ペリノアの森
大陸でも北部――寒冷地に位置するペリノアの森は広大な針葉樹が生い茂り、年中薄暗い。
日光が少ないこの森の魔物は寒冷地
のためか共通した性質があった。
「で、でかい」
行方不明者の捜索に来た俺とマーリンの前にいるのは、ギガントアント。
見た目は名前の通りの巨大な蟻型の魔物だ。
レベルは5と帝国内にいる雑魚の部類で比較的初心者向けの魔物なのだが、群れで活動するため、舐めてかかると返り討ちに遭うことも少なくない。ただ、金属製の武器や防具を嫌うので対策をしていれば美味しい魔物らしいのだが――。
「普通の倍はあるね」
本来は地球のハスキー位のサイズの蟻の魔物なのだが、何故か俺とマーリンの前にいるギガントアントはちょっとしたポニーサイズだ。
目線の位置が同じなので目があった瞬間、互いに動きが一瞬止まった。
一体が動きを止めたのを皮切りに蠢いていたギガントアントが一斉にこちらを見る。
黒い石のような目、目、目……。
何百近い視線が俺を見ている。
生理的に背筋に冷たいものが走った。
これは面倒だ。
巨大な上に数の暴力。
いくら弱いと言えど、こんな数に襲われれば魔力の消耗は避けられない。
まだ森の半ばだ。
話では奥地ほど魔物が強いのだから消耗は少しでも避けたいところだが、向かってくるなら容赦するつもりもなかったが――。
ザ、ザ、ザザザザザ!!
まるで天敵にでも遭ったかのような勢いでギガントアントは俺から背を向けると蜘蛛の子を散らして森の奥へと散らばっていった。
「ふむ……低級な魔物でも君の強さを感じられるようになるとは――もう人間辞めたほうが早いかもね」
「しみじみとディスんな!」
考え深げに呟いたマーリンをジト目で見ながら俺を声をあげる。
魔物にも避けられるって……。
まだ……人間だよな?
なんとなく不安になってステータス魔法で自分の能力を見る。
ジャバウォック戦で見て以降見てなかったので何か変化してたりして……。
神条進
人類種・ユニーク
滅龍魔導師・天・幻属性
神殺し
修得魔法――滅龍魔法
――神龍力
――異能力
――呪い・状態異常無効
――権能・太陽神の槍
・暴食の風
・六つの世界(残五)
なんか増えてるぞ。
種族欄と滅龍魔法の所――。
滅龍魔法はわからなくもないジャバウォックは幻影とか使ってたからそれを倒して得たのだろう。
でも……。
「なぁ、ユニークってなんなんだ?」
見慣れない単語に首を傾げて訊ねると、マーリンは驚いた表情を浮かべ、
「ユニークだって? 本格的に人間辞めちゃってるね」
「どう言う意味だよ?」
「私もユニークなんだ。特殊個体に付く称号だよ」
なんて不名誉な称号だ。
俺って実は人間じゃないのが混じってるのだろうか?
この世界に来てからか?
それとも、俺を助けてくれた時恵が人間じゃないってことか?
あの人なら充分ありえるんだが――。
帰ったら聞いてみるか……。
まぁ、本人がいない以上は考えても仕方ない問題なので、俺はそれ以上突っ込むのはやめといた。




