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ジャバウォック対異世界勇者3


「深淵よりも深き虚無の闇よ!万象を喰らう祖は暴食の闇。原初に還す力にて敵を打ち倒せ!」

 

 力ある言葉とともに、俺の周囲に黒い風が現れる。

 

 この風こそ、栄光を、怨嗟を、希望を、絶望を、憤怒を、静寂を、善を、悪を、天を、地を、光を、闇を、全てを等しく時の果てにある虚無へと還す最強の権能だ。


 風が触れた大地も瓦礫も悉くが消滅した。

 

 破壊とは違う。

 

 消滅したのだ。

 

(あれはまずい!)

 

 獣の第六感がジャバウォックに全力で叫んだ。

 

「小僧もろとも消してくれるわ!」

 

 二つの頭が俺へと狙いを定めると――。

 

「幻龍の咆哮!」

 

 高濃度の魔力を一気に放つ。

 

 シンプルに魔力を放つ一撃はどの属性にも有利にはならず、苦手にならない無属性魔法だが、龍の魔力量をもって放てばそれだけで大魔法の威力になる。

 

「喰らい尽くせ!」

 

 黒い風が盾のように俺の前に集まり、そのままジャバウォックめがけて走る。

 

 黒き風と白銀のブレスがぶつかる。

 

 莫大な魔力がぶつかり合えば余波だけで周囲に壊滅な被害が出るはずだが――。

 

「!?」

 

 ジャバウォックは驚きに目を見開いた。

 

 最強の存在たる龍種。

 

 その最も強大な攻撃となるブレスが黒い風とぶつかった瞬間、バックリと呑み込まれたのだ。

 

 黒い風は高速で鉛筆でもを削るかのようにブレスを食らいながら、ジャバウォックへと迫る。

 

「命を――捧げる!」

 

 漆黒の風に呑まれる寸前、ジャバウォックが天へと叫んでいた。

 

 だが、何か起こることなく暴食の風がジャバウォックを貪るように包み込む。

 

「捕らえたぞ」

 

 手応えはある。

 

 暴食の風の渦にジャバウォックを閉じ込めた。

 

 暴食の風が一度とらえれば厄獣の王――神と呼ばれた魔王種ですら脱出はできずに倒せる。

 

 問題は燃費の悪さだ。

 

 本来は圧倒的な巨体をもつ魔王種を完全に閉じ込めるほど暴食の風を顕現させられないのだ。

 

 今回呼び出すと同時に『聖杯』でさらにSPを補充してジャバウォックを呑み込めるほどの風を顕現させた。

 

 奴の能力が唯一暴食を逃れる系統ではなければこれで終わりだが――。

 

「見事だ」

 

 耳障りなジャバウォックの声が響いた。

 

 音の方へと目を向けると戦いの余波で吹き飛んだが、先程までジャバウォックがとぐろを巻いていた場所に戦う前と同じ姿で佇んでいたのだ。

 

 まるで、さっきまでの戦いが夢幻だったかのように、狐に包まれた感覚になるだろう。

 

 だが、今までの戦いが嘘ではなかったのはジャバウォックの姿を見ればはっきりとわかる。

 

 三つの頭の内、左右の首から上が無くなっているのだ。

 

 そして、漆黒の鱗に覆われていたはずの肉体から脈動する深紅の心臓がはっきりと見えた。

 

「まさか命のストック全てを捧げねばならぬとは恐るべき力よ。最強と呼ぶに相応しい力であったわ。だが、残念だったな。我を殺すには至らなかった」

 

「っ……。やっぱりかよ」

 

 ジャバウォックの使った能力の正体がわかって俺は舌打ちした。

 

 ジャバウォックの滅龍奥義の正体がわかった。

 

 あれは因果律に干渉する能力。

 

 暴食の風から生き延びれる能力は時へ干渉するか、因果律への干渉しかない。

 

 ジャバウォックは自らが死ぬ運命に干渉してそれをねじ曲げたのだ。

 

 ティアの説明で嫌な予感はしてたが当たりやがった。

 

 そして、何かしらの耐性も得ているのだろう。

 

「我が滅龍奥義はもはや使えぬが、そちらの切り札も失った。そして、人には龍は越えられぬ」

 

 ジャバウォックは己の絶対的な有利を悟って嗜虐的に笑っていた。

 

 龍と人間のステータスなど比べるまでもない。何よりジャバウォック自身のレベルは常軌を逸している。

 

 勝ちを確信した笑みに対して、俺もまた獰猛に笑った。

 

「はっ! 何勝った気でいやがる。お前のチートももうないんだ」

 

 ゴキリ、と拳を鳴らし――。

 

「今度は準備万端じゃ!」

 

 雷のごとき光のオーラを纏ったティアが隣へと立った。

 

 

 

 

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