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後編

 昼ご飯をすませて割り勘で会計を済ませ、明はスマホマップでゲームセンターを見つけてふたりで移動する。


「へえー、こんな感じなんだ」


 目当てのゲームセンターにやってきて、真理華は珍しそうにきょろきょろしていた。


 彼女は当然ここでも目立っているが、ふたりは気にしない。


「何かやりたい? たいていのものならつき合えるよ」


「ストレス発散だから、ふたりで協力プレイがいいかな」


 明の問いに真理華は微笑で答える。

 ふたりの対戦成績は明の圧倒的な勝ち越しだからだろう。


 そんな彼を味方にすれば頼もしいという彼女の計算に、彼もうなずいた。

 今日は彼女のための日だというつもりだった。


「いいよ」


 ふたりはまずはシューティングゲームをプレイして一気に全面クリアする。


「初見で全部行けたのは、間違いなく淡路くんのおかげね」


 真理華に苗字を呼ばれることにくすぐったさを感じながら、明は笑顔で言った。


「まあこの手のゲームもそれなりに得意だからね。他にやってみたいのは?」


「いろいろあるわよ。レーシングゲームとか、格ゲーとかも」


 そう言ってふたりはあいている筐体のゲームを順番にやっていく。

 どれも明が強いことに真理華は感心した。


 ふたりは自販機で飲み物を買い、あいているベンチに並んで腰を下ろす。


「本当に強いわね、淡路くん」


「そうかな? やり込みさえすれば強くなれると思うぞ」


 彼女の感嘆を聞いて彼はきょとんとする。


「まあゲームをやりこむだけの人生だったからな」


 彼女がその気になればすぐにわかることだと思い、彼はぼっちを告白した。


「ここまで強いならいいじゃない。うらやましいわよ」


 と真理華は真顔で彼を見つめながら話す。


「そうなのか?」


 明は彼女のような人間が自分をうらやましがるとは想像しておらず、ぽかんとする。


 彼にとってゲームが強いというのは、それだけ他に何もなかったみじめな人生を明らかにしているようで、あまりうれしいことではない。


 プレイヤー同士なら尊敬されることもあるのだが、リアルの人間に自慢しようと考えたことはなかった。


「……何かズレているわね」


 真理華は怪訝そうに考え込む。


「うん、あなたがいれば何とかなるかもしれない」


「何の話だ?」


 明に聞かれて彼女は視線を再び彼に合わせる。


「わたしのことを知っているなら、私の家もある程度は知っているわよね?」


「レニーグループって聞いたことならあるけど」


 聞こえてきたうわさを思い出しながら明が言うと、彼女はうなずいた。


「そうよ」


 あっさり肯定されて明が一瞬驚く。


 レニーグループとは世界有数のエンタメ事業を持つほか、金融や総合電機も強い日本を代表する企業グループのひとつだ。


 特にゲームとアニメ、ロボットが有名である。

 

「……何でけんかになったのか、聞いてもいいのか?」


 流れ的に教えてもらえそうだと感じたからこそ、明は問いかけた。

 レニーグループの人間ならゲームについて理解がありそうだと彼は思う。


「ええ。簡単に言うとわたしが一介のプレイヤー、参加者としてふるまうのが気に入らないみたいなの。『お前は作る側で遊ぶ側じゃない』なんてね」


 真理華は悔しそうに話す。


「遊ぶ側の気持ちがわかるのは、デメリットにならないと思うんだが」


 と明は言う。


 むしろプレイヤーがどんなことにストレスを感じるのか、知っておいてほしいと思ったほどだ。

 

「わたしもそう言ったけどね……ああ、本題は違うのよ」

 

 真理華は言いかけてすぐに修正をはかる。


「淡路くん、あなたプロゲーマーに興味ない?」


「プロゲーマー?」


 突然の質問に明はきょとんとした。

 もちろんプロゲーマーのことは知っているが、彼女の意図をすぐには読めない。


「あなたくらい強ければ目指せるはずだけど、考えたことないの?」


「うん」


 明は素直にうなずく。


「興味ないわけじゃないけど、俺にやれるかなんて考えたことなかったな。だってひとつのゲームが強いだけだときついだろう?」


 と彼は言う。


「そうね。プロゲーマーとして生計を立てるなら、ゲームタイトルや環境が変わった程度で勝てなくなるんじゃ話にならないし、スポンサーも見つけないとね」


 真理華は彼の意見を認め、


「でもね、スポンサーならわたしがなれるわよ?」


 と爆弾発言を投下する。


「はい?」


 明が思わず彼女の端正な顔を見つめると、彼女は言いなおす。


「わたしの家を紹介できると言ったほうがいいかしら。もちろん、お金を出すわたしの家族の誰かに実力を認められるのが条件だけど」


「そりゃそうだけど、何かいきなりすぎないか?」


 いい話をしてもらったと彼は喜ばなかった。


 これが今日初めて会った相手だったなら、純粋に実力を評価してもらえたのだと前向きにとらえたかもしれない。


 だが、相手は四年くらいフレンド&嫁だったマリカであり、今まで一度もこの手の話をしたことがないのだ。


 勘繰ってしまうのが明の性分である。


「そうね……淡路くんには話したほうがいいわね」


 関係壊したくないし、と真理華は小声でつぶやいてから事情を話す。


「親とけんかした原因のひとつがね、ネトゲで遊んでるなら有望そうなプレイヤーのひとりでも見つけたらどうだって言われたの」


 彼女は悔しさと彼への気まずさが同居したような顔だった。


「その時は反発したんだけど、そしたらVR機をとりあげられちゃってね……強いプレイヤーをひとり連れて行けば、親だって認めるかなって思ったのよ」


「なるほど、それで俺か」


 と明は納得する。

 彼はマリカと最も仲が良いプレイヤーだし、実力も充分把握されているだろう。


 それに彼女のプライベートに興味を持ったことがないというのも、あるいは彼女には魅力的だったかもしれない。


「淡路くんが認められたら、VR機を返してもらうチャンスなの。悪いけど、力を貸してくれないかしら?」


 真理華は両手を合わせて頼み込む。


「たしかにそれはいいな」


 と明は答えた。


 マリカと長時間プレイできないのは地味に痛く、それが解消されるならやってもいいかという気持ちはある。


 それに彼だって男だから、彼女のような美少女に頼られるうれしさもあった。


「俺がプロになれるとは思わないけど、まあ腕試しをするくらいなら」


 と彼は言う。


 実際のところプロから見て自分はどの程度の実力なのか、興味がないわけでもない。


「ありがとう!」


 真理華は喜んで彼の手を握る。

 そして数秒後、我に返って真っ赤になって手を放す。


「ご、ごめんなさい」


「い、いや、別に」


 明も照れてどもってしまった。

 彼女の最寄り駅で降りて改札を出ると、止まっていた白いロールスロイスからえんじ色の服を着た老年の男性が降りてきた。


「お戻りなさいませ、お嬢様」


 やさしく上品な笑みを浮かべる老紳士に真理華は微笑む。


「ただいま、加藤。お客様も同伴だからよろしくね」


「はい」


 加藤と呼ばれた老紳士はふたりのために後部座席のドアを開けてくれる。


「さあどうぞ」


 うながされて明は乗り込むが、


(叔父さんが車好きだからわかる。これ新車で6000万円とかするやつだ)


 大衆車とは違う雰囲気と乗り心地に、明は完全にビビってしまう。


「どうしたの?」


 真理華のほうはまったく気づいてないようで、住む世界が違うんだなと思わざるを得ない。


 そもそも彼女は高級車の内装もぴったり合っていて、高貴なオーラを放っているようだ。


(……言ってもたぶん、鼻で笑われるだけだが)


 リアルの真理華はどうか知らないが、「ルイン」のパートナーをやっていた「マリカ」なら確実にそうする。


「何だかそわそわしているわね?」


「女の子と車の中でふたりっきりって状況が初めてなんだね」


 高級車に落ち着かないと言うのは何だか恥ずかしく、明は彼なりに見栄をはってしまった。


「わたしとふたりでデートは平気だったのに?」


「で、デート!?」


 不思議そうに真理華が放った単語で、明は動揺してしまう。


「ああ、そんな意識じゃなかったのね。何となくわかっていたけど」


 彼女はすぐに納得する。

 何だか悪いことをしたような気になった彼に、


「気にしなくて平気よ。あなたがそういう人だと思ったから、会いたいってわたしは言ったわけだから」


 と言った。


「……モテる女は大変だなって解釈をしていいのかな?」


「だいたい合ってる、ということにしておきましょうか」


 明の確認を真理華は否定しなかった。

 人気者だからこそ、下心を持って近づいてくる存在が後を絶たない。


「まあ、元気出せよ」


「そこでそんななぐさめをくれるあたりがルインよね」


 明は気の利いたセリフを言ったつもりはない。

 むしろ無難で個性のないことしか言えないと反省すらしたかった。


 ところが、真理華にとってはクリティカルだったらしく、顔を横に向けて体を震わせている。


(大声を立てないあたりが品のあるお嬢様って感じなんだよな)


 と明は思う。

 お嬢様扱いされるのもいやそうな気がするため、心の中でとどめておいたが。


 ふたりがとりとめもない雑談をしているうちに、高級車はなめらかに豪邸の前で一度停車する。


(うわ、すげええ)


 と明は思ったが、何とか声を出すのをこらえた。

 彼が見たのは広大な庭で、おそらく土地面積は150坪くらいはあるだろう。


 土地だけで6億円以上するということは知らなくても、すごいことだけは何となく理解できた。


 車は再度発進し、噴水の横を通って玄関のポーチ付近で停止する。

 もちろん加藤がドアを開けてくれて、ふたりはただ降りるだけだった。


「お父様たちはいるわね?」


「はい。お嬢様からご連絡があったので、みなさまお待ちかねです」


「そう」


 真理華と加藤のやりとりに、明は何やら不穏な気配を感じる。

 だからと言って逃げ出すつもりはなかった。


 彼女が自分に助けを求めてくるなんて相当のことではないか、と彼は考えていたからだ。


「ついてきてくれる?」


「ああ」


 真理華がドアを開けると、何人ものメイドが彼女に頭を下げる。


「大げさね。普段はやらないのに。きっとあなたへの威嚇ね」


 彼女はため息をついて明に言った。


「なるほど、俺に対するデバフか」


 ゲームになぞらえて考えて敵勢力がいま自分に状態異常でかけて弱体化させようとしていると、明は解釈する。


(つまりプロゲーマーとしての適性を、すでに試されているってわけだ)


 真理華は地下室に降りていき、引き戸を開ければそこには広い空間と何人もの男性たちがいた。


「ごきげんようという気分じゃないから、省略していいかしら」


「あいさつはきちんとするのだよ、真理華」


 彼女にどこか似た雰囲気の中年男性がなだめるように言う。

 そして明に視線を向けた時、鋭いものを感じさせる。


「それで? そちらの少年がきみの推薦する子かな?」


「ええ、お父様。彼ならわたしの期待に応えてくれるはずよ。とても強いんだから」


 真理華は立派な胸を張ってアピールした。


「じゃあさっそく腕を見せてもらおうかな」


「いいわよ。ね?」


「いや、いいわけないだろ」


 勢いよく聞いてくる真理華に、明はついにツッコミを入れる。


「すぐには気づかなかったけど、そちらの男性プロゲーマーの【シュンエイ】さんじゃないか?」


「そうよ? うちの会社が契約してるの」


 何を当たり前のことをと真理華は言う。


「対戦相手がプロだなんて初耳なんだが」


 さすがにこの展開を予想しろというのは無茶だと明は思った。


「いやなら止めてもかまわないよ?」


 真理華の父はにこやかに言う。

 

「ちょっと淡路くん?」


 真理華はすこしあわてて彼をじっと見る。


「プロ相手にいまの自分の立ち位置を測るのは大事だからやりますよ」


 明はそう言って微笑む。

 気負いのない態度に【シュンエイ】はほうっと感心する。


「いいね。虚勢じゃないとすれば、君はプロ向きかもしれないな」


 と言うが、明はリップサービスだと聞き流す。


「題材は何ですか?」


「君の得意分野でどうだろう?」


 明の問いに【シュンエイ】はそう言う。


「いえ、提示された題材で結果を出せてこそプロでしょう」


 彼が言うと、真理華の親族が大きくうなずいた。


「その通り! つまらない引っかけだったようだね。では題材は《フォーチュンデイ》とさせてもらおう」


「PCのシューティングゲームですね」


 世界的に人気タイトルだけに明も知っている。

 去年のソロ部門の優勝者は約三億円の賞金を手にしたことも。


「そうだ。世界の大会で勝てる選手を我々は欲しているからね。世界大会で採用されていないタイトルで強い選手は、はっきり言っていまはいらない」


 シビアな発言だが、それだけに本気なのだと明は実感できた。


「わかりました。よろしくお願いします」


 と彼は言う。

 《フォーチュンデイ》は銃とナイフで敵プレイヤーを倒していき、最後に生き残ったひとりが勝者となるゲームだ。


 バトルロワイヤル系シューティング、なんて表現をした者もいる。


「一対一だと味気ない。ノンプレイヤーキャラクターを何人かいれるよ」


 同一のPCの右側に座った【シュンエイ】の言葉に明はうなずく。

 そして戦いははじまった。


 ふたりの開始地点はランダムに散らされ、何人かのノンプレイヤーキャラクターも配置されている。


(NPCを何人倒しても関係ないのがポイントだよな)


 と明は思う。


 倒した数がスコアとして計上されるルールなら、多少のリスクを覚悟で倒しに行っただろう。


 だが、ルールは「最後まで立っていたほうが勝ち」なのだ。


(……NPCに負けたら、どっちも負けにされそうだけど)


 その辺の裏は考えてみたが、いま心配しても仕方ない。

 【シュンエイ】はと言うと、手さぐりにNPCと戦っている。


 おかげでどこにいるのかわかってしまった。


(誘いだな。乗るけど)


 と明は判断する。


 彼のほうが試される立場だし、大事なのは「契約したい選手かどうか」だ。


 契約して支援する価値がある選手は強いだけではなく、観客に人気が出る選手でもあるだろうと彼は考える。


 この手のゲームでは基本的に、慎重で受け身で堅実な選手はウケがよくない。


 「この選手はつまらない」と言われると人気競技のプロチームならともかく、プロゲーマーとしては不利になってしまう。


 もちろん、観客人気などどうでもよくなるくらい強ければ話は別だが……。

 

 挑発に乗ると言っても不用意には近づかない。

 罠を仕掛けたり、NPCを誘導することが可能だからだ。


 明のほうも距離の工夫し、NPCを【シュンエイ】のほうへ誘導する。

 そうなると、彼の予想通りNPC同士の戦いとなった。


 ちょうどいいので彼は斜線が通ってない位置に寝転がり、そして床に銃を触れさせながら物陰にひそむ【シュンエイ】を狙って撃つ。


 地面と建物を活かした跳弾がきれいに【シュンエイ】が持つ銃に当たる。


「!?!?」

 

 真理華以外の面子がいっせいに息をのむ。

 それをよこに再び跳弾を放って【シュンエイ】を仕留める。


 こうなればあとはNPC同士の戦いが終わるのを待ち、残った面子を片付けるだけだった。


「Winner」


 と明のモニターに表記される。


「し、信じられない。何なんだ、いまの射撃は?」


 真理華の父はうめいた。


「NPCをブラインドにした上での跳弾ですね。……まさか高校生でこれができるなんて」


 【シュンエイ】は説明しながらも驚きを隠せない。


「どう? 彼はすごいでしょう?」


 真理華は得意満面に話しかける。


「あ、ああ」


 彼女の父は衝撃から立ち直ると、明の肩の上に手を置いた。


「君、よかったらいまからプロ契約しないか?」


「え、早いですね」


 手ごたえがあった明だったが、さすがにいますぐと言われるとは思っていなかった。


「君ほどの逸材を逃がす手はない。娘の見る目を疑った私が間違っていたと、心底反省しているところだ」


 と真理華の父は言った。


「お気持ちはありがたいですが」


「君はたしかにプロを目指すべきだと思うし、それには早いほうがいい」


 ちょっと待ってくれと明が言おうとしたら、【シュンエイ】までもが言い出す。


「ふたりとも落ち着いて。彼はまだ一六歳なんだから、親の同意なしにプロ契約はできないはずでしょう」


「あっ」


 真理華の指摘にふたりの男性はハッとなる。


「でもまあ、淡路くんがすごいのはたしかなんだから、わたしに対して謝ってほしいわね」


「す、すまなかった」


 勝ち誇る彼女に対して、父は素直に謝罪した。


「じゃあVRゲーム機を返してくれるわね?」


「わかった。彼と一緒にプレイするなら認めよう」


 彼女の父はあっさりと許す。


「彼以外の人と一緒にプレイしたことなんて、ほとんどないわよ」


 明が唖然としている中、狙いを達成した真理華が彼にウインクしてくれる。


「とりあえずありがとう。おかげで助かったわ」


「ああ」


 明は短くうなずいた。

 彼としても組みやすいパートナーを失わずにすんだので、満足できる。


「とりあえず君の親御さんを説得したら、契約を交わしていろいろと話を進めたいんだが、それでかまわないかね?」


 真理華父の言葉に明はもう一度首を縦にふった。


「ええ。たぶん反対はしないと思いますが」


 両親は彼らなりに自分のことを心配していると、彼なりに理解している。


 レニーグループのような世界的大企業が契約したいというなら、きっといい返事を出すだろう。


「よし、OKとれたぞ」


 と真理華父が言うと、


「ええー!?」


 さすがに仰天して大きな叫びをあげる。


「いくら何でもちょろすぎるだろ、うちの両親」


 そう言わずにいられなかった。


「あとで書類を持っていけばOKだそうだ」


「さすがにそれはそうですよね」


 電話だけで許可を出すほど無謀ではなかったか、と明は思う。


「何ならうちから通うことも許可が出たぞ」


「いや、何の話ですか?」


 一瞬流しかけた彼だったが、あわてて聞き返す。


「君の家庭だと市販用のものしかないだろう? ここでならハイスペックな専用マシンが揃っているからな」


 と真理華父は言う。


「それはそうでしょうけど」


 だからなぜそうなるのかと明は思う。


「君の学校は娘と同じそうだから、転校の必要もあるまい。日常生活からサポートしていこう。悪い話ではないはずだが?」


「……わかりました」


 明の迷いは短かった。


「お世話になります」


「やったわね!」


 真理華はどう思うだろうという彼の不安は杞憂に終わる。

 どう見ても彼女はレニー関係者の中で一番喜んでいた。


「ずいぶんと早い決断だね。感心するよ」


 と【シュンエイ】が言う。


「幸運の女神には前髪しかないって話を聞いた覚えがあったので」


 明はこんなチャンスは生涯もうないかもしれないと考えたのだと答える。


「なるほど。一流プロは決断が速いという。君は一流になるかもしれないな」


 と【シュンエイ】は感心した。


 ──将来、お嬢様と世界一プロゲーマーの理想的な夫婦と呼ばれることになる、彼らの物語はここからはじまった。

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