リサ、帝都ガルガラに立つ。
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ヲルガの提案から1ヶ月後。リサ達4人は乗合馬車を使い、帝都〈ガルガラ〉に赴いたのだった。
帝都ガルガラはグリーダ帝国の中央に存在し、4つの王族領に面している。
初代帝王、ガルガラ・グリーダが4つの国を制覇した後、国々の中心にある山を切り拓いて作ったと言われているこの街は、標高が高く周囲を山で囲まれている為、天然の要塞と化しており、難攻不落の都と周囲の国から言われている。
街の周囲には内側の建物を覆い隠す様に煉瓦壁が連なっており、入り口である木の門も、人の何倍もの高さと大きさがある。
その門の前には帝都に入りたい人達の列が出来ており、リサ達も例外無くその列に並んでいた。
リサは乗合馬車の中。ヲルガ、プラナ、ガルダーはその馬車の護衛依頼を受けているので、合同で依頼を受けたもう一組の冒険者達と馬車の前後に並んでいる。
「リサちゃん、もうすぐ検問所だね。いやぁ、列に並んでから約2時間……長かったね」
「そうだね。それにしても……まだ街の中じゃないのに、人が多いよね。流石帝都、楽しみだなぁ」
「リサちゃんは帝都初めてだもんね。街の中見たら腰抜かすんじゃない?」
「本当に抜かしそうで緊張するよ……途中で通った街でさえ、凄い驚いたのに」
「あははは!その時はヲルガさんを呼んであげるよ!って、呼ばなくても走ってきそうだけど」
リサは乗合馬車の中にいる赤髪の青年〈ビル〉と談笑しながら外を眺めていると、とうとう検問所の前に馬車が辿り着き、兵士達にここに来た目的や身分証などを提示すると
「はい、確認完了しました。ようこそ、帝都ガルガラへ」
歓迎の言葉に迎えられて、リサ達はやっと目的地である帝都ガルガラに足を踏み入れるのであった。
「じゃあねリサちゃん。またいつか」
門の横にある乗合馬車乗降広場に着くと、リサはビルと別れてヲルガ達の元へ向かう。
「依頼書に完了のサインも貰ったし、報酬金も受け取った。一旦ギルドへ向かうぞ。おい、アンタらも行くぞ」
ヲルガはもう一組の冒険者パーティにも声を掛けると、そのまま街の中央付近にあるギルド・グリーダ帝国本部へ向かうのだった。
因みに、グリーダ帝国本部と言われてはいるが、他の国の首都にもギルド本部は存在する。あくまで、グリーダ帝国のギルドを管理している大元のギルドと言うだけであり、全てのギルドの本部と言う訳では無い。
とは言っても、グリーダ帝国の中で一番大きなギルドには変わりなく、その屋敷の様な外観は、外れ町の貴族も顔負けな程綺麗で、細かい装飾が至る所に施されている。
内装も、高級ホテルのエントランスの様になっており、一般受付だけでも10箇所もある。
そして、物凄く広い解体場が隣接しており、今まさに翼竜の解体を行なっていた。
「テリから来たヲルガだ。依頼完了受理を頼む」
「畏まりました。依頼は乗合馬車の護衛、ヲルガパーティとケルダーパーティの合同ですね。……依頼達成のサインを確認、タグの提出を」
ヲルガは受付嬢に冒険者タグを渡すと、受付嬢はタグの裏側に金型で線を1本刻印した。
「完了しました。では」
そして、ヲルガにタグを返した受付嬢はヲルガに一礼する。
「ああいや、待ってくれ。宿も借りるからついでにその手続きも頼む」
それから数分後、冒険者用宿の契約を済ませたヲルガはリサ達と合流すると、一先ず宿へ向かうのだった。
宿に武具と荷物を置いて、身体を手拭いで綺麗に拭いた後、道中の街で買った新しい服に着替えた一行は、リサとプラナの要望もあり、ガルガラ内を見て回る事にした。因みに、リサは服を脱ぐと、脱いだ服が灰になり新しく体に服が生成されてしまう為、服装はそのままだ。
帝都ガルガラ。都の中央には立派な王城が聳え立ち、その周りには主要な建物や高級店がズラリと並んでいる。そして、中央から外側に向かうにつれ、庶民的な街並みに変わっていく。
庶民的とはいえ腐っても帝都。そんじょそこらの町とは比べ物にならない質と金額の物ばかりであり、店自体も、リサから見ると近代的な物に感じる作りである。
(普通にガラスや金属が建物に使われてる……通り道の街もそうだったけど、村や町とは全然違うや。なんか文明が違う)
テリとは違い、公共のトイレは水洗式。魔道具の街灯が道の端に等間隔に並び、地面も煉瓦が綺麗に敷き詰められている。
街は何処もかしこも綺麗で眩しく、たまに香ってくる美味しそうな食べ物の匂いが、リサの鼻腔をくすぐった。
「うぅ……貯めたお小遣いが一瞬で消えそう……」
「気を付けろよ?村や町と違って冒険者の数も多いから、街から近い狩場じゃ全然稼げないからな。金が無くなったら2、3日遠出しないとガッツリ稼げないぞ」
「え、本当?毛皮売るだけじゃダメなの?」
「町と違って毛皮の需要が無いんだ。ある程度の物は他の町や村から運ばれてくるからな。基本は魔物の討伐依頼になるな」
「魔物かぁ……私、まだ見た事無いよね?」
「一回だけあるだろ?テリを震撼させたあの煤人ゲブファ!」
ヲルガは何かを言いかけると腹を押さえてその場に蹲る。その隣には、ニコニコと笑みを浮かべたプラナが、胸の前で拳を握り締めながら佇んでいた。
「そうね、ここに来る道中も魔物は見かけなかったし。まぁでも、リサならお店のお手伝いをして稼ぐ手もあるわよ」
「お店かぁ……機会があったらやってみたいかも」
「それが良いわよ。じゃあ、街巡りを再開しましょうか!」
プラナの言葉に返事を返すリサとガルダーは、再び庶民用の店が並ぶ区画へ歩き出した。腹を押さえて此方に手を伸ばすヲルガを見て見ぬふりをして。
だが、やはり冒険者と言うべきか、向かった場所は武器屋や防具屋、薬屋に魔道具専門店など、鉄や薬臭い場所にばかり顔を覗かせ、観光客が行く様な土産屋や雑貨屋には見向きもしなかった。
リサも思考が冒険者に染まってしまい、そういった一般の人が行く様な店に興味を示す事は無かった。
ただ1人、合流する気配の無いヲルガだけは、雑貨屋や土産屋などを見ては顔を輝かせていた。
そして、いつの間にか合流していたヲルガ含めて4人で食事を取った後、傾いた陽を見ながらリサ達は宿屋に向かって歩き出した。
宿屋に着くと、ヲルガから自分達の部屋の鍵を渡されて自室へ向かうリサは、首を傾げながら受け取った1本の鍵を見詰める。
「あれ?私は1人で一部屋なの?プラナと一緒じゃないんだ」
「ああ、俺達は1ヶ月だけの滞在だからな。その後は、ホームのノトー王族領のギルド本部に顔を出す予定だ。俺も星4に上がったし、プラナとガルダーの昇格試験も受けたいしな」
「そっか……。もし試験落ちたらどうしよう」
「何を弱音を吐く事がある。普段のリサの魔法を見せることが出来れば、合格は間違いなしであろうよ。それに、固有魔法の〈煤生成〉も使えるではないか」
ガルダーの励ましにリサは「そうだよね」と顔をあげて笑みを浮かべると、胸の前でガッツポーズをする。
煤生成。コレは、誘拐未遂事件後にリサが扱える様になっていた魔法だ。
元々魔法を編む時に出ていた灰を煤状にして放出、操作ができる様になった物であるが、その副作用か、魔法を編む時に首から火花が散る様になってしまった。
元素としては火と土の複合であるが、態々その2つを編まなくても生成できる。
「私、絶対受かってみせるよ!もし、生成魔法にケチつけられたら、煤魔法でドカーン!とやってくる!」
「良いわよリサ!その意気よ!そして新たに煤人間を作り出してこの街を混沌にーー」
怪しい笑みを浮かべながら、良からぬ事を口走るプラナの頭をヲルガははたく。
「そんな事したら絶対不合格になるだろ!ったく。リサ、プラナが今行った事は忘れろよ?」
「アハハ!でももし落ちたら、煤人間を大量に作ってヲルガ達の所に走っていくよ」
「アハハハハ!そんな軽口叩けるなら、2ヶ月後の試験も問題無さそうだな!」
こうして、リサ達はこの1ヶ月間帝都でのんびりと過ごしたのだった。




