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①①⑥見た目少女の光る女〖留め猫④〗

四章の終わりが見えませんが、懲りずお付き合い下さい苦笑

留め猫④《同日遅い午後》


「今日の夕餉、ステトは何を食べたい?」

「肉、朝の果物、あと酒」

「あははは、そこまで遠慮が無いと気持ち良いね」

「エンヨ?」

何か兄さんにも聞いた気がする。


「えんりょ、相手に気を遣うって意味だね」

「気って使えるの?」

コレも言った気がする。


「う~んアンタには難しかったか」

兄さんもこんな時があるケド‥‥それ以上教えてくれない。


「フゼ」

「あ、そうだった。ステトちょっと待ってて」

フセオバさんに別のオバさんが声を掛けてドコか行くらしい


「ドコ行くの?」

「アンタ達がヒラ様と話してた家屋さ」

「あの家屋(イエ)?」

兄さんの住んでた家屋(イエ)だ、オレはさっきまでソコに居た。


「‥‥アンタは見たんだもんね」

「あの眠ってる(オトコ)達のコト?うん」

「夕餉の前にあそこでやる事があるんだよ」

「?」

「待ってるかい?それとも一緒に来るかい?」

「‥‥‥行くヨ」

「良いのかいフゼ、この子は」

「もう知ってるんだから構わない、それにこの現状を仲間に伝えて貰った方が良いと思うんだ」

「何だか知らないケド、フツやカーラなら力になってくれると思うヨ?」

「でも覚悟おしよ、気持ち良いもんじゃないからね」

「?」

「そう、眠ったままでも面倒は見なくちゃ駄目なんだ」

オバさん達はどうやら眠ってる鬼人の(オトコ)達のトコに用事があるみたい。それが大変らしいのが聞いてて何となく解った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「喧嘩も自由に出来ないなんて貴族は大変だな」

「お主もいかんぞ」

「何で?」

「立場を考えよ、今のお主とステトはお嬢様の従者で護衛だろうが」

「迷惑は掛けねぇよ」

「そういう事では無い」

「へいへい」

ナサも主君持ちだから、その辺りの常識は守るみたいで珍しく真面(まとも)な事を言って来る。


「罪を犯した者達の始末はこれが全です。お解り頂けたかな?」

「はい」

「しかと」

「まぁ」

俺達3人が解ったと言い、およその事を知っていたデンボも頷いた。


「カーラ殿」

「はい?」

「済まんがこの辺りで一旦切り上げ様と思うが宜しいか?」

「勿論です、お辛い過去を思い出せてしまい申し訳有りませんでした」

「いえ貴女達に聞いて頂いてるのは私です。とは言え流石にこの老骨には少々(こた)えますな」

「子爵さんもそんな事言うんですね」

この人は無敵だと勝手に思ってた。


「何を言うかフツ、子爵様の御年齢を考えろ」

「年寄りと言いたいのか?」

「違う!」

「ナサ殿は私の事を老人だと思うのかね?」

「そうでは御座らぬ!俺が言いたいのは年長者には気を遣えと」

「年長者?本当は(じじい)って言いたいんだろ?」

「黙れ!」

「ほう、私が(じじい)?」

「まさか!」

子爵さんが俺の揶揄(からか)いに乗って来る。


「じぁ老い先短いで」

「私が?」

「とんでも御座らん!いい加減にしろフツ!!」

「解った解った、怒んなよ冗談だって」

「はははは、私も冗談だナサ殿」

「‥‥は」

ナサが睨んで来るけどそれを無視して一応それらしい事を言っておく。


「若い(もん)に気遣われるのは年寄りの特権ですよ」

「結構結構!(うやま)われて悪い気はせんからな、いや感謝する」

子爵さんが頭を下げる素振りをするとナサが慌て止めに入る。


「子爵様、それは」

「これはいかん、またやってしまった」

「わざとでしょ」

「はははははは、バレたか」

重い話をしてくれ普通は滅入ってもおかしくないんだけど、子爵さんはそれを出さない。

やっぱりこの人は無敵だ、こうでなくちゃな。


「さてカーラ殿」

軽口を叩き合ったせいか、快活な口調で彼女に声を掛ける。


「貴女達を夕食に招待したいのだが」

「光栄に存じます」

「では、これからの事は夕食後にでもお話します」

「承知しました」

「有難う、ところで今晩の宿は決まっておるのですかな?」

「いえまだ何も」

「どうせなら我が屋敷に泊まられるかね?」

「私達3人がお屋敷に?でも」

「遠慮は無用に願いたいが、いや無理強いはいかんか」

「正直私達は助かります‥‥まだハヤ様の、ツルギ領の事は詳しくないので」

「宿と言ってもどうせ真面(まとも)な宿は『コシエ舎』くらいしか有りませんぞ?」

奴隷達が睨みを利かせているし、余所者がそんなに来る領じゃないから宿はそんなに必要無いないんだろうけど領主としてはどうなんだって話だ。


「それって二択って事じゃないですか」

「そうだな、そうなるな、はははははは」

「客が泊まる所が『コシエ舎』しか無いって、笑ってちゃ駄目でしょ」

「しかし事実だ、見栄を張っても仕方あるまい」

「他に全く宿は無いんですか?」

「有るには有るが、一般的な客向けでは無い」

「一般的じゃない客ね」

子爵さんの言い回しで大体想像付いた。

他領(よそ)で罪を犯した奴が捕まりに来たとか、ツルギ領で軽く罪を犯して捕まる為に来たとか、ニノやお喋り3人衆みたいに奴隷契約を結びに来た奴が、取り敢えず寝泊りする場所に使う宿だろうな。


「『コシエ舎』には一昨日にお世話になりました」

「では是非当屋敷に滞在なされよ」

ナサは頷いてるから何処でも良いんだと思う。


「そう、ですね‥‥フツさんは?」

「『コシエ舎』で」

カーラが俺に聞くの小声でそう答えた。

ナンコー領主館には遠く及ばないけど貴族の屋敷には違いなく、礼儀が苦手な俺はゆっくり休めなさそうだ。それに使用人達が『黄輪』の女奴隷ってのも落ち着かないと思う。彼女達を必要以上見てしまいそうだし、何で奴隷になったのかとか余計な事も聞いてしまいそうだ。向こうも気分が良いもんじゃない。


「フツさんが苦手な環境ですものね」

「そう」

彼女も解ってくれて、頷いた所に子爵さんが余計な事を言う。


「大した屋敷では有りませんが、風呂だけは自慢出来ますぞ」

「お世話になります」

即答した!!


「お2人共、ハヤ様のお言葉に甘えさせて頂きましょう!!」

「は」

「おおう」

「うふふお風呂ですって」

ナンコー領を出て四日目、これまで体を拭くくらいしかしてなかったから、そろそろ限界だったか。


「お嬢様は何故ご機嫌なのだ?」

「風呂に入れるからだよ」

「風呂とな?風呂を喜ぶのが解らんのだが」

鬼人族の集落ではナサが風呂の文化が無いって言ってたけど、ナンコー領では風呂はある。その辺の価値観は変わってないのかな。


「風呂に入ったら綺麗になるじゃねぇか」

「お嬢様は今でも御綺麗だぞ」

何だその返答。


「その綺麗じゃなくて、汚れを落として綺麗にするって意味だよ」

「汚れを落とすだけなら水浴びで十分」

そんなんじゃ男前の癖にモテないぞ。


「臭いも気になるし、あと単順に気持ち良いんだ」

「風呂が気持ち()い?」

「変な事考えんな、気分が良いって事だ」

何の説明してんだ俺は。


「ま、兎に角世話になろうぜ」

「うむ」

俺も風呂には入りたいから子爵さん屋敷に泊まる事に賛成した。


夕食までは時間が有るので子爵さんは執務に戻り、カーラは何と『黄輪』の女奴隷達に礼儀作法を教えてくれと乞われ何処か別の部屋に消えた。ナサはナサで曲げられた大剣を直す為、デンボの案内で鍛冶屋か武器屋かそれらしい所へ出掛けて行く。


「暇だ」

俺は屋敷内を1人でうろつく訳にも行かず、(あて)がわれた部屋で大人しく待っている。


「しかし大したもんだな」

林業が主産業だから当然なのだが、部屋に有る二つの大きな3人掛けの椅子と一つの机がは木製で、机の表面は光り輝き加工技術の高さが見て取れる。


「こいつは確かに金が取れる」

机の表面に映る自分の顔を見ながら呟いてると部屋の扉を叩く音が聞こえた。


「どうぞ」

「失礼します」

茶を持って入って来たのは俺より若い、いや少女と思える使用人の女で例に漏れず首には黄色の「付輪(ツクモ)」が嵌められている。それより何だか‥‥‥この女が少し光って見えるのは俺の錯覚だろうか?


「お茶を、お持ちしたアル、です」

アル??


「お、おう有難さん」

「お客さんは1人アルですか?」

また言った、アルって。


「仲間はそれぞれやる事が有ってさ、今は俺1人留守番だよ」

「そうアルですか」

「ちょっと待て」

「?」

「お前、いや少女の言葉何か変なんだけど?」

「何が変アルですか?それに少女じゃ無いアルですよ、れっきとしたダイニンですアル」

「ダイニン??」

「あ、違った!またやっちゃったアル!!え~っと大人アルですよ私」

「色々突っ込みたいけど、お前〜って初対面の女にお前は無いか」

「『お前』で良いアルです」

「しかし、な。名前も知らない女にお前呼ばわりは何か、あんたの名前を教えてくれ、そうしたらお前って呼びやすい」


「え‥‥‥」

俺が名前を聞くとこの不思議な言葉を使う『黄輪』の女奴隷が驚いて固まっている。


「どうした?名前を教えたら駄目な決まりか?」

元舎弟のニノ達『黒輪』も課せられた決まりが有ったから、女奴隷の集まりの『黄輪』にも何か決まるが有ってもおかしくない。


「決まりはあるけど、それは入って無いですアルよ」

「じゃ何でそんな反応したんだよ?」

「お客さんに名前を聞かれるのが初めてだったからアルですね。」

「普通は聞かないもんなのか?」

おいそこの奴隷の女って呼ぶ方が面倒臭い。って言うか客が来る事があるんだ、子爵さんには申し訳無いけどそっちの方が驚きだぜ。


「話し掛けもしないアルですよ」

「そうなのか、まぁそれは良いとして名前だ名前」

「私はジャエ、ジャエ・チケアですアル」

「ジャエな。俺はフツ、ただのフツだ」

「フツさんは変わった人ですアルね」

「そうか?それは良いとして取り敢えずその茶を置け」

「そうでしたアル、どうぞ召し上がって下さいアル。では」

語尾にアルを付ける『黄輪』の女が机に茶と菓子を乗せた盆を置くと出て行こうとしたので呼び止める。


「ちょっと待て」

「何かアル?」

「何か聞きた事いっぱいあるけど俺今暇なんだよ」

「はぁ」

「だから他に仕事が無けりゃ相手してくれ」

「私に、その、あれの?」

「違う違う!喋り相手だよ!!」


何で初対面の女にそんな事させるんだ、それにジャエみたいな見た目少女に欲望なんか湧かんわ!!

次回更新は8/16を予定しています。

読んで頂き有難う御座います。

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