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BOX・FORCE-Another Story-  作者: hime
Yukinoshita
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3/6

Yukinoshita.part2


_





それから、益富と白峰のボクシングと喫茶店の二足の草鞋生活が始まった。

白峰が高校生になると、益富は正式に白峰をアルバイトとして雇用した。



そして、6年が過ぎ…。



白峰は19歳になると、本格的にボクシングに励むようになった。


そんなある日の事であった。

いつものように、喫茶店の営業を終えて

片付けが終わった頃に、益富は白峰を呼び出した。


「…すまない。また、大事な話がある。」


益富はそう言って、前(・)と(・)同(・)じ(・)席(・)に白峰を案内した。

席に着くなり、益富はポケットから《《何か》》を取り出した。

それは、小さな箱(・)のようなもので、微かに赤く光っていた。


「…渉、お前には話しておかないとと思ってな。

…実は、俺はこれから少し店を空けなければならない。」


益富はそう言うと、そ(・)れ(・)をテーブルに置いた。


「…なんですか?これは。」


白峰は不思議そうにそ(・)れ(・)を見た。


「昨今、未(・)知(・)の(・)生(・)命(・)体(・)が我々の平和な日常を脅かそうとしているらしい。

…これは、極秘事項なのだが

政府が、秘密裏にそ(・)れ(・)に対抗する組織を結成したんだ。」


益富の話は、どこか現実味がなかった。

何かのアニメの話なのか、半ば冗談なのかと思いながら白峰は聞いていた。


「そして、それに俺は選ばれた。

今後、俺はその組織に加入して戦闘員となる。

未知の生命体に対抗する武器、それがこの

"箱装(ボックス・アーマー)"というものらしいんだ。」


俄かに信じがたい話であった。

しかし、白峰は目の前に突き出された"箱装(それ)"を見て、それが現実の話ということを認識した。


「…師匠を選ぶ程という事は、余程の組織なんですね。

その、"BOX・FORCE(ボックス・フォース)"とやらは。」


白峰は驚きや衝撃といった感情は一切出さずに、益富の話を受け止めた。


「…俺が不在の間、ジムとこの店をお前に頼みたいんだ。」


益富は、白峰の評価を受け取る前にそう言った。

流石の白峰も、益富のその一言に驚きを隠せずにいた。


「…俺が…。」


白峰は困惑していた。

益富が背負う、彼の大切なものを引き受ける覚悟が

白峰にはまだ無かったのだ。


「…少し、考える時間をください。」


白峰はそう言うと、益富を見ずに徐に立ち上がった。


「…すまない、渉。

突然こんな話をされて、荷が重いとは思うが…。

俺も、必ずまたお前らと平和に過ごせるように

帰ってくる。約束する。」


益富は、立ち去ろうとする白峰の背中を見ながら

そう言った。



_



「…その後の事はまあ、言わなくても分かるだろ。

…里海のお父さんと同じだ。

"第1次NAMELESS大戦"によって、師匠は殉職した。」


白峰はそう言うと悲しそうな顔をした。

菊野はその気持ちを、誰よりも理解できる1人である。

菊野自身も、先の大戦において父親を亡くしている。


そんな話をしている頃に、2人は既に食事を済ませていた。


「…ごめんな。せっかくの休日なのに、こんな話しちゃって。」


白峰は両手を合わせて、菊野にごめんと謝った。

そして、手際よくマスターの元へ行き会計を済ませた。


「…あっ、渉さん。お金…。」


その白峰のスマートさに、菊野は財布を出すのが追いついていなかった。


「あ、大丈夫。気にしないで。」


白峰は、財布からお金を出そうとする菊野を制止した。

そして、軽くマスターに挨拶すると菊野の手を引いて店を後にした。


その速さに、菊野は全く追いつけていなかった。

浅草の街を少し歩いたところで、やっと自分が白峰と手を繋いで歩いている事に気がついた。


「…渉さん…。」


菊野がそ(・)れ(・)に気がついてそう呟くと、白峰は慌てて菊野を見た。


「あっ…ああ、ごめん。急に…。」


白峰もそれまで、自分のとった行動に気がついていなかったのか、そこでようやく我に帰ったようであった。


「…いや、大丈夫です。」


菊野は照れながらそう呟いた。

菊野の脳内は、必死に話を逸らそうと思考を巡らせていた。


「…あっ…でっ…でも、そう言えば、

渉さんがお店を引き継がなかったんですか?師匠から…。」


菊野の口から出たのは、先程喫茶店で話をしていた続きであった。


白峰は、菊野の問いに歩きながら少し考えて

ゆっくり話し始めた。


「…そうだね。さっきのマスターは、師匠のお父さんの知り合いで、ジム仲間でもある人なんだ。」




_



益富からの要求に、白峰は何度も考えを巡らせた。

"師匠"の思い、自分に与えられた責任と重圧…。


1週間程悩んだ末に、白峰は益富を呼び出して

その答えを伝えた。



「…師匠、すみません。

やっぱり、俺には師匠の大切なものを守れる程の自信はないです。」


白峰は、悩んだ末に益富の要求を拒否する答えを出した。

益富は白峰の答えに、驚くことも落胆することもなく、落ち着いた雰囲気のままであった。


「…こちらこそ、すまない。

お前に、重荷を背負わせてしまいそうになってたかもしれないな…。」


益富はそう言うと、座りながら大きく背伸びをした。


「ただ、安心しろ。

お前がそう言うかもしれないと思って、俺もちゃんと準備はしてある。」


そう言うと、益富は店にいたある人物を席に呼んだ。

その人物は、白峰も見覚えのある人物であった。


「彼のことは、覚えているか?」


益富に紹介され、その人物は白峰に深く頭を下げた。


「…その節は本当に申し訳ない事をした…。」


その人物は、大きな体の男性であった。

男性がそう言って頭を下げ、再び頭を上げた時

その男性の姿に白峰は驚いた。


「あなたは…。」


「…昔、"MAX"と敵対してた"|SPEED・SPIRIT《スピード・スピリット》"のメンバーでした、

黒山 越典(くろやま えつのり)と申します。」


黒山と名乗るその男を、白峰は知っていた。

それは、白峰が14歳の頃に、"MAX"を見物した時に襲撃に巻き込まれた際、白峰をメンバーと誤って殴打した人物であった。


しかし、そんな彼には当時の面影はそこまでなく

小綺麗な格好をした30代男性となっていた。


「…あの時は、君にとんでもないことをしてしまった…。

今回の話が、償いになるとは思っていないが

少しでも益富君がいない間、君の力になればと思ってこの話を受けさせてもらった。」


「…そんなっ!俺別になんとも思ってないし…それに、あれは面白半分で見物に行った俺の責任でもあります。

ただ、そのお陰というか、それがなければ俺はここにいなかったので。」


白峰は、黒山を責めるどころか擁護した。

それは白峰が述べたように、あの一件が無ければ白峰の今はないからだ。


「…君はそう思っててくれたのだね。本当に、何と言ったらいいか…。

その代わりと言っては何だが、お店とジムの事は任せて欲しい。」


黒山はそう言って、右手を差し出した。

白峰はそれを見ると、何の抵抗もなくその手を握った。

そして白峰は、益富を見て言った。


「師匠。俺も今まで通り、お店のサポートとジム通いは続けます。黒山さんのフォローは俺が務めさせて貰います。」


白峰はそう言うと、黒山と掴んだ右手を離し

益富に拳を向けた。


「…師匠。どうかご無事で。

俺たち、師匠の帰りを待ってます。」


「…ああ。ありがとう。

必ず、ここに戻ってくるよ。」


それは、守られることのなかった

益富と白峰の唯一の約束となった…。





_


「…それがさっきのマスターなんですね。」


「ああ。彼(・)がいなければ、今こうして

俺は"BOX・FORCE"にすらいなかったのかもしれない。」


白峰の話を黙って聞いていた菊野の顔は、

深刻どころか何処か嬉しそうに見えた。


「…何かおかしかったか?」


少し笑顔の菊野の顔を見て、白峰はそう聞いた。

菊野は、クシャッとした笑顔で答える。


「だって、マスターさんがいなかったら

渉さんが"BOX・FORCE"にいなかったんですもんね。

って事は、私とも出会ってなかったって事だから…私もマスターさんに感謝しなきゃ!って。」


菊野のその台詞に、白峰はあからさまに動揺した表情を見せた。

そんな白峰の様子を、今度は菊野が不思議そうな顔をして覗いた。


「…私、なんか変なこと言いました?」


"NAMELESS(ネームレス)"と戦うために、"BOX・FORCE"第3部隊"ローズ"にいた菊野と、今白峰の目の前にいる菊野は別人かのように、菊野は一段と可愛らしい女の子の仕草を見せた。


「…いや、全然変じゃない…。」


白峰は、抑えられない動揺を無理矢理はぐらかしながら、そう答えた。


「そうだ。」


白峰は話を逸らそうとしたのか、ふと目の前を指差して行った。


「…里海は、あそこ行ったことある?」


白峰が指差す先には、頂上が見えないくらい高く聳え立った、巨大な電波塔があった。


「…スカイツリーですか…まだ行ったことないですね。」


菊野は首を傾げてそう言った。


「…そっか。じゃあ行ってみる?」


「はいっ!」


白峰の問いかけに、菊野が間髪入れずにそう答えると、白峰は少し強めに菊野の手を引っ張った。



_

part.3に続く。


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