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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサちゃん 冒険者編
30/95

リサちゃん、樹海を走る。


 道なき樹海を走り続ける事数時間。未だ辺りは闇夜に包まれ、月明かりが髪に輪を作り出している。


 リサは、走り続けても一向に樹海から出られ無い事に、進む方角を間違えたのだと確信していた。

 自分が気を失った場所と、そこから自分を担いであの小屋まで運んだ時間を考えると、全力で走っている今なら、2時間弱で樹海を抜けられてもおかしくない。

 それなのに、数時間走っても草原との境目を見る事が出来ていないのは、樹海の奥に進んでしまっている証拠だ。


(でも……引き返したら不審者さんに鉢合うかも知れないし……このまま進むしか無いかなぁ)


 この樹海……〈セグリン樹海〉はかなり広く、東はリサが拠点とするフィリア王族領、西はカガネラ王族領が管理している。何方ともグリーダ帝国の領地ではあるが、単純に距離がある為、もしカガネラ王族領に踏み入れてしまった場合、樹海を抜けた後も数日は樹海の周りを走らなければいけなくなる。


 そして、リサが樹海に踏み入れた大まかの場所は、セグリン樹海の北東付近。もし、北か東に走っているのであれば、とっくに樹海は抜け出せているので、今走っている方角は西か南側である。

 南であれば12時間程度で抜けられる可能性があるが、西であれば丸一日は余裕で掛かるだろう。


(あれ?私って、西か南に進んでるんだよね?北か東側なら樹海の境目が見えてる筈だし……だったら、このまま真左に進めば、よくて東に、悪くても南に進めるのでは……!)


「(私……頭いいかも!)」


 そう考えたリサは、自画自賛しながら走る角度を直角に変え、勢いをそのままに樹海の中を走り抜けた。


 足や首、口元から少量の灰を垂れ流しながら走り続け、あれから数時間が経った頃、リサは前方から松明の灯りを見つけると、複数の人の気配を察知する。

 向こうもリサの存在に気が付いた様で、金属の擦れる音が複数音鳴り響くと、気配を更に濃くする。


 その濃密な敵意を肌で感じ取ったリサは、自分だけが目視出来る位置まで集団に近付くと、息を潜めながら木陰から顔を覗かせる。


(ええと……多分、ただの冒険者かな?相手は5人で、大きいリュックを持った人はサポーターかな。だったら……)


 リサは両手を上げて木陰から姿を出すと、その集団に声を掛ける。念の為、腕の死角にストーンナイフを浮かせながら。


「貴方達、冒険者?私も冒険者。道、迷った」


「こ……子供?冒険者なのか?」


 その集団の中の1人の男性が、リサの言葉に反応する。だが、警戒は解かずにまだ剣を向けたままだ。


「証拠、ある。…………これ、冒険者タグ。私星1下位」


 彼等の警戒を解く為に、リサは首から下げた冒険者タグを胸元から出した。その時初めて気が付いたが、ベルト以外にも胸当てやらの防具も取られていたらしい。


「確かにタグに見えるが……何で丸腰なんだ?荷物は良いとして、何で武器を持ってない?」


 それでも尚訝しむ冒険者に、軽くではあるが自分が此処にいる理由を伝える。


「森の中、犯罪者いる。私誘拐されて逃げてきた」


「……マジかよ!……分かった。おいお前達、女の子を連れて一度森から出るぞ。その後は一度村に戻ってーー」


 すると、それを聞いた冒険者達は響めきを立て、先程からリサと話しをしているリーダー風の男が、樹海を出て村へ戻ると言い出した。


「ま、待って欲しい。申し出有難いが、樹海から出られればそれで十分。私、1人でテリ向かう」


「テリ?……ああ、あそこか。だが、物資も武器も無しにあそこまで行くのは無理だろ。すぐ近くの村から行っても3日は掛かるぞ?」


「3日……?お兄さん。今いる場所の詳細を求む」


 ミーファから教わった独特な言い回しで、リサはリーダーにそう質問すると、引き気味に後退りした。


「な、いきなり堅苦しいな……此処はハグリン樹海の南東付近。そっから丸一日歩けば、地図には載ってないがトリト村って村がある。分かるか?」


「トリト村……分かる。であれば、森を出られれば十分。1人でテリ戻れる」


「まぁ、冒険者なら下手に口を出す必要も無いか。だけど、少なくとも武器は必要だろ?予備のをくれてやーー」


「ーー問題ない。武器ある」


 そう言うと、リサは隠していたストーンナイフを宙に浮かび上がらせ、それに合わせて自分の周囲にストーンナイフを生成した。


「な……!魔法士かよ!……分かった、余計なお世話だったな」


 それをみたリーダーは、驚愕の表情を浮かべた後、呆れた様に溜息を吐いて首を横に振る。

 その時、リサや5人の冒険者達のいる場所とは違う場所から、男の高笑いする声が聞こえたと思うと、リサの背後から突然人影が飛び出してきた。


「(……!うわっぶな!)」


「ヨォ、お嬢さん。よく1人で監禁部屋から出られたねぇ。おじさん、鉄の扉がドロドロに溶けてるのを見てビックリしたヨォ?」


 間一髪、背後から振り下ろされた剣を前方に飛んで避け、そのまま振り返る。


「おじさん、隠れて見てたヨォ?おじさんのお友達が君に燃やされる所。酷いよねぇ、おじさん達はお嬢さんで遊びたかっただけなのに……」


 左目を黒い布で覆い、細剣を肩に置きながらゆったりとした口調で話す男は、そのままゆっくりと前に歩き出しながら話し出す。


「お嬢様で魔法士……それに、あの再生速度ねぇ……流石に、オモチャにするのは勿体無いなぁ?おじさんの道具として働いてくれヨォ」


 太くも細くもない鍛え抜かれた身体。隙だらけに見えて、一切隙がない立ち居振る舞い。乱雑な黒髪から覗かせる灰色の瞳。

 松明の炎に照らされたその顔は、完全に狂人のソレだった。


 その瞳の中の狂気を直に浴びてしまったリサは「ひっ……」とか細い悲鳴を上げると、土生成で作り出した泥を、その男の顔面目掛けて発射する。


 だが、男は首だけを動かしてそれを軽々と避けると、足を止めて獣の様な理性の無い笑みを浮かべた。


「優しいねぇ。攻撃魔法じゃなくて生成魔法……しかも怪我をしない様に泥を飛ばすなんてさぁ。もしかして、おじさんに惚れちゃったかなぁ?」


「ーーなら、これならどうだ!」


 その瞬間、リサの背後から炎の燃え盛る音と共に矢を模った炎が飛来し、不審な男を目掛けて飛んでいく。

 が、不審な男はリサの攻撃を見た時とは打って変わって、軽く細剣を振って見せると、炎の矢を消して見せた。


「おじさん、男には興味ないんだ。邪魔するなら殺すけど、良いかい?」


 強い殺気を乗せて灰色の瞳をギラつかせると、その目を見たのか、リサの後方にいる1人の男が、先程のリサ同様か細い悲鳴を上げた。

 直接その殺気を受けた訳では無いリサでさえ、膝が小刻みに震え出してしまい、背後では大きな荷物が落ちる音も聞こえる。


「……良い子だねぇ。じゃあお嬢さん、行こうか?」


「さ……させるかよ!」


 不審な男がリサに手を伸ばした時、リーダーが叫びながら不審な男に突貫し、そのまま剣を振り上げて切り付ける。


 だが、その剣は不審な男に届く事なく、細剣で横から軽く弾き飛ばすと、その勢いで1回転し、リーダーの左肩に細剣を突き刺して振り下ろすと、肩の下半分を切り飛ばした。


「ぐあぁぁぁ〜〜〜!!!」


 叫びながらその場を飛び退くリーダーの腹に、不審な男は蹴りを入れて木々の奥へ吹き飛ばす。


「リーダー!くそ!ビリソウは魔法で援護を!俺とドルトリウスは女の子を救助、ジジはリーダーの所に行ってポーションぶっ掛けろ!リーダーの行動を無駄にするな!」


「はぁ……モテる男は辛いねぇ。相手が女だったら、どれだけ幸せだったかヨォ」


 パーティに指示を出した男はリサの首根っこを掴むと、後方にいるビリソウと呼んだ男の元にリサを投げる。


「〈火球〉発射!」


 リサが自分の足元に来た事を確認したビリソウは、前に立つ仲間2人の間を縫う様に、不審な男に向かって魔法で生成した炎の球を飛ばした。


 だが、先程と同じ様にその火球は細剣で斬り飛ばされ、2つに別れると空中で霧散した。


「エンチャントか……?ビリソウ!隙をついて撃て!ドルトリウス!」


「おうザザ!」


 ザザと呼ばれた男は左手に大盾を持ち、右手には槌。ドルトリウスは一般的な盾持ち剣士だ。

 ザザは合図と共に不審な男に盾を構えて突進して、その勢いのまま盾を突き出した。

 ドルトリウスはザザの後ろに姿を隠す様にして、剣を構えながら走り出した。


「幼稚だなぁ……おじさん、欠伸が出ちゃうヨォ」


  不審な男は右肩に細剣を置き直すと、目の前に突き出された盾を、左手で殴りつける。

 すると、金属の盾は飴細工の様に砕け散り、骨がひしゃげる音と共にザザの腕が変形する。


「ぐあぁ……!こんのーー」


 腕が潰れ、砕けた骨が肉を切り裂く痛みを、歯を食いしばって堪えながら、右手に持った槌を大きく振りかぶる。

 瞬間、槌を持った右腕は、肘から先が別の生き物の様に明後日の方向へ羽ばたき、代わりに肘の先から鞭の様に何かをしならせた。


「おらぁ!」


 背後から飛び出したドルトリウスは、目の前に出来た垂れ幕で顔を濡らしながら、不審な男の首目掛けて水平に剣を振るう。

 が、いつの間にか自分の背後に回った不審な男を“足元から見上げ”、見慣れたグリーブを嵌めた足に踏み潰される。


「あ〜あ〜、自分の頭を踏み潰すなんてさぁ。まぁ、切り落としたおじさんが言えた事じゃ無いけどヨォ」


「ああ……ドリー、ザザ……」


 ビリソウは仲間の無惨な姿を見てその場に膝を折ると、股を暖かい液体で濡らしていく。


 両腕を潰された男。首を飛ばされた男。そして、自分の隣で腰を抜かし、今にも殺されそうな男。


(私の所為でまた人が死んだ……。私の体質じゃなくて、私を守る為に……!私の所為で……!)


 リサは恐怖と後悔で顔を濡らしながら、震える足に無理やり力を入れて立ち上がると、両手を広げて不審な男の前に立つ。


「私の所為で誰か死ぬ、嫌!絶対……(絶対に許さない!)」


 その時、リサの首から炎が巻き上がり、足元を中心にガーベラの大輪が花を咲かせた。


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