前編
淡路明は今日どこに遊びに行くのか、楽しそうに盛り上がる級友たちに背を向けて、ひとり教室をあとにした。
彼は喧騒や人の輪から切り離されているような疎外感を覚えているが、だからこそ帰宅の足取りは軽い。
高校から徒歩十五分の自宅にたどり着けば、手洗いとうがいと着替えを済ませて、飲み物を手にして自宅にこもる。
そしてヘルメット型VR機を装着し、『ネクストワールドオンライン(通称NWO)』にログインした。
そこでは明は『ルイン』という名前を持つ魔法使いとなる。
ログイン先は彼が所有している拠点で、先に彼の仲間の『マリカ』が来ていた。
「おはよう、ルイン」
可愛らしい少女剣士のあいさつに、ルインは苦笑する。
「それを言うならこんにちはだろ? マリカって日本人だったよな?」
「あ、そうか」
マリカはてへっと舌を出す。
見る人が見ればあざといと言われそうな仕草も、とても可愛らしい。
ボイスチェンジャーを使った中性的な声も、ギャップを生み出す効果をになっている。
「何か混乱しちゃうんだよね~」
と彼女が言うので、
「おいおい大丈夫か? 俺が言えた義理じゃないけど、ゲームのやりすぎじゃないか?」
ルインは不安になる。
時間間隔がおかしくなるというのは、重度なゲーマー(廃人と呼ばれることが多い)の宿命のようなものだ。
「そんなにプレイしてないわよ。ルインならわかるでしょ?」
「そりゃ『夫婦』だからな」
マリカの答えに彼はそう答える。
NWOにはフレンド以外にも結婚システムが実装されていた。
夫婦となったプレイヤーは同じ拠点に住める、夫婦割引を使える、をはじめ他ににも特典が用意されている。
だから気があった相手と結婚している者は多い。
夫婦ならわかるというのは、夫婦なら相手がいつログインしてログアウトしたのか、記録を確認することができるのだ。
(プライベートは聞いたことないけど、たぶんマリカは俺と同じ学生だろうな)
とルインは推測できている。
夫婦になって同じ拠点で活動していれば、自然とある程度のことが推測できてしまう。
「そうそう、旦那様に今日初めて会うんだから、おはようでもおかしくないわね」
マリカは笑顔で言いながら、右人差し指でぴっとルインをさす。
「いきなり力技をぶち込んできたな」
彼はいつものことだと苦笑で受け止める。
「まあいい。さっそく冒険に出かけようぜ。たしか剣スキルの熟練度あげをやるんだろう?」
と彼女に予定をたしかめた。
NWOではクラスに対応したスキルレベルや熟練度が設定されていて、それに応じて使えるスキルが違ってくる。
強くなりたいなら熟練度あげは怠れない。
「ええ。『流転斬り』を覚えたいの。そうすれば強くなれるでしょう?」
「そうだな」
マリカの意見にルインは賛成する。
『流転斬り』は防御したあと、硬直なしに反撃できる上級スキルだ。
ふたりで多数の敵と戦う状況が少なくない夫婦ユニットとしては、『流転斬り』の会得は大きな恩恵がある。
「じゃあさっそく狩りに行こう。洞窟でいいよな?」
「ええ」
コンソールパネルを操作して、自分たちふたりを転送すると眼前に洞窟の入り口があった。
ここはルインたちがスキル熟練度あげによく使うダンジョンの一つだ。
ホームからの転送ですぐに移動ができて、敵がそんなに強くなく、それなりに数が多い。
おまけに地形を利用すればふたりでじゅうぶん戦えるのが特徴だ。
おそらく少人数で行動するプレイヤーが使うことを想定しているのだろう。
「他のプレイヤーはいないみたいね」
「人数がいればもっと効率がいいダンジョンあるからな」
マリカにそう返答したルインは、彼女に視線で先に行くようにうながす。
彼は魔法使いであり、前衛で彼を守るのが彼女の役目だ。
「わたしより強いくせに?」
マリカは笑いながらも彼の要請に従って先に洞窟に入る。
「マリカ、油断は禁物だよ」
「はいはい」
しょせんゲームかもしれないが、だからこそ真面目にやりたいし、それが楽しみにつながるとルインは思う。
実のところマリカだって彼と夫婦ユニットをやっているくらいだから、同じ考えのはずだった。
洞窟は暗がりを好むコウモリや、ゴブリンが多く出現する。
「コウモリとゴブリンばかりだと飽きるのよね~」
とマリカが言いながら剣を抜く。
「同感だな。熟練度あげが終わったら、決闘トーナメントにでも出てみようか」
ルインは嫁にうなずき、杖をかまえながら提案する。
「ルインは最強だからいいけど、わたしはどうかな~」
「前はいい線いってたじゃないか」
ふたりはそう言いながらゴブリンの集団と戦闘に入った。
「ベスト8で負けちゃったわよ」
「《ファイアボール》」
背中をあずけあいながら彼らはゴブリンに応戦する。
ルインの魔法で三体のゴブリンが焼かれて、残りのゴブリンはひるむ。
仲間がやられるとひるむか狂暴化するのが、この種族の特徴でもあった。
「《加速斬り》」
マリカは高速での斬撃をくり出してゴブリンを倒す。
熟練度あげはスキルを発動したほうが、使わないよりも若干効率がよくなるというシステムだ。
だからふたりは戦闘の際好んで使っている。
「そろそろコウモリが出てくるわよ」
とマリカが言う。
何度もこのダンジョンに入っているだけに、敵の行動パターンも予想しやすい。
「ああ、《ライト》」
洞窟には明かりがあるものの、どうにか周囲が見える程度だ。
コウモリたち相手なら光の玉を作って周囲を照らすスキルが有効になる。
「ギギギギ」
ふたりを襲おうとていたところでいきなり光で照らされ、ウモリたちは不愉快そうな声で鳴き、体をけいれんさせた。
「《アイスレイン》」
ルインは氷の雨を降らせるスキルで、十匹のコウモリたちへ一気にダメージを与える。
即死しなかったものの地面に落ちたところを、マリカが剣でとどめを刺す。
「さすが」
と彼女が言ったのはコウモリたちの群れを倒さず、地面に撃墜したルインの魔法制御の高さだった。
「加減難しいのにね。コウモリを魔法で倒さずに落とすのって」
「慣れだよ、大事なのは」
彼女の称賛をルインは何でもないように受け止める。
「やった、『流転斬り』を覚えたわ!」
「やったな!」
周囲にモンスターがいないことを確認して、ルインとマリカはハイタッチをかわす。
「あ」
直後、マリカは表情をくもらせる。
「ごめん、今日はログアウトするわ」
そして彼女はそのままログアウトしてしまう。
NWOのシステム上、彼女のアバターはすぐに拠点へと転移させられる。
「……何があったんだ?」
ただごとではない感はしっかりと伝わってきて、一気にゲームを楽しむ気分をルインから奪っていった。
今日はマリカとダンジョンを楽しむ予定で、他に予定は入っていないしイベントなども特にない。
「……なんだか白けたな。落ちて他のゲームでもするか」
一日くらいサボっても変わらないレベルにルインは達している。
気乗りしないままゲームを続けるよりはずっといいと判断した。
現実世界の明に戻り、彼はとりあえずインターネット通信で対戦できる据え置き機ゲームで遊ぶことに没頭した。
翌朝、明が目を覚ますとスマホに通知が来ていて、何とマリカからメッセージが届いていた。
マリカ:【昨日はごめんね。……突然だけど、オフ会やらない? ルインってどこ住みだっけ?】
「珍しいな」
と明はつぶやく。
マリカと彼は知り合って四年くらいになるが、今まで一度もリアルの話をしたことがなかった。
当然顔も住所も何も知らない。
連絡先を交換していたのはいちいちゲームにログインしなくても、お互いの予定を話せて便利だからだ。
明たちが使っているのは、個人情報を登録しなくても使える無料のメッセージアプリなのである。
「リアルの人間関係なんて面倒だから、ゲームに持ち込まなかったのに」
当然マリカも同じ考えだと思っていた。
だからこそ四年もの間、ずっと良好な関係を維持できていたのだ。
明には失望とまではいかないにせよ、残念な気持ちが浮かんでくる。
だが、すぐに疑問のほうが大きくなってきた。
「四年のつきあいが壊れるリスク、わからない人じゃないよな。つまりそれだけのトラブルでもあったのか?」
何の根拠もない想像だったが、それなら納得はできると彼は思う。
「まさかVR機がぶっ壊れたとか……さすがにそれはないか」
彼は自分で思いついた考えを自分で打ち消す。
最近のVR機は耐久力に優れていて、耐熱・耐寒・防水・防塵にも力が入っている。
人間の手で壊せなくはないだろうが、それなりの労力が必要になるはずだ。
それに甚大な災害が起こったならニュースで報道されるだろう。
「まあいいや」
とりあえず明はオフ会に応じるかどうか迷い、結局受けることにする。
お互い承知していると思っていた暗黙の了解を破った理由を、知りたくなったのだ。
ルイン:【都内だよ。マリカは?】
マリカ:【ほんと!? わたしも都内よ】
すぐに返事が来たことにも、都内在住だったことも明には意外だった。
「たしかに都内は人口が多いけどな」
まあいいかと彼は気持ちを切り替えて手を動かす。
最寄り駅はさすがに教える気はならないが、電車一本で行ける駅をお互いにいくつか出してみる。
そして一つの駅を選ぶと、そこから近いアパレルショップを待ち合わせ場所に設定した。
マリカ:【今週の土曜の昼十一時半ね。急にごめんね】
ルイン:【いいよ、別に】
明はもう気にしていないとマリカに伝える。
日時は流れてオフ会当日がやってきて、明は待ち合わせ場所に十五分前に到着した。
「失敗した」
と明がつぶやいたのは、人の多さを見てだ。
都内だし土曜日だからそれなりの人がいるだろうと思っていたのだが、彼の想像を超えている。
お互い目印となる服装を伝え合ったはいいが、はたして上手く合流できるだろうか。
「えーっと、クリーム色のセーターにジーンズ、赤いバックを右手に持っているんだっけ」
服装だけだと男か女かわからないことが、彼が失敗したと思う第二の理由である。
当日顔を合わせるのだから性別くらい聞いておけばよかったのだ。
オフ会初心者の明にとってはハードルが高すぎる。
「向こうが見つけてくれることを祈るか……うん?」
彼が目を奪われたのはひとりの少女だった。
金髪に黒い目、透き通るような白い肌、モデルかアイドルではないかと思うほどの美貌の持ち主。
(あれは絵島真理華じゃないか?)
同じ高校でトップクラスの知名度と男子人気を誇る美少女だ。
現に道行く人、特に男性の視線をくぎ付けにしている。
連れの女性は相方の頬をつねったり、肘打ちをしているが、絵島真理華に対する敵意は彼女の美貌を見た瞬間、霧散してしまっていた。
あれにはとてもかなわない。
打ちのめされ諦めてしまう女性たちに明は勝手ながら同情してしまう。
芸能界に何でもスカウトされているとか、超ハイスペック大学生の彼氏がいるといううわさが流れるのも当然だと感じる。
(絵島もここには来るんだな。俺には関係ない話だけど……待てよ?)
家族か、それともうわさの恋人との待ち合わせだろうと考え、明は本来の目的に戻ろうとして、もう一度彼女に目を向けた。
絵島真理華の服装をよく見ると、クリーム色のセーターにジーンズだったし、右手に赤いバッグを持っている。
「嘘だろ……」
明は自分の脳がひらめいた答えを信じられなかった。
単に服装が同じだけではなく、彼女の名前も「まりか」なのである。
たっぷり五秒くらいは彼の時間はとまっていただろう。
だが、何回見直しても真理華の服装は変わらない。
「一応偶然の一致かもしれないし」
自分でも信じていないことをつぶやき、明はスマホのアプリを起動させる。
待ち合わせに備えて「マリカ」は当然アプリをチェックしているだろう。
彼が「ついた」と連絡すればすぐに反応するはずだ。
すぐに通知音が聞こえてきて、目の前の真理華がピンクのスマホを取り出す。
彼女の表情は明るくなり、きょろきょろと視線をさまよわせて、ほどなくして明の姿をとらえる。
視線があったと思った直後には彼女はまっすぐに歩き出す。
「初めまして、マリカよ。あなたがルインね?」
「あ、ああ」
笑顔で話しかけてくる彼女に答える明の声は、緊張と驚きで上ずった。
周囲の人々は信じられないものを見る目でふたりのことを交互に見ていたが、明はとてもそれどころではなかった。
「どうしたの?」
マリカは不思議そうに聞き、明はすこしずつ冷静さを取り戻す。
まず彼女が彼のことを知らないのはおかしくない。
彼女は有名人だが彼は一般人。
物語の主役と名前すら与えてもらえない端役くらいの大きな差がある。
それにふたりは同じクラスになったこともないのだから、彼女が明のことを知らないことを責めるのも酷だ。
「いや、まさか同じ学校の女子だとは思わなかった」
と彼は正直に打ち明ける。
何がきっかけで発覚するのかわからない秘密を、ひとりで抱えるのはいやだったのだ。
「え、嘘!?」
マリカは明らかに顔色が変わり、それは驚き以外の色合いが濃い。
「失敗した……確率はかなり低いと思ったのに」
彼女はにらむように明を見つめる。
「俺も確率については同意見だよ」
彼はため息をつきながら言った。
四年くらいつき合ってきたネトゲの友達が、実は同じ高校に通っていたなんて、普通は想定しない。
「とりあえず移動して、話を聞こうか」
明が淡々として言うと、マリカは一瞬虚を突かれた顔になる。
それから我に返って小さくうなずく。
ふたりが入ったのは近くのカフェで、カップルが大半だった。
店員に飲み物を注文したところで明がたずねる。
「何があったんだ?」
「親にVR機を取り上げられたの」
「なるほど」
ぶすっとした表情で打ち明けられた事情に、彼は納得した。
VR機がないとゲームアカウントに連絡することができない。
そしてVR機は法律上、親の同意書なしに十八歳未満が購入できない。
マリカが明に連絡をとるためには、スマホのアプリを使うしかなかったわけだ。
「しばらくはおあずけだな」
ひとりでもプレイできるが、彼女の手前明はそう言った。
「ごめん」
真理華は改めて謝る。
「いいんだけど、理由を聞いてもいいのか?」
と明が言うと彼女はすこし息をのむ。
「ルイン、わたしのこと知らないの? 名乗ってないのに同じ学校だとはわかったのに?」
彼女の疑問に彼はまじめに答える。
「うわさならいろいろと聞いてるけど、本当のことかわからないからな。お前の口から聞くのが一番確実だと思う」
彼女にまつわる他人同士の会話が一方的に聞こえてきていただけなのだが、何もいま言わなくてもいいだろうと彼は判断した。
「そう。ルインはルインね」
真理華はうれしそうというよりは安心した顔になる。
「というか、ルインってボイスチェンジャー使ってなかったのね」
「まあね。今だと使ってるかどうかわかりづらい仕様だし、じゃあいいかなって」
と明は答えた。
使っているかどうか自分で言わなければわからないのだから、言わなければ問題ないという判断である。
現に真理華もリアルで会うまでは気づいていなかったので、間違いではないと言えるだろう。
「しばらくはゲームをプレイできないのか?」
と明は問いかける。
VR機がなくてもパソコン、据え置き機、スマホがあればゲームで遊べるだろう。
だが、VR機をとりあげた親が他のマシンを取り上げないということはありえるのか。
「ええ。スマホ以外は全部没収されたわ」
彼の予想は正しいと真理華はふきげんそうに認める。
「ああ、むしゃくしゃしてきたわ。親がエンタメ業やってる子が、エンタメにはまって何が悪いのよ!」
だんだんと語気が強くなってきた。
「それは思うな」
明は全力で同意する。
もっとも彼は親の影響を受けたわけではないので、共感したのは「エンタメにはまって何が悪い」という点だが。
「でしょう!? リアルの友達だと理解者がいないから、思い切ってルインに声をかけたってわけ」
と真理華はまくしたてるようにしゃべる。
「なるほどなあ」
明はとりあえずうなずいておく。
「じゃあこの後、どっかゲームにでも行くか? ゲームセンターに行ったことは?」
ストレス発散するならゲームがいいだろうと予想し、彼女に問いかける。
「ないわね。連れて行ってくれるの?」
真理華は食い気味に返事をしてきて、軽い気持ちで聞いた彼はすこし驚く。
「ああ。この辺にもたしかあったはずだから、ご飯を食べたら行ってみよう」
「了解」
真理華は返事をするとさっそく店員を呼び、料理を注文する。
やることが決まったあとの動き出しの速さは、ゲームのマリカと同じだなと明は思った。
料理を頼んだところで真理華の視線が明に戻る。
「本当に中身はルインね」
「俺もマリカなんだなって思ったよ」
ふたりは同時に苦笑した。
ゲームで知り合った相手をわかったつもりになるのは危険だという問題はしばしば取沙汰されているが、彼らに関してはまったく違和感がない。
「リアルのわたしを知ってるから言うけど、男の子に興味がなさそうな態度をとられ続けるのは、初めてかもしれないレベルよ」
「……ご愁傷様」
明は真理華のカミングアウトを聞いて、心の底から同情する。
彼はゲーム内とは言え周囲から注目を浴びる経験があるので、彼女の心情を察することができた。
(たしかにすごい美少女だけど)
間違いなく明が肉眼で見た中でトップレベルだし、今の周囲の視線を吸い寄せている。
何でこんなさえない男と一緒なのか、というふしぎそうな視線には気づかないふりを決め込む。
「そこで同情してくれるのがルインよね」
真理華は吹き出して、右手で口を隠す。
「知名度が高いことのデメリットは知っているつもりだよ。ゲームでの話だけど」
リアルではそんなことがないと明は自嘲を混ぜながら答える。
「ううん、わかってくれるだけで大いにありがたいわ。デメリットの話をしているのに、メリットがあるならいいはずって言われたりして」
「違う、そうじゃないって言いたくなるよな、それ」
「そうなのよ!」
明の合いの手に、真理華はわが意を得たりと喜ぶ。
リアルでは初対面だというのに話がはずむのはこれまでのつき合いのたまものだろう。
「相手がルインなら思いっきりゲームや漫画の話ができるわね!」
「お前はNWOでもよくしていたと思うが、べつにかまわないぞ」
真理華が楽しそうにしているので、野暮なことを言うのをやめる。
今日は彼女のストレスを発散するためのオフ会だと思えばいいのだ。
「ところであなたの名前教えてくれない? わたしだけ知られてるって変じゃない?」
と急に真顔になった彼女が要求してくる。
「……淡路明」
一瞬考えたものの、彼女の言い分はもっともだと彼は本名を明かす。
「へえ、かっこいい名前じゃない」
女の子に名前を褒められた経験がない明は頬がゆるみそうになるのを、我慢する努力が必要だった。