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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサ 学校編2
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リサ、魔族を見つける。


 雨が降り続ける日の夜。リサは頭巾が付いた外套を羽織り、額に人工魔石を魔力操作で貼り付け、氷鎧を胸に付けて背中側に氷翼を創り出すと、寄宿棟の自分の部屋の窓から飛び立った。


 星明かりが一切無い雨雲に覆われた空。だが、ガルガラの街の大通りには照明魔道具が取り付けられており、夜でも大通りは歩くには十分な明るさを保っていた。

 だが、今日は雨なので人通りが殆ど無い。冒険者街まで出向けば雨でも関係無く賑わっているだろうが、今回リサが用がある場所はガルガラ西北、貴族街にある市場だ。

 風生成で雨粒を避けながら、魔力操作を上手く使い氷翼を移動させる。

 氷翼は、翼の力で飛んでいると思わせる位力強く羽ばたいているが、実際、羽ばたきは全く関係無く、氷鎧と氷翼を魔力操作で、任意の方向に動かしているだけである。

 速度に関しては、目にも止まらぬ速さで移動する事も可能だが、それをすると肉体の方が保たない。剣を振るう速度と同じ速度で飛行したら、良くて四肢首消失だ。リサは身をもって経験している為、速度は早馬程度に収めている。


 そのお陰で、目的地である貴族街市場に、十数分程度で辿り着いた。

 リサは、街を囲う城壁の様な煉瓦壁の上を歩く衛兵に、見つからない様に注意しながら、市場の脇道や小道を上空から見下ろす。


 市場には一切街灯が存在しない。少し離れた場所にある煉瓦壁には、転々と小さな照明魔道具が付けられているが、それでも、市場には光が届かない。

 だがその状況は、リサにとって有難いものだった。視力を頼る者には此方の姿が見えず、一方的に此方から観察できる状況で、視力に頼らず此方の姿を見る者が“目立つ”状況だからだ。

 “現に”、路地裏を慣れた足取りで進んでいる頭巾を深く被った人影が、上空を頻りに気にしている様子が窺える。

 得体の知れない不気味な魔力。それを感じ取れるリサは、人混みに紛れた魔人でも探す事は出来るだろう。だが、正確に個人を特定する事が出来る訳でも無く、かと言って、片っ端から声を掛ける訳にもいかない。

 なので、今回の様に向こうから気付いてもらえるのは、有り難かった。

 リサは、相手に警戒されない様ゆっくりと近付き、曲がり角の先に降りると、氷翼を消して外套で自分が覆われている事を確認してから、煤の幕で口元を隠して頭巾を深く被り、その“魔人”の前に姿を現した。


「…………あんた、何者だ?」


 男性は自身の腰の後ろに右手を回しながら、外套に付いた頭巾が捲れない様に指で摘んだ。

 その魔人の反応を見たリサは、分かり易く肩を落とすと、深く溜息を吐いた。


「はぁ……。脳が侵食されているとは……これでは“処分”対象ですね」


「何言ってーー」


 男性が口を開いた瞬間、リサは物質生成で男性の手足と腰、首に石の輪を嵌め、それを動かして空中で大の字にさせた。


「な……!こんな物ーー」


「ーー抵抗するという事は……弁明する事が無い。そう判断してもよろしいですか?」


 男性はリサの話に耳を一切貸す様子を見せずに、身体強化の魔法を行使して、石の輪を壊そうと必死に踠き始める。


「その程度のお粗末な身体強化で壊せるとでも?ただの魔人風情が」


 リサは男性に近付くと、真正面から抱き付く形で男の腰の後ろに手を回し、隠し持っていた短剣を鞘から抜き取る。


「ですが、核は核。回収させていただきますね」


 そのまま右手に握った短剣を、男の額……核の付け根に触れさせる。その瞬間、


「ま、待ってくれ!あんたの顔を見るのが初めてだったから警戒しただけだ!分かるだろう!?最近物騒なんだ!」


「えぇ、最近物騒ですね。“何故か”街に住む同胞の数も減っていますし」


「やっぱり……計画関係者か。しかも、魔石化した額の角を見る限り……」


 男性の顔を見る為に上を見上げた所為で、リサの被っていた頭巾が捲れ上がり、額の角が黒髪の間から突き出ていた。


「最近、急に手駒が減ったと、親友から相談されていまして。これ以上、此方の手の内を見せる前に、出来損ないの処分をする事に。ですが……そうですか、警戒していただけであれば、今回は見逃しましょう」


 そう言うと、額から短剣を離して、男を拘束していた石の輪を霧散させると、短剣を掌の中で半回転させて柄を男に向ける。


「お返しします」


 男は恐る恐る柄を掴み、リサが刃先から手を離したのを確認すると、腰の鞘に納めた。そして、怯えた様子でリサに話し掛ける。


「なぁ……あんたみたいな大物が、なんでこんな場所に居るんだよ。しかも、こんな時間に……」


 リサは男の言葉に答える事無く、少し離れた壁の下の角部分を顎で差した。男は振り返り、目を凝らしてリサの示した場所を見ると、蠢く存在に気付いて首を傾げた。


「鼠……?それが一体ーー」


 その瞬間、リサは石槌を創り出してソレーー石で出来た石鼠を叩き割ると、驚きの声を上げる男にこう言った。


「魔術で創られた、動物型の監視用ゴーレムです。恐らく、シオン魔導学校の長……フォレアスタークが創り出した物でしょう。本当に、面倒な方です」


「監視用ゴーレム……!?そ、それが本当なら、俺も次期に捕まるって事か!?」


「貴方に付いていた様ですので、その可能性も大きいかと。そこで、貴方にお願いがあるのです」


「な、なんだ?助けてくれるのか?」


「えぇ、手駒が減るのは困りますし、今後の計画の為にも……。さて、お願いというのは、念の為に隠していただいた魔道具の回収、ただそれだけです。これ以上、アレの数を減らしたくありませんし、彼等に譲渡するつもりもありませんから。それに……下手に起動されれば、楽しみが減ってしまいますからね……!ウフフフ!」


リサは男に背を向けながら笑い声を上げると、軽く咳払いをして「失礼」と言いながら再び向き直る。


「一応、回収には私も同行します。ゴーレムに回収場所を見られて、他の隠し場所の手掛かりを教えたくありませんから」


「…………わ、分かった。他の仲間には今から伝えに行くか?」


「仲間……?あぁ、駒同士で徒党を組んでいるのですか?そちらはお好きにどうぞ。どの道、会いに行く事には変わりありませんので」


「……いや、悪い。今のは忘れてくれ」


「警戒しているのでしょう?一度だけ見逃しますから、棲家から必要な物だけを持ってきなさい。魔道具を回収したら、すぐに転移魔法で街を出ますから」


「いや、必要な物は全部身に付けている。金と剣。それさえあれば十分だ」


 リサは男の言葉に感心する様に頷くと、首を傾げながら口元に指を当て、優しく笑う。


「うふふ!貴方は私が思っていたより、駒として優秀の様ですね!会えてよかったです」


 魔人の男はリサのその仕草に肩を跳ね上げると、顔を横に逸らして照れ臭そうに右手で頭を掻き始めた。


「そ、そうか?あんたみたいな格上の魔人にそう言って貰えるなんて、感激だぜ」


 男は先程よりも姿勢を正して胸を張ると、リサの顔を見ずに後ろを向き「こっちだ」と上擦った声を上げると、ガルガラの西門の方へ歩き出した。


 リサはその男の姿を見て、再び柔らかい笑い声を上げた。


(本当に運が良い。初遭遇の魔人がお目当ての人物だった事も、私の話を鵜呑みにしてくれた事も。何より、戦士として優秀そうな人材な事……!“実験”の被験者に丁度良い逸材だよ……!)


 男は、リサのそんな考えを微塵も知らずに、上機嫌に鼻を鳴らしながら魔道具を隠していた場所にリサを案内する。

 そこは、西門から少し離れた、大通り脇の脇道。煉瓦の代わりに、大雑把な形の石が埋め込まれた地面の一角に手を当てて、魔法陣を描き出すと、地面の中から筒状の鉄の棒を抜き出し、蓋を開けて中身を取り出した。


「賢いですね。ですが、自身が捕まった場合の事は考えていたのですか?」


 首を傾げるリサに、男は殺気を込めて睨みつけると、


「……知らないのか?」


 と低い声で問いただす。


「知りませんよ。私が知らなくても、何も問題はありませんから」


 少しだけ、不機嫌に顔を顰めながら、男性から目を逸らして立ったまま地面に手を翳すと、その先に現れた魔法陣を見て男性に視線を送る。


「転移先は北東の森。転移先に男性がいるので、それ以降の行動は彼に聞いてください。後、分かってるとは思いますが、魔法陣から身体の一部を出さないでくださいね?責任は取りませんから」


「魔道具は渡さなくて良いのか?」


「無理に奪って壊れるのは嫌なので」


 リサがそう言うと、男は大きく溜息を吐いてリサに歩み寄ると


「あんた、なんだかんだ言って優しいな。本当は、最初から殺すつもりなんて無かったんじゃないか?」


 そう言いながら、魔道具を手渡した。

 リサはそれを受け取ると、クスリと笑って男性を見上げる。


「変な事言ってないで、早く魔法陣に乗ってください。無理矢理押し込みますよ?」


 その言葉に、男性はヘラヘラと笑いながら両手を上げ、魔法陣の上に乗る。


「分かったよ!……いやぁ、もし良かったら、あんたの部下にしてくれよ。その方が楽しめそうだしよ」


「貴方次第ですね。ではまた後で」


 その瞬間、地面に描き出された魔法陣が強く輝き出し、魔人の男が姿を消した。

 その後、リサは周囲を一度確認して、自分の首元に手を差し出す。すると、黒髪を掻き分けて氷鼠が姿を現し、差し出された掌の上に乗った。

 そして、氷鼠の顔の前に、リサは“先程から何度も行っている様に”空中に魔力で文字を書き出した。


“今からそっち行くね、フォレアスおじさん”


 淡く輝く魔力の文字を霧散させるとリサはその場に屈み、氷鼠を地面へ下ろした。


 外套の背中側を大きく捲れ上げながら氷翼を創り出すと、その場から飛び上がり、リサは学校へと向かった。

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