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最強女帝の現代転生  作者: フジタヒロシシ
3/32

魔法理論

なんちゃって魔法理論。

この世界ではこれに基づいて魔法が使われます。



わたしが前世で用いていた魔法とは、どういうものか。

何もないところから火を点けたり、水を出したり。雷を落としたり、風を吹かせたり。

さらには空を飛んだり、怪我を治したり。

現代日本においては、漫画や小説、ゲームなど至るところで、そんな魔法が想像され妄想されている。


結論から言おう。

『科学で証明されている観測されている現象は、魔法として使うことができる』

すなわち、水は酸素と水素が結合したものだ、とか。

火が点く、雷の発生する、怪我が治る原理、その仕組みさえ解っているなら、たぶんわたしでなくても魔法が使えるのだ。

反面、死んだ人間を甦らせるとか、時間を遡って過去に行くとか、原理が解らない、科学的に証明できない事柄は扱えない。

だから、科学がほとんど発展していなかった前世の世界より、きちんと勉強しさえすれば、今の世界の方が、数多くの魔法を使える可能性がある。


勿論、使うには訓練が必要だ。

前世の、魔法が明文化された世界においても、使いこなして人並み以上を目指すと、膨大な時間と労力を掛けねばならなかった。

体系化されてなお、誰でも扱える代物ではなかったのだ。



ただ、喩え話をするならば。

前世において、子どもへ最初に魔法を教えるときに、こんな話がされた。



『あなたが魔法を使うというのは、この世界(、、)に頼みごとをするようなものだ。

火を起こしてくれ、水を出してくれ、と。

ただ、世界(、、)も最初は簡単に話を聞いてくれない。

あなたを舐めてかかる。

火はどのくらいの大きさか、どのくらいの温度か、そもそもどうやったら発生するものなのか。

あなたは世界(、、)からこういう質問を受けて初めて、最初の一歩を踏み出せる。

世界(、、)の声を聞かない内は、魔法は使えない。

声が聞こえたあとも、よくよく辛抱強くしないといけない。


たっぷりの香辛料を使って長時間かけて作る、煮込み料理を想像してみなさい。

具材を均一の大きさに切る。不揃いがあってはならない。

灰汁を丁寧に、掬いとっていく。煮汁に少しの濁りもあってはいけない。

決められたタイミングで、決められた具材と香辛料を鍋に入れる。少しもずれてはいけない。

具材に火が通るまで、焦げ付かないように見張ってなければいけない。

長い長い、時間が掛かる。

それも、実際にあなたがやるわけではない。

世界(、、)が、やらなければいけない。

世界(、、)に、やらせなければいけない。

乳幼児みたいな知能しか持たない相手に、手つき指先の覚束ない相手に、むずかしい煮込み料理を一から全部教える。

そしてあなたは教えるだけだ。ひとつの手出しも許されない。

全ての作業を、世界(、、)が行う。

世界(、、)が完璧に、ひとつの間違いもなく料理を終えて、初めて魔法は発現するのだ。


馴れてくれば、むずかしい煮込み料理から簡単な焼き料理になる。

乳幼児みたいな知能は、大の大人くらいになる。

次第に指先が器用になって、どんな細かい作業もこなせるようになる。

でも、行程がいくら簡略化されても、出来上がるものは同じになる。

魔法で『火を起こす』というのは、そういうことなのだ』



世界(、、)というのは、前世で用いていた言葉を、日本語で適切に表せないための仮の表現だ。

あの言い回しは、魔法という概念がない現世では表現できない。

ちょうど、英語で『プライバシー』という言葉を、日本語訳できないのと似たような感覚だ。



ん?

そもそも喩えが解らない?

世界(、、)の声なんて聞いたことがない?

煮込み料理が焼き料理に変わって、なんで同じ魔法が使えるのか?

それは悪かった。

わたしも話は上手い方でない。

前の世界にいた、部下の大魔法使いならば、もっと解りやすく説明できようが。


ただこれで、ひとつ明確になったことがある。


だから、あなたは(、、、、)魔法が(、、、)使えない(、、、、)のだ。





さて。話を戻そう。

科学的に証明された現象は、わたしも魔法として扱うことができる。

それは仕組みを知っているからだ。

世界(、、)に頼みごとをするときに、自分が調理方法を知らない料理を、どうやったって作らせることは出来ない。

まあ、実際には憶測の解釈で、たまたまそれが当たっていれば魔法は使えてしまう。

前の世界でも、雷の発生するメカニズムなんてそれまで全く解明されていなかった。だが先人たちの絶え間ない検証と実験の結果、ほとんど当てずっぽうで、真実を引いてしまったらしい。

まあ、雷の逸話は、以前のわたしをして更に遥か昔のことなので、本当かどうかは判らないのだが。


――ただこの世界にも、似たような現象があったのではないか。

世界各地に点在する、魔法使いや呪術師など、およそ神秘的な人々の伝承。

ほとんどが作り話であろう。

しかし中には、真実を引き当てた、本当の魔法使いもいたに違いないのだ。

でなければ、神秘的な伝承など発生しない。

火のないところに煙は立たず、の言葉通りである――


現代では、人類が身近に接する現象で、解明されていないものなどほとんどない。

空を飛ぶ、地震が起こる。などは、まだ試していないが、きっとわたしも扱える魔法なはずだ。

精確に勉強し、身に付けさえすれば。

まあ、試す気はないのだが。


逆に、解明されていないが認識されている現象――お化けとか幽霊とか――は、インチキの可能性がある。

わたしの前世では、霊魂などという概念は存在しなかったし。

だが、今世にくる前の、『神』と呼ばれるものは本物だろう。

そして魂も存在する。

今なお解明はされていないし、おそらくわたしの人生を以てしても解き明かせないだろうが。

でなければ、今こうして、取り止めのない思考を繰り広げている小林アキが、存在し得ないのだから。

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