①④①相棒との邂逅
久し振りに同じ場面で登場、動きも『力』も出て来て~直ぐに終わる、的な。
だってそんな頻繁に争ってばかりいたら敵ばっかり作ってしまう、敵な。笑
「ありゃ一体どう言う状況なんだ?」
山から出て来た複数匹の『嵩狼』って言う魔獣をステトが追い掛けていた。
「ステトは囮になったんだろ?」
「だから此処まで来れた」
「じぁ何で逆になってんだ?」
「『嵩狼』の狙いはトメなのかも知れん、だから山を出て来たのだ」
「何でトメが狙われるんだよ?」
「説明している暇は無い、来るぞ」
その光景に目を奪われてる間に『嵩狼』達がどんどん近付いて来る。
「おい、これってヤバいんじゃないのか!!」
「オイが引き止める、お前とステトでトメを頼む」
「待て待て、無理言うな。それにもう間に合わねぇよ!!」
人族の俺が餓鬼とは言え鬼人のトメを担いで逃げ切れる訳が無い。
「フツ!オジさん!逃げて!!!」
『嵩狼』達の後ろに居るステトが俺達に気付いたようで叫んだ。
「何処に逃げろって?」
全力で走りながら俺達に向かって叫んでるが、山の麓は見晴らしのいい場所で隠れる所さえ見当たらない。
「くそっ、あんたとトメは伏せてろ!」
「何をするつもりだ?」
「迎え撃つに決まってるだろ」
「人族のお前では無理だ、それならオイがやる。その隙に逃げろ」
「どの道俺達が逃げても狙いがトメなら襲って来るさ」
「む‥‥お前は何か手立を持っているのか?」
「いいから早く何処かに伏せろ、巻き添え食っても知らねぇぞ」
訝しんでいるヒウツを置いて向かって来る『嵩狼』達とステトの方へ走り出す。
「横に逸れろステト!『セミ・アサルト』!」
バシュ
「ギャガァ!!」
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギャオ!!」
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギャ!」
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギオ!」
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギャギャ!」
一直線に向かって来る『嵩狼』達は良い的だ、【アサルト】をただ前に向けて放つだけで命中する。
「フツ!」
『嵩狼』が後ずさった隙にステトが脇をすり抜け、俺に辿り着くと抱き付いて来た。
「大丈夫か?」
「ウン!!」
「まだ終わってないぞ」
「ナニが?」
「ほら」
「イタがってるダケ?」
「ああ」
【アサルト】が命中してもそれぞれ一発でしかない。あんなでかい魔獣の『嵩狼』達には頭とか急所に当たらないと限り死なないだろう、しかし一瞬怯んだようで『嵩狼』達が、今度はゆっくり慎重に俺とステトの前で様子を伺っている。
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギャガァ!!」
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギャオ!!」
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギャ!」
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギオ!」
「『セミ・アサルト』!」 バシュ 「ギャギャ!」
更に警戒心を持たせる為また【アサルト】を放った。
「ギャガァ~」「ギャオ」「ギギギギ」「ギオオオ」「ギャギャ!」
「ドーするフツ、まだ動いてるヨ?」
「単射の【アサルト】じぁな」
「セミ?ナニそれ?」
「後で教えてやる、見ろよ『嵩狼』達が集まったぞ」
得体の知れない攻撃を受けて、案の定5匹の『嵩狼』達はお互いを守るように固まって警戒している。
「『RPG』!!」
「ギャ?」「ギャオ!!!」「ギ!?」「ギオオ!」「ギャ??」
光の線が真っ直ぐ『嵩狼』達目掛けて飛んで行く
ドォゴーーーーーーーーーン!!!!!!!
そして集団のど真ん中に命中し爆発した。
「ゴホゴホ、久し振りに見たネ。フツのソレ」
「それだけ危険が無かったんだ、良い事じゃねぇか」
「殺ったかナ?」
「流石に死んだだろ」
舞上がった土埃で前がよく見えないが、あれを喰らって生きてるとは思えない。
「『嵩狼』の素材でも回収してみるか」
「またグチャグチャになってるんじゃナイ?」
「だったら魔核だ」
「エヘヘヘヘ、フツ」
「何だ?」
「ン~久し振り~」
「ぐ」
ステトが笑って抱き具合を強いものにするが苦しい。
「迎えに来てくれたんだネ!!」
「まぁ、まぁ、まぁ、相棒だからな」
「ウレシイ!!」
「ぐえ」
久し振りの感触、この爆乳の威力は【RPG】以上だ。
「ヤッパリ」
「魔核を見付けるのも一苦労だぞこりゃ」
それから【RPG】で出来た穴に近付き、『嵩狼』が死んでいるか慎重に確認する。予想通り重なり合って全滅しているみたいだが、以前『エリュマントス』と言う猪の魔獣に【RPG】使った時と同じく死骸は見るも無残な状態だった。
「大体魔核が体の何処に入ってるのか知らないんだよな」
「魔獣によって場所もカタチも違うみたいだヨ?」
「勿体無いけど諦めて戻るとするか」
別に食い物でも無いし。
「おい」
ヒウツが何処からともなくやって来て、穴から出て来た俺に聞いて来る。
「‥‥何だ今のは?」
「あ!オジさん!!」
「人族、お前は『魔術師』か?」
「フツだよオジさん」
「アレは一体何だ?」
「俺の、奥の手ってところかな」
「奥の手?」
「あんたみたいな危ない奴の為だよ」
「‥‥‥」
「『嵩狼』とオジさん、ドッチもドッチだネ」
「‥‥オイを魔獣と一緒にするな」
一瞬沈黙が流れ、ステトが『力』の事を誤魔化すように場を和ませてくれた。
「ところで何で囮になったお前が追い掛けてたんだ?」
「だって急にオレをムシしてオジさん達の方へ行ったから、ソレを教えなきゃと思ったんだヨ」
「じぁやっぱり狙いはトメか」
「狩場の決まりを破ったからだ」
「トメは無事?」
「無事だがステト、無茶をしてこの馬鹿者」
「ゴメン。でもホッとけなくて」
「お陰で助かった‥‥ステト、人族‥‥フツ、感謝する」
「ウン!」
「おおう」
ヒウツに礼を言わるなんて、何か調子が狂う。
「お前はこの場所を知らん筈だが?」
「フゼさんに此処まで案内してくれたんだ。あんたの奥さんだろ?麓辺り見回って来るって言ってたから合流するか?」
「いや、いずれ皆で集落に戻る筈だ。オイ達は戻る」
「トメの具合は?」
「幸い傷は軽かった。だが逃げ回った疲労が酷い」
「じゃ戻って介抱してやろうぜ」
「それが済んだら説教をする」
「それは俺達に関係ねぇけど、程々にな」
「泣かしたらダメだヨオジさん」
「オイがしなくても女達は知らん」
確かにシデさんやフゼさんの雷は凄そうだ。
「待て」
ヒウツが『嵩狼』達の残骸に何か合点がいかないみたいで呼び止める。
「何だ?まさか魔獣の解体とか魔核の取り方とか教えてくれるのか?」
「オジさんは慣れてそう」
「違う」
俺達がそう言うと首を横に振った。
「おかしいぞ」
「ナニが?」
「此処にいるのは‥‥五匹だ」
「こんな残骸で解るのか?」
「頭を見ろ」
確かに胴体部分はバラバラで解り辛いが頭は五つ有った。
「でもステトを追い掛けて来たのはこれだけだぞ?」
「オイ達を襲って来たのは六匹だった」
「ホントだ、一匹居ない」
「はぐれたか逃げたんじゃないのか?」
「オイも『嵩狼』の群れを見たのは初めてだ、はぐれたりするものなのか解らん」
「‥‥‥フツ、オジさん」
小さな声でステトが俺とヒウツに声を掛ける。
「アレ」
続けて彼女が目を向けた先に無傷の『嵩狼』が一匹、俺達を睨んでいた。
「ヒウツさん達は行け」
「トメが狙いなら無駄だ」
「今は違うみたいだヨ」
ステトの言う通り、その『嵩狼』は明らかに俺を睨んでいる。
「仲間を殺った俺を狙ってるんだろ」
「これでオジさん達を追い掛けない?」
「そう思う」
「行ってオジさん、オレ達はダウジョウブ」
「‥‥‥娘を置いたら直ぐに戻る」
「ああ、それで良いよ」
さっきと違ってヒウツはすんなり受け入れ、ゆっくり後ずさって俺達から離れて行き、距離が空くと走り去って行った。
「でもフツの『力』はもうムリなんじゃナイ?」
「知ってるくせに、よく大丈夫とか言えたな」
ステトには一日一回しか『力』は使えないと言ってある。
「一匹くらいならナンとかなると思ったんだヨ」
「お前はそうでも俺は人族だ」
「フツならヘーキ」
「何だよそれ‥‥まぁ『力』もちょっと改善されたし、何とかなるかもな」
「『力』のカイゼン?」
「後で教えてやるけど、それよりだ」
待ってる時に調子に乗って無駄に弾を使ったせいで【アサルト】はもう十発くらいしか撃てない、『嵩狼』に単射であれ連射であれ急所に当てられるかが問題だ。
「ステト、いざとなったらお前も逃げろ」
「え?ヤダよ!!」
「お前はそう言うと思ったけど、2人で殺られる必要は無いんだぞ」
「オレは治るから!」
「そうなんだけどさ、俺の気持ちの問題なんだよ」
彼女の治癒能力はまだ謎が多く、治るからって傷付く姿を見せられるのは良い気分じゃない。
次回更新は、9/27予定です




