1 世界の危機
万有引力の法則
プロローグ
みんな、大好きだよ。
本編
大変、世界が終わっちゃう?
天才少女の恋
天才少女である羽衣は、ある日、この世界にあるいびつな歪みに気がついた。
そのせいで世界が終わってしまうことに、天才である羽衣はそのあとすぐに気がつくことができた。
「大変。どうしよう? このままだと世界が終わっちゃう?」
羽衣は焦る。
でも、どうすることもできない。
それはまるで世界の選択であるように、変えることのできない事実であり、現実だった。(少なくとも、羽衣一人の力では無理だった)
研究所に善がやってきたのはちょうどそんなときだった。
「おはよう」
そう言って、善がドアを開けて羽衣の研究室の中に入ると、天才少女の羽衣はその頭を抱えて、椅子の上に座りながら、一人でずっと、なにかに悩みながら悶絶していた。
それは世界の危機について、一人気がついてしまった天才ゆえの孤独な悩みだったのだけど、羽衣の悩んでいる姿を見慣れている善は(それはいつも、大抵変な格好だった)……ああ、今日も研究がうまくいかなかったんだな、と思うくらいで、それほど深く、羽衣の悩みについて考えたりはしなかった。
善は研究室にある冷蔵庫から自分の買っておいた炭酸の入ったジュースを取り出して、それから「羽衣、コーヒー飲む?」といつものように軽い口調で羽衣に言った。
「それどころじゃないのよ! このままだと私たちの世界が終わっちゃう!!」
と羽衣はいつの間にか、くるくると回っていた椅子の動きを止めると、コーヒーを淹れようと準備をしている善に向かって、大きな声で(必死な表情で)そう言った。
「世界が終わる?」善が言う。
「そうよ。終わっちゃうの! 世界が!!」と(まるで子供みたいに大げさに)両手を大きく動かして、羽衣は言った。