締め出した頃だね」
「では十五年‥‥」
「言われなくてもヒラ様が狂ってるのは解ってるさ」
「‥‥‥」
哀し気な目でヒラを見るシデの肩に手をやる。
「聞くがヒラの血に何か特別な力など本当にあるのか?」
「そんなものは無いと思うよ、でも寿命は関係してると言われているね」
「それは別にヒラに限った事では無いだろう?」
「直系だった昔の族長達の寿命は五百年だったらしいんだ、その血を受け継ぐ傍系のアタシ達も他の皆よりは多少長いのさね」
「それはどのくらいだ?」
「五十年かそこらだろうけどね」
「マギも傍系だ、ヒラの血と変わらんと思うが?」
「少しでも濃い血をってさ。藁をも縋る気持ちは領主、アンタも解るんじゃないかい?」
「‥‥では最後に聞く。私はヒラがナサを求めるのは後継者としてではなく、ナサの血そのものだと考えてる。それについてお前はどう思う?」
「否定したいけど‥‥今のヒラ様じゃ出来ないね」
「許されん事だというのは解っているな?」
「当たり前さね。アタシも皆もそれほど落ちちゃいないよ」
「明日私は戻るがお前はどうしたい?言っておくがヒラの拘束を解く訳にはいかん」
「こんな姿を皆に見せられない、アタシが残って面倒見るさね」
「お前が解くつもりではないだろうな」
「それをしたらまた間違いを犯すよヒラ様は」
「‥‥解った、お前を信用する。だが1人では手が足りまい、兵を何人か残そうか?」
「アンタが戻ったらフゼかヒウツを寄越しておくれ」
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「フ、ツさん‥‥う”う”、こんな、フツさん‥‥」
誰だ?
誰かが枕元で俺を呼んでいる?いや泣いてるのか?ステトはずっと俺を看病してくれ疲れたみたいで隣で眠っている。てじぁ今居るのは誰なんだ?
「よ」
意識がはっきりすると泣いているのはカーラだと解り、俺は声を掛けようと肘を付いて体を起こそうとした。今までより体に力が入るのは、デンボが人族の誰かに頼んで院社で『造血薬』を手に入れてくれたからか。
「カー、ラ」
口が乾いてるせいで声が擦れる。
「フツさん!」
「私、こんな事になってるなんて、知らなくて、すみません、本当にすみません‥‥」
「起こ、してくれるか」
「あ、いえ、でも」
「俺はもう、大丈夫だからさ」
「‥‥‥はい」
そう言って彼女を顔を見るとその目は腫れていた。
「『造血薬』はカー、ラが?」
「は、はい。デンボさんが戻って来てフツさん達の状況を教えて貰いました」
「そうか、有難、な」
「そんな、フツさんが危険な目に遭ってると言うのに、私は、私は」
「待って、てくれ、って言ったのは、俺だよ」
「でも」
「来てくれたん、だ、もう気に、すんな」
「でも」
「水、取ってくれ」
「あ、はい」
「んぐんぐんぐ」
力が入る様になったので今度は1人で飲める。
「ふぃ~あーあー、よし、やっと真面に声が出たよ」
「大丈夫ですか?まだ無理をしないで下さい」
「流石に走ったりしないさ、でもお陰でかなり回復したと思う」
「良かった、です。フツさんが無事で、本当に、良かったです」
「ステトに救われたよ」
隣で眠ってる彼女を見て言う。
「‥‥‥ステトさんに比べて、私は」
「おいおい、そんな意味で言ったんじゃないぞ。カーラはカーラで助けてくれたじゃないか」
「でも、肝心な時に‥‥」
「伯爵さんも言ってただろ、適材適所だよ」
「フツ、さん」
カーラは思い詰めたように俺の名を口にした。
「好きです。今言う事じゃないのは解ってますが、今言わないと、これ以上‥‥」
「‥‥‥」
「何、か無いんですか、その、私の事」
「いきなりだなと思ってさ。カーラが今それを言ったのはステトの事で焦ったんだろ?」
「解り、ますか」
「ステトは俺にとって特別な存在だけど、それでカーラが焦る必要無いぞ」
「‥‥‥」
「え~っと、返事だよな、俺もそう思ってる、と思う」
「‥‥本当に?」
「ああ、こんな言い方になるのは勘弁してくれ、柄じゃ無いんだよ」
「嬉しいです‥‥‥でもステトさんは」
「ステトへの感情は俺自身よく解ってないんだ。女としてなのか、相棒としてなのか、だからどっちかを選って言われても今は到底出来そうにない。狡いのは解ってるけど、だからって張り合わないでくれ」
「私じゃステトさんに勝てません」
「おいおい、俺の気持ちは伝えただろ」
「でも‥‥ステトさんが、その、それはそれで‥‥」
「あいつの気持ちを考えてくれてるんだ?」
「‥‥はい」
「ははは、カーラはややこしいな」
ガバッ
「きゃ!」
寝ていた筈のステトが不意打ちでカーラに抱き付く。
「だーかーら!オレ達2人共ツガイになればイイって言ってるじゃん!!」
そして空気の読まなさを炸裂させた。
次回更新は、10/7予定です。
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