リサ、魔法剣を完成させる。
リサとリーリアが時間を潰していると、先に2人に話し掛けてきたのは、すぐ近くに座り込んでいるビルだった。
「出来た。取り敢えず試してみたいけど……どう組み込もうかな。リサちゃん、火属性付与した短剣の魔法陣って消せる?」
「まぁ、深く彫ってる訳じゃないし……耐久面を気にする必要無いから出来るけど……」
リサは、足元に置かれた、魔石が鞘に露出していない短剣を手に取ると抜剣して、右手の人差し指の腹で魔法陣の刻印を撫でると、刻印を消して魔石の周囲をほんの少しだけ窪ませた。
そして、地面に短剣を置くと、ビルはその短剣の腹を人差し指で撫でて魔法陣を描き出す。
描き出された魔法陣は、魔石を囲む様に白い魔法陣と、鋒に伸びた赤い帯状の魔法陣の2つ。
その2の魔法陣は繋がっており、境目は白色から桃色、赤色と階調を踏んで、綺麗な見た目をしてる。
「綺麗な色〜。魔法陣ってくっ付けると、グラデーションが出来るんだね。初めて知った」
リサはそう言いながら、短剣に魔力操作で熱を操り、魔法陣の文字や線に沿って剣身を溶かし抉っていく。
溶け出した金属が盛り上がってくるので、リサはそれを、文字や線が潰れない様に爪で丁寧に取り除いていった。
刻印を刻み終えると、リサは埋め込まれた魔石に指を触れ、魔力を一気に流し込む。すると、魔石の周囲の刻印だけが白く輝きだした。
帯状の魔法陣は輝きを発していない。そして、帯状の魔法陣の内容である火属性付与は発動しておらず、剣身は鈍色に光を反射していた。
「えと、帯状の魔法陣が火属性付与の魔法陣なんだよね?どうやって発動させるの?」
未だに発動する様子の無い刻印を爪先で突きながら尋ねる。
「魔石に指を置いてから、指をくっ付けたまま帯の魔法陣の先まで指でなぞってみて。それで発動すると思う」
リサは言われるがまま、魔石を再び人差し指の腹で触れると、そのままゆっくり指を動かすと、帯状の魔法陣の先まで指を這わせる。
その瞬間、鍔側から剣身が燃え上がり、短剣を炎が包み込んだ。だが、何故か白い魔法陣の部分だけは炎に包まれておらず、魔石が剥き出しになって赤く輝いていた。
「おぉ〜!本当に発動した!ねぇ、これどうやって消すの?」
「魔石の周りの魔法陣を、1周なでてみて、それで消す事が出来る筈」
リサは魔石の周囲の、炎に覆われていない白い魔法陣を指でクルリと軽く撫でると、剣身を包んでいた炎は鍔側から霧散していった。
「おぉ〜!!凄いじゃん!あ、忘れない内に石板に彫っておきなよ!」
「そうだね」
ビルはすぐに石板を作り出して、短剣に彫られた魔法陣と同じ物を石板に描き出す。
「これなら、ビルの剣もスードラーの手を借りなくても完成しそうだね」
「本当だね!……で、そのスードラーはどこ行ったの?」
ビルは地面に腰を下ろしながら辺りを見回す。
「スードラーさんであれば、慌てた様子で上の階へ向かいましたよ。時期に戻ってこられるかと」
背筋を正しながらそう答えるリーリアは、リサの持っている短剣を興味ありげに見詰めていた。
「ねぇ、これって私以外にも使えるの?」
「多分無理だと思う。リサちゃんの魔力が篭った魔石を使ってる訳だし。貸してみて」
ビルはリサから短剣を受け取ると、先程のリサと同じ様に魔石に触れて帯状の魔法陣に指を這わせた。だが、剣身は炎に包まれる事無く、魔法陣も輝く事は無かった。
「ね?この魔法陣に込められた魔力が、その魔力を編んだ本人に釣られて流れを変える様になってる筈だからーー」
ビルが説明しているその時。開かれた金属の扉の向こう。階段の上から金属のぶつかり合う音と共に、スードラーが姿を現して部屋の中へ走り込んできた。
「リサ、手を貸してくれ」
スードラーは両腕で、人の頭程の大きさのある鉄の円盤が付いた魔道具を抱えて、部屋の中央へ来ると、地面にそれを下ろしてリサに声を掛けた。
「何したら良いの?って、それより“ソレ”は?」
リサは地面に置かれた魔道具を指差した。
ルーレットを縦向きにした様な見た目のソレ。円盤の外周には魔法陣の図形だけが幾つも刻まれており、円盤とは別に、円盤上部に取り付けられた円形の鉄の輪には、魔法陣の外側である円と文字が刻まれていた。
見た目的に、円盤を回すと、上に取り付けられた輪の魔法陣と円盤の図形が重なり、魔法が発動する仕組みになっている。外見が無骨なのは、試作品だからだろう。
上に取り付けられた鉄の輪から伸びる支え棒は、円盤の後ろに伸びており、刻印が刻まれている。
円盤の魔法陣にも、同じ様な刻印が円盤中央から伸びていた。
「これは、そうだね……面倒だが、仮に“魔法連射機”としておこう。円盤を回し、上に取り付けた輪と魔法陣が重なり合った時、魔法が発動する仕組みだ。支え棒には魔力誘導の刻印が刻まれている。その先、円盤の後ろに核を置く台があるが……今回は核の代わりにリサの魔力で代用したい。頼めるか?」
「良いよ。ここに魔力を流せば良いのかな?」
リサは台に指を置いて魔力を流すと、刻印が淡い水色に輝き出して、その先の魔法陣も様々な色に輝き出した。
しっかりと刻印が起動している事を確認したスードラーは、リサに魔道具の扱い方を伝える。
「リサ、そのまま円盤をどちらかに回して、円盤と輪の魔法陣を合わせてみてくれ」
リサは言われた通り、円盤を時計回りに回すと、赤色の図形と水色の円が合わさり、水色の円が赤色に変色した瞬間、前方に火球が発射された。
「のわっ!あっぶな!スードラーさん、俺が前に居るのに魔法を発動させないでくれよ!」
「済まない。悪いが魔道具の試射をするから退いてくれ」
「言うのが遅いよ!ったく……」
ビルは溜息を吐きながら、空いた氷の椅子に腰を下ろす。
その姿を、リーリアは微笑みながら眺めていた。
「リサ、そのままゆっくりと回し続けてみてくれ。連続して発動するか確認したい」
頷き、再び時計回りに円盤を回し続ける。すると、水球、石球、風球と、順に発射されていき、再び火球が前方に飛んでいった。
円盤に描かれた図形の数は8つ。各属性の図形が2つずつ描かれており、1ループを2回で円盤が1周する仕様になっている。
そのまま円盤を一周させたリサは、魔道具から手を離すとスードラーに視線を送る。
「どう?これで良い?」
「あぁ、満足だ」
「じゃあ、取り敢えず私達の方の短剣を見てもらえる?さっきビルが魔法陣を完成させたから」
リサはビルに視線を向けると、ビルは頷きながら立ち上がり、手に持っている短剣をスードラーに手渡した。
「ふむ……見たことの無い魔法陣だ。効果は?」
「魔力循環だ。魔石から吸い上げた魔力を、再び魔石に戻す。で、指でなぞれば魔力の流れる方向を変えれるけど……魔石の中に魔力を込めた本人じゃ無いと使えないのが難点だね。簡単に言うと、人工魔石じゃ無いと使えない魔法陣だ」
「実質リサ専用の魔法陣という事か」
「一応、俺とリーリアも自分の魔石を作ってあるから、この魔法陣を使って専用の魔道具が作れるけどね」
「……詳しく聞きたいが、面倒だ。一旦上へ戻るぞ。取引の話をしたい」
スードラーは短剣をビルに手渡して試作魔道具を抱き抱えると、金属の扉に向かって歩き出した。
リサは部屋の端に居る氷狼に手招きして石箱を受け取り霧散させると、ビルとリーリアが立ち上がるのを確認した後に、丸机と椅子も霧散させてスードラーの後に続いて上の階へ向かった。
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