①③③災難の後〖留め猫⑧〗
ありゃ?話が進まなかった苦笑
留め猫⑧ 同日の昼前
「オレが泣かしたワケじゃナイから」
「そんな事は解ってる」
モトが泣いてて、慰めてるトコにヒツウのオジさんがやって来た。
「ナン解るの?」
「井戸の前でじゃれている所を見た」
「水浴びのコト?ダメだよオジさん覗いちゃ」
「うっ、違う!目に入っただけだ、心配しなくても、その、何だ、お前の体は見てない」
オジさんは初対面の時と違がってムカつく態度じゃナイ。いつもはこんな感じなのかナ?
「それよりモトが泣いているのは女達が慌てていた事と関係があるのか?」
「ウン、実はネ」
外番を許されたとウソを言って1人で山に入ったらしいとセツメイする。
「何だと!!トメはまだ戻ってないんだな?」
「だからソー言ってるじゃん」
「他の女達はもう探しに行ったのか?」
「オバさん達は人を集めるって言ってたヨ」
「グスグスしおって。猫娘、女達が来たらオイは先に行ったと伝えておけ」
「オジさん1人で行くつもり?」
「そうだ」
「オレも行く!」
「オイは1人が慣れている、誰かが一緒だと足手まといだ、大人しく待っていろ」
「山ん中広いじゃんか!オレは鼻が効くし目もイイ、それに自分の身は守れる」
「駄目だ」
オジさんは許してくれない。そんな時シデオバさんとフゼオバさんの2人が来た。
「フゼ」
「あんた、話は聞いたかぃ?」
「今この猫娘から聞いた」
「アタシとシデさんが北の狩場を見に行く、アンタは南を頼むよ。他の皆には念の為に麓を見回ってくれと言ってあるからね」
「解った」
オジさんに伝えて終わったシデオバさんにオレはお願いする。
「オレも探しに行く!」
「何言ってんのさステト、アンタは大事な客だ、危ない目に遭わせる訳には行かないよ」
シデオバさんは客って言うケド、オレ人質だヨね?
「多い方がイイじゃん、セッタイ獣族は役に立つって」
「ステトちゃんむりしないで」
泣き止んだモトが心配そうにオレに言った。
「ヘーキだヨ。それよりモト、家屋に置いてるオレの赤い籠手と短剣取って来てくれる?」
「けんはわかるけど、赤いやつってステトちゃんがうでにはめてたもの?」
「ウン、急いで」
「はい!」
モトが慌てて籠手を取りに行ってくれた。
「待て猫娘、オイはお前を連れて行くとは言ってないぞ」
「じゃ勝手に1人で行く」
オレがワガママみたいだけど、ジッとなんかしてられない。フツが居たらアイツも同じ事言うハズだ。
困ってる様子のヒウツオジさんがシデオバさんとフゼオバさんを見るとオバさん達は息を吐いてる。
「仕方がないね、連れて行ってあげな。ステト、絶対ヒウツから離れるんじゃないよ!」
「おい、勝手に」
「フゼがこう言うんだから良いじゃないのさ、じゃなきゃこの子はホントに1人でも行く気さね。ただでさえヒラ様が無理矢理留め置いたんだから面倒見ておやり」
「だったら女同士お前達が見ればいい」
「割り当てさね、アンタだけが1人なんだ」
「あんた!」
「ぐ‥‥どうなっても知らんぞ」
シデオバさんは集落でもエラいって聞いてたし、ツガイのフゼオバさんにも弱いのか、結局オジさんはオレが一緒に行くのを認めてくれた。
「オレはダイジョウブ」
傷が治るコトはヒミツ。
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「『傷合薬』じゃねぇか」
「フツさん、貸して下さい」
「ほいよ」
「道端で宜しいのかお嬢様」
「これは何処ででも使える薬なので大丈夫ですよ、さ、デンボさん」
「済みません、カーラさんにこんな」
「気にしないで下さい、それと動かないで下さいね」
「額に付けるのですか、それを」
「貼るんですよナサ様」
カーラがデンボの額の傷に丁寧に『傷合薬』を貼ってやり、ナサも興味深そうにそれを眺めている。
酔いどれ権階医ゲン・セイから渡された紙入れを確認すると俺も使った事がある薬だった。傷合薬は飲む薬ではなく、幹部に貼る類の薬で薄い粘着性の何かで出来ており消毒と傷を塞ぐ効果がある。処方箋も要らない薬なので市井ではよく使われていて劇的な効果は期待出来ないが、薬師などの薬草による治療に比べて遥かに早く治った。因みに一度貼ったものを剥すと効果が無くなるから、自分で貼ってた俺は失敗しない様に結構緊張したもんだ。
「はい、これで大丈夫だと思います」
「有難う御座います」
カーラは綺麗に貼り終えた様で、俺やナサだと絶対こうはならない。
「威張ってた割には安い薬じゃねぇか」
もちろん本音は違って、混血のデンボを見て金も取らずに傷合薬をくれた事には感謝していた。でも酔ってる印象とふざけた態度もあってどうしても憎まれ口を叩いてしまう。
「でも親切にして頂いたのに違いはありませんね」
「権階医に酒を奢る身になってくれ、面倒くせぇぞ」
「そう言うわりには顔が笑ってますよフツさん」
隣に来たカーラに諭されたが彼女も俺の思いが解ってるんだろうな。
「直ぐには治らないものか」
「『傷合薬』はそんな早く効く薬じゃねぇよ」
「不憫だの」
「いや便利だろ、貼ってるだけで治るんだ」
ナサは物珍しそうにデンボに貼られたそれを見て言うけど、一般に出回ってる薬はこんなもんなんだぞ。
「中にはその場で治る薬も有りますけど、それだと相当高価な薬になってしまいますね」
「『傷合特薬』とかな、そんな高価な薬ただでくれる訳ないさ」
酒代は掛かるんだけど。
「私はこれで十分です」
「今のデンボさんにそれ以上の薬なんか無ぇよ!」
ぱっと貼れて放っときゃ治るなんて、これでとか言ったらバチが当たるぞ。
「どうするカーラ?このまま戻るか!?」
「そうしましょう」
デンボの手当ては済んだがそのまま子爵さん屋敷に戻る事にした。
「どうしたのデンボ!それは『傷合薬』よね?何があったの!?」
「これはその‥‥」
「ちゃんと言えよな」
デンボを見た奥さんが驚き、その説明は本人に任せるとして俺達は黄輪の案内でいつも飯を食う部屋に入る。
「ハヤ様」
「キリの声が聞こえましたがどうかされました?」
「実は」
「お嬢様、俺がが御説明します」
既に昼食を終えた子爵さんが茶を飲んでいる所で、ナサはカーラが答える前に彼女と俺が院社に居てる間に亜人族に絡まれた事を言った。
「私の不徳の致すところです。未だその様な考えを持つ者が居るとは」
「デンボ殿に狼藉を行った輩を俺はそのまま行かせました‥‥」
「それで良かったのだナサ殿、真面に相手をしては貴殿の評判に傷が付く。それに例えその者達を打ち負かしても今度は混血である事をやり玉に挙げるだろう、その程度の者達なのだ」
「‥‥は」
「それよりを不快な思いさせて申し訳ない」
「いえ子爵様、俺は何とも」
ナサは騎士としての評判なんか気にしてないと思う。カーラやナンコー領、子爵さんの事を思ってデンボの言う事を聞いたんだからな。でも俺は気にするぞ、思い出したらまた腹が立って来た。
「俺は納得してないですよ」
「フツさん」
蒸し返す俺にカーラが止め入る。
「貴族諸々、領地諸々、種族諸々は解ってるさ、でもそれじゃデンボさんが気の毒だろ」
「お前がナサ殿だったらどうしていた?」
「俺はナサさんじゃないんで」
「ではお前だったら?」
「やり返します」
まぁやり返したくても相手を知らないんじゃ無理なんだけどな。
「だから子爵さん、族長の事と被るんですが、もしそいつ等を見付けたらデンボさんの返し、俺がしても良いですか?」
「‥‥‥それは認められん」
「仇ですよ?」
「であれば猶更だ」
意外な答えだが、何か丸っきり駄目と言う意味じゃない気がする。
「俺がデンボさんの仇を討つのが気に食わないんですか?」
「食わんな」
「は?」
「やり返すなら順番を守れ」
「誰の?」
「私に決まっているだろう」
「ははは、じゃ俺はその次で」
「次の相手など残さんぞ?」
この人が好きなのはこういう所だよ。
次回更新は、明日9/11か、、、、12日(こっちが濃厚)予定です。
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