①③⑧『力』の考察〖留め猫⑫〗
奥の手はやたらと使わないから奥の手な訳で、使う機会が少ないのは仕方がない苦笑 どちらかと言うと魔術や魔具の方がチートですが、そこは主人公を無敵にさせないの為の拘り?です多分笑
「ステト、おい!」
「ナニ?ニオイはトメのだよゼッタイ」
「いいから一度落ち着け」
ヒウツオジさんのニオイに似たニオイ、コレは鬼人族のニオイだ。種族には種族が持っているニオイが有って獣人のオレにはソレを嗅ぎ分けるコトが出来た。なのに急いでるオレをオジさんは止める。
「ナンダヨ?トメが見付かるかも知れナイのに」
「オイ達が今居てる所を見ろ」
「見ろって、居るのは森のナカでミナミの狩場‥‥あ」
「狩場は此処までだ」
ニオイを追うのに集中して気が付かなかったケド、オレ達が立っているのはオジさんがさっき言ってたデカいスギ達が生えているトコでナワバリの境目だった。
「でもニオイはまだ先からするんだ、ウソじゃナイ」
「例えそうだとしても先には行けん」
「でもそれじゃトメがどうなってもイイの?」
「トメは嘘を言って無茶をした」
「だからって見捨てるなんてダメだヨ!」
「‥‥‥ステトは集落へ戻れ」
「オジさんは?」
「ここからはオイ1人で行く」
「鬼人のオジさんじゃニオイ追えナイ、オレも行く!」
「駄目だ、狩場の外でどんな魔獣が出て来るかオイもよく解っていない」
「オレと2人なら」
「トメを助けれないどころかステト、お前まで死なす訳には行かん」
「オレは‥‥」
フツしか知らないコトだケド、オレは傷が勝手に治る体だからカンタンに死なない。でもコレはフツにダレにも言うなって言われてて教えられナイのがモドかしかった。
「ナンか‥‥」
ガバッ
「!!」
そのトキ背中に寒気がしたと思ったら、オジさんが覆い被さって来る。
「静かに」
「ナニ?」
「〖嵩狼』だ」
「『嵩狼』?」
「狼の魔獣だ」
「狼‥‥」
オジさんの視線のサキを追うと徘徊しているデカい狼が見える。
「ツヨいのアイツ?」
「殺れん事はない」
「じゃナンで隠れるの?」
「アイツの周りをよく見ろ」
「あ」
木がジャマで気付かなかったケド、最初に見たデカい狼よりもっとデカいのが五、六匹いた。
「オイも初めて見た、まさか『嵩狼』が群れで動くとは」
「いるのはナワバリの向こう側だネ」
「やはり決まりにはそれなりの理由が有るんだ、お前が言った通りトメが狩場を越えてるなら、あの『嵩狼』達に‥‥」
「トメは生きてるヨ、まだニオイはするもん」
「死んで直ぐかも知れないぞ」
「‥‥‥諦めるの?」
「このまま追えばオイ達もやられる」
オジさんの言うコトは正しい。狩りは自分がユウイな立場でフイ打ちかワナを張るのがキホンだ。でもこの状況はオレ達が狩られる側になる。
「オレは諦めるなんてイヤだヨ」
「お前の気持ちには感謝するが危険を冒す訳には行かない」
「ム~」
トメを助けたくて来たのに悔しい‥‥クンクン、クンクン。
「戻るぞステト」
「‥‥‥いる」
「言う事を聞け、下がるんだ。生きてるかも解らないトメより自分の安全を優先しろ」
「待って‥‥上ダ、上からニオイがする!」
「上?」
オジさんも木を見上げた。
「‥‥‥確かに木の上なら『嵩狼』達は襲えん、が」
「アイツ等がウロウロしてるのはトメを待ってるんだヨ!」
「降りるのをか?」
「ウン、追いツメてたんダ」
「もしそうならトメは今『巨狼』達がいる辺りの木に登ったか‥‥」
「トメにオレ達が来たって気付くようにしないと」
「『嵩狼』達にも気付かれる恐れがある、それにまだ確かではない」
「ドーにかして確かめよう」
トメがいるかも知れないのにイイ方法を見付けナイと、夜になったらもっとヤバい。オジさんもそれは解っていてナニか考えてるみたい。
「ステトは少し下がった場所で今みたいに伏せていろ」
急にオジさんがそう言った。
「オジさんは?」
「オイは木を伝って見て来る」
「オレも」
「オイ達は林業で慣れている、だがお前はそうじゃない」
「木登りくらい出来る」
「気付かれないよう飛び移るんだぞ、それにもしもの時はお前が集落に戻ってこの事を皆に言ってくれ」
「死んだらってイミ?」
「勝手殺すな」
「じゃナンで?」
「オイも木から降りられん事になるかも知れん、あの『嵩狼』達に見付かってな」
「オジさんがそんなヘマする?」
「トメがいたらそうなる可能性も否定出来ん」
「そのトキはオレがオバさんを連れてきたらイイの?」
「そう言う事だ」
「それなら、解った」
オジさんだけがキケンな目に遭うのはイヤだケド、助けを呼ぶのも大切な役目と思った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「着いたよ、此処が南の狩場に行く時の入口さね」
ヒウツの嫁のフゼが案内してくれ、俺達は森の際に着いた。そこはナラの木やクヌギの木がそびえ立っていて、正直何処が入口なのかも解らない。
「只の森のそれだな」
「知ってる者しか見分けが付かないだろうね」
「此処から入って出るのも此処か?」
「普通はそうしてる」
「普通じゃない時は?」
「森は広いんだよフツ、その気になれば何処からでも出て来れるさ」
「そりゃそうだ」
「でも南の狩場を行き来する最短なのがこの場所だからね、此処で待ってれば間違いないよ」
そう言ってフゼは北の方向を見る。
「アタシは縁を見回って来るから、アンタはあんまり動くんじゃない。時々魔獣も姿を現すかんだ」
「動かないと逃げれないだろ」
「はははは、それはそうだね」
「有難なㇷぜさん」
「いいさ」
フゼは手を振って歩き始めた。
「まぁ迎えに来たからって何がどうって事も無いんだけど」
独り言を言いながら適当な場所に腰を下ろし、森を眺めるとその先の山も否応なしに目に入った。
これはもう連山って言うんだろうな。タツ院国からステトと逃げて来てトヨノ領、イソラ領、オーカ領、ツルギ領、ナンコー領と旅して今はツルギ領に居るが、その間もずっとこの山があって不思議と見守られてるような気がした。同じ王国なのにがこの山々を越えた場所に有るなんて何か今更だけど信じられないが、山沿いの「外側領」にかつて魔族扱いされた鬼人族やキョウー・ホウみたいな半族が居るって事は、同じくこの山々を越えた場所に有ると言われる『魔領ウネ』と関係有るかも知れない。と言う事は『辺境自治領ミネ』と『魔領ウネ』ってお隣さんなのか?魔領付近の森には【瘴気】ってのが有ると聞いてるけど、それはこの山の何処かの一部になるのか?自分の身の上に起こった事もそうなんだが、それを知る為に行こうとしてる地域も謎が多過ぎるぜ。
「そろそろ山を越える為の手立ても考えないとな‥‥」
今は子爵さんの力になる事に集中してるけど、それが終わればいよいよ俺の目的だった『辺境自治領ミネ』に向かう。カーラとナサも付いて来てくれるが、それはナンコー領の貴族としてで雇い主じゃ無くなる事を意味する。彼女が俺に好意を持ってくれてるのはもう解ってるんだけど、雇用関係が終わればそれに答えた方が良いのか?でも俺の感情抜きにして伯爵令嬢で将来領主になる彼女との色恋が上手く行くとも思えないのが正直なところだ。せめて建前でもずっと「カーラ・マハ」でいてくれたら、こっちも気が楽になって先の事も考えれるんだよな。
「あいつとも一回ちゃんと話合うか」
ステトの事だ。結局あいつはどうすんだろう?自分の幸せをちゃんと見付けるべきだとは言ってあって、それは今の俺と一緒に居れば出来ないと思う。その上で俺に付いて来ると言っているが、やはりもっと違う自由を謳歌して欲しい。自分でそう決めたと言われればそれまでだけど、恩があるとかツガイになるとか付いて来る動機がそれなもんだから素直に受け止めていいのか微妙だ。
「それと、『力』だよなぁ~」
【アサルト】と【RPG】はあくまで憶測だが一日それぞれ一回使える。しかしいくら強力で、この世界の【魔術】を持ってしても防げないとしても、一回こっ切りじゃ心許ない。【RPG】は一発だけの使い捨て銃器だったから仕方ない部分はあるが【アサルト】は三十発弾倉だったんだぜ?それを一回だけって‥‥いや‥‥連射じゃなければ?単射なら三十回一発ずつ出せて、弾が残ってる内は【アサルト】をその都度出せるとか?
「それだ!」
思わぬ閃きで飛び上がった。
でもどうやってそれをする?実物じゃ切り替えるだけで良かったが、【アサルト】は目に見えない『力』だ。俺の『力』なんだから俺が何とか出来る筈なんだけど‥‥想像力とか?
「集中して想像しろ、連射じゃないぞ、単射だ、一発だけ、これで失敗したら今日はもう打てねぇんだからな」
1人でブツブツ言いながら適当な木に向かって手を向ける。
「想像想像!一発の単射、『アサルト』!」
バシュッ
いつもの連続した発射音じゃない‥‥出たのは一発だけの【アサルト】だった。
次回更新は、9/21予定です。
読んで頂き有難う御座います。
☆マーク押して頂けると励みになります。
評価頂けるとやる気になります。
レビュー頂けると頑張れます。
宜しくお願いします~。




