ペリノアの森3
この世界にはステータスとレベルが存在する。
地球でも能力には個人差があるが、この世界では数値で表され能力値の差は明確にわかる。
例えば攻撃力1で防御力100の相手に攻撃したとしてもダメージはない。
地球ならなら例え蟻に噛まれようが痛みがあるが、こちらの世界では例え牛サイズの魔物でもレベル差があれば蟻に噛まれた痛みよりもダメージがない。
つまり何が言いたいのかと言えば――。
「レベル差って無情だな」
俺は返り血のついた服を見ながらしみじみと呟いた。
服はマンティコアの爪で引き裂かれて破れたところもあると言うのに、その下の皮膚にはかすり傷どころか引っ掻いた程度の赤い線がついただけだった。
噛まれた場所も同様に傷すらつかない。
それほどまでにマンティコアと滅龍の魔力を纏った俺との能力値には差がついてしまっていた。
レベル40の魔物でこれなら人間相手ならさらにダメージがないだろう。
…………本格的に化け物って気がしてきた。
滅龍魔法の魔力を纏っていたのを除いても驚異的だ。
「前衛で無傷とは……まったく恐れ入るよ。百体はいたのにね」
「マーリンも無傷だろうが」
「私は後衛だからね。それにほとんどの魔物は進が引き付けてくれたから楽だったよ」
マーリンにしてみれば、魔法障壁だけで事足りる程度の数だったし、前衛にいた進がほとんどの魔物を倒したので、倒した数も少なかったし、戦闘と言ったほどの事をした感じもなかったほどだ。
「それにしても、これだけ仲間が倒されたら逃げるもんなんだがな」
全滅させたマンティコアの屍の山を見ながら俺は首を傾げた。
実力差など最初の数体でわかったはずだ。
なのに、マンティコアは怯むことなく襲ってき続けた。
恐怖も怯えもなく、ただ俺とマーリンを排除しようと攻めてきたのだ。
「たぶん、恐怖とか逃げるとかの意思を削除されているんだろうね。だから、仲間がやられても向かってきたんじゃないかな?」
「…………」
気分のいい話ではない。
死兵としてこの先を死守するためだけに造られた魔物達。
彼らは何を考えても生きていたのだろう?
そして、この先にはどれほどのものがあるのだろうか?
百体もの魔物を配置してまでも何を隠していたのだ?
俺とマーリンはアンデットにならないように死体を燃やしたり、埋めたりしてから、さらに森の奥へと進むのだった。




