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 「ただ、……助けたかっただけなんだけどなぁ」


 ポツリと呟いた声は、名の知らぬ皇族と、その使用人には

聞こえずに風にさらわれていった。


 

 

 

 

  (皇女!? 私が! ……ありえないわ)


 あの例の人につれられて、アリスはアルベルトと共に歩いているところだ。

 アリスが走ってきた道を戻り、アリスが逃げ出してきた部屋も通りすぎ、

そして気づいた。


 (何百年も前に失われた技術ばかりがこの建物に使われているわね)


 通称 失われた文明(ロスト・インテント) 


 もう再現することもどのような技術であったかも知ることが難しい

文明の神髄。

 昔の文献に出てくるばかりで、現在もその技術を持った遺物は、片手で

数えることほどしかなく、仕組みもよくわかっていない。


(ますますおかしい。インぺリス帝国と言えば、大帝国で現在一番の先進国である

はず。その帝国ですらもこのような技術は持ってはいない。)


 ーーなぜ、ここにインぺリス帝国の皇太子がいるのか

 

 考えても、何の仮説も思い付かないどころか、ここがどこだと言う特定まで

至っていない。


(考えられるのは中央の闇と呼ばれる謎多き島国仙夏国、かしら)


 「どうぞ」


 いつのまにか奥にすすんでいて、目的の場所にまでついたらしい。


(首を洗って待ってなさい。洗いざらいこの真相を吐くのよ。)


 すべての真相を知っているであろう、扉の向こうのまだ見ぬ人物に

怒りが湧いてくる。

 

(私が未だ死ねないのもこの人の差し金なんだわ)


 なんの根拠もない理論を勝手につくって、闘志を固める。

ギギッ、ギギーー。軋んだ音をしながら、扉が自動で開く。

まだ心臓に悪いわね、と思いながら、入ろうとすると思いがけないことが

待っていたのだった。



 「ぁきゃ!」


 いきなり、誰かに抱きつかれたのだ。しかも一人ではなく二人。

驚いたアリスが悲鳴にもなっていない悲鳴もとい、寄声を発した。

アリスより年下だったらまだよかっただろう。

しかし、抱きついて来たのはアリスより年上の男子だったのだ。

助けを求めて隣を見ると、


 (……なんなの、涼しい顔して。

私だけ知らない世界に迷いこんだみたいじゃない)


 驚いたのもつかま、一度消え去った怒りが再燃した。


 「ねぇ驚いた。僕たち妹を待っていたんだ~。」


 ねぇ、ねぇ、名前おしえてよ~、と好き勝手言いつつも息を会わせているかと

思うほどのシンクロで様々な質問を問いかけてくる双子。

 この部屋は、中央にテーブルがおかれていて、その周りに椅子が

たくさんおかれている。多分応接間の役割をしている部屋なのだろう。

 家具の一つ一つが高度な技術で作られているのがわかる。

 

 前方には、二十代の男性、女性。多分、この双子の親なのだろう。

アリスよりも年上なのに、どうしてもうも精神年齢が低いのかもうアリス

の怒りは爆発寸前だった。


 「陛下、恐らく、この子は事情がわかっていないのだと

思います。早く説明してあげたらいかがでしょう。」


 ふと、隣のアルベルトが、二十代の男性ーー皇帝(仮)に話しかけた。

先程から、皇帝の隣の女性、多分皇后は、涙を流しているし、冷静そうに

座っている、多分皇后の横の男性もにこやかそうにしていて、

なにも話そうとしない。


 アリスにまとわりついている双子に至っては、さっきから、なでなで

されまくっている。もう我慢の限界だったアリスが口を開こうとした。


 「……そうだね。すまない、事情を説明しよう。」


 そう言って微笑んだ皇帝(仮)だが、面食らったアリスは

ごくりと息をのんだ。


 「まずは、この国が何処なのかと言う説明からしようか」


 曰く、ここは通称〈天空の国〉

 何千年も栄え、あるときばたりと姿を表さなくなった国。

 とある戦争からその後姿を見せてはおらず、この国が持っていた

失われた文明(ロスト ・インテント)の技術は今でも謎のままである。


 「……驚かせてすまなかったな。なぜこの国が隠されているかについては

 省くが、……聞きたいかい?」


 呆けた顔を見せたアリスは、表情がうまく作れていなかった

ことに今更気付く。


 (油断してはダメね。)


  首を振って、否定を示すと、話しはアリスのことへと移っていった。


 「アリスが生まれた直後、アリスはこつぜんと消えた。

 ……あのときのことは忘れられない。いや、忘れてはならないんだ。」


 天空の国の皇族は誰もが、白髪に薔薇水晶か紅い眼をしていて、

とても特徴的だ。

 だからこそ、この広大な大陸のなか7年で見つけられたのだ。

 天空の国は閉ざされた空間のなか存在しているが故に、

探す分野においてはあまり発達していない。


 ここまでの説明でアリスは、少しうつ向いた

先程から謝罪と理由(言い訳)ばっかり。そうアリスの怒りが

湧いてくる。


 「……ですか」


 話しかけることで、注目を集める。

 少し言葉を途切れさせることがポイントだ。

まだ喉はいたいが、弱味を見せてはならないと踏ん張る。


 「本当にそうですか?」


顔をあげた、アリスは、嘲笑の表情を浮かべて聞いた。

回りの人が愕然とするが、アリスは気にも留めないで、威圧感を出す

ために、足を組んだ。


 ーーこの場の空気をアリスが今掌握した。


「ど、どういう意味だい?」


 「そのままですが。本当に私を見つけることができなかったのか。

 失われた文明とも呼ばれるこの技術大国が?」


 嘲りの表情をつくって聞く。すると、皇帝(仮)が痛々しそうな顔をした。

 他の、人たちも揃いも揃って、悲しそうな顔をする。


 (……なんなの?)


 怒ると思っていたのに悲しそうな顔をされて、アリスは内面戸惑う。


 「あら、図星かしら?」


 なにか、自分は思い違いをいしているのではと言う疑問が頭の隅

にちらつくが、結局あとには引けなくて、唇を引き、人を見下したような

小馬鹿にした笑みを浮かべる。


 「……すまない。わたしはこれしか言えないのだが、技術が

進んでいないのは本当なのだ。」


 皇帝(仮)を筆頭に次々と、謝っていく。


 (……謝るって卑怯じゃない)

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