①④⓪動き出す時間
やっと相棒と会える。
エピソードの最初の方から手直ししてますが、何か、酷い。苦笑
「おっとっと、この辺で止めとかないと無駄使いになるか」
『力』の新しい使い方の発見につい調子に乗ってしまい、十回撃ってしまっていた。
「悪気は無かったんだよ」
無駄に穴を開けてしまった木に謝ったが、こんな所を誰かに見られたら頭がおかしい奴と思われるかも知れない。でも【アサルト】を単射で分けて出せる事が解って、かなり融通が利くようになった。もしもの時はきっと今まで以上に役に立ってくれると思う。
「『呪い』って言うのはもう止めるか」
最初にこの『力』を出せたのは偶然で、独り言の中に【アサルト】が入ってたからだった。『呪い』と言っていたのは、俺が【戻りし者】で飛ばされた世界で殺された武器だからだ。それがいつの間にか自分を救う手段の一つに成ってるなんて、皮肉としか言いようがない。
「先輩はどんな経験したんだろうな」
俺とより先に、十五年前に【戻りし者】を経験した『辺境自治領ミネ』の領主タミ・イワは『力』を持っているのか、持っているなら俺と同じように自分が殺されたそれが『力』となっているのか、やはり知りたい事が一杯ある。
「聞いてどうするって言われたら、それもそうなんだけど」
そうなんだ。知ってどうする?ああ、そうですかって?ナンコー領主の伯爵さんの手紙も有るし、子爵さんの協力も得られれば会う事は出来るだろう。タミ・イワがどんな人物かにもよるけど、謎が多いのは確かで『力』を悪用してるような奴なら関わらない方がいいとも思う。結局のところ全ては俺が自分で判断するしかないんだ。
「早く戻って来いステト」
何も進んでないのに、時間を持て余すと色々余計な事考えてしまう。
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「キョウー」
シデとの話を切り上げキョウーとデンボの元に行き、兵長であるキョウーを呼んだ。
「おう」
「集落はもういい、お前はフツの所へ行ってくれ」
「あの人族か?」
「そうだ」
「子爵を1人にさせれないぞ」
「私は大丈夫だ、領兵達も居る」
「あの3人だけじゃ心配だぜ」
「それでも頼む」
「ちぇっ、しょうがねぇなぁ」
「子爵様、シデさんとのお話で何か問題が?」
デンボは私の様子を見て、シデとの会話が気になったのか聞いて来た。
「鬼人族はヒラの決めた事を守ると言っている、例え愚かだと解っていてもな」
「救いようのないヤツ等め、耄碌オヤジの言いなりとかよ」
「‥‥‥ステトさんを放さないと?」
「このままではそうなる可能性が高い」
「それで何で俺っちがあの生意気な人族の所へ行くんだ?」
「お前が迎えに行き、狩場からフツの仲間の女性が戻って来たらフツと共に連れて帰るんだ」
「鬼人族はどうします?先程のお話が本当であれば黙って行かせないのでは?」
「押し通せ」
「それで俺っちか」
「そうだ、頼んだぞ。無事に屋敷まで連れて帰ってくれ」
「子爵様は?」
「私はヒラの居る森屋敷に行ってみる」
「子爵は残るのか?それなら俺っちも!」
「忘れたのか、お前は森に入れん」
「う‥‥もうそんな縛り無視していいだろ」
「それを私が好まん行為だと知っているな?」
「もう!解ったよ!糞約束!!」
「私はどうします?」
「デンボは不測の事態に備えて暫く集落で待機だ」
「承知致しました」
例え鬼人達が阻止しようとしてもキョウーに任せておけば大丈夫だろう、だが何が起こるか解らない。
「うむ。セキデ、ガク、エジ」
「「「は」」」
「お前達は私と来てくれ」
3人の領兵は亜人族で森にも精通していた。
「お前等解ってるだろな、子爵を守る役目は俺っちなんだぞ」
「何を解り切った事言ってる」
「俺っちが言いたいのは、絶対子爵を守れ!!」
「「「は!」」」
「でも馴れ馴れしくするなよ!」
「「「は??」」」
何時まで経ってもキョウーは私の側を離れたがない、自分が一番と言いたいのだ。
「子爵も無茶するな、今あのオヤジは何するか解らないぞ」
「ヒラが私に何かをする程本当に耄碌しているのなら、我が領に鬼人族の居場所は無い」
その時は引導を渡す、それが私のやるべき事だ。
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ヒウツオジさんの姿が見えなくなって、ジッと身を伏せて待っている。
オジさんがトメを見付けたらナニか動きがあるハズだ。『嵩狼』達はまだ同じトコをウロウロしていて、オレ1人ならナンとか逃げれると思うんだケド。コレじゃ見付けても無事逃げれる?
「ギャガァァァァァァ」「ギャガァァァァァァ」「ギャオオオオオオオオオオ」「ギャガァァァァァァ」
「ギャオオオオオオオオオオ!!!!!!」
すると一斉に『嵩狼』達が叫び出した。
オレが顔を少し上げてその叫んでいる先を見ると、大きなスギの枝が跳ねるようにユレ動いている。
動く枝がコッチに向かって来ているのが解り、すかさず立ち上がった。
「ステト!!」
オジさんがグッタリしているトメを肩に担いで木の枝から叫んでオレを呼んだ。
「ココだヨ!」
「逃げろ!急ぐんだ!!」
「トメは生きてるの??」
「傷は負っているが生きてる!いいから早く逃げろ!!」
「オジさん達はドーする???」
「オイは下じゃ逃げきれん!このまま木を飛び移って行く!今危険なのはのお前だ!!!」
「ワカッタ!!」
オジさんの言う通り急いでその場から走り出す。
「ギャガァァァァァァ」「ギャガァァァァァァ」「ギャオオオオオオオオオオ!!!!!!」
普段は集団で動かないらしい『嵩狼』がナワバリ内に入っても仲良く追って来る。狩場の決まりを破ったから怒ってるのかも知れナイ。ヤッパリムチャをしたんだトメ、コレは当分外番はムリだろうナ。
「ギャオオオオオオオオオオ!!!!!!」「ギャガァァァァァァ」「ギャガァァァァァァ」「ギャオオオオオオオオオオ」「ギャガァァァァァァ」
「シツコい」
『嵩狼』は確かに速いケド、デカい体のせいで森の木をヨけなくちゃいけナイ。猫人のオレはそんな必要ナイから逃げるダケなら必死に走ってナンとかなる。でもとっくにミナミの狩場も通り過ぎようとしてるのに、ドコまで付いて来るんダろう。まさか森の先まで来るつもり?もしソーならこのまま連れて行くコトはオバさん達にとってキケンなんじゃナイ?
「あ」
気が付くと追いかけて来た『嵩狼(グラーポ』達の姿が見えなくなっていて、もうスグ森から出てしまうトコまで来ていた。そうか、森を出ちゃうと木が無くなりオジさんの逃げ場がナイんだ‥‥
「ギャガァァァァァァ」「ギャガァァァァァァ」「ギャオオオオオオオオオオ」
「くっ」
思った通りオレの少し後ろでオジさんが木の上で立ち往生してる。出口に近いココは木が少なくなっていたんだ。それを『嵩狼(グラーポ』達は取り囲み始めた。
「オジさん!」
「ギャガァ」「ギャガァ」「ギャオ」「ギャガァ」
オレが声を出すと数匹の『嵩狼(グラーポ』がそれに気付き、コッチを向く。
「逃げろステト!無理なら登れ!!!」
「だってオジさん達が!」
!オイ達は降りなければ‥‥うお!」
『嵩狼(グラーポ』が木に飛び付き、揺らしたり枝を爪で折ったりし始めた。
「オレが引き付けるから2人が逃げて!」
「無茶するな!お前だけでも逃げるんだ!約束を守れ!!」
オバさん達を呼びに行っているヒマなんかない、このままじゃオジさんもトメも殺られる。
「ヤァ!!」
「ギャガァァァァァァ!!!!」
一匹の『嵩狼(グラーポ』』に短剣で斬り付け、注意をオレに向かせた。
「コッチだヨ」
そうしたら全ての『嵩狼(グラーポ』がオレを追い掛けて来る。
「馬鹿!ステト!!」
「今のウチに逃げて!!」
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「何か聞こえた気がしたな」
叫び声?鳴き声?フゼは時々魔獣が出るって言ってたけど、それか?いやただの獣か?どっちにしろ言葉を話す類じゃない。
「一応用心はしとくか」
ナイフを両手に持っておく事にした。
バサッ
「うわ!」
いきなり森から男が出て来て飛びのく。
「はぁはぁはぁ‥‥」
「お、おい」
出て来たのは見覚えのある男で、女を1人方に担いでいた。
「おいって!おっさん!ヒウツのおっさん!!」
「はぁはぁ、お前は‥‥」
ステトと一緒にトメを探しに南の狩場に行ってるヒウツが俺に気付く。
「それトメだよな?生きてるのか?」
「小僧と居た人族?‥‥ステトの‥‥フ、ツ、フツか」
「おお、そうだよ、それでどうなんだ?トメは?」
「生きている‥‥」
「良かったな!そう言やステトは?あいつは一緒だったんだろ?」
「こうしちゃおれん!!」
「こうしちゃ??」
「トメを頼む」
「待て、ステトは?どうなってんだ??」
「ステトは、囮になってくれた」
「何の?」
「『嵩狼(グラーポ』のだ」
「それが何か解んねぇけど魔獣か?やばいのか?」
「だからこうしちゃおれんのだ、オイは戻る、トメを頼むぞ」
「おい!!」
「ギャオオオ」「ギャガァァァ」「ギャガァァァ」「ギャオオオオオオ」「ギャガァァァ」
「森を‥‥‥出るだと?」
「あれが『嵩狼(グラーポ』か?‥‥あれは、もしかしてステト?」
ヒウツがトメを下ろそうとした時、さっきの鳴き声がまた聞え、大きな体の大きな牙が生えた狼の魔獣がステトを追って森から出て来るところだった。
次回更新は、9/25予定です。




