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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサ 学校編2
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リサ、魔人と会う。

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 森の中を走り、乗合馬車から距離を取ると、リサは魔人の足元を泥化させて地面に体を飲み込ませると、再び硬化させて魔人を捉えた。


「ぐ……!動けん!」


 魔人は歯を食いしばりながら手足を動かすが、全く動く気配の無い地面に顔を赤くさせる。


「あんまり動くと、大切な体が無くなっちゃうよ〜?あの子、そういうの平気ーー」


「ーー変な事言わないでよ!」


 魔人の男は、背後から聞こえてきた声に一瞬だけ顔を青く染めたが、再び顔を赤く染めて虚空を睨みつけると、周囲に魔法陣を展開しようとする。が、何故か魔法陣が展開出来ず、再び顔を青く染める。


 リサ達からは顔色を窺う事は出来ないが、彼の漏らす声を聞いてその表情は読み取れた。

 リサはそんな彼を憐れむ様に、ビルの特技に肩を落としてビルに話し掛ける。


「その魔法陣を展開出来なくさせるヤツ、本当に狡いよね。男相手なら絶対に負ける事無いじゃん」


「まぁね。でも、フォレアスさんには通用しないし……何ならあの人も使えるけど。それよりさ、さっきの会話の事だけど……リサちゃんって本物の令嬢だったりするの?」


 さっきの会話とは、ジンと名乗った冒険者とのやり取りだ。口調や所作、家名を名乗れないと言った発言は、咄嗟の嘘にしては信憑性があり過ぎだとビルは思った。だが、ビルの憶測を掻き消す様に、リサは普段と変わらぬ様子でそれを否定した。


「アレは、言語の先生に習った常套句の1つだよ。『リサ様の容姿やお召し物であれば、貴族として相手を欺く事も可能でしょう』って事で、さわりの部分だけだけど、立ち居振る舞いを教えてもらったんだ〜。逆にそれ以外は全然だし、本物の貴族が見たら、何だこの子ってなると思う」


「だからすぐに本題に入ったのか。ふぅむ……俺も礼儀作法とか誰かに教えてもらおうかな。今後の事を考えると役に立そうだし」


 自分を無視して雑談を繰り広げる2人の言葉を聞き、今なら不意を突けると考えた魔人の男は、自分の周囲に石弾を生成した。が、その瞬間、地面から石の棘が無数に生え、周囲の石弾を悉く貫いていった。そして、石弾に込められた魔力が霧散すると、制御を無くした石片が辺りに飛び散る。

 顔に飛来する砂や石片に、反射的に目を瞑った魔人の男は、再び目を開けた時に、眼前に突き付けられた氷剣に言葉を失った。


「あぁ、ごめんね、無視しちゃってて。でもさ、この人どうするの?別に悪い事をした訳でも無いし、寧ろ私達が悪者じゃない?」


「でもさこの人、俺が馬車の中を調べようとしたら逃げたんだよ?あれ?ねぇアンタ、荷物はどうした?まさか手ぶらで来た訳じゃ無いだろ?」


 そう話しながら、ビルは氷鳥に遠見の魔法陣を刻み、リサはそれを馬車の方角に飛ばした。


「ねぇ、そこのお嬢さんの言った通り、僕は何も悪い事してないよ?さっきは魔人だとバレたら殺されると思って逃げただけで……」


「そうだったんだ。じゃあ、アンタの鞄の見た目を教えてくれる?今から持ってくるから」


「鞄は持っていない。すぐ隣の街から来たから、お金しか持ってきてないんだ」


 リサ達は遠見の魔法陣を覗き見るだけで、彼の言葉に反応しない。


「ジンって人察しが良いね。確かにプロを自称するだけの事はあるよ」


「リサちゃんの演技が効き過ぎただけな気もするけど……まぁ、乗客が逃げて、さっきの令嬢の周りを飛んでた鳥が屋根上の鞄を突きに来たら、察するよね」


「小さくて良かったよ。……って、あれマグベアーじゃない?さっきの休憩所の奥」


「本当だ。……魔人のアンタ、悪いけどこの場で少し待っててね。リサちゃん、氷壁張ってあげて」


「はい」


「ちょと待って!魔物に襲われたらどうするつーー」


 その言葉を無視して、リサは彼の頭を覆う様に氷壁を張った。密閉された空間である為、声も通らず酸素も供給されないが、大人しくしていれば数時間は持つだろう。そう考え、リサ達はその場から離れて氷鳥の視界を頼りにマグベアーの元へ向かった。


 マグベアーの元へ辿り着くと、マグベアーは休憩所の焚き火跡付近の地面を掘り起こしながら何かを探している様子だった。恐らく、先程の乗合馬車の人達が食べた食料の残りの匂い……地面に埋まった残飯を探しているのだろう。リサ達が先程訪れた時も、微かに肉の匂いが残っていた。


 マグベアーは近づいて来たリサ達に気が付くと、地面の穴から顔を出して其方を見詰める。


「3m近くあるね。魔獣化の影響で大きくなったのかな?」


「だろうね。でも、かなり大きいな……。放っておいたら、絶対名称持ちになってただろうね」


「マンイーターボアみたいに?」


「そんな感じ。リサちゃん、名称持ちの魔物を見た事あるの?」


「うん」


 暢気に話し合う2人の餌を見て、マグベアーは身体の向きをゆっくりと変えると、突然駆け出してリサ達に飛び掛からんと地面を鳴らす。


 ーー筈だった。


 足場を無くした浮遊感に襲われながら、マグベアーは勢い良く前に倒れる。そして、本来であれば衝撃音を立てて顔を地面にぶつける所だが、トポンと不思議な音を立てながら地面に頭が吸われていき、マグベアーはそのまま逆さ向きに、中央に向かって波打つ地面に飲み込まれていく。

 そして、不自然に空に伸びた右足を残して、マグベアーは硬化した地面に埋もれて動きを止めた。


「リサちゃんのソレ、地上の生物に対しては完全に初見殺しだよね。知能が低い相手だと無双出来るし」


「物質操作の指揮権を奪われたら終わりだけどね。自分より弱い相手専用の技でしか無いよ」


「そうかな?俺でも不意にそれをやられたら、割と焦るけどね」


「参考にするね。じゃあ、取り敢えずさっきの人の所に戻ろうか。マグベアーは後で回収したらいいし」


 そして、リサ達は一度その場を離れて魔人の男の元へ戻る。


「ただいまっと」


 リサは着いて早々に氷壁を解除した。そして、彼の鞄を氷鳥から受け取ったビルが、彼の前に腰を下ろして鞄の中を漁り出した。


「ちょっと!人の鞄を漁るなんて犯罪だぞ!」


「え?アンタ、鞄は持ってなかったって言ってたでしょ?あれ嘘だったの?」


 歯を噛み締めながら押し黙る男を無視して、ビルは麻袋の中を漁り続ける。そして、何か見つけたのか、顔色を変えてリサに手招きをすると、首飾りにある物を向ける。


「それは何?」


「魔道具だよ。見覚えがある物と同じであれば、大量の魔物を際限無く生み出す呪いの遺産だね。魔人が作った、魔人だけが発動出来る特別な物さ」


「へ〜、魔物の素材が一杯手に入るね」


「いや……そこじゃ無くて、コレを街に持ち込もうとしてたって事は、街の中で大量の魔物を召喚するつもりだったって事だよ」


「……あ、え?危険物じゃん」


「その代わり、魔道具を発動させた魔人は核を贄とするから死ぬんだけどね。まぁ、これがその魔道具とは限らないけど……取り敢えず、コイツは衛兵か騎士に預ける事になるね」


 その時、魔人の男から妙な魔力の流れを感じた2人は、咄嗟にその男から離れて様子を窺う。


「…………か」


「な、何て?」


 彼の呟きに、リサは首を傾げた。


「っ!リサちゃん!離れて!」


「捕まって堪るかぁ!」


 その雄叫びと共に、魔人の男の周囲の地面がひび割れ、その隙間から飛び出す様に身体の自由を取り戻すと、その魔人の男は地面を蹴り砕きながらリサに向かって飛び掛かった。


「身体強化!?」


 リサは咄嗟に自分と男の間に氷壁を張るが、男の拳はいとも簡単にその氷壁を砕き、後ろに居たリサ諸共そのまま後方へ殴り飛ばした。


「あぐぁぁっーー!」


 吹き飛ばされた衝撃を、風生成と水生成で相殺しようと試みたが勢いは殺せず、背後の木に思い切り叩き付けられると、耳障りの悪い音と共にリサの右肩の骨が砕ける。

 左腕も、肘から先は殴られた衝撃で潰れており、まるで蛇の様に揺らめいていた。

 リサは気絶しそうな程の激痛に奥歯を噛み締めながら、腰を囲む様に氷の輪を創り出すと、氷の輪の背中側に一対の氷翼を創り、風魔法と魔力操作を使い上空へ飛び上がる。

 急上昇の負荷に、氷の輪を支える腹が圧迫されて腰の骨が悲鳴を上げるが、それ以上に、砕けた右肩や潰れた左腕が強制的に動かされた痛みが、リサの意識を刈り取らんと想像を絶する地獄を与えた。

 頬の内肉を噛み千切りながら奥歯の数本が砕けて、口内を血で満たす。リサは咄嗟に砕けた歯と共に口内の血液を喉に流し込むと、頬の内側を凍らせて血を無理矢理止めた。

 そして、身体中から溢れ出る燻った灰を横目に、リサは自分の下に居るビルに視線を送った。


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