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「……ざけないで、……ふざけないでよ。たった七年?
あなた達にとってはそうでしょうよ。私にとっては永遠に感じられるほどの
七年だったのよ。……」
いまや、計算ではなく、感情のまま言葉が出てくる。
押さえようとは思わなかった。今、どうしてもここで叫ぶことは
アリスには最適解に思えた。
「すまない? 許される前提で話さないでちょうだい。皇族に頭を下げて
謝られるなど、答えはイエスしかないじゃない。」
偽善よ、と吐き捨てる。先程からの痛々しい悲しげな表情が
ムカムカしてたまらなかった。
「……確かに。」
皇太子の横やりが入る。ギロっと睨み付けたアリスはおお怖い怖いと
言わんばかりの皇太子の態度を一瞥すると、家族の方を向いた。
立ち上がって、皇帝(仮)までツカツカと歩いていく。
「皇族なら、態度で示しなさい。いくら私が否定しようと家族だと
言うんでしょう。なら甘えないで。」
ぷっと吹き出す音が聞こええる。絵面的には7才に叱られている
大の大人だ。アリスも2回目でようやく、学んだ。飄々とした皇太子
にはスルーが一番だと。
いつの間にか顔をあげた皇帝(仮)家族は、先程までの痛々しい悲しげな顔
から、スッキリとした顔をしていた。
「そうだな行動で示そう。許してくれなくてもいい。
でも、家族であることは変わりない。」
だからせめて、家族であることを認めてくれないか、と皇帝は言う。
しかし、アリスはそれどころではなかった。
(っ限界だわ。)
先程から、喉が絶え間なく痛みを知らせてくる。隙を見せたくはなかった。
しかし、引き際だと諦めざるを得ない。
皇帝(仮)に顔を近づけると喉を指す。そして、パクパクと口を動かす。
しかしそれでも伝わっておらず、本当はいたいが、声を出して見せる。
「……ぁあ………ぁえ……」
かすれ声な上に母音しか声が出せない。喉が炎症を起こしているのだろう
と推測できる。この場合の対処法もとにかく安静にして声を出さないように
しなければならない。
これも、母と妹が熱を出しても医者につれていってもらえないため
自分で、対処しなければならず、夜にこっそり、公爵邸の図書室で調べた結果で
ある。
声が枯れてしゃべられなくなっていると気づいた彼らは急いで、
宮廷医を呼ぶよう伝えていた。私としては症状の対処法を知っているので
必要がないが、今は伝える術を持たないので、おとなしく待っていることにした。




