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絵のモデルなんか受けないから!

紗千さち、お願い!」

「えぇ、恥ずかしいんだけど…」


私の幼稚園からの幼なじみで親友の怜奈れいなが、私を拝み倒してくる。

手を額の前で合わせて、お願いしますと。


よく()()()()()流れに危険を感じつつも、私は怜奈の話を聞いてあげることにした。


「それで、なんで私に絵のモデルになってほしいの?」

「あっ…ありがと紗千!」

「ま、まだするとは言ってないけど!」

「うん、うん、ありがとね!」

「話聞きなよ…」


いつもの流れになったからか、怜奈は既にお願いをする前提で話してくる。

頭痛くなりそう。


「えっとね、私が絵を描くのは知ってるでしょ?」

「まあね」


怜奈は小さい頃から絵が上手だ。

小学校や中学校の修学旅行のしおりの表紙を学年全員から募集すれば、確実に怜奈の絵が選ばれた程度には上手。

最近では、イラストを描いてお小遣いを稼いでいるんだとか。


「それでね、今度依頼されたイラストのイメージがさ、紗千そっくりで!

これは紗千にお願いするしかないって思ったの!」

「ふーん。まあ、何回かモデルになったことはあるけど、私そっくりのイメージってどんなの?」

「童顔ジト目ぱっつん眼鏡巨乳低身長美少女JKで、お願いすればイヤイヤ言いながらも何でもしてくれる幼なじみの彼女」

「死ね」

「あ、待って、帰ろうとしないで!」


荷物をまとめ、怜奈の部屋から出ようとしたら、後ろから腰に抱きつかれた。

やめろ、帰れないじゃないか。


「お願い!紗千がモデルになってくれたら120点のイラストが描けそうなの!」

「あんたさ、私のことどう思ってんの!?絶対エロいイラストでしょ!?」

「ち、ちがうよ???」

「違うなら私の目の前に立って、もう一度言いなさい」

「そ、それは出来ないけど、ちがうよ?????」


私の腰に顔面を押し付けてくる怜奈。

こいつ、絶対嘘だ。


「はぁ…そもそもさ、高校2年の女子が受ける仕事じゃないでしょ?」

「だ、だって、お金ほしいし…依頼されるの嬉しいし…」

「しかもさ、いくらイメージぴったりだからって言っても、親友にモデル頼むってどうなの?私ってそういうことしてるイメージなの?」

「ち、違うよ!その、私は、自分が満足できる仕事をしたいだけで…!」

「その結果が、親友にR18のイラストのモデルになれと?あんた頭だいじょうぶ?」

「言い方酷いよ!私が泣いちゃっても良いの!?」

「ほら泣けよ。動画撮ってあげるから」

「うぅ、紗千の意地悪だぁ」

「ていうか、そろそろ腰から離れてよ」

「だって帰るじゃん!」

「そりゃもちろん。なんでわざわざ男に与えられるR18イラストのモデルにならないといけないのよ」

「あ、大丈夫!今回の依頼者は女の子だから!」

「はぁ?つまり女の子が女の子のイラストを求めてきたと?

もっとマシな嘘をつきなよ」

「嘘じゃないもん!紗千だって、そういう子の気持ち分かるでしょ!」

「それは…まぁ、そうかもだけど」


私はいわゆるレズってやつだから。

正直、怜奈をバカに出来ないぐらいには女の子が好きだし、そういうイラストもいっぱい見ている。

女の子大好きな私でも馬鹿にしないで仲良くしてくれるから、怜奈とは親友だ。


でも、そのせいで怜奈のお願いは断れない。

正確には女の子のお願いをだけど…怜奈のはほぼ100%断れない。


それを分かっているから、怜奈は無理なお願いはしないし、私もほとんど断らない。

それはもう暗黙の了解みたいになっている。


「でも…私がおかずにされるのはさすがに…」


なんとも言いがたい恥ずかしさがあるというか、むずむずした気持ちになる。


「いやいや、あくまでも空想上の女の子だよ?名前は紗千恵さちえちゃん!」

「私じゃん」

「違うよ!紗千恵ちゃんだもん!」

「はぁ…まあいいけどさ」

「ホント!?」

「いや、名前はいいけどって話。

モデルになるとは言ってない」

「そこをなんとか…!

そうだ!依頼料の100%を紗千にプレゼントします!」

「それじゃあんたの稼ぎが無くなるでしょうに。

はぁ…50%で受けたげる」

「ありがとね!やっぱり紗千は優しい!」

「はぁ…」




「それで、何をすればいいの?」

「えっと、1つ目は…」

「待って、2つもあんの?」

「あれ?言ってなかった?」

「どうだっけ…まあいっか。

それで?」

「えっと、1つ目が、『嫌な顔をしながらも優しく抱きしめてくれる彼女。ちなみに顔面は胸に埋もれてる。』でしょ?

2つ目が、『嫌な顔をしながらも、制服のスカートをパンツが見えるギリギリまでたくし上げてくれる彼女。』だよ」

「…帰っていい?」


やっぱりエロいイラストじゃん…欲望が溢れ出てるよ…。


「帰っちゃだめだよ!

じゃあ始めに、嫌な顔をしてくれるかな?

…あ、いいね!すごくいい!」


苦虫を噛み潰したかのような顔で怜奈を蔑んでいると、OKを出された。

これ、作ってるんじゃなくて、あんたを見てるんだよ?


でもそんなことには気付かずに、怜奈はスマホで写真を撮り、時には私の顔を見つめたりする。


ちょっと恥ずかしいけど、前からこうやってモデルをしていたから、今更だったり。


「じゃあ次は、この枕を女の子だと思って抱きしめてよ。

そうそう、胸に押し付ける感じで」


怜奈に言われたとおりにポーズをとる。

私は身長の割に胸が大きくて、結構肩がこる。だから、怜奈がよく肩揉みをしてくれる。

その時は結構距離が近くて、いい匂いがするからドキドキする。


「おっけ!じゃあ次はスカートをたくし上げてくれる?」

「いいけど、今日黒パン履いてないんだよね。暑かったから」

「大丈夫!映らないよきっと!」

「そう?ならいいけど」


スカートを指でつまみ持ち上げる。

そういうイラストは結構見てるから、何を求めてるのかはだいたい分かる。


「そうそう!いいね〜、かわいいよー、エロいよー!」

「エロい言うな。それ褒め言葉じゃないから」

「いいねいいねー!

あっ、パンツ写っちゃった」

「おいお前!」

「だいじょぶだいじょぶ、私しか見ないから!」

「どっちにしても私が恥ずかしいじゃん!」

「ふふふっ、かわいいね…待って、その手を解いて?」


私が拳を作り、げんこつをしようとしたら止められた。

チッ、すぐ殴ればよかった。


「おっけー!じゃあ次は…」




こんな感じで、全身画を撮ったり、動画を撮ったりと、イラストの元になるのを提供した。







数日後、私をモデルにしたイラストを、怜奈が見せつけてきた。


「…可愛いじゃん」

「でっしょお?私の紗千恵ちゃん!」

「なんか…そう言われると気持ち悪いなぁ」


むずむずするからやめてほしい。私がモデルなんだから、私に言われてるみたいじゃんか。


「ふっふっふっ…でね、またご相談があって…」

「なによ?もうお金もらったんでしょ?」

「まぁね、凄く喜んでたよ。

でね、いつも依頼されて描いたイラストは、『SAMPLE』って文字を入れてSNSで公開してるんだけどさ…今回の、めっちゃバズっちゃって」

「へぇ、それで?」

「いやー、あのー…めっちゃ依頼入ったんだよね?具体的には数十のレベルで」

「おぉ、おめでとう!人気イラストレーターじゃん!」

「あはは、で、えっと…」


怜奈が目を逸らしながら、口を開いた。


「それ全て紗千恵ちゃんだったんよ」

「へぇー…はぁ?」

「だから、えっと…今から数百枚ぐらい、紗千の写真撮らせてくんない?」

「…めんどうくさい。私帰るね」

「待って!私を見捨てないで!」

「別に私がいなくても描けるでしょうが!

既にデザインも固まってるんだし!」

「そうだけど、そうじゃなくて!

だって数十枚もイラストを描くんだよ!?

モデルになる写真がいくらあっても足んないんだから!」

「知らん!私は帰る!」

「お願い!付き合ってよーーー!!!」


怜奈が私に抱きついてくる。

やめろよ、動けないじゃんか!


「おねがい!私を助けると思って!」

「ちょ、ちょっと、離れてよ…」

「あはは、紗千ちゃん敗れたり!嫌なら簡単に逃げれるでしょ?」


確かに軽くくっついてるだけですけど…その、甘くて柔らかい誘惑が…!

怜奈は卑怯だ!私が女の子に弱いの知ってるくせに!


「くそぉ、ずるいぞぉ!」

「…ねぇ、おねがい?」

「ひゃっ、耳元はだめぇ…」

「ねぇ、いいでしょぉ?」

「うひぃ…耳は弱いのにぃ」

「うふふ、じゃあ、おねがいね?」


私は陥落したのだった。

・紗千

『童顔ジト目ぱっつん眼鏡巨乳低身長美少女JKで、お願いすればイヤイヤ言いながらも何でもしてくれる幼なじみの彼女』のイメージそっくりな主人公。女の子大好きで、お願いはほとんど断れない。押しに弱い。ツンデレっぽい。


・怜奈

紗千の親友。イラストでお小遣い稼ぎをしている。可愛い。紗千が断れないギリギリのお願いをよくする。実は小悪魔系かもしれない。紗千ってからかうと可愛いから好きよ。


・紗千恵

『童顔ジト目ぱっつん眼鏡巨乳低身長美少女JKで、お願いすればイヤイヤ言いながらも何でもしてくれる幼なじみの彼女』というイメージから生まれたキャラクター。SNSで万単位のいいねが付いた。可愛い。なんだかんだ言っても全部してくれるのが可愛い。作者によると、依頼が数十を超え、モデルになった人に数百枚の写真や動画を撮らせてもらったとか。今後、SNSでの毎日更新や、マンガ化が決定しているらしい。留まるところをまだ知らない紗千恵ちゃんは、どこに行くのだろうか…。

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