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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサ 学校編2
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リサ、恐る。


 研究室に着いた4人は、互いに顔を合わせようとはしない。リーリアだけは、何度も横目でリサの顔を窺うが、話し掛ける事は無い。


 本当に、ただ移動しただけ。何かするでも、話すでも無く、ただ立ち尽くす場所を変えただけ。

 それであれば、あの場で解散でも良かったのでは無いか。リサはそう考えるが、良く無い事は自分でも理解しているので、口には出さなかった。


 延々と揉まれ摩られを繰り返される右手から意識を逸らして、フォレアスタークの顔に視線を上げると、リサは意を決して、だが、自分の体質には触れずに、先程起きた出来事を……フォレアスタークが何処から見ていたか分からないので最初から伝える。


「さっきの魔人だけど、多分人工魔石に釣られて話し掛けてきたんだと思う。フォレアスおじさんも知ってると思うけど、魔力で再構築した核は変なオーラを発してるらしいし、実際魔人が仲間の波長として感知してるし」


 フォレアスタークは少しだけ安堵した様に息を吐いて肩の力を抜くと、顔を上げてリサに向き直り、自分の意見を話し出した。


「恐らく、そうじゃろうな。儂の研究で分かっている事を教えると、魔人の核は少々特殊な物になっておってのぅ。周囲の魔素を吸い上げ、魔人の魔力を自動で練り上げ、周囲へ拡散しておる様なのじゃよ。仮説ではあるが、周囲の魔素を効率良く集める為に、己の魔力を空中へ放出しておるのではと考えておる。……話が逸れたが、魔人の核の性質と、人工魔石の性質が似ておるのは確かじゃ」


 リーリアの持つ魔剣に使われた人工魔石は、リサが大量の核を溶かし、そこにリーリアが大量の魔力を流し込んで作り上げた、リーリアの魔力で出来たリーリアの魔石である。

 リサとは正反対の水色に輝くその魔石は、リサの持つ紅宝玉や魔石の角と同じで、ラズリー曰く“変なオーラ”を纏っている。それは、周囲の魔素に干渉し易くする為の物だ。つまり、フォレアスタークが説明した、魔人の核と殆ど同じ性質という事。


「今回リーリアが狙われた……と言うより、話し掛けられたのは完全に私の所為なの。ごめんね、リーリア」


 リサは隣で自分の手を握り続けるリーリアに顔を向けると、目を見詰めながら謝罪した。

 リーリアは瞼を閉じるとゆっくりと首を横に振る。


「リサが謝る事など何もありません。私は、リサに命を救われたのですから。寧ろ、謝らなければいけないのは私の方……私が、私があの時動揺して、彼女に視線を送らなければ……」


 リーリアの手には力が込められ、リサの手を優しく締め上げていく。暫くの沈黙が続き、手に無意識に力を入れている事に気が付くと「ごめんなさい」と言って力を緩める。が、握った手を離そうとはしなかった。


「じゃあ、その話は終わりにして魔人の話に戻るけど、あの魔人の子。あの子、最初は変なオーラを出してなかったんだよね。途中から魔力を出してる様だったけど……何があったのか分かる?」


 リサはあの時、意識はあったものの、周囲を漂う灰の所為で周りが見えておらず、何が起こっていたのか音でしか把握出来ていなかった。だが、その肝心な音も命乞いしか聞こえてこなかったので、実質的に情報が一切得られなかったのだ。故に、突然魔人が魔力を放出した理由が分からなかった。


「儂が来た時は魔力を放っておったが……」


「フォレアスさんが来る丁度前だね。あの魔人の髪紐が解けた瞬間に、魔力が溢れ出た様に感じたよ。多分、髪紐に特殊な魔術が組み込まれていたんだろうね」


「髪紐かぁ……確かに、髪の毛で頭の核を隠してる感じだったし、可能性は高いね」


「であれば……面倒じゃな。魔人特有の魔力を隠蔽出来、更に学校の制服を手に入れられる人物という事になるからのぅ。可能性としては、卒業生から買い取ったか、在校生から盗んだか……若しくはーー」


「ーー学校関係者に協力者がいる可能性……だね」


 ビルの言葉に、フォレアスタークは頷く。


「去年の魔竜出現の件もあるでのぅ。あれは、内部に協力者が居らずとも出来る事じゃったからな。じゃが、今回の件で協力者が居る可能性は高まったのぅ」


「とは言っても、全く見当は付かないけど。居たとしたら教員の中だろうけど」


「教員の調査は済ませておる。教員に協力者は居らんと断言しよう」


 ビルは訝しむ視線をフォレアスタークに送るが、すぐに視線を逸らしてリサを見詰める。


 学園に侵入した魔人の話は終わった。情報は伝え、話し合いも済ませた。本来であれば次は今後の行動について話し合いをするべきであるが、どうしても気になる事があり中々話を進められない。


 フォレアスタークも同じ考えの様で、リサに視線を移して黙り込む。その目には、何かを問いただそうとする意思は感じられないが、疑問を解消したいという欲が見え隠れしている。


 リサは2人の視線に気付いているが、自分から話すつもりは毛頭無い。聞かれたとしても答えるつもりは無いが。

 2人もそれに対して気付いているので、無闇に聞こうとはしない。何も、隠し事しているのはリサだけでは無いのだと、そう思いながら。


 リーリアだけは、未だにリサの手を揉み摩りしながら黙り込んでいる。

 臆病な性格の人物が、突然あの様な出来事に巻き込まれ、しかも自分が標的にされたのだから、動揺するのは仕方無い。寧ろ、あの出来事の後にしては冷静な方だ。

 だが、何故リサの手を常に握り、頻りに揉んだり摩ったりしているのかは、3人共疑問に思っている。


再び、気不味い時間が流れる。沈黙や静寂自体は、この場にいる全員嫌いでは無いし、リサに関しては好ましい空間だった。だが、この場の様に何とも言えない空気が流れているのは、全員が苦手である。


「……ねぇ、今後の話しない?反乱を起こそうとしてる魔人が、後どれくらい街に居るか分からないし、学校に危険を犯してまで来たって事は、何かしら行動を起こすつもりだったんじゃ無いの?」


 この場の空気に耐え切れなくなり、ついにリサが話を切り出す。それは、ビルとフォレアスタークが望んでいた物では無かったが、混乱した頭では考えつく事が出来なかった内容だった。故に、リサのその言葉を聞いて2人共眉を上げると互いに顔を合わせる。


「他事の所為でその考えが抜けておったわい。こうしては居れぬ、リサ、氷鳥を出来るだけ多く創ってくれ。ビルは氷鳥の目の届かぬ場所の捜索、儂は動ける人員を集め総出で遠見の魔法で捜索に当たる。フロスティーゼは小娘の所へ戻ると良い」


 そう言われ、リサは氷鳥を20羽程創り出し、ビルはその中の1羽を借りて、自分用の遠見の魔法陣を付与した。ただ、やはりリーリアだけはリサから離れる様子を見せない。

 リサはフォレアスタークに質問する。


「フォレアスおじさん、氷鳥を創った後はどうしたらいい?自由にしていいなら、ここでリーリアと一緒に氷鳥を自分で動かしーー」


 その瞬間、研究室の扉が激しく叩かれ、此方の返事を待たずに勢い良く開け放たれた。


「フォレアスターク様!居られますか!?」


「何があった」


 部屋に傾れ込む様に入って来た男性の顔色は悪く、狼狽しながらも激しく怯えた様子で室内を見渡す。そして、フォレアスタークを見つけると此方の声に聞く耳を一切持たずに叫ぶ様に情報を伝えた。


「ガルガラ西北と南東で魔人が魔道具を起動!術式“魔物降臨”が発動して、既にその付近の区画は半壊しております!」


 男性の伝えた情報は、リサ達が考えていた物の中で一番最悪な物であり、自分達の今までの行動全てを、水泡に帰す物であった。


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