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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサちゃん 冒険者編
18/95

リサちゃん、兎を売る

いいねと評価ありがとうございます。


「てい!てい!てい!」


「よーし、それ位で良いだろう!そろそろ中型の魔獣を相手にしても良い頃だな!」


 町の外の草原で仲睦まじく話しながら、剣を振る少女とそれを眺める男性。歳の離れた兄弟かと考える通行人は、髪の色を見て首を振る、


 片や貴族も二度見する程綺麗な長い黒髪。片やどこにでも居る金髪。恋人にしては歳が離れすぎた2人を見て誰か分からない者は、町の者では無い商人や冒険者だ。


「でも、魔獣倒すの嫌!食べる分だけ!」


「よく考えてみろ。魔獣だって、自分の縄張りに入り込んだ生き物を攻撃するだろう?それと同じだ。それに、魔獣は凶暴だ。そこらに棲む動物達も襲うから、生態系を守る為にも狩らないといけない」


 格好つける様に表情を作りながら、男性は少女に説く。それを聞いた少女は「そっか」と呟くと、駆け足で男性に近付き手を握る。


「ヲルガ賢い。私、その発想無かった」


「だろ?リサもこれから色々知る事になるんだ、俺よりもっと賢くなるぞ!」


 異世界に迷い込んだ少女、三宅理咲が冒険者になり、苗字を捨ててリサと名乗り始めてから一年が経った。


 辿々しくも異世界の言葉を発し、最低限の読み書きを覚え、冒険者としての生き方や剣の振り方を教え込まれた少女は、容姿や服装だけは変わっていなかった。


ーーーーーーーーーー


 私は日課である剣振りを終え、先程狩ったマグラビットが入った巾着をヲルガから受け取り、柵を潜るとギルドへ向かう。

 最初は涙目になった悪臭も、今は然程気にならない。だが、今でも近道だけは絶対にしないし、これからもする気は無い。


 ギルド内に入ると、最近は割と色々な人に話し掛けられる。皆、面倒見がいいのだ。

 前に聞いたが、冒険者は子供を持つ事が中々出来ないし、持てたとしても会う事が難しい為、子供を構いたがるそうだ。


 私に話しかける人達と軽く会話を済ませると、依頼だからと言って巾着を見せ、そのまま受付へ向かう。ヲルガだけはそのまま男達に連れて行かれ、部屋の端で“お話”している。

 前に、何を話しているのか周りの冒険者に聞いた所、「大事な話」と言って教えてくれなかった。


 受付へ向かうと、大体ミーファが対応してくれる。私の言語の先生でもある彼女は、受付で会話をしている時は気さくで軽やかに話をするが、それ以外の時は殆ど敬語を使い、緩急の無い口調で淡々と会話をする。最初はその裏表が激しい変化に戸惑ったが、それももう慣れた。


「おかえりリサちゃん!今日の依頼は常設のマグラビット討伐だったね。数は?」


「1匹。解体してない、です」


「了解。じゃあ、あっちの解体受付に持って行ってくれるかな?」


「了解」


 私はミーファにお辞儀をして一般受付から離れると、少し離れた場所にある解体受付へ向かう。


 そして、解体受付にいる男性……〈カカライ〉に声をかけると、持っていた巾着を受け渡した。


「カカライ、マグラビット持ってきた!お願いします」


「おぉ、リサか、珍しいな。見せてみろ」


 そう言って、私から巾着を受け取ると、口を開けて中からマグラビットを取り出し、損傷箇所を調べる。


「右脇から首筋に切り傷。肋骨が折れてるが……胃は大丈夫だな。喉を切って血抜きをしたのは正解だ。ヲルガに教えてもらったのか?」


「うん!止めと血抜き、両方出来る。覚えろ、言われました」


「流石ベテランだな。だがリサ、手負いの獣はさらに凶暴だ。止めを刺す時は一番警戒しろよ?」


「ヲルガも言ってた。気を付けます!」


「よし。で、マグラビットの買取価格だが、肉も毛皮もかなり状態が良い。毛皮が銅貨3枚で、肉は1枚、魔石は解体料とチャラだ。マグラビットの解体は楽だし、魔石も小さいから妥当な打ち消し額だ。覚えておけ」


「ありがとうカカライ。マグラビットは解体料無い時、ある。覚えました!」


 カカライから銅貨4枚を受け取ると、私は頭を下げてお礼を言い、ヲルガの元に小走りで戻る。


「ヲルガ待たせました!報酬もらった、プラナとガルダーの場所、帰ります!」


 右手に握った銅貨を見せびらかす様に見せると、周りの冒険者達が私に拍手する。そのお陰で身動きが取れる様になったのか、人を掻き分けてヲルガが顔を出す。


「そ……そうだな、俺も早く此処から離れたい」


 そう言うヲルガは、何故か満身創痍だった。いつもの事であるが、本当に何を話しているのだろうか。今度プラナに聞いてみるのも良いかも知れない。


 そう考えながらヲルガの左手を握り、ギルドを後にしてプラナとガルダーが待つ宿屋に足を運ぶ。

 とは言っても、私達が泊まる宿屋はギルドのすぐ真横、ギルドが管理する冒険者の為の宿だ。

 日本で言うと社宅や寮に近いその宿は、一般的な宿屋より清潔で、長期間泊まる事を前提としており、一回で払う宿代の金額は多いが、日数で見るとかなり安い。

 そして、他の宿屋と大きく違う点は、店主がいない代わりに、ギルドの一般受付で宿泊契約を交わす所だろう。その点も、私の聞き及んだ社宅の形態に近い。


 私達が泊まっている……借りている部屋は3部屋。ヲルガ、ガルダーが1部屋づつ。私とプラナは一緒の部屋で寝泊まりしている。

 私の場合、睡眠を取る必要も、休憩する必要も無いので部屋を借りる必要は無いのだが、その事は誰も知らないし、教えるつもりは無い。その為、他の人達同様睡眠を取るフリをしたり、休憩したりしている。


 勿論、食事の必要も無いので、本来であれば食費も掛からない。が、食欲はあるので、普通に食事を取っている。


「プラナただいま!」


「リサ、おかえりなさい。今日は何してたの?」


 私とヲルガはプラナのいる部屋の前に立つと、扉を叩いて中へ入る。すると、ベッドの上で本を読んでいたプラナが起き上がり、私とヲルガを見て何をしてきたのか尋ねてきた。


「いつもと同じ。剣振って、マグラビット狩った。違うのは、解体しなかった!」


「あぁ、私が居なかったからね。ヲルガ、そろそろリサに魔法覚えさせた方が良いんじゃない?」


「魔法!私も魔法使いたい!剣野蛮!」


 私の言葉に、ヲルガはショックを受けた様に口を開ける。


「うふふ!野蛮だって!どこで覚えたのよ〜」


「ん〜〜……多分ギルド」


 私とプラナがそう話している間も、ヲルガは口をあんぐりとさせ、目を見開いている。


「ちょっと、いつまでショック受けてるのよ野蛮人。さっさとこっち来なさい」


「ねね、私水魔法使いたい!さすれば、マグラビット綺麗に狩れる!」


 それを聞いたヲルガはやっと我に返ると、何故綺麗に狩れる様になるのかと首を傾げる。


「別に水魔法が使えても綺麗に狩れるわけじゃ無いぞ?解体する時に、血を洗い流せるってだけだ。今日解体しなかったのは、血で毛皮が汚れるかーー」


「違う、水魔法でマグラビット窒息させる。さすれば、毛皮傷付かない。血抜き、足から出来る」


 ヲルガは納得した様に手を叩くと、「なるほどな」と大笑いし始めた。そして、魔法を使わないで出来る、私の案と似た方法を教えてくれた。


「村の狩人が使う方法だが、小型の動物や魔獣を罠で捕まえて縛り上げた後に、桶に張った水に沈めて殺すやり方があるんだ。最近は、弩に似た小さい道具で首の骨を砕く方法もあるが……毛皮を傷付けない方法なら色々あるぞ。そうだ!明日、面白い物見せてやるよ」


 自分の知識を披露できて満足したのか、ヲルガは上機嫌になりながら膝を叩いて再び大笑いする。だが、感情が入れ替わったかの様に、今度はプラナが口をあんぐりとさせて目を見開いていた。


「プラナ?」


「なんだプラナその顔!すげ〜間抜けだぞ!」


「え?えぇ……え?ヲルガ、今のリサの話聞いて何も思わないの?」


 私の話した内容がおかしかったのか、困惑した表情を浮かべて、プラナはヲルガにそう聞く。


「頭良いよな!」


「そう、頭良いのよ。今日、初めて毛皮を綺麗に残せば高く売れると知って、魔法って聞いてからすぐに、今の発想が思い浮かんだのよ?ヲルガと違って、狩人達の知識が無いのに」


「そうだな。だが、それは最初に思いつく事だろ」


「……あぁ、普段の言動で忘れてたけど、貴方頭が回るんだったわね。……本当に残念」


「ほ、褒めてるんだよな?喜ぶぞ?」


「ヲルガ賢い。明日が楽しみだよ!」


 ヲルガは笑いながら私を抱え、上に掲げるとその場でクルクルと回り出す。その姿を見て、溜息を吐きながらも微笑み頬杖をつくプラナを横に、私も笑い声を上げながら、遠心力に任せて手足を大きく広げた。


 その後、依頼を終えて宿に帰ってきたガルダーと共に夕食を取り、各自自室へ向かうと、その日はベッドに就くのだった。


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