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クサリク


「追いたいところだけど、どうやら転移阻害が同時に展開されたみたいだね」

 

 マーリンが魔方陣を描いていたが、それは途中で見えない指が撫でたように滲んで使い物にならない。

 

「俺の瞬間移動もだな。なんか座標が特定できん」

 

 演算式に異物が混ざってるように数値が揺らぐ。

 

 無理やり飛んでもいいが、壁にめり込むのはごめんだ。

 

「とりあえず、走って出るしかないな」

 

 徐々にだが、地響きが来ているように地面が揺れている。

 

 ファウストが俺達を施設もろとも生き埋めにしようとする可能性もあるので、長居は無用だ。

 

「そのようだね。幸い、あの悪趣味な魔物群はブラッドナイトが倒してるみたいだ――ん?」

 

「何かあったのか?」

 

「ブラッドナイトの反応が同時に消えた? 何か起きたみたいだね」

 

「やられたのか?」

 

「恐らく……よほど強い合成獣でもいたかな?」

 

 マーリンは杖を握り、やってきた道を睨んでいた。

 

「二体同時か――」

 

 ブラッドナイトは俺にはそこそこ強い雑魚だが、二体同時だと仕留めるには苦労するだろう。

 

 それをしたとなると油断ならん。

 

「でも、そんな強そうなのがいたか?」

 

 一応、クリスタルの魔物はステータス魔法で見ていたが、それほど突出して強そうな魔物はいなかったぞ。

 

「いや、私も見かけなかった。ファウストが逃げ際にいったクサリクって魔物じゃないのかい? 他の部屋にいたのかもしれないしね 」

 

「どっちにしても倒すだけだ」

 

 この施設にいる魔物は一匹も逃がさん。

 

 確実に葬らないと森の生態系が狂う。そのせいで、ガレスに被害を出すわけにはいかんからな。

 

「ポジティブだなぁ」

 

 マーリンは呆れたのか感心したのかわからない声音で言うと俺の後について部屋を出た。

 

 

 ブラッドナイトは余程殺戮を満喫したらしく、見るもおぞましい光景が広がっている。

 

 床一面に広がる死体の残骸と撒き散らされた臓物は見ているだけで吐き気を催してきたし、鉄とすっぱい臭いが混じりあい、異臭が立ち込めているのだ。

 

 壁にも肉片やら骨片やらが飛び散り、赤黒い血や青い体液やらがそこらじゅうに広がっているのだ。

 

 スプラッタすぎる。

 

 臓物を避けきれずに踏んだ瞬間、ブヨブヨとした感触が靴越しに伝わり、鳥肌が立った。

 

「これは――グロいね」

 

「同感だ」

 

 あまり惨状に言葉が出ない俺とマーリンは足早に階段を昇っていく。

 

 にしても、ブラッドナイトを倒したらしき魔物はいなかったな。

 

 だが階段をあがった直後、俺とマーリンはブラッドナイトが何を倒されたのかを身をもって知ることになった。

 

 

 

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