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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサ 学校編2
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リサ、学友と雑談する。


 朝、ガルガラ近郊の狩場から帰還したリサは、核と魔結晶……そして、狼型の魔物の頭を持って研究室へ赴いた。


「よいしょっと……!意外に重かったなぁ、魔物の頭」


 入り口近くの壁の端にそれ等を置き、石板を作り出して“買い取り”と溝を入れると、声帯を失い、吠える仕草だけを延々と繰り返す狼型の魔物の顔の前に、それを突き立てた。

 首だけになっても尚、原型を留め、意思を持ったような行動を繰り返すソレ。何故、そんな物が出来上がってしまったのかーー


 普段通り、魔物を地面に埋めて、頭だけを出した状態にすると、首を氷剣で斬り飛ばす。普段ならそれで終わりだが、核の付いた頭の回収を頼まれていたリサは、跳ね飛ばした瞬間、まだ魔素が狼型の魔物としての意志と指示性を持った状態で、斬り飛ばした頭に魔力を注ぎ“固定化”した。

 その結果、再び肉体を作り出す事も無ければ、霧散する事も無い、ハッキリとした意志と指示性を持った物体が出来上がってしまったのだ。

 だが、それ自体は、言葉はおかしいが“稀によくある”事である。頭に核が付いている魔物は、核ごと固定化すると、低確率でそうなると言われているのだ。

 実際は、意志と指示性を持った魔素が入った核を、頭部ごと固定化する事で確定でそうなるのだが、リサはまだそれを知らない。


「なんか……駄目な物見てる気分になるなぁ……。時間的にもフォレアスおじさんが起きてる頃だし、呼びに行こっと」


 リサは研究室から出ると、腰に掛けた愛剣の金具部分を鳴らしながら、3階のフォレアスタークの自室へ向かった。


 自室の前に着き、何度か扉を叩くと、中に向かって声を投げ掛ける。


「フォレアスおじさ〜ん!リサだけど、起きてる〜?」


 暫くすると、ゆっくりと扉が開かれて、中からフォレアスタークが顔を出した。


「起きておるぞリサよ。して、何用じゃ?」


 起きておる。とは言ったものの、金色の髪は所々跳ねており、普段見慣れない、婦人服にも法衣にも見える、金の刺繍が施された白い絹の服には皺が寄っている。そして、普段より細められた瞳を見て、リサは申し訳無さそうに声を掛けた。


「ごめん、起こしちゃった感じだね」


 その言葉に、フォレアスタークはリサに掌を向けながら「起きたばかりだ」と答える。


「そっか。あぁ、用件だけど、頼まれてた狼型の魔物……パープルウルフだっけ?ソレの頭を回収したんだけど、なんか勝手に動いてるんだよね。だから呼びに来たの」


「勝手に動く……あぁ、お主、斬り飛ばしてすぐに魔力を流してじゃろ」


「うん。その方が素材も悪くならないと思って」


「それが原因じゃよ。核が意志と指示性を霧散させる前に、核の付いた頭を固定化してしまうと、何事も無く動き続けるんじゃ。覚えておけ」


 フォレアスタークは説明を終えると「着替える」と言って扉を閉めてしまう。


「私、街に行くから研究室には居ないからね〜!」


 リサはそう伝えると扉の前から離れてそのまま本館から出ると、一度寄宿棟へ向かいお金を取りに戻る。

 道中ですれ違う者達は、休息日だからか殆どの人が制服では無く私服を着ている。平民の装いの者もいれば、シャツにクラヴァットにブリーチと、如何にも貴族といった装いの者も居る。

 女性に関しては服装の違いが更に顕著で、片や森林に草原。片や咲き誇る花。

 比喩ではあるが、比喩では無い。実際に、使われている服の素材は麻と綿で違うのだから。

 平民の服の素材は麻、貴族は綿や絹。皮は両者とも使う。それなのに、何故かガルガラは皮の価値が低い。リサはその事に首を傾げながら、自然と開かれる人の間を歩いていく。


 そして、自室に置いてあるお金の入った小袋を持ち出して寄宿棟を出ると、背後から突然声を掛けられた。


「ご機嫌様、リサ」


 聞き慣れない声に首を傾げつつも、リサは後ろを振り返る。


「……あ、リーリアか。おはよう!」


 そこには、ジャケットを羽織った制服姿のリーリアがおり、リサを見詰めながら笑みを浮かべていた。

 リーリアは振り返ったリサの足先に視線を向けて、全身を流れる様に見た後、腰にぶら下げた細剣を見て首を傾げた。


「胸当てと……剣?ですか?何故?」


 リサは視線を自分の愛剣に移し「これ?」と、柄頭に軽く左手を添えた。


「今から武器屋さんに行って手入れをしてもらうの。自分でやるより、お店でやってもらった方が長持ちするから」


「そうですか……。あの、何故剣をお持ちになっているのでしょうか?もしや、そちらが噂の氷剣……?」


 顎に手を当てながら、興味津々といった様子で細剣に顔を近付けるリーリアを見て、苦笑いを浮かべながら1歩後ろに下がる。


「こ、これは普通の細剣だよ。……あ、でも、あ〜……う〜ん」


(そう言えば、エンチャントっていう魔法があったっけ……それに、剣に魔法陣の刻印を彫れば、似た事も出来るし……。どうせ、武具屋さんに行った後びにスードラーの所に寄るから、短剣を幾つか買って……後、私の魔石と魔法陣のメモとーー)


「リサ?」


「ーーあぁ、ごめんね、考え事しちゃった。それで、リーリアは何で制服なの?」


「私は今から魔法の鍛錬を。折角、特別な訓練室を使わせていただけるのですし、リサやビルさんも休息日は使わないと聞き及んでおりますので、思う存分、鍛錬に励もうかと」


「そうなんだ。あ、じゃあ、一緒に研究室まで行く?私も研究室に物を取りに行きたかったし」


「……!是非!」


(夢に見た、普通の学生同士のやり取り……!欲や忖度の無い、日常的な会話……!妹への自慢話が増えそうです……!)


「どうしたのリーリア?」


「い、いえ!さぁ、行きましょう!」


 そして、2人は周囲からの様々な視線を気にする事無く、フォレアスタークの研究室へ向かった。

 本館に着き、研究室へ続く廊下を歩いていると、研究室の扉が開かれて、中からビルが姿を現した。

 ビルは此方側に歩いてくるリサとリーリア見つけると、扉の前で「お〜い!」と笑顔で手を振る。

 リサは同じ様に手を振り返し、リーリアはリサのその仕草を見てから、恥ずかしそうに小さく手を振り返した。そのまま2人はビルの元へ行き、何をしているのかと声を掛ける。


「休息日の朝に、研究室から出てくるなんて珍しいね。何かあったの?」


「いや、今日は街に行こうと思ってさ。リサちゃん、休息日の朝は大体研究室で剣を振ってるでしょ?だから、一緒に行かないかって誘いに来たんだ。でも丁度良かったよ、今フォレアスからリサちゃんが街へ行くって聞いてたから。今から行くの?」


「そだよ。その前に、魔石を取りに来たんだ。スードラーの所に行くついでに、短剣型の魔道具を作ってもらおうかなって。とりあえず中で話そ。フォレアスさんが買い取る前に魔石を用意したいし」


「魔石……?魔道具?」


 リーリアはそう首を傾げるが、質問をする前に研究室の扉を開けて中へ入る2人を見て、首を傾げながら研究室の中へ入った。

 中に入ると、入り口横の壁際にフォレアスタークが屈んでおり、動く狼の頭を眺めながら笑っていた。


「クカカカカ!……おや、どうしたのじゃ?」


「魔石を幾つか取りに来たの。リーリアは魔法の鍛錬だって」


「俺はリサの話を聞く為に戻ってきた」


「そうか。買取はどうするのじゃ?出来れば、魔結晶は買い取りたいのじゃが」


「核を3、4個だけで、後は買い取りで良いよ」


 リサはそう言うと、置かれた拡張袋から目玉程の大きさの核を4つ掴み取ると、その場から少し離れた場所に座り込み、作業を始める。

 やり取りを後ろから見ていたリーリアは、先程の質問を問い掛ける事を忘れて、目の前の地面に置かれた動く狼の頭を見て、傾げていた首を反対側に傾げた。


「フォレアスターク様、そちらの頭は一体……?何かの魔道具でしょうか?」


「これかの?これはパープルウルフの頭じゃよ。儂がリサに取ってくる様頼んでおってな」


「魔物の頭ですか。……何故動いているのですか?」


 その質問に、フォレアスタークはリサに教えた内容と同じ物をリーリアに伝える。


「……そうなのですか。初めて聞きました」


 と、その時、少し離れた場所に居るビルが、リサの話を聞いて何やら楽しそうな声を上げていた。


「それ良いね!実際に魔法剣とかあるし、上手くいけば量産出来るよ!エンチャント系の魔法陣は俺も描けるから、協力させてよ!」


 それを聞いたリサも「本当!?」と嬉しそうに声を上げると、ポケットの中に魔石を仕舞い込んで立ち上がった。


「じゃあ、早く行こ!あぁでも、お金もう少し持ってった方が良いかな。ビルが協力してくれるなら剣も2、3本用意したいし」


「剣は俺が買うよ。その代わり、成功品は貰うけど」


「全然良いよ!私は普通の剣は使わないから。でも、成功したら細剣で作ってもらうからね?」


「分かってるって!フォレアスさん、そういう事だから、俺達は街に行くね。夕方頃には研究室に戻ってくると思うけど」


「分かった。お主らの企んでおる物が出来上がったら見せとくれ」


 3人がそう話す中、リーリアはその輪の中に中々入れず、自分は部外者なのだと実感しながら下を俯いていた。

 リサはそんなリーリアの様子を見て、彼女に話し掛ける。


「ねぇリーリア、貴女も一緒に街に行く?平民が行く様な場所だけーー」


「ーー是非!是非ご一緒させてください!あ、ですが、制服のままですので着替えに……」


「別に制服でも良いでしょ。俺だって制服だし。それに、制服で出かけた方が、青春って感じがして何か良くない?」


「青春……!」


 ビルのその言葉に、リーリアは胸の前で指を組みながら瞳を輝かせるが、対照的に、リサは自分の服装を無表情で見下ろすと、諦めた様に目を逸らした。


「……よし。じゃあ行こっか!」


 こうしてリサ達3人は、各々初めて、学友と共に街へ赴いたのだった。


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