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①②⑦デンボの毒舌

何だかんだ話ばかりですが、それも作風と言う事で笑

あと10話先くらいでアクション入れるつもり‥‥‥です。

亜人族達(かれら)院社(ヤック)に火を付けた騒動で生じた賠償金で、ツルギ領の財政は危機的状況でした。それでも子爵様は被害に遭った方々全員分の『(コセ・ポーション)』の買い付けをセフ殿に依頼されたのです」


十五年前の流行り病以前のツルギ領の院社(ヤック)に赴任して来た医者達は、本国の教えに背き長年亜人族達への診察をしていて、それは暴利とも言える金額だったが表向き受け入れられていた。しかし流行り病以降、急に従来通りの体裁を取り始め一切亜人族達を診なくなり、その結果見捨てられた事と酷くなった人族至上主義に腹を立てた亜人族達は院社(ヤック)の建物を燃やす愚かな行為をしてしまっていた。


「子爵さんはずっとそれを続けていたんだな」

「はい。なのにあの御方はこれまで私が知る限り何も言って来た事が有りません」

「挨拶も無しか?」

「受け取るだけで」

「あんたが(あれ)を集落に届けてた?」

「そうです、子爵様が鬼人族達の心情に気を遣われ私が代わりに届ていましたが‥‥届ける私に子爵様への言付けくらいは有っても良いと思うのです」

「そう思う気持ちは解るよ」

「うむ。そうだぞデンボ殿、子爵様の御好意に感謝の意も示さん方が悪い」

デンボは族長(じじい)に対する憤りが抑えられないのか、俺達がデンボと知り合って初めて耳にする批判だ。


「ヒラ様はお礼の一言も仰った事が無いんですか?」

鬼人族達(かれら)は被害者ですので‥‥」

デンボは父親が実行犯の負い目があるんだろう、急に尻つぼみになってそう言う。


「しかしいくら被害に遭ったとは言え(おさ)ともあろう者が世話になった礼もせぬとは」

「‥‥ヒラ様は子爵様の、ツルギ家の御先祖様達を御存知なので、御自分が上の立場だとお思いになっているのでしょう」

「ステトさんにナサ様にと勝手をなさっていますし‥‥困った御方ですね」

「もはや老害です」

「言うねぇ」

でも確かに二百年近く生きてれば人族の誰もが餓鬼に見えるかもな、長生きも考えもんだ。


「‥‥すみません、失言でした」

「まぁ吐き出すのも悪い事じゃ無いと思うぜ、すっきりしただろ?」

「はい、ゴホン、いえ今私が言った事は忘れて下さい」

「老害」

「フツさん」

「解った解った、誰にも言わねぇよ」

「言わないんじゃなくて忘れて下さい」

「こう見えて俺は記憶力が良いからなぁ」

「ぐっ」

デンボを揶揄(からか)うのはこのくらいにして、院社(ヤック)はまだのか聞く。


「何処まで行くんだ?」

「もう直ぐ見えます」

デンボは吐き出した事で落ち着いたのか本来の勤勉な商人兼補佐役に戻った。そして暫く歩くと立ち止まり建物を指差す。


「あれがツルギ領の院社(ヤック)です」


ワヅ王国中に有る院社(ヤック)の造りは素材が石や木材や漆喰など、建てられる土地の風土よる違いはあっても二階建てが多い。一階は診療を行う部屋の他に『(ポーション)』の売り場が置かれており、必要に応じて真階医(マーイ)権階医(ゴーイ)が処方箋を出す。出された患者はその指示通りの(ポーション)を、処方箋の必要が無い(ポーション)類は直接窓口で買う事が出来た。二階には重症患者や重病患者などが入院出来る部屋が有って相部屋と個室を選べる仕組みだが、当然個室は値が張る。王都には王国内にある全ての院社(ヤック)の本部、本院社(セヤック)以外にも人口が多いので従来の院社(ヤック)が四つも存在する。俺も何回か世話になった事が有るが王都の院社(ヤック)のその全てが三階建てだった。


「何か期待を裏切らないって言うか」

「フツでは無いが(さび)れとる」

「人族の方々が少ないからでしょうね」

目の前に建っている院社(ヤック)は木建ての平屋で閑古鳥の鳴き声が聞こえて来そうな静けさだ。


「有るだけ頑張っていると思いますよ」

「あんたがそれ言っちゃ駄目だろ」

「私には無縁の所なので」

「俺も入った事が無い」

デンボとナサは差別されてる側だ、(さび)れていようがどうだっていいか。


「院国の教えはやはり間違っていると思います」

タツ院国の創始者で転憑者(うつり)のラテスのが元居た世界では亜人族が存在しなかったから診ないって事なんだが、もうこの世界の亜人族の事もある程度解ってる筈だ。だったら別に診ても良さそうなもんなんだけど、それをしないのは今の院国の基本方針が単に差別を推進してるに過ぎない。カーラはいい加減止めろと言いたいんだろう。


混血達(あんたら)は大目に見ろって言ってきてやろうか?」

「今となっては此方から願い下げですよ」

「亜人族を侮蔑する様な医者など要らん」

「ま、そうだよな。じぁ悪いけど待っててくれ、行こうぜカーラ」

いざ入ろうとするとカーラがデンボに確認する。


「デンボさん、このツルギ領の院社(ヤック)には何人のお医者様がいらっしゃるんですか?」

真階医(マーイ)権階医(ゴーイ)がそれぞれ1人ずつ在籍しています」

「その2人だけ?おいおい、それで回るのかよ」

一般的な院社(ヤック)で6~8人、小規模の院社(ヤック)でももう少し医者は居る。患者達を診たり、実際の治療をしたり、(ポーション)の処方箋を出したり売ったり、とてもじゃないが2人でこなせる仕事量じゃないし、それが2人しか居ないって人族が少ないのは解るけど大丈夫なのかと思ってしまう。


「医者の数を増やしたとは聞いていませんから、平気なのでしょう」

「何か興味無いって感じだな」

「そんな事は有りませんよ、今までの経緯も有りますから随時情報は得ています、しかし必要以上に掛る気は有りませんね」

デンボからしたら父親の仇とまでは言わないまでも、悪感情しか持って無いか。


「そのお2人がツルギ領に赴任してどの位です?」

「五年近く()ります」

「それって短いのか長いのか」

「現在の我が領では長い方ではないでしょうか」

「移動を拒んでる方々?」

「一度転院する機会はあった筈ですから、そうだと思います」

通常その土地に赴任する期間は数年と曖昧だが、長い方って事はわざと移動してない可能性が高い。しかし十五年前とは違ってこのツルギ領の院社(ヤック)では亜人族達を診ていないので、人族が少ないツルギ領じゃ金も稼げないし評価も上がらない、それなのに移動を拒んで何の得があるんだ?聞いたカーラも思った様でデンボに尋ねる。


「何か理由が有るんでしょうか?何か過去とは違う事を企んでるとか‥‥」

「先程も言いましたが院社(ヤック)に目を光らせています」

「何の悪さも無しか?」

「今の所そうですね、医者達(かれら)を含めこれまで何か怪しい行動をした事実はありません」

「じぁ移動を拒んでるのは何でだと思う?」

「さぁそれは。フツさんが聞いてみて下さい」

「口を利くのも嫌って?」

「私は入れませんので」

「それもそうか」

取り敢えず入って見ない事には始まらないな。


「じぁまぁそう言う事で」

「ナサ様デンボさん、すみませんが私達で行って来ます」

カーラが俺に向かって頷きナサとデンボに声を掛ける。


「承知しました、御持ちしています」

「我等の事は気になさらずお嬢様達は思う存分敵情視察をなさって下され」

敵情視察?


「話を聞きに行くだけだぜ」

「何が起こるか解らんでは無いか」

「医者が襲うと思ってんのか?」

「油断するなフツ」

油断して風邪引いたりとか?


「何が起こってもお嬢様を頼むぞ」

「はいはい」

何を期待してるんだか、俺は手を振ってその場を後にした。

次回更新は、9/4予定です。

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