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甦れ!フェニックスちゃん!  作者: 神宮雅
リサちゃん 少女編
15/95

リサちゃん、ギルドマスターに会う。


 私はヲルガに手を引かれるがままに、ギルドと呼ばれる豪華な建物内に足を踏み入れ、人々の注意を引きながら受付へ向かう。

 ヲルガの様に長剣を腰にぶら下げた者や、変わった形の杖を突く者、中には、抜き身の大斧を背中に担いだ、上半身裸の者も居る。

 その、ほぼ全ての者達が私とヲルガを舐め回す様に睨み付ける中、数名は私達に一瞥くれると、すぐに興味を失ったかの様に自分の世界に戻る。


 私はその数多の視線に怯えながらヲルガの腕に抱き着くと、ヲルガは私の頭を軽く撫で、受付の前に立つとカウンターを指で弾く。


『ようこーー』


 それに反応した受付の女性は私達に笑顔を向けると、定型文であろう歓迎の挨拶を述べようとして止める。

 その後、すぐにカウンター下から紙とペンを取り出してスラスラと何かを書き始めると、徐に立ち上がってカウンター横のスイングドアを開けると、奥の扉を無言で手差す。


 ヲルガは私の顔を見ると、自分の唇に人差し指を当ててニヤリと笑う。私が前にやった“静かに”の合図だ。私はそれを見て頷くと、受付の女性に促されるまま、カウンター奥の扉の中に入る。


 扉の奥は部屋では無く、少し広めの廊下に繋がっており、正面の壁には幾つも扉が取り付けられている。

 受付の女性は黙ったまま、すぐ目の前の扉を開けて私達を中へ入れ、ソファに座る様促す。


 そして扉を閉めた後、私達の対面の椅子に腰を掛けると、間にあるローテーブルの上に置かれた、卓上ベルに似た置物のボタンを押し、ここで初めて女性は声を出す。


『では、まずはタグの提出と依頼内容の報告をお願いします』


『タグは門前の衛兵が持ってる。後、依頼内容は受付には話せん。その完璧な仕事には惚れ惚れするが、欲をだ……試したのか』


 ヲルガは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべると、『勘違いしてすまない』と言って頭を下げる。


『此方も、貴方を試す様な真似事、謝罪いたします。ただいま、ギルドマスターのグラブをお呼び致しますので少々お待ち下さい』


 そう言うと女性は立ち上がり、扉の前で深く一礼するとそのまま部屋を出て行った。


『……喋って良い?』


『もう良いぜ!なんなら、この部屋の中で叫んでも、この魔道具のお陰で外に声は漏れないぞ!』


 そう言って、いつもの様に膝を叩きながらケラケラと大声で笑う。


 魔道具……また知らない言葉が出てきた。だが、色々新しい言葉を聞いたお陰で、魔道具という物がどういった物なのか、ある程度の予想がつく。


 魔道具という名前と、音を遮断する効果を考えるに、魔道具という物は“誰でも簡単に魔法が使える道具”なのだろう。

 ボタンを押した事も考えると、元の世界にある“家電”に近い物という認識で良いかもしれない。


 では、再びボタンを押したら魔法が解除されるのだろうか?それとも、時間経過で勝手に切れるのか?

 そう考えながら、横でわいのわいのと横で騒ぐヲルガを尻目に、私は机に置かれた魔道具を眺め、何度か突っつく。


『私も魔法とか使えるのかな?綺麗な靴を創ったり、大きなお菓子を創ったり』


『お、リサは魔法を使ったことが無いのか?なら、今度町の外で幾つか試してみるか!』


『今度ってーー』


 そう言いかけた時、部屋の扉が勢い良く開け放たれ、ガルダーより大柄な筋骨隆々の男性が、激しい剣幕で部屋の中に向かって怒号を浴びせる。


『応接室で騒ぐ馬鹿は何処のどいつだっ!!』


 その、殺気にも似た怒気を直に浴びたヲルガは、腰を抜かしてその場にへたり込んでしまい、声に驚いた私は、両耳を塞ぎながらソファの上で丸くなる。


『ギルドマスター、貴方が一番五月蝿いです』


 その中でただ1人、穏やかな声で冷静にそう伝える先程の女性は、筋骨隆々の男性を部屋に押し入れ、静かに扉を閉めた。


ーーーーーーーーーー


『どうぞ、大した物ではありませんが』


『あ、有難うございます』


 少し落ち着きを取り戻した後、私達は再びソファに座り直し、受付の女性ーー〈ミーファ〉が注いでくれた紅茶を啜りながら一息入れる。


『怖がらせて済まなかったな、私はテリのギルドマスターを務める〈グラブ〉だ。ミーファ、もう良いぞ』


 謝罪と自己紹介を同時に済ませた男性ーー〈グラブ〉は、私達に頭を下げた後、扉前に佇むミーファを下がらせ、机の上に置かれた魔道具を再度起動すると、すぐに本題に入る。


『まず、先程衛兵からお前のタグを受け取った。ヲルガ、お前の受けた依頼は、国境の森に現れたマンイーターボアの討伐の筈だが?』


 町の入り口でヲルガが衛兵に渡した筈の、プレート付きの首紐を右手にぶら下げ、ヲルガの目の前に音を立てて置くと、依頼について聞き質す。


『その途中で問題が生じた。依頼は中断、依頼時にギルドに紹介されたクルルが、やらかしてくれたお陰でな』


 ヲルガは机に置かれた自分のタグを掴み取ると、首に通してチェストプレートの中に入れる。


『恐らく夕方頃に、衛兵から問い質される事になるぜ。“少女を殺した、小柄で橙髪の男冒険者は何処だ”ってな』


 その言葉を聞き、グラブは眉間に手を当て、呻き声を上げながら俯く。


『昨日の夜中の案件はそれか。……で、何があった?その少女と意訳石はどうした』


『悪いが、詳しく話せる部分が極端に少ない。この子のトラウマを引き出す可能性があるのと、この子の……能力について、俺からは話せない』


 途中、言い淀んだヲルガは私の方を見ると、グラブにそう前置きしてから、ここに来るまでの出来事を大まかに話し始めた。


『……と、いう訳だ。発狂したクルルは自害し、勘違いしたトリト村の村長に、俺達は共犯扱いされてお尋ね者。意訳石は無断で借りてきた』


 話を最後まで聞いたグラブは、聞き終わると同時に、頭を抱えて大きな溜息を吐き出した。そして、暫く考え込む様に膝の間に頭を入れて蹲ると、両膝を強く叩きながら頭を勢いよく上げる。


『……話は分かった!衛兵の方からは私から説明しておこう。意訳石も、ギルドの方からトリト村に返還する。お前達の荷物も、残っていればその時に回収しよう。だが、問題は…………』


 そう言いながら、グラブは私を見つめて再び固まる。その後、一気にカップに入った紅茶を呷り、決心した表情で私に何者か尋ねてくる。


『お嬢さん……リサと言ったね?君は何処の国から来たんだ?』


 そう聞かれても、どう答えて良いか分からない。素直に国名を答えても、同名の国と勘違いされては、後々面倒になるだろう。

 何度か見た夜空に月が浮かんでいなかったのを見て、ここが異世界だと確信している。だからこそ、下手に日本だと伝えられないのだ。

 そして、かなり悩んだ結果、私が出した答えはーー


『分かりません』


 それ以外、何も思いつかなかった。


 知識がある人であれば、その知識を当てはめて、ある程度の方角と場所は絞り込めただろう。

 知恵がある人であれば、その知恵を存分に使い、相手の話を誘導して場所を言わせただろう。


 だが、その両方がない私は、素直に分からないと答えるしか、解が無かった。


『分からない?……困ったな。では、お嬢さんの身分を教えてくれるか?異国にも、貴族階級はあるだろう?』


 貴族階級?そんな物、今の日本には存在しない。……強いて言うなら


『平民』


 だろうか。


 だが、それに納得しなかったのか、グラブは額に青筋を立てて声を上げた。


『馬鹿を言うな!その肌や髪や服装の、何処が平民なんだ!男爵と言われても訝しむぞ!』


 机を叩きながら腰を浮かせ、声を荒げるグラブに驚き、私は咄嗟にヲルガの左腕に抱き着く。


『おいギルドマスター、そうやって脅すなよ。服に関しては、リサを森に連れて来た奴が着せたんだろう。リサの話では、目が覚めたら国境沿いの森の中に居たらしいからな。実際に、俺と仲間はその森でリサを見つけたし。後、貴族であれば紋章が入ったカフリンクを身につけている筈だろう?』


『た、確かにそうだが……リサ、全て事実か?』


『う、うん……』


 恐る恐る返事をする私を見て、グラブは『そうか……』と呟くと、浮いた腰を下ろして脱力する。


『悪かった……だが、貴族では無いのか……そうか……』


『えと、貴族じゃ無いと困るの?』


『い、いや!……そうだ、君の能力とは一体何だ?私に教えられる物であれば教えて欲しい』


 突然口調がフランクになったグラブは、私の話を誤魔化しながら逸らすと、能力とやらを聞いて来た。


 正直、ヲルガが口に出した時から、何の事だか理解していない。

 特段足が速いわけでも無く、勉学は平均以下。芸事は嗜んでおらず、飛び抜けた才があるわけでも無い。そんな私に能力は?と聞かれても、思い当たるものは何も無い。

 この世界に来て、身体に異常が現れているが、それは能力とは一切関係ない。ヲルガが言っていた“人体発火”は能力と呼べるものかも知れないが、能力は能力でも“超能力”の方だ。そんな事をグラブに伝えれば、ふざけているのかと、再び怒鳴られてしまうだろう。


『私に能力なんて無いよ……?足も速くないし、勉強も全然出来ないから……』


『そうなのか?まぁ、話せないのであればもんーー』


『ーー問題はある。悪いリサ、お前にも知っていて欲しい事があるんだ』


 何も話す事がなく、そのまま能力について話を終えようとした所に、ヲルガから待ったがかかり、私の知らない私の能力について、自分の見て、体験した事をーー


 私に隠していた事実を、ヲルガは私に伝えた。


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