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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサ 学校編2
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魔物降臨 3


 嫌がる男性を細穴の中に無理矢理押し込み、上から丸い蓋を被せると、中から開けられない様に閂を嵌める。

 何度も叩かれる細穴の蓋を無視して、氷鎧を創り直してから飛び立とうと空を見上げたその時、フォレアスタークが居る場所から火球が空に向かって放たれたのを確認した。

 リサはそれを確認するとそのまま飛び上がり、その場からフォレアスタークを見る。フォレアスタークも飛び上がったリサに気が付いた様で、首を左に向けてリサに視線を送ると、こっちに来る様にと手招きをした。


 リサは空から降り注ぐ魔素が抜けた核を避けながら、フォレアスタークの方に羽ばたき、隣に降り立つと声を掛ける。


「どうしたの?」


 フォレアスタークの左眼には2重の円が浮かび上がっており、観察眼を発動している事が窺える。その視線は空に浮かぶ虹色の魔法陣を捉えており、リサは釣られて魔法陣を見上げた。


「先程から、あの魔法陣が集めておる魔素の流れがおかしいのじゃよ。もしかすると、儂に対抗して小物を作る事を辞め、1匹デカいのを作り出すつもりかも知れぬ」


「それって……魔法陣が意思を持ってるって事?って、そんな事より!小物でも梃子摺ってるのに、大物なんて無理だよ!?どうするの!?」


 リサは先程倒した魔物2匹を思い出しながら、声を荒げてフォレアスタークを見た。

 鶏型の魔物は大型で動きも遅いという事で無傷で倒せたが、それでも倒す事自体にかなりの労力を要し、人型の魔物に関しては2人を犠牲にして尚、自分も致命傷を負わされている。しかも、剣を2本用意していなければ、更に犠牲者を出していたであろうし、自分も行動不能に陥っていた可能性も高かった。


 それなのに、未だに数多の魔物が街の中を闊歩しているこの状況で、それ等より強大な魔物が作り出されたとしたら……確実にこの街は終わる。リサは顔色を悪くしながら両手の剣を握りしめて俯く。


「リサ、お主は街に残る小物を出来るだけ片付けるのじゃ。近くは儂の手下共が相手取る、お主は離れた場所の奴を頼む」


「……人命救助は、出来そうに無いかな」


「……目の前の1人に手を伸ばせば、自分含めた皆が死ぬ……早く行くのじゃ。手は伸ばせずとも、目の前の脅威を取り除く事は出来るであろう?」


 リサの言葉にフォレアスタークは顔色を一切変えずに訓示を垂れる。

 自分が甘ったれた考えをしている事は百も承知だ。だからこそ、フォレアスタークの助言が心に深く沁みた。


「フォレアスおじさん、これあげる」


 リサはフォレアスタークに核で出来た、リサの魔力が篭った剣を手渡した。


「これは?」


 フォレアスタークはその剣を一瞥してから受け取り、再び空を見上げた。


「私の魔力がいっぱい篭った核の剣。フォレアスおじさんなら、その中の魔力が使えるでしょ?魔物2匹分の魔力だから、少しは足しになると思う」


「……受け取ろう」


 リサはその言葉に頷くと踵を返し、氷翼を羽ばたかせながら飛び上がると、一先ず冒険者が一番少ないであろう北側へ飛び立った。


 直下では、今も尚魔物が蹂躙と殺戮を振り撒き、逃げ惑う人々を赤いシミへ変えていく。ソレに挑む冒険者達の姿も散見されるが、誰も彼も魔物達には歯が立たず、無惨にも肉塊に成り果てていった。

 街にいる冒険者の殆どは星2以下の者達。一般人に毛が生えた程度の彼等では、当たり前だが手も足も出る相手では無い。彼等もそれは分かっているだろう。それでも命懸けで戦う彼等に、リサは胸の中で「無事でいて」と無意味に願う。


 願うだけでは無く、一応隙がある魔物を見つけると地上に急降下して、魔物の身体の一部を斬り飛ばす位の援護はする。

 後は、目の前で戦っていた者達が核から肉体を剥がしてくれると信じて。


 リサは手に持った狼型の魔物の頭部を炎で灰に変えると、巨大な魔法陣の北側、何故か狼型の魔物が1箇所に集まっている場所を見つけて、そこに向かって急降下した。


 その大通りに居たのは、逃げ遅れた様子の一般人と冒険者達。十数名の一般人を囲む様に10人の冒険者が魔物との間に剣を構えて立っていた。

 その中の1人、一般人に紛れて中央にいる魔法使いらしき女性が、急降下して近づいて来るリサを見て「上!」と大きく叫びながら手に持った瓦礫を投擲した。

 一般人が怯えた声を上げる中、リサは瓦礫を左へ転がる様に避け、真下にいる狼型の魔物の頭の上に、身体強化を使って地面を割りながら着地する。そして、手に持った氷剣を、狼型の魔物の残された体を縦に割る様に、峰を爆発させながら振るうと、核を弾き飛ばしながら、狼型の魔物の肉体を2つに裂いた。


「狼は耐久が低くて助かるよ」


 そう呟きながら、真隣に居る狼の横っ腹を切り上げ、上半身と下半身の2つに分けた。さらに、斬り飛ばされた上半身の断面。胸部の内側から露出した核に左手を突っ込み、浮遊させた氷剣で峰を爆発させながら首を刎ね飛ばして魔力を流し込むと、核を肉体から引き抜く。

 左右に居る狼型の魔物は、仲間が殺されても怯む事無く、仇を討たんとばかりにリサに飛び掛かった。リサはその挟撃を一対の氷翼で同時に防ぎ、左側の片方は魔力操作で操る氷剣で上から、もう片方は咄嗟に作った核の槍で下から、喉を貫いた。

 だが狼型の魔物は、自分の肉を引き裂きながら刺突の拘束から逃れ、距離を取ると傷口を触手の様な肉で塞いだ。


「その分、再生能力が高いんだ。だけど、核から肉体を離せば、再生はしない……と」


 核を弾き飛ばされた肉体は既に腐肉の様に弾力を失い弛んでおり、再生する様子は見せない。であれば、再生能力が幾ら高くても関係無い。

 リサは核を剣の形に変え、氷魔法で急速に冷やすと、近くに居る刃毀れした剣を構えた冒険者の足元の地面に投げ刺した。


「それ使って」


「あ、ありがとう!」


 冒険者の男は持っていた剣を鞘へ納めると、地面に突き刺さった核剣を引き抜いて構え直す。


 リサは先程自分に襲い掛かった右側の狼に走り寄ると、体を反時計回りに回す。そして、対抗する様に飛び掛かってきた狼型の魔物の動きに合わせて、氷剣の峰の煤を爆発させて回転速度を上げると、首と胴を刎ね飛ばした。

 そしてすぐ、空中に浮かんだ魔物の胴体を掴み取る様に、核に手を突っ込んで肉体から核を引き抜いた。その核で再び剣を作り出して氷魔法で急速に冷やすと、もう1人の、刃毀れした剣を持った女性冒険者の足元に投げ刺した。


 残る狼型の魔物は4体。リサが活路を開いてくれたお陰で、冒険者達は狼型の魔物と3対1の構図を作る事が出来、難無く残りを倒し切る事が出来た。


「助かった!君が来なければ全滅もあり得た」


 冒険者内の1人がリサの元へ駆け寄り頭を下げる。


「運が良かっただけだよ。それより、早く避難を。北へ行けば魔物は居ないからそっちに逃げて」


 それをリサは軽く流し、自分の見た情報を元に逃げるべき方角を指差して伝えた。


「ありがとう。聞いたかお前達!北へ逃げるぞ!早く怪我人を背負ーー」


 その時、東南側の脇道から建物が倒壊する音が近付いてきて、そこから砂埃と共に、複数の冒険者らしき人が叫びながら飛び出してきた。


「おいおいおいおい!ふざけるなよ!お前等!早く逃げるぞ!」


「でもまだ怪我にーー」


「怪我人は置いていく!このままじゃぁ、どの道全員死ぬぞ!」


 その言葉に、冒険者や動ける一般人は顔を顰めて言葉を詰まらせる。足を怪我して動けない3人の男女は、皆泣き始めるが、「早く逃げろ」と周囲の人達の背中を押した。


「嬢ちゃんも早く逃げるぞ!」


「私は足止めするから!貴方達はその人達を連れて逃げて!」


 自分の方に手を伸ばす男性冒険者から逃れる様に、リサは砂埃が更に立ち込める脇道へ走り出した。


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