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①④②危機と平穏

無敵じゃないのを出せて良かった!!

そして片や恋愛話‥‥苦笑、この温度差も無理矢理先に繋げてやります。

「ギャガァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」

「来るぞ」

「オレも短剣(コレ)でやってみる!」

無傷の『嵩狼(グラーポ)』が雄叫びを上げながら突っ込んで来た。


「これで打ち止めだっ『アサルト』!」


パパパパパパパパパパ!!!!!!!!


「ギャガァギャオギギギギギオオオギャギャ!」

「ソレ!!」

「ガァ~~~~!!」

連射(フルオート)の【アサルト】が全弾命中し、よろけた隙にステトが首元に短剣を刺し込む。


「おら!」

すかさず俺もナイフで胴を斬り付けた。


「くそ、頭に当たらなかったな」

「ギギオオ。オオ、オグ~」

「でも弱ってるヨ」

頭に当たってれば殺せたのに。とは言え体に十発分の穴を開けられ、首に刺し傷、胴から尻にかけて切られたんだ、死なないまでも暫くは動けないだろう。


「‥‥これだともう大丈夫か」

「ウン」

「行こうぜ」

弱った『嵩狼(グラーポ)』をそのままに、俺達は鬼人族の集落に向かって歩き出す。


「ナニしてんのフツ、早く!」

「そこは容赦無いなお前」

人族の俺がこんな凸凹した道を早く歩けるかよ。ステトは俺が迎えに来た事と、無事にトメを救い出した事に気分を良くしたみたいで足取りが軽く先に行っていた。


「?」

何かが動いたのか、落ちたのか、気のせいかも知れない気配を感じて後ろを振り返る。


「え?」

弱っていた筈の『嵩狼(グラーポ)』がいつの間にか俺の真横まで移動していた。


「キャァ!!フツ!!!!」

「くっ、うりゃ!」

ステトの叫び声で我に返り、一本のナイフを抜いて魔獣の片目に刺し捻じって引っこ抜く。


「ギャァァァァァァァ!!!!」

「今だヨ!離れてフツ!!」

「おし!」

嵩狼(グラーポ)』は片目をナイフで抉られたからか、一瞬俺から距離を取る。その隙に逃げようと走り出した。


「ガギャァァァァァァァァァァァァ!!」

「うぐぁ」

「イヤァーーーーーー!!!フツ!!!」

「ギャァァァァァァァ!」

「手前ぇ、放しやがれ‥‥」

嵩狼(グラーポ)』はそれを許さず俺の左肩に噛み付き咥えたまま振り回すと、言葉を理解したかの様に放り投げた。


「あがっ!」

そして地面に叩き付けられ、一瞬意識が飛ぶ。


「フツ、フツ!!」

「逃げろ、ステト、逃げろ」

「イヤだヨ!!置いてナンか行けナイ!!」

ステトが俺を抱え込んでいるみたいで朦朧とした意識の中、不思議と彼女の声ははっきり聞こえた。


「馬鹿野、郎、行け、頼む、行ってくれ」

「ヤダヤダヤダッヤダ!!!!!」

俺の顔にステトの涙が落ちるのが解り、目を開けると肩からの出血が酷いみたいで彼女が俺の血で染まっている。駄目だこのままじゃ彼女も危ない。


「く」

「動かナイで!!」

「ギギオオオオ、オグ~、グ?」

「お、かし、いぞ」

どうなってんだ?霞む視界に『嵩狼(グラーポ)』の止まってる姿が入る。ステトは俺を庇い抱き付いたままで気付いていないが、この魔獣は何か、誰かに気を取られているみたいだ。


「どうなってやがる、俺っちが子爵に怒られるじゃねぇか」

あの声は馬鹿兵長のキョウー・ホウ?何であいつが?


「う」

「フツ!フツ!」

そこで俺は意識を失った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「森に入れねぇんだぞ、待つだけか~」

子爵の言い付けじゃなきゃ絶対に行かないぞ俺っちは。子爵はああ言うけど、あの生意気な人族野郎なんて放っときゃいいんだ。まぁあ、俺っちを見て珍しいだけで化け物じゃないって言う辺りは許せる。うん、でもそれだけだ。


ヒラのオヤジもウジウジしやがって、いつまで被害者顔してるんだか子爵を見習え子爵を。今は俺っちも兵長って立場上『子爵』って呼んでるけどな、それまでは『ハヤっち』て呼んでたんだぞ。そのハヤっちを『ハヤ』って呼び捨てにするヒラのオヤジめ、まだシデとかの『領主』の方がマシだ。長生きする種族って何でこう偉そうなんだ?頭も固いしよ。種族の存亡とかしきたりとか、ホントくだらないぜ。


子爵は、ハヤっちは俺っちの親友だ。ハヤっちのツルギ家は代々『魔族』と呼ばれていた俺っち達『半族』を対等に扱ってくれた。長寿種に対してありがちな変に崇めたり、逆にこの見た目から蔑んだり、怖がったり、全くそんな事をせず普通の隣人のように。だから爺ちゃん達も気に入って決めたんだ、ツルギ家の者達は俺っち達『半族』が加護するって。


長生きすると良い事ばかりじゃない、世界は変わり、知り人は先に死んで行く。ハヤっちも気が付けば人族で言う高齢になっちまった。この先どれいくらい一緒に過ごせるだろうか。


「ヒウツか?」

前から鬼人の男が肩に女?を担いで走って来る。


「人さらいみたいだぞヒウツ」

「‥‥‥お前は、何してるキョウー。山に入れん筈だぞ」

「んな事解ってる、だから此処に居るんだろが。それに俺っちは約束を守る男だぜ」

「悪いがこれ以上問答してる暇はない、急いでいる」

「待てよ、それが探してた鬼人の娘か?」

「そうだ」

「ヒラのオヤジが留め置いた獣族の娘は?あとその仲間の人族の野郎は?」

「『嵩狼(グラーポ)』とやり合っている」

「何だと?獣族と人族に任せてお前は何してんだ?」

「オイはこの娘を届けて戻る、だから急いでいる」

「情けねぇな、鬼人族も落ちたもんだぜ」

「森を出て来た『嵩狼(グラーポ)』の群れを人族の男が殆ど1人で倒した」

「‥‥‥嘘じゃないよな?」

「行けば解る」

「ヒウツ」

「何だ」

「ヒラのオヤジがどう言おうが猫娘は連れて帰るぞ」

「オイは‥‥もう何も言わん、勝手にしろ」

そしてヒウツは走って行った。


「あのヒウツがヒラのオヤジの言い付けに背く?」

一言目には『族長』ってのがヒウツの野郎だったのに、どういう風の吹き回しだ?


それに『嵩狼(グラーポ)』が群れで森を出た?あの魔獣は単独行動を好み滅多な事では森を出ない、普段は山の腹辺りで生息している。色々会得しない事ばかりだが、一番は人族が1人で倒したって事だ。あの生意気な野郎が?『魔術』使いか?そんな芸当出来るような男に見えなかったぞ?


「はん、ヒウツの奴も耄碌(もうろく)したか」

どうなってるのか解らないが、その2人を連れて帰る子爵の言い付けは守らないと、怒られる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「どうしたのカーラさん?」

「え?あ、いえ何でも有りません」

ハヤ様のお屋敷で夫人のキリ様とお茶を頂いていると、声を掛けられ自分がぼうっとしていた事に気が付いた。


「気になるのですなお嬢様」

当然と言っていいのかナサ様も同席している。


「カーラさん達のお仲間の女性の事?それともフツさんの事?」

「フツさんですか?」

「うふふふ、私の目は誤魔化せないわよ」

「そんな」

「不思議な魅力が有るわよね彼、良いじゃない身分なんて気にしなくても」

「ぬ?お嬢様がフツに懸想されてると?」

「いやねぇナサちゃん、近くに居て気付かなかったの?」

「真ですかお嬢様?」

「私は‥‥」

何かもう自分の想いを黙ってるのが馬鹿々々しくなっていたが、ナサ様にこんな事言うのも気恥しい。


「俺は賛成ですぞ」

「え?」

「あら、そうなの?ナサちゃん」

「まだ知り合って日は浅いですが、あの男は見所が有り申す」

まさかナサ様が色恋話に乗って来るなんて。


「じゃ問題無いんじゃない?カーラさんが領主で彼がそれを支えたら」

「実はお嬢様、俺はフツに奥方が今申された事と同じような話をした事が有るのです」

「は?」

「本当に?ナサちゃん?それでフツさんは何て?」

「は、お嬢様と一緒になれば上に立つ事になるので、俺を使いこなせる自信が無いなどと」

フツさんは今でも十分ナサ様を手玉に取ってると思う。


「クスナ卿は?御父上はフツさんの事は何て?」

「お父様は賛成みたい、です」

「平民でも良いって仰ってるの?」

「ええ、それは気にしていません」

何でいきなりこんな話になったんだろう。


「まぁ!素敵じゃない!」

「主がそうでは決まりで御座るな」

「それはまだ、解りません」

今日帰って来るのか、来ないなら何か起こったのか、フツさん達が鬼人族の集落に行って苦労してるかも知れないのに、私達がこんな事で良いのかしら?

次回更新は、9/29予定です。

読んで頂き有難う御座います。

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