敵と己を知れば百戦危うからず
「かはっ!?」
肺に残っていた空気が吐き出されるとともに俺の両足は素晴らしく硬い大地についていた。
どうやら、あそこから異世界に戻されたらしい。
「え?」
「!?」
俺が立ったのはティアとジャバウォックと向かい合う形で、ジャバウォックは数秒前に俺を食べたのだろう。
ティアもジャバウォックも信じられないものを見るような目で俺を見ている。
「確かに貴様を食らったはずだ。なぜだ?」
理解できないと言った表情を浮かべている。
まぁ、今しがた食べた相手が平然と現れたらビックリするわな。
だが、親切に教えてやる義理はない。
それよりも、ジャバウォックが俺に警戒心を抱いてる間に――。
(ステータス魔法……)
見るのはジャバウォックではない。
女神様のアドバイスが正しければ見るべきは――己のステータスだ。
いつも通り、HP、MP、SPがある。
修得魔法――滅龍魔法
――神龍力
――異能力
――権能・太陽神の槍
・暴食の風
・六つの世界(残五)
特に何かあるわけじゃないな。
権能が増えた程度か――。
これがどうチャンスに繋がるんだ?
俺が心の中で文句を吐いていると――修得能力の詳細を表示しますか?
なんか矢印と説明文が出たぞ。
なんだこれ?
俺は心の中で首を捻り、イエスへ進めた。
この中で一番詳細がわかってないのは滅龍魔法と六つの世界か……。
まずは滅龍魔法の説明を――と。
再び圧縮ファイルを開くように情報が大きく広げられた。
滅龍魔法
龍種による魔力付与によって修得可能。魔力に適合できた場合、自らに龍の特性を加え、龍の魔法を行使できる。
また肉体も龍に近づくため、身体能力、感覚器官、回復能力も向上する。
リスクとして滅龍数が増えすぎると肉体が変質して龍に近づく。
さらに自らの属性の魔力やエネルギーを取り込むことで回復や力を増幅させることもできる
●ぺディアかよ!
なんか細かく内容を書いてくれてるし!
滅龍魔法……この文を見て思い付きそうなのは、最後の自らの属性の魔力やエネルギーを取り込むことで力を増幅させることもできるってのか……。
これが本当ならティアの滅龍魔法を食らえば一時的に強くなれるじゃないのか?
試す価値はある――。
「どんな手かは知らぬが復活できぬまで屠ってくれるわ!」
俺が何も言わないのに焦れたジャバウォックは爪を振るって大地を抉りながら迫ってきた。
今度は辛うじて見える!
転がって避けた俺はジャバウォックの眼前に迫り――。
「雷龍の威光!」
「ガァァァァァ!?」
かつてティアがユグドラシルにそうした様に俺はジャバウォックの目を閃光で眩ました。
「小賢しいわ!」
鼻を引くつかせたジャバウォックは匂いでこちらの場所を探り、爪を振り回す。
狙いは見えてるときよりも雑だが、掠めるだけでも身体が引き裂かれるぞ。
とりあえず退避だ。
「ティア!」
「な、なんじゃ!?」
ティアも匂いで場所はわかっていたが、視力が戻ってないので、目を細めていた。
「ティアの滅龍魔法の魔力を俺にくれ!」
「……そう言うことか」
さすが本家。
それだけで俺の言いたいことを察してくれた。
「しかし……適応できねば進の命も危ないのだぞ!?」
それは書いてなかったぞ!?
だが、もうこれしか手はあるまい。
…………信じるぞ。女神様!
「俺を信じろ!」
「…………わかったわ!」
ティアのオーラが収束し、掌で黄金の炎の様にゆらめく。
「これが妾の全てじゃ! 受けとれ!進!」
ティアの放った黄金の炎を俺は疑うことなく受け――食べる。




