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①①⑦変な訛り

ジャエはこの回以降暫く出て来ませんが覚えていて下さいね。

そしてこの先も余りアクション要素が少ないです苦笑

「お喋りの相手、ですアルか?」

「あぁ時間潰しにな」

奴隷だからそんな思考になるのか、相手と聞いて真っ先に浮かぶのがそっちの相手とは、まさか‥‥いやこれは一応確かめておこう。


「聞くけど普段からそんな事させられてるのか?」

あの子爵さんが奴隷とは言え女達を慰み者にしてるなんて無いと思いたい。


「いえ全く無いですアル」

ジャエは素っ頓狂な顔して首を振った。


「じゃ何でそう思ったんだよ?」

「姉さん達が教えてくれてたからアルです」

「姉さん達?」

「コレ嵌めた他の人達の事アルですよ」

ジャエは自分の首にも嵌っている黄色い付輪(ツクモ)を指差す。


「お前以外の女達は体を求められた事があるって?」

「ハヤ様の所に来る前の話しみたいアルです」

「だよな、うん」

「?」

このツルギ了解に来てからは女奴隷達が慰み者になってないと聞いてほっとしたのと同時に、また俺の子爵さんへの評価は上がった。


「どうしたアルか、ますか?」

「良い主人に恵まれてると思ってさ」

「はいアル!です」

「それよりその喋り方‥‥」

まだ使い慣れて無いのか、一々変な訛りの後に敬語を付けてるのが面倒くせぇ。


「あ、まだ練習中なので失礼があったらすみませんアルです」

「そうじゃないんだけど」

「じゃ何アル、です?」

「‥‥いや」

彼女なりの努力に突っ込むのも何だか気が引ける。


「それでどうなんだよ、まだ何かやる事残ってるのか?」

「いえ、今日のお仕事は終わり、ましたアルので、お客さんに、あ!様アルね!!お客様にお茶をとハヤ様にご?お?お申し付けされたアルです」

「よし待て!」

駄目だ、逆に聞き辛い。


「俺には敬語は止めて良いから普通に喋れ、何かこう聞いてて苛々する」

「あ、すいません、アル」

「おっと、言い方が悪かった。敬語を使うのは偉いと思うけど俺には普段通りに話せ、その方がお互い楽だろ?」

育ちが悪い俺は敬語とか使われても有難味を感じないし優越感も無い。メスティエール商店番頭の羊人レンは止めろと言っても聞かないが、あれはある意味仕事だから諦めた。でもこいつの場合は奴隷だからで、俺がこうして言ってやらないと何時までもつたな)い言葉を使かわれ、聞く方が疲れちまう。


「解りまし、解ったアルよ」

「うん、じぁ座って少し話し相手になってくれ」

「では」

向かいの椅子に腰を下ろしたジャエは、それでも役目を果たそうと茶を淹れてくれる。


「やっぱり美味いな」

「ハヤ様も毎日飲んでるアルよ」

その茶は鷲人ヤトがくれた美味い茶と同じで、ナサの両親の志を受け継いでいる。子爵さんはこの茶をずっと大切にしてるんだ。


「何を話すアルか?私は余りこういうのに慣れて無いアルけど」

「別に時間潰しだから何でも良いんだけど‥‥そうだ」

どうせだから色々気になる事を聞こう。


「ジャエのその訛りって王国じゃ馴染みが無いんだが、何処の出身なんだ?」

「チスク国アル」

ツルギ領に来てからはよく聞く様になったな、まぁ一つ領を挟んでの距離だから近いっちゃ近い。酒好きドワーフが買い付けに来てるみたいだし、それも関係してるのかも知れない。


「俺は行った事無いんだよ、チスク国って皆んなジャエみたいな訛りがあるのか?」

「それは、いえ、あ、う」

何か言い辛そうだが奴隷の決まりで言えないとか?


「決まりを破る事になるなら答えなくて良いぞ」

「すいません、アル」

「気にすんな」

『黄輪』の女奴隷達にどんな決まりがあるのか知らないが、それを無理矢理聞くつもりは無い。


「後はそうだなぁ、ジャエは人族?」

曽祖父(ひいじい)ちゃんがドワーフ族アルよ」

「ドワーフ」

出たドワーフ!だからジャエは大人の女に見えないのか、ドワーフ族は背が低く毛深いって聞くもんな。でも曽祖父で良かったと思う、女で毛深いって人族の俺からしたらちょっと。偏見かも知らないがこれは好みの問題だから仕方がない。


「酒造りも仕事らしいからジャエには打って付けじゃねぇか」

「フツさんは良く知っているんでアルね」

「他はあんまり知らないんだけどな」

曽祖父(ひいじい)ちゃんがドワーフでも私はお酒苦手アル」

「へぇ、じぁ酒造りは嫌だろ?」

「私の仕事は、あ、駄目アル!」

言えない決まりか。でも酒造りならもう知ってるんだし、とするとジャエの仕事は何か他の事なんだ。


「お話相手なのに、すいませんアル」

「だから気にすんなって。それより俺ばっかり聞くのも不公平だから、今度はジャエが何かあるなら聞いても良いぞ」

初対面の客の男に聞きたい事なんて無いとは思うけど。


「うーんそうアルね~」

「無いからって無理矢理捻り出さなくて良いんだぞ」

それはそれで凹むけど。


「いえ、そんなんじゃ無いアル!お客様とこうしてお話するのも初めてアルから、聞きたい事沢山あるアルよ!」

「そんなに?」

「何がそんなにアル?」

「いやいい、何だ聞きたい事って?」

あるあるって、沢山あり過ぎるって意味に受け取れる。


「フツさんは何しにツルギ領に来たアルか?」

「俺は雇われて来た、今ジャエの仲間に礼儀作法を教えてるのが雇い主で、彼女の仕事を手伝ってるんだ」

「仕事?お酒を買いに来たアル?」

「違う、でもこれはジャエと同じで俺の独断では言えない。悪いな」

「ううん、平気アルよ。じぁフツさんは何処の生まれアルか?」

「ワヅ王国の王都だ」

「王都!!都会なんでアルよね??凄いアルなー!どんな食べ物とか遊びがあるんでアルか?」

また違うあるあるが出た。


「そうだな〜」

ジャエがどうしてチスク国から王国のツルギ領に奴隷として来たのか解らないが、余り世間を知らないんだろう、都会に憧れる物言いは普通の若い女と同じだ。


「ふぇ~何か想像付かないアルよ、そんな人族が多いなんて」

「ごちゃごちゃしてるしな、そんな良い所でも無いし」

「でも一度は見てみたいアルね」

俺は王都の良い所や嫌な所を彼女に教えてやって、気が付けば結構時間が過ぎている。


「あ、もうこんな時間アルか、フツさん私はそろそろ戻るアル」

「戻る?」

「あんまり長居すると姉さん達に怒られるアルよ」

「そうなのか?だとしたら悪い」

「ちゃんとお客様の相手してたと言うから平気アル」

俺のせいで叱られなきゃ良いけど、でもお陰で時間は潰せたな。


「相手してくれて助かったよ」

「こちらこそ楽しかったアル、わ!」

「きゃ!」

ジャエが立ち上がって部屋を出て行こうとした時に丁度カーラが扉を開けようとしてるところだった。


「も、申し訳ありませんア、です」

「いえ‥‥貴女は?」

ジャエか出会い頭の客、カーラに深々と頭を下げると彼女が聞くので俺が答えてやる。


「その子は茶を持って来てくれた『黄輪(しようにん)』だ」

「はい、あの、失礼したア、ました!」

「私こそごめんなさい」

カーラもジャエに軽く頭を下げて部屋の中に入って来ると俺に向かって申し訳なさそうに言う。


「すいませんフツさん、お1人にさせてしまって」

「悪いカーラ、ちょっと待ってくれ」

「フツさん?」

「ジャエ!」

「はい?アル」

「最後に一つ聞きたいんだが、俺を見て何か変だと思う所無かったか?」

「奴隷に話し相手をさせる変な客アル、あ!すいませんアル!!」

「それはその通りだから気にすんな、それより光って見えたとか無かったか?」

「光る?いえ、無いアル」

「‥‥そうか、じゃまた機会が有ったら頼むぜ」

「はいアル!!、で、ではお客様、失礼します」

頷いたジャエはカーラにはちゃんと敬語で挨拶をして部屋を出て行き、何も解って無いカーラはさっきまでジャエが座っていた椅子に腰を下すと俺を見る。


「あんな少女も『黄輪』の奴隷なんですね」

最初に俺が思った事を彼女も思ったみたいだ。


「あいつは大人の女らしいぞ」

「え?そうなんですか!?」

曾祖父(ひいじい)さんがドワーフ人なんだってさ」

「それで背が低いから幼く見えるんですね‥‥フツさん」

「?」

何か視線が痛い。


「随分と仲が良くなってるんですね。名前まで知って、どういう事なんです?」

「どうって」

これは責められてる?


「やる事無いからお茶を持って来てくれたあいつに話し相手をして貰っただけだよ」

「その割にはあの言葉使い、親しみが籠ってましたけど?」

親しみ?


「誤解しないでくれ。あいつの変な訛りで敬語を使われたら聞き難いんだ、それで普通に喋れって言ったらあれさ」

「ふ~ん、フツさんが人たらしなのは解ってますけど、気を付けて下さい」

「何を?」

「一歩間違えれば女たらしにも成れるんですから」

「俺にそんなつもりは無いんだけど?」

「相手がそう思ったらそうなんです!!」

「はい!」

何だこれは、じゃどうすれば良いのか教えてくれ!とは言えず、俺は少女趣味じゃ無いから安心してくれとも言えず、取り敢えず(こうべ)を垂れて説教?を聞き嵐が去るまで待つ。


「まぁフツさんがそんな男性じゃ無いのは知ってますけどね」

「あいつを見て思った事とか無いか?」

愚痴が終わったのを見計らってジャエの事を尋ねた。


「彼女の事気になるんですか?」

「は?」

まだ怒るの?とか、あいつは奴隷なんだからそんな目くじら立てなくても、とか当然言わない。


「そうじゃ無くって‥‥」

部屋に入って来たジャエが少し光って見えた事を話す。


「私はその様には見えませんでしたけど、それはフツさんの何か見間違いとかでは?」

「いや、確かにあいつが光って見えたんだ」

「何かの魔術でしょうか‥‥」

「それで説明付くなら良いんだけどさ」

魔術で光るってんならもう気にしないが、ジャエは奴隷だぞ?何の為に光らせる魔術なんて施してる?

それにカーラには見えなかったってのも謎だ、魔術の現象なら誰でも見える筈で、これは他の奴にも機会が有れば聞いてみるか。


あれが俺だけに見えたなんて事は‥‥まさかな。


次回更新は8/18か19辺り予定です~


読んで頂き有難う御座います。

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