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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサ 学校編
53/95

リサ、素材を回収する。

いいねと評価ありがとうございます


「なんだ……今のは?」


 拠点場所の変更を伝える為に、山の中を走り回っていたケイルは、突如身の毛のよだつ感覚に襲われて、足を止めると、凄まじい量の魔力を放つ方角に目をやる。すると、空高くに数多の魔法陣が、まるで塔の様に連なりながら聳え、中心に黒い線を描いていた。


(あれは……魔法、なのか?それよりあの方角、ビルがいる拠点の近くだが……行った方が良さそうだな)


 手に抱えた拡張袋を肩に掛け直し、身体強化の魔法で自身を強化すると、足に力を溜めて、地面が抉れる程強く蹴り付けると、ゴウッと野太い風切り音を立てて木々の隙間を走り抜けた。


ーーーーーーーーーー


 リサは、目の前で行使された魔法を見て、目を疑った。

 いきなり生成された黒く細い線は、まるで、その線上に元から何も無かったかの様に全てを消滅させた。血も、肉も、魔素も、核も。空気も、空間も、光でさえ、全て消滅させてしまった。そして、段々と細くなっていくその線は、自身が存在した場所を埋める様に、周囲の物質を削り取っていくと、先程まで見ていた魔法が幻だったかの様に、魔法陣ごと音も無く忽然と消えた。

 今のは、いったい何なんだ。

 魔竜は死んだのか?

 リサは徐に歩き出すと、動かなくなった魔竜に近付き、脇腹に軽く触れる。

 不完全な肉体は、既に崩壊が始まっており、魔素を周囲に霧散させながら、血肉を溶かして黒い液体へと変化させている。リサの触った部分も、まるでプリンの様に簡単に崩れ落ち、リサの足の上に落ちると、何とも言えない不快な弾力を残して崩壊した。

 溶け出した肉の下には、骨の様に魔結晶が埋まっており、向こう側の肉の色を透けさせて、黒紫色に見えた。

 崩れていく魔竜の身体を眺めていると、核に近い部分の崩壊が遅い事にリサは気が付く。

 急いで氷の階段を作って魔竜の胸の上に行くと、腰の後ろにある解体用の短剣を取り出して、氷の階段の上から、綺麗に残っている部分の皮を、崩壊した皮の隙間からナイフを差し込み、魔力を流し込みながら丁寧に、肉から剥がす様に剥ぎ取り始めた。綺麗とは言っても、崩壊が始まっている不完全の皮は、割とあっさり刃が通った。


 魔物の素材は、一定の魔力を注ぎながら解体すれば、一応素材として回収する事が出来る。だが、魔法が扱える者で、尚且つ、魔力操作が得意でないと出来ない芸当であり、回収できる事を知らない冒険者も多い。そして、魔物の素材は、魔物の持つ特性をそのまま持っているので、武具の材料としての価値が、魔獣や獣と比べて、桁違いに高い。


 売るつもり。な訳では無いが、冒険者として素材を無駄にするつもりは無い。リサは、元のワイバーン同様、鱗の無いスベスベとした、剥ぎ取り終えた1畳程の黒紫色の皮を丸めて、創り出した石の箱の中に仕舞う。

 牙に眼球は頭ごと吹き飛んでミンチになり、爪は、それが付いた手足ごと生成を封じられていて、殆ど攻撃を加えていない腹の皮は、最初から崩壊が酷く、素材として成り立っていなかった。

 他にとれる素材がない事を確認すると、リサは魔石に空いた穴を一瞥し、氷の階段を降りると霧散させて、ビルと元へ歩み寄る。


「死んでた」


「知ってる」


 2人共、交わす口数は最小限だ。機嫌が悪いわけでも、勿論仲が悪いわけでも無い。2人共、困惑しているのだ。

 リサは言わずもがなビルの使った魔法に対し。ビルは、幾ら不完全な魔竜だったとしても、強化された個体に、リサがあそこまで手傷を負わせるーー頭を吹き飛ばせる威力を持った魔法が使えるなど、考えても居なかった。そもそも、あそこまで立ち回れるとは、頭の片隅にも考えていなかったのだ。

 僥倖だった。ラズリーでは無く、リサが動けたのは、正に僥倖だった。ビルは、心の底からそう思いながら安堵し、同時に、自分の中の疑問が確信に一歩近付いた。


 魔竜の肉体は完全に消滅して、後に残ったのは核と魔結晶、そして、荒れ果てた空き地に新しく出来た、小さい魔素溜まりだ。

 ビルは火魔法でワイバーンの死体を炭に変え、リサに、両手を広げても抱えきれない程の大きさの核を、氷篭に乗せて移動させる様に言うと、自分の半身より少し太い魔結晶に触れると、「これも頼む」と伝えた。リサはそれに従い、魔素溜まりから核と魔結晶を包む様に氷篭を創り出し、氷の小人達に運ばせて遠ざける。

 その後、少し離れた場所で、コチラを見ながら頭の枝葉を揺らしている、樹木型の魔物を討伐する。リサはついでに、その魔物の樹皮と、葉が付いた状態の車枝を回収して、新たに創った石の箱に仕舞った。


 粗方やる事を終えたリサ達は、再び生成された魔素溜りをどうしようかと眺めていると、急接近してくる魔力の気配に気が付き、咄嗟に氷剣と魔法陣を展開して、気配の方目掛けて魔法を放ち、剣を飛ばした。

 だが、その気配の主はそれを軽々と避け、木々の隙間から、叫びながら2人の前に姿を現した。


「私だ!攻撃を止めてくれ〜〜い!」


「「ケイル!?」」


 2人は咄嗟に魔法を引っ込めると、ケイルは衝撃波に近い暴風を2人に叩きつけながら、少し離れた場所で止まり、2人の元へ駆け寄った。


「お前達!怪我は無いか!?」


「ああ、見ての通り無事だよ。“通りすがりの自称勇者”が助けてくれたからね」


 自分の事を勇者呼ばわりとは。リサは心の中でビルの発言を笑いながら、それに続く様に、ケイルに“自身の身に起きた事”を伝えた。


「私は気絶してて詳しく知らないけど、ビルが助けてくれたの」


 ケイルはそれを聞いて、物凄く満足した顔でビルを見ると、肩を何度も叩きながら「良くやったぞ!偶には良い事をするじゃないか!」と声高らかに言った後、急に真面目な顔に戻り、


「ビル、何があったかを詳しく教えてくれ」


 と、少し離れた場所に置かれた核を一瞥する。


 ビルは、内容を少しだけ改変して、簡潔に何が起こったのかをケイルに伝えた。


 リサと2人で魔素溜まりを探していたら、ワイバーンの死体と、魔素溜まりから生まれてくる魔竜を見つけた事。そして、覇気に当てられ、気絶したリサを抱えて、足止めをしようとした事。その時、フード付きのローブを羽織った人物が現れ、謎の魔法で魔竜を倒した事。その者は、自分を勇者だと名乗った事。


 ビルから話を聞きながら、核に空いた穴を見つめ、指先で撫でると「そうか」と小さく呟き、此方に向き直ると2人の方を叩き始めた。


「何にしても、無事でよかった!本当に……自称勇者に感謝しなければな!……所で、ラズリー先生はどうした?」


「「あ」」


 核と魔結晶を氷のソリに乗せながら、それを身体強化したケイルが引き摺り、リサが物質生成で道を作りながら氷鏡で広場を探し、森を走る事約30分。3人は慌てながら拠点である広場に辿り着くと、氷篭の中で丸まりながら倒れているラズリーを発見する。

 その姿を見て、3人共最初は狼狽したが、背が上下している事を確認すると、胸を撫で下ろした。

 リサは氷篭を霧散させ、ケイルがラズリーを抱き抱えると、拡張袋をビルに手渡した。


「ケイルさん、実習はどうする?」


 そう聞くビルにケイルは即答する。


「中止に決まっている。まずはラズリー先生を連れて学校へ戻り、その後は他の班に中止の連絡を入れる。2人には先に伝えるが、少しの間休校になるぞ」


 そして、再びリサの先導の元、3人は急いで学校に戻り、本館の保健室へラズリーを運ぶと、ケイルは再び山に赴き、リサとビルはベッドの上で眠るラズリーの隣で、彼女が目覚めるまで座って待つ事にした。


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