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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサちゃん 冒険者編
28/95

リサちゃん、樹海へ行く。

いいねと評価ありがとうございます

対人の戦闘描写が御座いますので、苦手な方はお気を付け下さい。


 あの日以降、何度もキャンプを繰り返して、本格的な野営を教わったのがつい先日。

 本来、睡眠を取る場所では食事は取らず、不寝番の時は片目を覆う事を、最近知ったばかりだった。

 だがリサにとって、前者も後者も不必要な物であり、その事に苦を感じる事は一切無い。

 寧ろ、リサ1人であれば食事の用意は疎か、薪の準備や寝床の確保、休憩場所すら必要無い。

 目的地まで裸のまま永遠と走り続ける事も、理論上可能だ。


 そして、生成魔法に関してもかなり腕を上げた。

 前は生成した氷は熱湯で溶ける程の強度であったが、今は生成した炎でさえも、溶かす事ができない程の強度を持った氷を、生成する事が出来る様になった。

 同時に、簡単な形状であれば、物質生成で好きな形を創り出す事も可能になった。

 ハート、星、音符といった平面図形は勿論の事、植物の葉や細部を簡略化した人型、ナイフ程度の大きさであるが斬れ味を持った剣といった立体図形も生成できる。

 しかも、その生成魔法は、中型以上の魔獣には殆ど効かないが、小型の魔獣程度であれば、簡単に傷を付けられる位の威力を出す事が出来る。


 剣技の方もかなり上達し小手先の技がかなり増えたが、相変わらず筋力が無いので中型魔獣には押し負けてしまう事もある。最近は細剣を使用しての鍛錬をしており、ヲルガの話では、直、実戦で扱うとの事だ。


 皮の鞣す方法も簡易的ではあるが教わった。樹皮や根、葉などを大量に煮出し、その液体に浸して長時間揉む方法だ。コレは、直ぐに納品出来ない場合と、尚且つ毛の色が濃い毛皮に限る。ただ、皮の価値は下がってしまうのだとか。

 リサの場合、それ以前に解体技術が備わっていないので、その知識も箪笥の肥やしになってる。


 こうして色々教わったリサだが、今日から1週間程、ヲルガ達3人とは別行動になっている。理由は、3人が星3中位依頼を受けて、その魔物の討伐に赴いていったからだ。


 3人には良いタイミングだからと、他の冒険者と臨時パーティを組む事を提案されたが、魔法も剣技もそれなりに扱える様になったリサは、内心1人で問題ないと考えていた。

 つまり“慢心”だ。


 そして、慢心したリサが受けた依頼がテリ南西にある樹海に居る、マグウィーゼルの毛皮の納品依頼。常設の依頼であり、星1下位のリサが受けられる数少ない依頼だ。

 マグウィーゼル……要はイタチだ。マグラビットと比べれば足も速くなく、難無く狩る事が出来るが、生息地が樹海で中々見つけられ無いのが難点だ。


 樹海に赴くリサの荷物は殆ど無い。マグウィーゼルの死体を入れるための巾着と、腰にぶら下げた剣だけ。それだけを持って町の柵を潜り抜け、初めての道を通りながら、草原の真ん中を鼻歌混じりに歩いて行った。


 その姿を見た1人の衛兵は疑念を抱いた。が、少女の堂々とした立ち居振る舞いを見てその疑念を捨てた。


 その瞬間、リサが樹海に向かった事を知る者は、テリの町から消え去った。


ーーーーーーーーーー


 町を抜けて人目が少なくなった所で、リサは目的地に向かって道沿いに走り出し、本来半日で着く所を、2時間程度で辿り着いた。

 その樹海には入り口というものは存在せず、整備された道も無い。スズルガラ山の麓の森と大差ないこの場所は、リサにとっては、もう見慣れてしまった物であった。


 草原から続く道は樹海手前で途切れており、終点は焚き火や休憩ができる様に、円形に草が毟られている。


 その場所から、リサは周囲を一瞥して樹海を外から眺めると


(どこから入っても同じだよね。でも、この広場から入った方が、帰り道が分かり易いかな)


 そう考え、その広場から一番近い樹海の中に足を踏み入れ、木の横を通り過ぎる度に、自分の目線の高さと同じ場所に、剣で傷を付けながら森を進んでいく。

 慢心しているとはいえ、リサはかなり慎重に周囲を警戒し、痕跡もある程度形を変えながら頻繁に付けている。

 下手に道を曲がること無く、少し道から逸れる場合は、巾着袋を本筋の木の枝にぶら下げて、痕跡を根元に付けていく。


 そうやって枝状に探索しているのは、誰から教わった物でも無く、リサ本人が考えた探索法だ。

 木の幹の様に1本の道を作り、逸れる場合は巾着袋が見える距離までしか進まず、ある程度探索したら本筋に戻る。痕跡を頻繁に付け、本筋と脇筋で痕跡の位置を変えるのも、リサ自身が考えた物である。

 リサはこの探索法を「絶対に迷わない効率的な森の歩き方」と、自分で考えている。

 この方法は、複数人で道のない森の中を探索する場合でも有効だ。先頭の人が本筋を作り出し、後に続く人が脇筋を探索して、ある程度探索したら本隊に合流する。

 痕跡も、先頭の人が赤いインク、後続が青いインク。と、この様に分けて使用し、視覚的に分かり易くすれば、更に探索効率が上がるだろう。


 こうして、脇に逸れては本筋に戻るを繰り返し、ようやくお目当てのマグウィーゼルを見つけ出せたリサは、その瞬間頭を抱えてしまう。


 何故なら、リサの考えた「絶対に迷わない効率的な森の歩き方」の、重大な欠点に直面してしまったからだ。


 この探索法は、森の中の物を探し出す方法であり、“動く相手を追いかけて捕まえる”方法では無い。


 マグウィーゼルは魔獣。此方を警戒するし、逃げもする。草原にいるマグラビットとは違って、小柄な体を生かして、木々の隙間を通って身を隠しながら逃げられる彼等は、あの逃げ場の無いマグラビットの様に、襲いかかってくる事が無い。


 故に、見つけたとしても、此方が全力で走って追い詰めるしか狩る方法が無いのだ。


 その事に今更気づいたリサは、この様に頭を抱えて蹲っているのである。


「(分かってた事なのに……なんで、今の今まで気づかなかったの。そもそも、警戒心が無かったら、もっと簡単に見つかってるよ……)」


 リサは俯きながら立ち上がると、トボトボと歩きながら本筋へ戻り、木の枝に掛けた巾着を外すと、その木の根元に座り込んだ。


(まぁ……手を出した訳じゃ無いし、常設依頼だから、狩れなくても何にも問題は無いけど……。ミーファさんも私がマグウィーゼルを狩る事は知らないし、帰り道でマグラビットを狩って帰っても、何も問題無いよね)


 リサは、この樹海に行く事を誰にも伝えていない。それどころか、町から出ることすら、誰にも伝えていないのだ。これは、慢心故では無く、ヲルガ達と行動している時に、自分から伝える事が無かったから、伝えるという発想が頭に無かっただけである。


 だが、その事に気がつかないリサは、全く別の事を考えていた。


(でもなぁ……ここまで来たなら討伐しておきたいし。だけど、態々襲ってこない魔獣を攻撃するのも気が引けるし……あれ?そもそも、マグウィーゼルって人襲わないよね?毛皮が重宝されてるだけで、別に倒さなくても問題ないんじゃ?)


 リサは「(な〜んだ)」と言いながら立ち上がり、尻についた土と苔を払い落とす。

 樹海に足を踏み入れてから約2時間。枝状に探索していたとはいえ、かなり奥深くに進んだ為、中型の魔獣が姿を見せるかもしれない。

 そう思ったリサはそのまま踵を返し、本筋を辿って来た道を戻る。


 その時、後方……つまり、まだ探索をしていない方角から複数の気配を感じ取り、すかさず振り返って剣の柄に手を当てる。

 

(小型じゃない。中型が複数……狼でないと思うけど、他に群れで動く中型動物や魔獣って居るのかな?でも……何だろう、息遣いや気配が獣とは違う様な……)


 得体の知れない存在に、冒険者として培ってきた経験が激しく警笛を鳴らし、マズいと考えたリサは再び振り返ると、全速力で本筋を走り抜ける。


1本道で痕跡も多く、1つ見逃した程度では迷う事ないその道を、速度を落とす事なく駆け抜けていると、後方から迫る影の姿を捉えて戦慄する。


 追いかけてきているのは動物でも、魔獣でも、ましてや魔物でも無い。ーーリサと同じ人間。

 顔を布で隠し、手には森の中でも扱い易いナイフ。身を軽くする為か防具は身に付けておらず、複数いる内の1人は大きな麻袋を丸めて持っていた。

 森の中で獲物を狩る為に特化した装備。そして、戦利品を入れる為の袋。その彼等が追いかける獲物は、魔獣でも動物でも無いーーリサという“人間”。


 それに気付き、リサは更に恐怖した。そして、逃げる事に特化する為に腰にぶら下げた剣を捨て、解体用のナイフを腰から抜き、更にスピードを上げて走り抜ける。


 すると、後方からの風切り音と共に右足に激痛が走り、バランスを崩してしまうと、そのままの勢いで地面を転がった。

 立ちあがろうにも痛みの所為か右足に力が入らない。いや、右足だけでは無い。体全体から力が勝手に抜けてしまい、持っていた解体用のナイフも滑り落としてしまう。

 そして、段々と痛みの抜ける右足を不思議に思い、ゆっくりと視線を右足に移すと、赤く染まった棒が、脛と脹脛から生えていた。脛から生えた棒は先端が尖っており、脹脛から生えた棒は先端に鳥の羽があしらわれている。


 リサはそれに見覚えがある。自分の武器を買ってもらう為武器屋に行った際、消耗品として売られていた、大量に並べられた“ソレ”。


 ーー“矢”だ。


 矢が、リサの脹脛を貫き、脛から鏃を出しているのだ。


「あ……ああ、あ……あ」


 叫ぼうにも上手く声が出せない。手足に力も入らず、痛みも感じない。恐らく、いや確実に、鏃に麻酔に似た毒が仕込まれていたのだろう。ヲルガに一度聞いた事があるリサは、すぐにその事を理解した。


(獲物を逃がさない為の毒だっけ……でも何で)


 その疑問に答える様に、追いかけてきた集団がリサの元へ辿り着くと、先頭の1人が顔を覆った布を外して下卑た笑みを浮かべる。


「ダメだろ〜?こんな場所で女の子が1人だなんて。悪い人に誘拐されちゃうぞ〜」


 それを聞いた周囲の仲間が、品の無い笑い声を上げた。

 リサはその笑い声に耳を塞ぎ顔を顰めようとするが、眉をピクリと動かす程度で終わってしまう。


「安心していいぞ?脈は動くし呼吸も出来る。そう調合してあるからなぁ〜死んだら楽しめないだろ?まぁ、死んでも当分は楽しむんだがなぁ!」


 リサには彼の話している内容が全く理解出来なかった。だが、自分は殺されるのかも知れない。

 そう考えながら、麻袋が視界を覆った。


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