①②⑧赤ら顔の医者〖留め猫⑦〗
四章の終わりが見えない笑。
留め猫⑦ 同日の昼前
「おばさん達がもどってきた!!」
シメカがデッカい声でそう言いながら家屋に入って来たけど、オレは布団にクルまって震えてる。
「どうしたの?ステトちゃん」
「みずあびで体がひえたんだって」
シメカがオレを見て聞いて代わりにマオカが答えてくれた。
「ひえた?」
「うう~だからキライなんだ水浴び」
「ちゃんとふかないから」
モトは優しいから心配してくれて、ずっと側に居てくれてる。
「大体外で水浴びなんてサムいに決まってる!」
「ステトちゃんはじゅうぞくだからへいきだと思ってた」
「ジイちゃんが人族なんダ」
「おかあさんとおとうさんはじゅうぞく?」
「そうだケド」
「きっすいじゃないからかな?」
「関係ナイ、サムいモンはサムい」
獣族でもカゼは引くんだヨ、あ~風呂があったらナぁ。
「シメカ、おばさん達もどったんだよね?」
「え?あ、うん。お昼ごはんとって来たみたいだよ」
「トメは?」
マオカがシメカに聞いたのはナサ兄さんに負けて悔しがってた子のコトだ。トメはこの子達の中では腕が立つらしくて、外番って言う狩りの役目で山に入るのを許されたらしい。でもまだ1人じゃダメだから、手伝ってるってのが正しいみたいで、心配そうにモトがシメカに確かめる。
「まだ見てないけど?」
「まだもどってないおばさん達は?」
「どうだろ?今日のそとばんのおばさんは‥‥」
「それよりシメカ、洗っとかないとおこられるよ」
「ほんとだ!それところじゃないや!!」
「ごめんモト、ステトちゃん」
「トメももどってると思うよ」
そう言って姉妹は外に出て行った。
「洗うってナニを?」
「あの2人は今日ふくを洗うばんなの」
「洗濯?」
「そうだけど、ステトちゃんがそんなことば知ってるなんていがい」
「洗濯くらい知ってる!!」
鬼人だけど子供にそんなコト言われるオレってバカと思われてる?
「トメはもどってきたかな」
モトもオレと同じでナンかイヤな予感がしてるのかソワソワ落ち着きがナイ。
「見に行く?」
「ステトちゃんも?」
「オレも気になるから」
トメはナサ兄さんに負けてもっと強くなりたいって言ってて、あーゆー子はムチャしてそうな気がするんダ。それがイヤな予感の原因だった。
「何だいアンタ達?」
「まだ昼餉まで時間があるよ」
「獲物を見に来たんだろステト?」
狩りから戻って来たオバさん達の名前は知らないケド見た顔で、オレが食いモンの確認をしに来たと思ってる。
「そうじゃナイ」
「じゃ何の用?」
「オバさん達3人だけ?」
「そうだけど」
「それがどうかした?」
オレはモトを見た。
「トメは?トメはいっしょじゃないの?」
「トメ?あの子はアンタ達と此処に居たんじゃないのかい?」
「え?」
モトがその答えを聞いて驚いたのか何も言えなくなってる。
「ステト、これは一体何事さ?」
「トメは外番だって聞いたからオバさん達と戻って来たか見に来たんダヨ」
「何だって?」
「どういう事だい!」
「モトお前が説明しな!」
オレがそう言うと3人のオバさん達が一斉にモトを問い詰めた。
「トメがそとばんをゆるされたってアタシ達に言ったの、それでステトちゃんがまさか1人かと聞いたから、オバさん達がゆるしてくれない、いっしょだって‥‥‥」
「一緒も何も外番自体許しちゃいないよ!」
「そんな‥‥う、うぇ~ん」
デカい声に怯えたのかトメが心配でかモトが泣き出す。
「モトを怒っちゃダメだヨ」
「怒っちゃいないさ、でもそれは確かなんだね?」
「え~~~~ん、う”う”」
モトが泣き止まないのでオレが答える。
「トメはシメカとマオカにもそう言ってたみたい」
「トメは戻って来てないんだね?」
「だから見に来たんダ」
「大変だ、あの子が1人で山にまだ居てる‥‥」
「何て事だい‥‥こうしちゃいられないよ!」
「サガしに行くの?」
「勿論さ!!」
「ステトは此処に居るんだよ!!」
「アタシャ皆を集めて来る!!」
3人のオバさん達がそれぞれ離れて行って、オレはまだ泣いてるモトに近付く。
「鬼人族のこどもはアタイ達だけなの、ずっといっしょにいたのに、う”うう”う、なんできづかなかったんだろう、トメがうそついたって‥‥」
「モトのせいじゃナイ」
「う”う、うぇ~~~ん」
ウソを付いたトメが悪いのに自分を責めるなんて、モトは優しいからか色々背負い過ぎだと思う。
「おい」
「?」
その時デカい影がオレ達をオオウって声を掛けられ振り返る。
「あ」
「何だこれは」
声の主はナサ兄さんに投げ飛ばされてたヒウツってオジさんだった。
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別に悪い事した訳でも、する気も無いんだが、何だろうこの緊張感。
「どうも~、誰か~」
「ふふふ何ですかそれ」
カーラに笑われた。
「何となく苦手なんだ院社って所は」
「フツさんが院社にって事は王都の?」
「ああ。組に居た頃は喧嘩なんて日常茶飯事だったし、俺自身結構怪我して世話になってるのにな、何時まで経っても慣れないもんだよ」
「怪我の事で何か聞かれたりしなかったんですか?」
「近衛兵達に突き出されなかったかって?」
「ええまぁ、組で負った怪我では通報されてもおかしくないですから」
「そこはほら、カーラが『薬』を手に入れたのと同じさ」
「袖の下ですね」
「そうそう、でも受け取りながら通報奴も居て、お互い後ろめたかったのかもな」
「ぎこちないのはそれでですか」
「う~ん、どうだろ。そもそも医者の世話になるのが好きな奴なんて居ないだろ?」
「それはそうですね」
話をしながら院社の中に入り室内を見回す。棚には薬類の瓶が並べられていて、向かいの一角には寝台と椅子が有り、どうやら診察をする場所の様だが医者の姿は無かった。
「誰も居ないのか」
「来患者の気配も無かったですものね」
いくら閑古鳥が鳴いてるからって、良いのかこれ。
平屋とは言え医者達が控えてる私室くらいはあるだろう、案の定受付台の奥に扉が見え声を掛ける。
「もしも~し」
反応が無い。まさか本当に居ないとか?
「誰か居ないのかぁ!」
今度は大きな声で呼んでみた。
「普通はこんな大きな声を出したら注意される場な筈なんでけどね」
「追い出されてるな」
カーラもこの閑古鳥状態に苦笑してる。
「おおお~~~~~~~い!!!!」
これで誰も出て来なきゃ無人確定だぞ。
「ちょっと待ってくれ!!うぷ」
奥に見える扉に向かって叫ぶとやっと返事が聞こえた。
「いらっしゃったみたいですよ」
「ああ、でも」
うぷ?
それから少し待ってもまだ出て来ない、俺は更に声を上げる。
「こんなに不用心だと棚にある薬盗まれても文句言えねぇぞ!」
「何!!うぇっ、盗人か!!!うぷ、今行くから何も盗るなよ!!」
「宣言する泥棒が居るかよ!いいから早く出て来い!!」
それにその『うえっ』とか『うぷ』が気なってしょうがない。
「ふぅ待たせたな」
「本当だぜ」
扉を開けて出て来たのは中年の男で白衣を着てるから一応医者みたいだ。
「珍しいな夫婦の盗人か」
「え?えええ夫婦?いえそんな、ちちち違います!」
色々突っ込みたいけどカーラが壊れてるからいいや。
「あんた医者か?」
「そうだ」
自分が医者だと言う男の顔は赤くなっていて、吐く息から酒の匂いがする。
「医者が昼間っから飲んでて良いのかよ」
「酒は明るい内に飲むのが美味いんだ、それに俺は酔ってない」
噓付け!!
「本当に貴方は医者ですか?」
立ち直ったカーラがもう一度念を押す様に聞いた。
「白衣着てる木こりが居るか?見て解るだろお嬢さん、俺は医者だ、そう、れっきとした院国認定の権階医だ」
「あんたが権階医?」
院社に派遣されている医者は真階医と権階医の二階医だけで、一応の位は権階医が上とされている。こんな酔っ払いが上司とか、これじゃもう1人の医者、真階医の方も期待しない方がいいな。
「何だ?文句あるか」
「あるに決まってるだろ」
ツルギ領に来る医者は碌でも無い奴しか居ないのかよ。
お陰様で結構先行して書けてます。てなわけで次回更新は、明日9/5予定です。
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