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出会い


「よっと!」

 

 パリィン!

 

 軽い掛け声とともに襲ってきたエッグランを倒した。

 

 魔物の殻に低級霊がついた魔物らしいが殻を割られるだけで倒したことになるらしい。

 

 フワフワと白やら黄色やら大小様々な殻が浮いてるのはちょっと不気味だが、レベル1の俺でも簡単に倒せるので、試しに戦ってみたのだ。

 

 Exp3

 

 まぁ、RPGで言ったら始まりの町レベルだし、得れる経験値は微々たるものだよな。

 

 そもそも経験値が可視化できる時点で普通じゃない。まさにゲーム世界だ。

 

 レベルは……上がってないな。

 

 なんかレベルの下に小さいバーが増えてるがこれはなんなんだ?

 

 話を聞こうにもレベル上げを一人でやってみる、と言って一人で出てきた手前なので聞く相手がいない。

 

 先にパーティーを募集する方がよかったか?

 

 ただ、国に用意してもらって性格が会わなかったらこれから先が気まずいので、仲間探しは断ったのだ。

 

 断った手前、今さら言うのもな……。

 

 戦闘は特に困ってないから、まぁ、いいか。

 

 仲間はゆっくり探すことにしよう。

 

 祝勝会にいた冒険者の話だとギルドにいけば仲間募集のボードとかもあるらしい。

 

 むしろ、こっちがグループ加入してこの世界について教えてもらうのも悪くないか。

 

 後輩プレイヤー的なノリで。

 

 パァン!

 

 俺は能力を使わずになんなくエッグランを倒しまって経験値を稼いでいく――。

 

「おかしいな」

 

 三十体は倒したくらいだが、レベルはまったく上がってないな。

 

 てか、モビーディックを倒したのに経験値が入ってなかったのか?

 

 それも疑問だ。

 

 普通、ボスクラスを倒したら莫大な経験値が入るのがお約束なのに。

 

 経験値は入ってる。

 

 なのにレベルがまったく上がらないのはなぜだ?

 

 勇者はレベルアップに必要な経験値が多いとか?

 

 確かにチート異能力持ちの異世界人ならそれもありえる。

 

 ここの微々たる経験値だと検証はしずらいな。

 

 他の冒険者も特にいないってことはここはあまり美味しい狩り場ではない可能性もある。

 

 死なれたら困るから簡単な場所を城のやつらが教えたのか?

 

 そう言えばここに来るときに兵士の一人が森の奥なら高い経験値が得られるとか言ってたな。

 

「ちょっと調べてみるか」

 

 街道沿いの森からエッグランは出てきたので、俺はさらなる大物を倒すべく、森の中へと進んでいった。

 

 木々の生い茂った森の中は木漏れ日しか当たらず薄暗い。

 

 奥に行くにつれて人の手も入っていないのて、ますます暗くなってる気がするな。

 

 途中でウサギや大型のネズミ、犬型の魔獣に出くわしたが、危なげなく倒せた。

 

 さすがに異能力を使わないと倒せないレベルも出てきそうだ。

 

 レベル1の素手って普通なら外に出るのも危ないんじゃないのか?

 

 などと考えていると、急に木々の開けた場所についた。

 

 小さな湖だ。

 

 キラキラと陽光を反射して輝き、澄んだ湖と白い砂浜はレジャーしたら気持ち良さそうだな。

 

 薄暗い森の中にこんな場所があるとは――ここだけ聖域みたいに感じられてしまう。

 

 そんなことを考えていると、頭上に大きな影がよぎった。

 

 それは飛行機のようなシルエットで湖に落ちた。

 

 盛大な水しぶきは波となって砂地にいた俺まで濡らす。


 隕石でも落ちたのかと思ったが、目の前にいたのは俺をさらに異世界に来たと確信させる存在だった。

 

「これは……ファンタジーだな」


しなやかな尻尾と、鳥類の翼。ナイフのような爪をもつ太い手足に長い頭部には角が生え、全身を艶やかな黄金色の鱗が覆っている。


「いきなりドラゴンかよ……」


 少ないファンタジー知識を漁り、目の前の怪物を見上げた。


 一軒家ほどもある巨大な体躯をした肉食? ぽい獣。


 戦車とでも戦えそうな威圧感だ。


 厄獣でもドラゴンに似た魔物はいたが、あれらは混じり物――キメラ感のほうが強かった。

 

 今、目の前にいるのは純粋な西洋竜と言える。


ただ、見た目の威圧感に対し、傷を負っているのか息使いが弱い。

 

 しかも、深手らしく湖に赤黒い霧のように血が溶けていっている。


 とは言え、ドラゴン。


古今東西のファンタジー、ゲームにおいて最強のモンスターだ。


「グルルルルルルルル!!」

 

しかも、俺に気づいたのか、威嚇するように開いた口から見える牙はナイフのようで肉食獣それだ。


 今にもブレスとか吐きそうだし……。

 

黄金の瞳が憎々しげにこちらを見据えていたが――。


カァァァァ――――。


弱々しい声をあげて崩れ落ちた。


ズン、と地響きをあげて倒れた竜。


浅い呼吸をしながら、その身体が光っている。


「…………」


いきなり倒れた竜は煙をあげながら、みるみる手足が縮み始めた。


鱗は艶やかな肌に変わり、翼や尻尾もんでいき――。


「いや、えぇぇぇぇぇ!?」


金色の髪をした少女に変化していった。


いきなりモンスターが美少女になるって、どこのエロゲだよ!


 お約束すぎる!

 

「うっく…………」


傷だらけの少女は重そうにフラフラと身体を起こす。


「………………」


見るも痛々しい傷があるが、その身体はまさに少女だ。


その姿が――。


わずかに膨らんだ胸とその先にあるピンク色がはっきりと目に入ってくる。その下の腰のくびれに、扇情的なヒップの形――。


ぶっちゃけ素っ裸だったのだ。


竜から変化した少女は自分の姿とそれを見ている俺の顔を交互に見て、目をパチパチと瞬きし――。


「…………」


 唖然とし、赤くなり、ワナワナと震え始めた。


「この……へ、変態!」


メチャメチャ怒ってる!


「ち、違う。誤解だ!」


 顔を赤くながら慌てて叫んだが、少女は聞く耳もたないと言うように犬歯を剥き出し――。


「妾の姿をこれだけ堂々と見て、誤解もロウカイもないわぁぁぁぁ!」


 キィィィィン!


 なんつー大声だ。


 木々が揺れ、水面が荒れている。


 耳を塞いで思わず目を閉じた。


「おのれ……。覚悟を……うっ?」

 

怒り狂っている竜の少女は傷が響いたのか、華奢な身体が揺れ、浅瀬にペタリと地面に座り込んでしまった。


「お、おい!」


「……龍化が溶けたか……魔力が……」


少女はかなり辛そうだ。


傷口は見ているだけで痛々しい。


 傷に効く能力はない。自己治癒はできるのだが、魔法もまだ覚えていないぞ。

 

他に仲間の竜がいたりしないし。


「…………」


俺は学ランを脱ぎ、少女に被せた。


「?」


「そのまま格好はまずいだろう。着とけよ」


「…………」


ポカン、としたような表情をしていたが、俯き――。


「フン!龍魔人たる妾が風邪などひくものか。……だが、感謝はする」


まるで、意地っ張りな小学生だな。


俺は思わず笑いそうになった。


「てか、なんでそんな傷だらけなんだよ?病院とかあるのか?それに名前は何て言うんだ?」


 目線を合わすために地面に胡座をかいて座って訊ねる。


「質問が多いな。傷の方は龍の治癒力なら問題はない。しばらくすれば癒えるわ。お主こそ、名前はなんと言うのだ?聞くならまず名乗らんか」

 

そう言いながら、少女は恥ずかしいのか学ランをキュと下げようとした。


う…………。


下がなくて上着だけってのは、なんか背徳感とエロさがあるぞ。


しかも、美少女だし。


でも、ジロジロ見たら、なに言われるかわからない。


なので、彼女の言葉に従うことにした。


「お、俺は神条進だ。昨日異世界から召喚された勇者……だ」

 

 自分で勇者とか言うのってめっちゃ恥ずかしいな。

 

「勇者……だと?」

 

 俺の自己紹介を聞いた途端、ピクリ、と竜少女が肩を震わせた。

 

 羞恥とは違う怒りに顔を染め、敵意の眼差しで俺に睨んでいる。

 

 な、なんだ?


「なんだよ」

 

「フン! 主に言っても仕方ないわ。妾の名はティア・ドラグニエル――今は唯一の龍魔人だ」

 

 竜少女ことティア・ドラグニエルはささやかな胸をはって名乗ったのだった。

 

 



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