①③①色気から出た仮説
今回もふあっと雰囲気でお読み下さい笑
細かい事は気にせずに、突っ込まないで、水に流して、夢に見ないで、ね。
《『コセ・ポーション』を飲ませ続けて副作用が出ない症状を調べれば何か解るかも作戦》
それが早くも壁にぶち当たってる。唯一の手掛かりが薬を飲み続ければ効果に慣れ、普通なら薬の量が増える筈なのにそうなってないと言う事だけで、それには何か理由はあるんだろうけど真階医が解らないんじゃ俺達は当然解りっこない。
「有り得ないんじゃ逆から辿るのも厳しいな」
「でしたら『コセ・ポーション』を服用する量を増やさなくても大丈夫な症状、にします?」
「それより良い方法がある」
「?」
カーラと言葉を交わしてる前で意味が解ってない様子の若い真階医。
こいつは被害者達の症状に何やら自説を持っているみたいだったけど、憶測でも良いから教えてくれりゃそれが切っ掛けで何か解るかも知れないのに、くそ真面目な性格なのかそれを言おうとしなかった。
「カーラ」
ここは彼女に頼むしかない。
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「あの~」
「ところで真階医さん」
「え?は、はい、ななな何でしょう?」
「貴方のお名前をお聞きしてませんでしたね、私はカーラ、カーラ・マハと言います」
「カー‥‥ラ、さん。ええっと、何か胸元が‥‥」
「胸元?」
「は!いえ!!ぼぼぼ僕はセンです!セン・ジュ!です!!」
「センさんはお幾つなんですか?」
「じゅっじゅじゅじゅ十九になります」
「まだお若いのに真階医だなんて、さぞ努力なされたのでしょうね」
「いいい、いえ、元々、ぼ僕は医学が好きでして、大した、その、いえ、してません!」
「先程センさんはハッキリ解らないって仰ってましたけど‥‥」
「カカカカカーラ、さん、なな、何を」
「ハッキリしなくても構わないので何かお考えになった事があるなら」
「くあっ、ち、ち、っち近いです」
「是非お聞かせ下さいませんか?」
「はひ、はい、はい」
「有難うございます、セ・ン・さ・ん」
「はう!」
落ちた。
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カーラの腕を取り若い真階医から離れる。
「悪い。ちょっとだけ彼女と2人で話があるんだけど、いいか?」
「まだ僕に質問など残ってます?」
「ああ、でも少し待ってくれ」
頷くのを見て彼女に向き直った。
「どうしたんですかフツさん?」
「作戦会議だ」
「作戦?」
「あの真階医から聞き出して欲しい」
「私が?フツさんでも聞けるんじゃないですか?」
「あいつは頭が固いし、真面目過ぎて融通が利かないんだよ」
「それは私でも同じなんじゃ」
「そこはほら、初心に付け込んでさ」
「‥‥女を武器にしろと?」
「カーラみたいな別嬪さんだったら一発だと思うんだ、頼むよ」
「もう一度言って下さい」
「へ?何を?一発?」
「ちち違います!!私みたいな、の後です」
「カーラみたいな‥‥別嬪?」
「もっとちゃんと言って下さい」
「カーラみたいな、すこぶる美しい女性、むしゃぶり付きたくなる女」
「む、むしゃぶり?‥‥うふふ、そこまで言ってませんでしたけど、解りました。何を聞けばいいんです?」
「あいつはハッキリしてないから言わないって、さっきそんな風な事漏らしてたんだ、それを」
「聞けばいいんですね」
「そう」
「でも、私にそんな色事出来るかしら」
「そのままで十分と思う‥‥‥でも」
「フツさん何を?きゃっ」
「胸元広げたら尚良いと思う」
「自分でやりますから、もう、このお礼はちゃんと頂きますからね」
「何か考えるよ」
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「これで良かったですか?」
「カーラを甘く見てた」
「え?」
「いや綺麗なのは知ってるけど、完璧だよ」
「ききき綺麗だなんてそんな」
「今更そこで照れる?」
「さっきは冗談みたいな感じでしたし、そんな真顔で言われたら」
「感心したんだ、でもちょっと色気出し過ぎかな」
「恥ずかしい事言わないで下さい‥‥」
「カーラ」
「はい?」
「‥‥‥さぁ聞こうぜ」
「はい、聞きましょう」
忘れてるみたいだけどその胸元戻してくれないと目のやり場に困るぞ。
「お~い」
「は、は、は?」
彼女のお色気にやられたこいつを現世に戻す。
「お願いしますセンさん」
「ゴホン、良いですか、あくまで僕の憶測と言いましょうか、個人的な考察ですからね」
「それで良いから聞かせてくれ」
「あの症状が何を飲まされて続いてるのか解りませんが、僕はお嬢様方がどこも悪く無いと思っています」
「では『薬』をお飲みになっているのは何故ですか?」
「もちろん機能を維持する目的で服用し続ているのですが、身体機能を停止させているだけでその他の内臓機能は正常に動いているんです」
「心臓もか?」
「恐らく」
「ちょっと待ってくれ、心臓が、命令を出す機能が正常なら薬なんか要らないだろ」
「当初は弱っていたんでしょう、いや一時的に弱らせた」
「じぁ今は飲ませる必要が無いのか?」
「そうだとしてもそれを試せません」
「う」
さっきの問答と同じでそんな賭けをする事は出来ない。でも、もし本当に薬が必要のない状態なら、やっぱり買わせ続けさせる為の毒だったんだ。
「ですが薬は必要です」
「言ってる事がおかしくないか?」
「先程体や心臓を動かす信号を出す場所は別だと言いましたよね?」
「体は頭、心臓は心臓自身、だよな」
「そうです。ここからが僕の持論になりますが、飲まされたのはその場所を変える為の薬だったのではないかと」
「変える?」
「‥‥それはどういった状態なのですか?」
カーラも今度は理解していないみたいだ。
「頭からの信号で心臓を動かし、心臓からの信号で体を動かす。本来と違う場所から信号を出すようにした状態ですね」
「つまり被害者達は頭で、自分の意志で心臓を動かしてるのか?」
「そうです、だから体に信号が送れず動けない。眠ってる様に見えるんだと思います」
「でしたら心臓からの信号は?」
俺が言う前にカーラが聞く。
「心臓からの信号で『腕を上げる』など体を動かすのは無理でしょう、自分の意志、頭で考えないといけませんからね。これも恐らくですが心臓からの信号は内臓を動かす為のものになっているのではないかと思います」
「いつもは頭で内臓を動かしているのか?」
「はい。体を動かすのとは違う不随意運動信号を常に送っています」
「不随意運動?」
「震え、痙攣、自分の意志とは関係無い運動の事で、内臓の動きがこれに当たります」
中々に理解が難しい話だが、このセンと言う真階医は被害者達は目が覚めない状態じゃなく、体を動かせない状態で、それは本来頭が体を動かす信号を送るのを心臓を動かず為のものになり、心臓を動かす信号を送る心臓が内臓を動かす為のとなっている、と言いたいらしい。
「意識があるのに動かせないだけ、か」
「そう言いう事になりますね」
「‥‥‥まるで檻だな」
「フツさん?」
「いや、意識があって体が動かないだけなら、まるで〖肉体〗って檻に閉じ込められてるみたいなもんだと思ってさ」
「体の檻‥‥‥」
それを四十年ってどれ程の苦痛なのか想像も出来ない、俺なら精神が持たないだろう。
「でも寝ている間は信号を送れないんだろ?」
「ですから心臓を直接動かす為に薬が必要なのです」
「もしかして心臓に問題が無いから副作用が出てないなんて事は?」
「カーラさんのご指摘の通り僕もそれは考えましたが、今はまだ可能性だけですね」
「この症状の呼び名とかあんのか?」
「正式な名はありません、ですから一応僕が【伝達症】と名付けました」
「【伝達症】ね」
「新しい症例なので研究題材としてもっと調べて行くつもりです」
「研究題材は止めろ」
熱心なのは有り難いが血が通った被害者達に対して良い気分じゃない。
「研究と言う表現が気に障ったのなら掘り下げるとでも考えて下さい。それに誤解されてるようですが研究題材はこの症状の事で患者さん達ではありません、僕も患者さん達を助けたいと思っています」
「‥‥‥解った。でも今まで聞いた限りじゃ、あんたが名付けたこの【伝達症】って症状、何とか出来そうなもんだと思うけどな」
「信号を送る機能を元に戻す、ですか」
「ああ」
「簡単に思えるでしょうが、一歩間違えれば二度と体を動かす事が出来なくなりますよ」
「それが出来たら?」
「あくまで仮説ですから、答えられません」
「今それ出すのかよ」
しかしこの【伝達症】って仮説はかなり的を得てるかも知れない。自分でそう思ってるのが玉に瑕だけど、酔っ払い医者の言った通り優秀な内医なのは間違いないみたいだ。
次回更新は、9/9予定です。恥ずかしがらず感想下さっても大丈夫ですからね。
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