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滅龍魔法のリスク


「雷龍の双擊」

 

「風龍の鉤爪」

 

「武技・五弧連斬」

 

 アァァァァァァァァ!

 

 俺とティア、ステファノの攻撃にグールとスケルトンが消滅した。

 

「キリがないぞ!」

 

 神器回収のために秘密の通路へ向かうべく俺とティア、ステファノとレティシアの四人は街中を走っていた。

 

 他の騎士も同行したがったが、レティシア自らが、結界からアンデットがでないようにすることと、結界外への避難をすることを命令したため、彼らは他の任務に当たっていた。

 

「王都の避難できなかった民はアンデットになったと見てよかろうて……。まだまだおるぞ」

 

 さすが生命への感知が機敏なアンデット。

 

 動きは遅いが出るわ出るわ。

 

 ご馳走の匂いを察知した野犬のように建物の影からアンデットが俺達へと群がってくる。

 

 ティアのブレスがそれらをまとめて一掃した。

 

「これ……何匹くらいいるんだ?」

 

「妾の感知じゃと……ざっと数千はいるじゃろうか?」

 

 数千!?

 

「数千だと!?」

 

 俺と同じように驚いたステファノは悲鳴に近い声をあげた。

 

 守るべき民が魔物になったのだから、当然の反応だろう。

 

 レティシアも悲鳴を噛み殺したが、驚愕が顔に浮かんでいる。

 

「ジャバウォックの結界内での滅竜教会信者は全てのアンデットになっておるし、さらに結果内で死んだものも同様じゃ。まぁ、妾にとっては敵が減ったとも言えるがな!」

 

 アンデットが逃げ遅れて戦闘力もない平民を殺害。それがアンデット化、そして平民を殺害、のサイクルで増え続けているのか。

 

 ユーリと滅竜教会には辛酸を舐めさせられ続けたティアの言葉は辛辣だが、心情はわかる。

 

 俺も国王も死んだと聞くと天罰だと思ってしまったしな。

 

「私や姫様は勇者殿達に会って滅竜教会へ不信感があったから助かったのか……皮肉な話だな」

 

 信じれば救われる、なんての宗教だが、信じた結果がアンデット化ともなるとその通りだと思える。

 

「それはそうと、秘密の通路はまだなのか?」

 

「もうすぐです!」

 

 レティシアだけでも結界の外に出したかったステファノや騎士団だが、レティシアしか秘密の通路と神器を間への行き方がわからないと主張したので仕方なく連れてきているが――。

 

「ドライ・シャインレイ!」

 

 白い聖なる炎がアンデットを包み、塵へと返す。

 

「なかなかやるな!」

 

「これでも魔法も護身用の武術も納めておりますから!」

 

 思った以上に頼りなる。

 

 もちろん、対龍魔法を使える俺や龍魔人のティアには遠く及ばないが、魔法の発動タイミングが上手いのだ。

 

 俺やティアがブレスで薙ぎ払いと思うと、それを汲んで、大地の魔法で足場を変えて狭い通路へ押し込んだり、ステファノの武器で倒れなかったアンデットを単体の魔法の矢で倒したりとサポートが絶妙なのだ。

 

 俺?

 

 こっちでもあっちでも権能や高出力にモノを言わした戦法だがら、そんな細かい戦い方は無理。

 

 そもそも権能は威力も範囲も考えれば共闘とか向かないのだから!

 

 レティシアは脱出したはずの王城への道を全力で戻る。

 


「着きました!」

 

 王城を囲む堀の側――巨大な騎士の石像の前に俺達はいた。

 

 鎧を身につけた逞しい騎士像の手には右手に剣、左手に槍が握られている。

  

 聖ゲオルギウス。

 

 これが件の英雄か。

 

 ギリシャ人っぽい顔立ちで、彫りの深い顔立ちは彫刻のモデルにぴったりだろう。

 

 その像の下にしゃがみこんで、レティシアがブツブツと詠唱する。

 

 ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

 重厚な音ともに石像が後ろへと勝手に下がり、その下から階段が姿を見せた。

 

「おぉ! お約束!」

 

「一人で訳のわからん反応はやめてほしいのぅ。これが主らが通ってきた秘密の通路か?」

 

「はい、城まで一直線ですが、私達を追ってきたアンデットがまだいると思いますのでご注意を」

 

「はっ!問題はないな!グールやスケルトン程度なら楽勝だ」

 

 俺は雷龍の羽衣を纏うとそのまま地下へと続く階段を降りていった。

 

 地下通路は光明石がおかれてある程度の明るさは確保されている。

 

「うむ、進のオーラのおかげでさらに見えやすいぞ」

 

「人を松明みたいに言うな」

 

 俺も暗いと思ったから照明の変わりも兼ねて雷龍の羽衣を纏ったのだが、いらなかったな。

 

 魔力の無駄遣いだ。

 

 雷龍の羽衣を解除すると背後でティアの不満な声があがる。

 

「むぅ……暗くなったぞ」

 

「光明石で十分だろうが。俺もティアも特にな」

 

 滅龍魔法――とくに神龍力を得てから視覚だけではなく嗅覚や聴覚……五感の全てが鋭くなっていた。

 

 龍の力を真似てるから、身体にも影響が出ているのだろうか?

 

 便利になったなぁ、と思う程度だったが、使いすぎて龍みたいになるとか――ないよな?

 

「なぁ、ティア」

 

「なんじゃ?」

 

「滅龍魔法ってリスクとかないのかよ?」

 

「えらく急じゃな。しかも、今さらともいえるぞ」

 

 急に投げた問いにティアは呆れた顔になるが仕方ないじゃないか。

 

 指名手配されてからここまで怒濤の勢いで来たんだから。

 

「まぁ、大戦時ならリスクはあったが、今は問題ない」

 

「どういう意味だ?」

 

 昔ならリスクがあったってことか?

 

 んな、技術の進歩でもあったみたいな言い方をされても大戦時代のことなんて知らないし。

 

「人間の滅龍魔法の使い手が龍を滅すると、その力を自らのモノとして取り込めるらしいのじゃ。故に、滅龍しすぎれば、それだけ肉体も取り込んだ力に合わせて変質してしまう――」

 

 おい……。

 

「それって最終的に人間が龍になるってことかよ?」

 

「まぁ、そうじゃが、安心せい。もうそれほど龍がおらぬし、ジャバウォックのような例外はあるが龍と敵対することなどそうそうない。只人が一柱でも会うのと、生涯会わぬ者のでは会わぬ者のほうが多いのじゃからな!」

 

 俺が文句を言うとでも思ったのか、ティアは慌てたように矢継ぎ早にいう。

 

 別に文句はない。

 

 滅龍魔法がなければここまでこれなかったし、すでに一度に死にかけた時に肉体も普通じゃなくなってるんだ。

 

 完全に龍になるのは困るが、別に多少なら構わない。

 

 異形化の異能者はいるから別に違和感ないしな。

 

 美海な社長には笑われそうだが――。

 

「ははっ! 気にしねぇよ」

 

「そうか……」

 

 俺が気にしてないように笑うと、ティアも、はにかむ様に笑う。

 

 滅龍魔法のリスクがそんなことなら俺は気にしない。

 

 ジャバウォックを倒しただけなら問題ないらしいしな。

 

 

 

 

  

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