宇宙使節団として派遣されることになりました。
断っておくが、俺たちは侵略者じゃない。
ただ、この星の食糧難は深刻で、
悪化の一途をたどる環境は、干ばつや洪水をもたらせ、最初に農業生産に深刻な問題を与え、近年では動植物の生態系を変化させ、魚や肉といった動物性の食料をも奪い始めている。
増え続ける人口を支えるための食料も、そして消費それ自体が環境をさらに悪化させる化石燃料も、枯渇までにわずかな時間しか残されていない。
そして、俺たちは惑星オーガの外を目指した。
まずは新たなエネルギー資源を探して。
あわよくば食料の生産基盤として。
しかし、このオーガ星系には適当な星はなかった。
・・・
オーガには、今も語り継がれる一つの忌まわしい伝説がある。
昔、オーガ星がまだ自然豊かな美しい星で、人々は皆、何の悩みもなく幸せに暮らしていた時代(もちろん、恋になやむ若者はいたであろうが)、オーガ系のある銀河系の「タイヨウ系」という辺境から、一隊の侵略者がやってきた。彼らの星はチキュウ星といい、奇跡的なことに、彼らの住むチキュウ星の水、空気、海、森林といった環境は、このオーガと酷似していた。
チキュウ星人たちは、生身の体こそオーガ人より少し小さかったが、常に惑星内での小競り合いが行われているため戦闘経験が豊富で、武器も戦闘用に特化していた。
それに対しオーガの人々は平和な世で暮らしてきたために戦闘経験が非常に少なくチキュウ星人にあっという間に攻め込まれ、無条件に降伏した。
チキュウ星人は暴力と略奪の限りを尽くし、そして去っていった。
・・・
オーガに残された時間はなかった。
限られた時間の中で、新エネルギーの開発も、資源産出星の発見もまったく目途がたたず、資源も食料もむなしく減っていった。
俺たちは、プライドを捨て、忌まわしきチキュウ星人に助けを求めることを選んだ。
もちろん、オーガのなかにはチキュウ星人に媚びるくらいなら滅びた方がマシだという声も大きかったが、それよりも生き続けることが大切なのだ、と。
しかし、チキュウ星人の対応はひどいものだった。
チキュウ星に上陸するや否や、攻撃をかけてきたのだ。
チキュウ星人の武器の破壊力は弱く、致命傷には至らない。が、精神的にはひどく傷つき、あふれんばかりの期待をこめて派遣された外交使節団はオーガに、なんの手土産もなく舞い戻ってきた。
ウェルス星人にあったのは、
何度目かのチキュウ星との外交交渉のときだった。
タイヨウ系ゾーンをはさんでちょうど真向かいにあたる彼らの星は非常に豊かだった。
豊かであるが故に、戦闘能力はきわめて低い。
-チキュウ星人は彼らを「神」と呼んでいる。-
そんな噂も聞いたことがあるが、信憑性はひとかけらもない。
だが、いずれにせよ、地理的に、ここオーガからウェルス星系に行くには、どうしても太陽系ゾーンを通らなくてはならないため、オーガとウェルス星との間に外交の道を築くにも、攻め込んで植民地とせしめるのにも、太陽系のチキュウ星をどうしてもおさえる必要がある。
今年も、先の議会決議によりチキュウ星への剛柔織り交ぜた外交案が可決され、俺たちは使節団としてチキュウ星に派遣される…。
続編(解決編)も近日アップ予定です。
お楽しみに〜。