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①⓪⑤黄輪の女奴隷達〖留め猫③〗

《留め猫》はちょいちょい入りますが本編との繋がりは‥‥あるのかないのか苦笑

細かい所は気にせず雰囲気で楽しんで下さい(笑)

留め猫③《同日の朝》


「オハヨー」

目が覚めるとちょうど1人のオバさんが家屋(いえ)に入って来るトコだった。何か朝から山に行ってたみたいで採って来たものが置いてある。


「おはよう寝坊助さん」

「あの灯りがクサかったから寝てゴマかしてた」

「灯りが(くさ)い?ああ油の(にお)いだね、獣族のアンタにはキツいか」

「灯りの魔具(クジキ)は?」

集落(ここ)じゃ使ってない」

「ナンで?」

「ヒラ様が嫌いなんだよ」

「ガンコジジイめ!!」

「ハハハその通りさ。済まないね、我慢しとくれな」

「解った、我慢するヨ」


あれから肉の丸焼きが残ってるからとそれを食って昨日はスグ寝た。寝る前にナサ兄さんのシンセキのオバさんはドコにいるのか聞いたら、あのオバさんはエラい人でこの集落のコトで手が離せないんだって。

オバさん達には、いざとなったら逃がしてやるって言われたケド、それには首を振った。兄さんの故郷だから余計なコトして迷惑かけたくないんだ。それに逃げなくてもフツとカーラが迎えに来てくれるし。


「ナニ?コレ」

「これは果物さ、アタシ達が今日採って来たんだよ」

「果物なの?コレ」

「ステトは知らないか、ここいらじゃ普通に成ってるものなんけどね」

もう歳まで教えたからオバさん達には普通にステトと呼ばれてる。


「野苺は食った」

「似た様なものさ。これは『グミの実』と『コクワの実』で甘酸っぱくて美味しいよ」

「食ってみてイイ?」

「ステトの朝餉に採って来たんだ、お食べ」

一つ口に入れると甘さが広がる。


「甘いし美味(ウマ)い!!」

「そいつは良かった」

オバさん達全員の名前は覚え切れない。でもこのオバさんはフゼって名前で、兄さんの大剣(ケン)を殴って曲げたヒウツってオジさんの(ツガイ)だって。あのオジさんにはフツもオレもムカついたケド、この人は優しい鬼人(ヒト)だ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

飯を食い店を出て大通りを進んで突き当たった場所に子爵の屋敷があった。入口の前に着いて呼び輪で扉を叩き迎えが出て来る間にデンボが俺達に改めて謝罪する。


「本来真っ先に屋敷(ここ)に御案内すれば‥‥私のせいで、ヒラ様の言う事を聞き入れたが為にステトさんが留め置かれ、多大な御迷惑をお掛けしてしまい、本当に申し訳有りませんでした」

「あんたが鬼人族に気を遣ってる理由も解ったしもう良いよ、な?カーラ」

自分の父親が鬼人族達に毒を入れたんだから、多少の無理も目を瞑るしか無かったんだろう。


「はい、デンボさんの誠意は受け取りましたので」

「さ、デン殿、頭を上げられよ。まだ終わっとらん」

「有難う御座います、では」

ナサの言う通りステトは人質になってるし、取引はこれからだ。


「はい、あデンボ様」

「ハヤ様にお客様をお連れしたとお伝えしてくれ」

「皆様のご案内は如何致しましょう?」

「私がするから君は報告を頼む」

(かしこ)まりました、皆様ようこそ」

中から迎えに出て来たのは人族の女で、使用人の服を着ているのに何か違和感がある。


「フツさん、あれ」

「ああ、だからか」

その違和感の正体は首に巻かれている付輪(ツクモ)のせいだ。


「『黄輪』だな」

「女性の奴隷はそうだって言ってましたね」

中央領出身の奴隷が集まってるのが『黒輪』で、その一つの集団の纏め役が俺のかつての舎弟ニノ・イシロだ。そこで一晩世話になる際、お喋り3人衆が女奴隷の付輪(ツクモ)は黄色で『黄輪』と呼ばれている事など教えてくれていた。


「じぁ領主の身の回りは『黄輪』達女奴隷の仕事か」

「それだけでは有りません」

応接室に案内してくれてるデンボが答える。


「聞こえていたんですね」

「自分から教えてくれるなんて、どういう風の吹き回しだ?」

「もうカーラさんやフツさんには下手に隠し事しても無駄だと解りましたので」

「ぬ、では俺は?」

ナサが面白く無さそうに言い返す。


「ナサさんは良いカモになられます」

「カモとな」

「騙され易そうだからなナサさんは」

「何を言う、俺はそんな簡単に騙されん」

「顎に食いカスが付いてるぞ」

「む」

顎に手をやって、早速引っ掛かってるじゃねぇか。


「嘘だよ」

「騙したのか!」

一本気なナサを騙すなんて子供を騙すのと同じだ。俺の軽い冗談にカーラとデンボが笑い、ナサだけがまだ真面目に顎を擦っている。


「デンボさん、御主人様はもう少し掛かられます」

「解った。私は皆様のお相手をしているとお伝えして」

「はい」

応接室らしい部屋に案内され座るとさっきと違う『黄輪』の女使用人がお茶を運んで来て、デンボの言付けを聞くと一礼して出て行った。


「すいません、そういう訳ですので子爵様が来られるまでお茶でも飲みながらお待ち下さい」

「あの所作とか言葉使いなどは何か教育でも?」

「特別な教育はしていません」

「しかし誰かが教えていなければ奴隷になる者達には無理であろう、あれは‥‥難しいぞ」

カーラは『黄輪』奴隷の女達の態度に感心しているのか、目の付け所が伯爵令嬢らしく、ナサは騎士爵を持つ人貴族だから自分も教えられた口だきっと。


「同じ奴隷でも中には教養がある者も居て、身を改める為でしょうか、彼女達自身が自主的にその者達から言葉使いから礼儀など教わっているんです。ですからつたな)い所が有るのは大目に見てやって下さい」


奴隷は犯罪者だけじゃ無い。契約奴隷の中には高貴な者も居るし、商売をしていた者、何の取り柄も無い者も居るだろう、奴隷になる理由は人それぞれで全員が悪では無い。ツルギ領は奴隷に有りがちな虐待行為も無さそうで、仕事を与えられて飯が食えるとなると生きる希望も芽生えるってなもんだ。希望があるなら向上心も生まれ、なるほど彼女達も解放されたらツルギ領にこのまま住むかも知れないな。


「ちょっと印象が変わったよ、ツルギ領のさ」

「子爵様が聞けばお喜びになるでしょうね」

「その子爵さんはまだなんだろ、じぁまた聞いて良いか?」

「勿論です、先程も言いましたが私に言える事はもう隠しませんよ」

「女の奴隷達は他に何してる?」

「ここ数年で成長した産業、酒の製造です」

「タイジュウとバイジュウだな」

「もう末恐ろしいですね、貴方は何でもご存知なんですか」

「『コシエ舎』で飲んだ、あんたも飲んでたろ」

「そうでした、ええその酒を彼女達に造らせています」

「女で大丈夫なのか?酒を造るなんて結構重労働だろ」

「確かに辛い作業も有りますが、領都外での作業よりは安全ですし専従させず、屋敷(ここ)の使用人の様な仕事などと交代させていますから」

「原材料はチスク国からって言ってたよな?」

「そうです」

俺達が『スイートポテト』を知ってると気付かれない様にカーラが誤魔化してくれてたが、もう俺は知られても良いからもう少し突っ込んで聞く事にする。ハヤ子爵に聞いても答えてくれなかったら終わりだし、だったらここでデンボに聞けるだけ聞く方が良い。


「デンボさん、言えなかったらそれは良い。でも嘘はやめてくれ」

「嘘?」

「酒の元になってる物は奴隷達が作ってるのは知ってる」

「フツさん」

「おいフツ」

カーラとナサがニノ達の事を気遣ってくれていたが俺は止めなかった。


「何処からその事を?」

「それはもう良いじゃねぇか、俺が気になるのはその元になっている作物は本当にチスク国から手に入れたのかって事だけなんだからよ」

「何故貴方が気にするのです?」

「何でかな~見た事無くて珍しかったからか、それとも俺がそれを知っていたか?」

デンボが『スイートポテト』を異世界の芋と知っているなら言っている意味が解っただろう、俺はそれを匂わせてでも出所が知りたかった。


「‥‥実は私も詳しい事を知らないのです、これは本当に偶然であって種になる物がチスク国からツルギ領に持ち込まれました」

「今まで見た事も無いのか?」

「はい、まだ世に出ていないチスク国の作物だと思っていましたが、違うんですか?」

「‥‥‥」

デンボはあの芋達が異世界の物だと知らないのか、知っていたら俺をその類の者だと思った筈だ。


「その偶然とは人ですか?物ですか?」

俺が黙ってるとカーラが話に加わる。


「それは、申し訳有りません」

ハヤ子爵に聞けって事だ、答えてくれるか解んないけど。


「解った。でも上手く考えたもんだぜ、林業のツルギ領なら打って付けだし」

「フツさん、打って付けとは?」

「あの酒を造るのは火を使うんだよ」

「酒を燃やすと言うか?」

「ある意味な」

アメリカ人達の持って来た酒は強烈にきつく、無色透明とか透き通った茶色で自家製の酒は濁ってて臭かった。俺はその自家製の酒をベトナム人達が造っていた所を見た事が有る。簡単に言ってしまえば酒を造るには水と穀物を混ぜ気泡が出て来るまで置いておき、そこに『スイートポテト』や『ポテト』をドロドロになるまですり潰してい入れ今度はそれを沸騰させて、その蒸気を冷まして液体になった物が酒になる、とうる覚えだが多分そうだったと思う。


「火を焚く以外は地味な作業だから女達が造るのも、まぁ納得だけどさ」

「貴方は何者です、何故それを知っているのですか」

「申し訳有りません」

今度は俺がそう答えてやった。


読んで頂き有難う御座います。

次回更新は7/27予定ですがフライング可能有りです。


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