ジャバウォックの最期
「ぐぬっ……人間ごときが、何故だ」
爪を折られ、翼膜もボロボロ、鱗も至るところに傷が入り、どす黒い血が大地をシミのように染め上げていた。
「俺だけの力じゃねえ、ティアやゲオルギウスの力も合わさってんだ。人間風情と侮ったのがてめぇの敗因だ!」
「我がまた滅びるだと……。ふざけるな! ふざけるなぁぁぁぁ!」
穴の空いた肩を抑えたジャバウォックは怒りで魔力を無理やり膨らませるが、俺とティアの魔力をかけ算して得た力には及ばない。
だが、急激なパワーアップで身体が中が軋む。
正直、めっちゃ痛い……。
「もう、勝ち目はないぞ」
命のストックもなくなったジャバウォックにもう勝ち目はあるまい。
飛んで逃げることも、転移魔法があっても、それをジャバウォックが封じる結界を張っているので、逃げることはできないのだ。
「我が勝ち目がないだと……ゲハハハハ……。よもや人間にまたしても滅ぼされるとは……がっ!?」
激昂するジャバウォックの魔力が冷気の様な冷たさを帯び、瘴気にも似た気配を放ち始める。
魔力がジャバウォックの身体を覆うと、肉体をみるみる朽ち果てさせていく。
「どうなってやがる!?」
「……あの女狐……。利用されていたのは我だったと言うことか……」
憎々しげに亀裂を見上げたジャバウォックは俺へと視線を向けて――。
「ゲハハハ! 人間よ。貴様が勝とうがどちらでも結果は同じなのだ!俺も所詮は駒に過ぎなかったのだ!」
ジャバウォックは一人で訳のわからない台詞を吐きながら笑っていた。
その間も見る見る朽ちていきゾンビへと変化していく。
「ティアよ。世界の護り手として抗うならば最期まで抗うがいい!あの女狐の好きにさせるな――」
断末魔の声をあげながら、ジャバウォックは封印を解けた時と同じ骨で出来た龍へと戻っていた。
その目にもはや理性の輝きはなく、灯る光は生者への憎悪しかない。
ここで、ゾンビになるのかよ!
「進!奴にはもう滅龍奥義の耐性はない!一気に焼き尽くせ!」
ステータスを覗いたティアの叫びに俺は再び第二の太陽を呼び出した。
「アナザーコスモロジー解放! 我が下に来たれ勝利のために! 神光よ、天よりの降り注ぐ裁きの槍となりて罪人に裁きを与えよ!」
穢れた魂もろとも天へと還す白い焔の槍が天から降り注ぎアンデット化しつつあったジャバウォックを一気に焼きつくしていく。
太陽の欠片たるフレアの槍はジャバウォックもろとも王都の半分を灰塵へと帰したのだった。




