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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサ 学校編
40/95

リサ、魔法の授業を受ける。

いいねと評価ありがとうございます


 翌日、リサは再び灰燼と化した制服をから視線を逸らすと、ラズリーから受けた学校の説明を、頭の中で振り返っていた。


 シオン魔導学校は朝の9時から授業が始まり、魔力操作、算術、魔法陣生成の授業を1時間づつ行う。そして、お昼ご飯を食べた後に、試験の時に決まった師匠とワンツーマンで魔法の訓練を行うのだ。

 全ての生徒が魔法の訓練を行なうかは不明であるが、少なくとも、リサは昼飯後に攻撃魔法の訓練を行なう予定だ。

 そして、授業日は4日連続、その後に2日連続で休息日がある。それを1ヶ月に5回繰り返す様な時間割になっている。

 それだけ聞けば授業時間は短く聞こえるが、授業で学ぶのはただの基礎であり、メインは自分の師匠から習う魔法技術である。


 リサは時間割を把握すると、昨日と同じ様に無事残ったケープを羽織り、支給された靴と靴下は部屋の入り口に置いて自室を後にして授業棟へ向かった。


 1時間目は算術。これは普通教室で行い、毎日始めの1時間は算術で固定されている。

 内容は、最初の内は足し算や割り算といった基礎を学ぶ。1ヶ月後には。図形の周長や面積を求める方向へと変えていくとの事だ。

 リサはあまり数字は得意では無い。簡単な計算であれば問題無いが、図形のアレコレを求める様になれば、恐らく落ちぶれるだろうと自覚している。


2時間目は魔力操作か魔法陣生成。日によって授業が前後する事になるが、基本的には魔力操作を行う。

 魔力操作は編み出した魔法を操作したり、魔道具に魔力を流して操作するといった訓練を行う。この授業は場合によって訓練室で行うが、基本的には魔道具を使用して普通教室で行う。

 今日行ったのは、砂時計型魔道具の砂の上昇操作。リサからすると単純な作業でしか無く、コレと似た事を2年も続けると思うと、初日から飽々としていた。


 そして、つい先日まで知らなかった魔法陣生成。これは、リサが最も苦手とする分野であろう。

 まず基本の2重円の中に、各属性に合った図形を組み込む。火であれば三角、土であれば四角、水であれば丸、風は土と同じで四角だが、魔法陣下部に面では無く角を向ける。

 そして、2重円の円と円の間に、指示性を持たせる為の文字を書き込む。

 魔力量に火力や弾速、起動や着弾後の効果、時限性を加えたり、自分が付けた印を追尾する様にしたりと、かなり細かく書き込む事ができる。

 

 だが、リサが苦手と考えているのはここからだ。

 最初に書き記した魔力量から生成分の魔力を引き、火力や弾速、強度などの基本効果に魔力値を割り振った後、更に追加効果である起動や時限性などに、基本効果で余った魔力値を割り振る。そして最終的に、最初に書き記した魔力量と、割り振る魔力値を同じ値にしなければいけないのだ。

 しかも、それを暗記して、魔法陣に書き込まなければいけない。


 例を挙げるとするなら


魔力量100に対し生成で魔力消費10を引いてから、火力20/弾速20と割り振り

余った魔力量50で、着弾後爆破40/爆破威力10と割り振って、合計魔力値100にする。といった具合だ。

 それが1でも数値を超えてしまうと魔法陣は割れてしまい、1でも足りないと誤作動が起こる可能性がある。

 簡単に説明するとそうなるが、実際は、細かな数字を要求される。その計算がリサは苦手なのだ。


 そして更に、魔法の形状を形作るには、魔法陣の内側に描かれた図形の数や大きさ、配置によって決められる。

 だが、それは生徒の大半が術式を熟せる様になってから教え始めるらしい。


 そもそも最初の説明の時点で、初日の1時間で教える量では無いと、リサは頭から湯気を出しながら思っていたが、ビル曰く


「基礎の基礎。みんな知ってる事」


との事だ。


 そして、3時間の授業を終えると昼食の時間だ。昼食を食べる場所は決まっておらず、師匠と共に本館の食堂で食べる者もいれば、1人で街の食事処に向かう者もいる。

 リサは師匠のラズリーと共に、学校の敷地内にあるテラスに座り、街で買ったサンドイッチを食べていた。

 リサだけであれば、魔物に生えた魔結晶を細かく砕いて飴として舐めたり、小型の魔獣を狩って肉を焼いて食べても良いのだが、それを是としない乙女心のお陰で、街に住む女の子としての暮らしを得られていた。


 昼食が終わると、お待ちかねの攻撃魔法の訓練。指導初日である為、リサの顔に緊張が見て取れる。場所は授業棟の外にある訓練場の一角。リサが前の世界で通っていた、学校のグラウンドと同じ位の広さがあるその場所には、数は少ないが他にも生徒と教員の姿が見て取れる。中には2年生らしき女性の姿も見受けられた。


「リサさん、よそ見はいけませんよ〜?」


「ごめんなさい」


「良いですよ。それで、今日から攻撃魔法を主に教えるんですが……リサさんは、攻撃魔法と生成魔法の違い、何か分かりますか〜?」


「攻撃魔法と生成魔法の違い……?」


 リサはラズリーの質問を復唱しながら、その違いについて頭を巡らせる。

 が、そもそも、攻撃魔法とは何か知らないリサにとっては、違い云々以前の話であった。


「ラズリー、よく考えたら私、攻撃魔法が何か知らないかも」


「そうなの?じゃあ、物質操作や武器生成は誰から教わったんですか〜?」


「物質?武器生成?なにそれ」


 聞いた事ない単語に首を傾げ、リサは重ねて質問をする。


「え?氷の剣を創ったり、地面を動かしたりしていたじゃないですか。それに、私を地面に埋めた時に出したあの棘、立派な攻撃魔法じゃないですか〜」


 ラズリーは模擬戦闘で自分が受けたリサの魔法達を例に挙げるが、それを聞いたリサは困惑しながら両手を前に突き出して掌を振ると、自分が使ったのは生成魔法だと伝える。


「え?まって、本当に意味が分からないんだけど。氷の剣はただの氷生成だし、地面を動かしたり棘を作ったのは、生成魔法の応用だよ?」


 だが、それを聞いたラズリーは、リサの真似をする様に両手を前に突き出して掌を振って見せると、頭を抱えて別の質問を繰り出した。


「え?私の方が待って欲しいんですけど。あの剣がただの生成魔法なのは置いといて……いえ、そっちも置いておける物じゃ無いんですけど、一旦置いといて。物質操作を知らずに、物質操作を行なってるんですか?」


「なんかややこしいけど、アレは地面を魔素の代わりに使って、生成魔法を編んでるだけだよ?火や水でも出来るし。寧ろ、魔素で作るより強度もあるよ」


「それは元が物質ですからね〜。ですがそうですか……リサさんは魔法の地租知識が全く無いんですね。生成魔法は誰から教わったんですか?」


 すると、リサも頭を抱え出して質問に対する回答の候補を幾つもあげる。


「え〜っと……冒険者仲間って言うと他人に聞こえるし……育ての親?も違う気がする……。う〜ん、家族でいいのかな?お姉ちゃん?ママの可能性も……」


「あ、誰かはもう良いですよ〜。次は、生成魔法をどう教わったか教えて欲しいな」


 これ以上聞いても話が進まないと考えたラズリーは、リサを止めると次の質問に移った。


「どうって言われてもあんまり覚えてないなぁ……身体に流れる魔力を感じて、生成したい物を思い描く……だったっけ。そんな感じで教えてもらったよ」


「ふむふむ……じゃあ、今も生成したい物を思い浮かべながら、氷の剣を創り出したり、地面を泥に変えたりしてるんですか〜?」


「そだよ」


 話を聞き終えると、ラズリーは顎に手を当てながら何度も頷き、自分1人で納得しながら「成程ですね〜」と呟いた。


「リサさん、生成する物を想像するのと同時に、“その魔法でどうしたいのか”を考えながら、魔法を編んでみて下さい。〈岩壁〉……あの岩に向かって、どうぞ」


 ラズリーは少し離れた場所に岩の壁を創り出すと、それを手差してリサに魔法を放つ様に伝える。


(その魔法でどうしたいか……かぁ。例えば、“岩の壁を壊したい”とかかな?)


 リサは右手を前に翳すと、魔法を初めて使った時の様に掌に魔力を集中させて、目を閉じながら想像する。


(岩の壁を壊す……岩の壁を壊す……。あ、でも、瓦礫が飛ぶと危ないよね。じゃあ、水で包んで削っていっても良いかな……う〜ん、でもそれって壊すのと違う様な……よし!壊す!)


「〈石生成〉!発射!」


 首元から火花を散らしつつ、創り出した拳大の石を勢い良く発射した。


 だが、その石は岩の壁に衝突すると、軽い音を立てながら簡単に砕け散ってしまい、石壁に傷一つ付ける事無く空中に霧散した。


「あ、あれ?瓦礫が飛んでくるの覚悟で魔法を放ったのに、どうして?」


 砕け散った石を見て、リサは驚きながら自分の掌に視線を落とす。

 普段と違い、しっかりと“壊す事”を想像しながら放った筈なのに、壊すどころか傷一つ付ける事ができなかった。これでは、普段と変わらない。


「う〜ん……リサさんの魔法は分かり易く言えば卵ですね〜」


「え?全然分かり易くないんだけど。寧ろ分かり辛いんだけど」


「良いですか〜?今のリサさんは、岩壁に卵を投げつけているのと同じなんですよ〜。ですから、どれだけ勢い良く投げても割れるのは卵だけで、岩壁には傷が付かないのです。もっと硬い物を創る感じで、もう一度やってみて下さい」


「硬い物……」


 リサはそう言われ、自分が今まで触れてきた硬い物を思い返す。


(盾とか剣はもちろん硬いけど、岩を斬れる訳じゃ……あ、でもヲルガは斬ってたっけ。ヲルガが斬れなかった物は……金属の盾かなぁ。でも、盾を飛ばすのも想像出来ないし……あ、魔物の核があるじゃん!あれなら最近良く触るし、想像し易いかも!)


 リサは閃いたと言わんばかりに掌を胸の前で叩くと、先程の様に右手を前に突き出し、首元を爆ぜさせながら、空中に氷で出来た両端の尖った六角柱を創り出す。


 そして、何を思ったのか、その氷柱の芯……中心部に爆発生の煤を詰め、氷結晶の掌側に炎を纏わせた。


「あれ?リサさん?ちょっとまーー」


「えい!」


 リサの腑抜けた合図と共にその氷柱は勢い良く岩壁に飛んでいき、激しい衝突音と共に岩壁に深くめり込むと、少し間を置いた後岩壁が内部から爆発した。


 ラズリーは岩壁の破片が飛び散る前に瞬時に霧散させると、その中に埋もれていたリサの生成した氷柱の破片が、辺り一体に勢い良く飛び散った。


 そして、その飛び散った破片は授業棟の窓ガラスを複数枚割って見せると、形を保つ事が出来なくなり、自然と霧散する。


「「あ…………」」


  叫び声や怒声が飛び交う中、リサとラズリーは呆然とその場に立ち尽くす。


 そこに、授業棟から出てきたクリームが、栗色の髪を靡かせながら2人の元へ歩み寄ると、顔に掛かった髪を耳に掛け直して、綺麗な笑顔をラズリーに見せた。


「ラズリー先生?少しお話があるので、お時間宜しいでしょうか?」


 その、お願いに似た命令に、ラズリーは顔を青く染め上げながら涙目になる。


「あの……今のは私では無くリーー」


「ーーラズリー先生?」


 クリームは何かを言いかけたラズリー言葉を遮る様に、笑顔でラズリーの名前を呼ぶ。


「……なんでも無いですよ〜。丁度、今日の指導を終わろうと思っていたところです」


 ラズリーは項垂れながらそう言うと、リサを軽く睨みつけてから、クリームに連れて行かれる様に本館の方へ向かって行った。


「ラズリー、貴女の事は一生忘れないよ……!」


 リサはラズリーの背中に手を合わせると、先程の事が無かったかの様に、その足で冒険者ギルドへ向かうのだった。


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